あの修学旅行の後、炎司さんは冬美さんと冷さんの二人からダブルお説教を食らいかなりげんなりしていた。勿論俺もやらされていたとはいえ、冷さんにお説教を食らいました。がすぐに冷さんに八百万さんを紹介する話に切り替り、冷さんは大喜びして二人の門出を祝った。俺たち二人は正座させられたままでしたが……
でも冬美さんがこっそりとご飯を持ってきてくれたので俺と炎司さんは隣り合わせでご飯を正座しながら食う
「……すまなかったな」
「初めから気づいてくださいよ……」
お互いに喋ることなく黙々とご飯を食べていたが炎司さんが謝ってきてくれたのでそれに俺も返した。
前から思ってたが俺と炎司さんって似た者同士なのかもな……
炎司さんもそう思ったのかお互いに顔を見合わせたのだがすぐに視線を逸らしてご飯をかきこむ。
「なあ……」
「……なんですか?」
「おまえは……なんのためにヒーローになった?」
「……急になんですか?」
「俺は……誰よりも強くありたかった……だからただ前をひたすらに進んでいき誰よりも輝くヒーローに……俺は憧れた……だが一度挫折してしまった……そして……ヒーローの道から外れてしまった……そんな俺を再び戻してくれたのは他でもないお前だった……」
「…………」
「俺のように強い個性を持っているわけではないのに……何度も挫折しているはずなのに……そんなお前が俺のように……道を踏み外すことなく強くなれた……理由が知りたいんだ」
「……そうですね……確かに炎司さんの言った通り俺は何度も挫折しました。時には笑われることもありました。ですが……そんなあなたが思ってるような大きな夢なんて高尚なものはなかった。俺も貴方みたいに強くなりたかっただけです。そんな俺が強くなれたのは……努力を止めて自分を見失いたくないと思っただけです」
「そうか……」
そしてそばを啜る炎司さん
「大丈夫ですよ」
「ん……?」
「今の炎司さんはあの時とは違います。目の前の人をちゃんとみることができて……自分を見失っていない貴方は……誰よりも輝いているヒーローですよ」
「…………翔くん」
「そうですよ」
「冷!?」
声がする方を振り向くと冷さんが来ていた。
「あれ?焦凍くんの方はいいんですか?」
「折角なら二人っきりにさせてあげたくて」
「冷……今の俺は……あいつらが誇れる父親だろうか……」
冷さんは炎司さんの隣に座ってその手を静かにとって
「大丈夫です。今でも炎司さんは誰よりも立派なヒーローで……私の生涯最高のパートナーです」
「冷ッ!!」
「きゃっ……ふふ……」
俺はそっとその場から退散すると
「どうだった?翔くん、二人の様子は」
「俺がここに来たということはそういうことだろ?」
「ふふっ……それもそうね♪」
俺たちは縁側に座ると
「あっ月ですよ!冬美さん」
「どこ……?ホントね……」
俺が指さした月は欠けることなく輝いている。
「ねえ翔くん……」
「なに……?」
「……ありがとうね。私たち家族を救ってくれて。貴方は私だけじゃない、私たち家族のヒーローだよ」
「……余計なお節介ってのがヒーローだろ?」
「ふふっ……翔くんは昔っからそう……そんな貴方とずっと一緒にいたい……」
そう言って冬美さんが身体を寄せてくる
「……それは遠回しなプロポーズかな?」
「……うん♪ちゃんと言うから返事を聞かせてくれないかな?翔くん、貴方とずっと添い遂げたいです……」
「……彼女に言わせてしまうとはな……」
「それでどう?」
「……はい。俺でよければ……ずっと一緒にいてください……」
「嬉しぃっ!♪」
冬美さんが笑顔で正面から抱きついてくる。
ああ……幸せだ……
ー幸せな時間は時の流れを早くし、繋がった愛の体感は光をも超える