ここでも主人公は一方通行の能力を使っていきます。
至らない点もあるかと思いますが、応援していただけたら嬉しいです。
目を開くと何もなかった。
訂正しよう。正確には、真っ白な空間に俺は立っていた。
どう考えてもおかしい。俺の記憶が正しければ、夜中までゲームをして、明日も学校があったから、遅刻しないように布団に入った。それなのに、今はどことも知れない空間に立っている。
ここから出るためにはどうしたらよいだろうか。そう考え始めた時だった。
「ようこそおいでくださいました。神崎悠斗様」
自分の名前を呼ばれたことに驚き、慌てて振り返ると、ものすごい美人の女性が立っていた。
身長は170㎝くらい。光を反射する金色の髪は、腰まで届いている。ボンキュッボンとしたグラマラスな肢体を包むのは、西洋の絵画で描かれる女神が着ているのと同じような純白の布のみ。正直、目のやり場に困る人だった。
それでも豊かな双丘に目が行ってしまうのは男の性。しかし、彼女は自分の体がいかに俺を苦しませているか気づいていないようである。無自覚に男を悩ませる凶悪兵器だ。
気づかれていないからといってガン見する勇気がない俺は、布地を押し上げる果実や胸元、鎖骨から必死に目を逸らしながら、目の前の女性に問いかける。「あなたは誰か?」と。
彼女は微笑みながら
「神様です。あなたを別の世界に転生させるために来ました」
そう答えた。
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「さて、何から説明したらいいのでしょうか」
俺を転生させに来たと答えた女神さまは、ティーカップを片手に思案する。
現在、俺こと神崎悠斗と女神さまは、真っ白な空間で紅茶をすすっていた。
自分を神だと言った後、女神さまは続けて言った。「立ち話もなんですし、腰を落ち着けましょう」と。
彼女が指を鳴らすと、白い丸テーブルと椅子が二脚、どこからともなく出現した。
俺が簡単には信じられない光景に驚くのをよそに、女神さまは早くも片方の椅子に座り、対面の椅子に座るように促してくる。
説明を聞くには、彼女の要請に応じなければならないと悟った俺は、仕方なしに彼女の対面に座る。
俺が座ったのを確認すると、女神さまは再び指を鳴らした。
それに応じて現れたのは高級そうなティーポットと、これもまた高級そうなティーカップが二つ。どちらも俺には縁遠いモノだ。
ポットの蓋の部分を女神さまが二回ほどタップすると、注ぎ口からかすかに湯気が立ち上る。彼女はポットを持ち上げ、自身と俺のティーカップに紅茶を注ぐ。
茶葉の芳醇な香りが辺りに広がる。
女神さまは、コースターに乗せたティーカップを俺の前に置いたので、ありがたく頂戴する。一口飲むと、紅茶の深い味わいが広がる。紅茶には様々な茶葉があるようだが、あいにく俺はそれを全く知らない。そんな素人の俺でもうまいと思えるのだから、よほどいい茶葉を使っているのだろう。
お互いに一息ついたタイミングで女神さまが口を開く。それが27行前(メタい)。
閑話休題。
正直、今自分が女神さまとお茶をすすっている理由が全く分からない。なので、そこのあたりから説明が欲しい。そういう意味を込めて女神さまに声を掛ける。
「あの……色々聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
女神さまは微笑んで頷いた。
「そうですね、いきなりこんなところに連れて来たらそういう反応をしますよね。では、気になったことは聞いてください。私がそれにお答えするというふうにしましょう」
話の分かる人で良かったと思う。質問を聞いてもらえなかったら自分がどうなったかも把握できないからな。
了承を貰ったので、気になったことから聞いていこう。
「じゃあ一つ目なんですけど……ここはどういった場所で、俺がここにいるのは何故なんですか?」
その質問に、彼女は答えてくれる。
「ここは転生の間と言いまして、元居た世界から新しい世界に転生する人をお呼びする場所です。もう一つの質問に対する答えも、この場所です」
「じゃあ俺は、転生するってことですか?」
「えぇ、そういうことです」
その答えを聞いたとき、思わずうれしさで叫びそうになってしまったがさすがに女神さまの前でそれはいけないだろうという理性のブレーキがかかり、危うく踏みとどまる。しかし、完全に抑えることはできなかったようで、笑顔を隠しきれない。
そんな俺を見た女神さまは、微笑みながら声を掛けてくれる。
「ふふ、無理して喜びを抑える必要はありませんよ。嬉しい時は素直に喜ぶべきですよ」
そう言われると逆にはしゃげなくなってしまい、深呼吸をして心を落ち着かせる。
落ち着いたところで、質問を再開していく。
「俺がこれから転生するっていうのは嬉しいんですけど、どうして俺なんですか?もしかして、神様の不手際とかそういうのですか?だとしたら素直に喜べないんですが」
その質問にも、女神さまは答えてくれた。
「いいえ、違いますよ。あなたがここに来たのは、私たちの不手際によるものではありません。むしろ、転生することがあなたの人生で定められた大きな転換期なんです」
はて。全く話についていけないぞ。
そんな考えが顔に出ていたようで、女神さまが説明を加える。
「人間の一生には、転換期と呼ばれるものがあります。これは誰しもが持っているもので、様々な種類に分けられます。例えば、気まぐれで購入した宝くじが一等で、億万長者になったなどですね。そして、その転換期には異世界転生という分類が存在します。私たちは常に人間界を確認し、異世界転生という転換期を持った人物が適齢期になったときにここにお呼びし、転生をしていただいています」
「なるほど、分かりました。でも、誰もが転生するってわけではないんですよね?もし断ったときとかはどうなるんですか?」
「もちろん、転生をしたくないということで、断る方もいらっしゃいます。その方は、ここに来た記憶と会話の内容だけを消去し、元の世界に返しています。ですが、人生の転換期を捨てるということは、今後一切、人生で大きな出来事は起きなくなります。なんせ、一世一代の大チャンスですから」
どうやら、転生者としての素質を持つ人間は、一握りしかいないらしい。まぁそれも少し考えればわかることだ。簡単にポンポン転生させていたら、原作なんて存在しなくなるからな。
頷く俺を見て、女神さまは安堵したように息を吐いていた。それに気づき、訳を聞くと、なんでも、転生者として呼ばれた人たちの中には自分勝手な人が時々いるらしく、そういう人たちは、早く転生させろだの、特典の数が少ないから数を増やせだのと文句を言うらしい。中には、女神さまに肉体関係を持つように迫ってきたやつもいたらしい。そういった輩は、強制的に元居た世界に返しているらしい。当然、記憶は消去してだ。
女神さまは、疲れた顔でそう語った。よほどストレスになっているようで、次から次へと愚痴が飛び出してくる。しかし、このままだと話し込んでしまうと思った俺は、意識を戻してもらうために声を掛ける。
「あの~、転生するってことで話していたと思うんですけど……」
「ッ!!申し訳ありません。少し取り乱してしまいました」
その取り繕う姿が微笑ましく、笑ってしまった。それを見た女神さまは顔を真っ赤にして笑うのを止めようとしてくる。
必死になって止めようとしてくるので、かえって申し訳なくなり、笑うのをやめて話を元に戻す。
「じゃあ、俺は転生者としての資格を持っていて、転生することができる。今ここで断ったら二度とチャンスはない。そういうことであってますかね」
「ええ、その認識であっていますよ。転生するときにお渡しする特典などは、転生することへの決心がついた後にお話しします。今はまだその前段階……転生するか否か。決めてもらわなければいけません」
女神さまは真剣な顔で言葉を続ける。
「転生すると言っても簡単ではありません。と言っても確認したいことは一つだけです。元居た世界の家族を捨てられるか、ということです。転生した後は、元居た世界に戻ることができません。ご家族の方とは二度と会えないものだと思ってください。そうでない世界も存在しますが、ほとんどが異なります。転生したいけど、家族に会えなくなるのなら転生しないと言う方も多いです」
そう言われて、自分の家族を思い出す。高校受験の時の言い合いが原因でほとんど口を利かなくなった両親。自分よりも通う高校の偏差値が低いからか、見下した態度をとる弟。小学校まではよく遊んでいたが、中学生になってから冷たい態度をとるようになった妹。連想されるのは、居場所が存在しないと思える実家。これと言って特別なことも無く過ぎていく学校生活。何もかもがつまらなく思えて、自分の見る景色から色が抜け落ちていた。
そんな俺にとって、唯一の楽しみがアニメやラノベ、ゲーム、漫画などの娯楽だった。中学校に上がる前にはこれらと出会っていた俺は、中学高校と趣味に没頭して生きてきた。まぁそれが原因で高校受験に失敗したんだが、それは置いておく。
当然、自分がアニメやゲームの世界に行ったら~、といった妄想だってしていた。主人公や原作のヒロインたちと会話してみたい。あわよくば、ヒロインの誰かと……なんてことも考えた。
ならば、これはチャンスなのではないか。自分にとってのつらいことを忘れ、新しい世界で新しい人生を歩んでいく。ただの逃げだと思うなら笑えばいい。後ろ指さされても構わない。自分がよければそれでいいじゃないか。
そこまで考えた俺は、自分の前で俺の出す答えを待っている女神さまに顔を向ける。
最後に確認だけしておきたいことがある。
「もし俺が転生した後は、家族構成とかはどうなるんですか?」
「その時は、神崎さんが最初からその世界に存在しなかったことになります。今は五人家族でも、神崎さんが転生した後は、四人家族で暮らしていることになります。これは、世界の修正力によるもので、あなたに関わった方全ての記憶が対象です」
それを聞けて安心した。あの家には既に未練など残っていない。
俺の表情から察したのか、彼女も真剣な顔になってこちらを見つめる。
彼女の目を見て、はっきりと告げる。
「俺が今まで見てきた世界はつまらないものばかりだった。だから、新しい世界でやり直したいと思う。アニメとかの主人公のように活躍できなくてもいい。ただ、自分がやりたいと思ったことをやりたいんです」
「分かりました。あなたのその決意に応じるためにも、あなたに最もふさわしい世界に転生できるようにしましょう」
女神さまは、俺の答えに理解を示し、頷き、応じてくれた。
そして、彼女が再び指を鳴らすと、A4サイズの白い紙と、羽ペンが現れた。
「あなたが転生する世界は、『トリニティセブン』の世界です。あなたが読んでいた小説や漫画の中から選びました。同時に特典の数も決めさせていただきました。神崎悠斗様の特典の数は五つまでです。特典は、決まったらその紙に書いてください」
「要望通りにいかないことはあるんですか?」
「いえ、そのようなことはほとんどありません。私たち神々の権能をもって、転生者の要望は全て叶うようにしています。ですが、叶えられないものも存在します。まぁよほど極端なものでなければ大丈夫ですよ」
ふむ、となると何が良いだろうか。トリニティセブンといえば、魔法の世界だ。となると、やっぱり魔法を使ってみたい。そんな時、自分が好きだったラノベのキャラクターの顔が浮かんだ。彼は魔術とは無縁の人間だが、原作の最後らへんで使えていたし、大丈夫だろう。
そう思い、一つ目の特典として、禁書目録の
そこから先は早かった。原作ヒロインで一番好きだった、リーゼ。彼女が所属していた
三つ目は、原作の知識は覚えていない状態で生活すること。
四つ目は、原作開始の数年前から生活し始めること。
五つ目は、完全記憶能力を持つこと。
書いた紙を女神さまに手渡す。
彼女は内容を確認し、一つ頷くと、こちらに顔を向けた。
「はい、確かに確認しました。特典の内容も、特に問題とするところはありません。このまま転生させますが、よろしいですか?」
その問いに頷くと、立ち上がるように言われた。
俺が立ち上がると、足元に魔法陣が出現し、回り始める。徐々に回転数が上がり、それに伴って眩しい光が発生する。
眩しさに目を細める俺に女神さまから声がかけられる。
「あなたの今までの生活の様子はこちらで確認していました。つらかったかもしれませんが、これからは自分の思った通りに行動することができます。後悔がないような人生を送ってください」
俺も、声を掛ける。
「ありがとうございました。俺にとって、あの家は居心地が悪かったので、転生させてもらえると知って、嬉しかったです。何から何まで、ありがとうございました」
「そこまで言わなくても大丈夫ですよ。……そろそろですね。それでは、来世のあなたが歩む道に、幸多からんことを」
女神さまのその言葉を最後に、俺の意識は暗転した。
こうして、俺は『トリニティセブン』の世界へと転生した。
読了ありがとうございます。またしても新作の投稿を始めてしまいました。ほんと何やってんだよ自分……忙しいのに三作品も書こうとしてます。前書きでも書きましたが、一月に一話、どれかを必ず投稿しようと思います。あと、不定期ですので、一つの作品にかかりきりで、更新されないこともあると思いますが、気長に待っていてください。
至らない点も多いと思いますが、頑張って書いていきたいです。感想をいただけたら励みになります。誤字脱字の指摘や、アドバイスでも何でもいいです。活力になるので、どんどん送ってください。ただし、批判は私がつらくなるだけなので、やめてください。面白くないと思ったら、すぐに読むのをやめていただいて構いません。
よろしくお願いします。