トリニティセブン~魔王候補と学園最強~   作:双剣使い

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 どうも、双剣使いです!今月は、筆が進んだので、トリニティセブンの方を更新します。
 とりあえず長いですが、話はあまり進みません。それでも言い方は、読んでいってください。


魔王候補~前編~

 

 俺は、とある場所で少女と二人、椅子に座って喋っていた。

 周りにはたくさんの本が棚の中に並んでいることから、図書館だと分かる。俺が通っている学校の図書館だ。

 そんな場所で、俺の正面に座っているのは金に輝く髪をツインテールした少女だ。彼女は、高校生とは思えないほどの色気を持っている。特に、話の最中に足を組みなおす仕草には、目を引き付けられる。男子ならば仕方ないが、彼女とそれなりに長く付き合ってきた俺からしたら、彼女のこの行動は見慣れたものだ。一緒に行動し始めたときは、彼女のそういった行動に戸惑っていたのだが。慣れとは恐ろしいものである。

 

 

「ちょっと、話聞いてるの?」

 

「……あぁ、悪い、聞いてなかった」

 

 

 考え事をしていたせいで、話の内容が全然頭に入っていなかった。それを咎めるような彼女に形ばかりの謝罪を返す。それに対して、彼女は不満げな顔をする。どうやら、真面目に聞いてくれないのが嫌らしい。

 

 

「分かった分かった。ちゃんと聞くから、そんな顔すんな」

 

 

 そう言うと、不満げな表情は変わらずとも、話は続けるようだ。仕方なしに聞く姿勢を取ると、彼女は再び口を開く。

 内容は、今までと大して変わらない。自分のテーマについてだ。俺は彼女から何度も同じような話を聞いている。彼女とは題材にしている書庫が異なる。ただし、現段階での話だが。

 正確には、彼女の目標だ。既に書庫とテーマを決めている俺たちは、それに基づいて魔術研究を行う。

 俺たちは、彼女の目標のために話し合い、実験を重ねてきたが、これといった成果は出ていない。

 

 しかし、今回の彼女は何か新しい方法を思いついたのだろうか。いつもより生き生きとしている。

 

 その手段が気になり、聞いてみる。

 

 

「また何か思いついたのか?毎度思うが、よくもまぁそこまで諦めずに実験するよな」

 

「あたりまえよ。≪停滞(スタグナ)≫が私の研究テーマだってことはダーリンだって知ってるでしょう?だから、私はあきらめないの」

 

「あのなぁ……、俺のことをダーリンって呼ぶなと何度言ったらわかるんだ……」

 

「えー、別にいいじゃない。既に共同作業なんて終わらせちゃってるんだから、夫婦と同じ間柄よ。私がダーリンって呼ぶんだから、悠斗も私のことはハニーって呼んでいいのよ?」

 

「誰がそんなこっぱずかしい呼び方するか。それに、誤解を招くような言い回しするな。俺がお前のサポートしてるだけなんだ。共同作業とは言わねぇだろ」

 

 

 この場にいるのは俺と彼女の二人だけなのでいいが、他人————特にこの手の話題に免疫のない純情ティーチャーに聞かれたら俺たちは揃って焼却炉に叩き込まれるだろう。顔を赤らめ、破廉恥だ不潔だなどと叫びながら拳銃を錬成し、ぶっ放そうとする彼女が居ないのは幸いだ。

 

 とにかく、彼女の意思の確認はできた。なら、後は実験が成功するように手伝うだけだ。

 そう意識を切り替えた俺は、手伝うために必要なことを確認する。

 

 

「まぁその話はあとでしよう。今は、次の実験に向けての話をするぞ」

 

 

 彼女も、引き際は心得ている。素直にうなずいて説明を始める。

 

 

「ええ。今回使うのは————“魔王因子”」

 

「はぁ?!」

 

 

 その単語を聞いた瞬間、俺は素っ頓狂な声を上げていた。それほどまでに彼女の口から出た単語は衝撃的だった。

 

 “魔王因子”。魔王候補と呼ばれる凄腕の魔導士が保有しており、適応した者の魔力は膨大なものとなる。それこそ、過去に存在した魔王と同等だと言われる。しかし、魔王候補自体、現れることは滅多にない。ほんの一握りの存在だ。さらに、その中で魔王因子を完璧に使いこなせる魔導士となると、10人にも満たないだろう。大抵は、その強すぎる力に振り回され、理性のない化け物へと変わるのが基本だ。魔王因子はその希少性にそぐわない絶大な力を持つと同時に危険性も持ち合わせているのだ。

 

 魔王因子は特別な手順を踏むことで体内に取り込むことはできる。だが、魔王因子は先天的なものだと言われている。なぜなら、適性のない魔導士が取り込んでも、力の強大さに振り回されるだけで、そこに理性は存在しないからだ。俺たちが通う学園の学園長が言うには、過去に多くの魔導士が魔王候補から因子を奪い、体内に取り込んだことがあるらしい。しかし、彼らは例外なく化け物————魔物へと変貌したらしい。

 魔物は例外なく討伐される。つまり、暴走の先にあるのは死だ。

 しかし、魔王因子を取り込むための儀式の手順はほとんどが分かっていない。古い本には、魔王因子を取り込むための儀式手順について記した項目があるらしいが、その部分は破り捨てられたように、存在していない。ただ、破られたと思われるページの数から、かなりの手順を踏まなければいけないことは分かっている。

 

 では、何故彼女は形の残っていない失われた秘術(ロスト・ミスティック)に手を出そうとしているのか。それは、唯一判明している、魔王因子を取り込むための条件を満たせるからだ。その条件は————

 

 

「えぇ、分かっているわ。魔王因子を体内に取り込んだ後、同じく魔王因子を持った魔王候補、もしくは魔王自身から魔力をもらうこと」

 

 

 と言うことだ。俺の表情から察したのだろう。改めて確認する。

 

 普通の魔導士が聞いたら、何をばかなことをと一蹴するだろう。彼女がやろうとしていることはそれだけのリスクがある。

 まず、魔王因子を制御化に置いた魔導士がそう簡単に見つからないこと。そして、仮にそのような魔導士を見つけ、魔力を貰ったとしよう。だからと言って、簡単に魔王因子を制御できるようになるわけではない。譲り受けた魔力を自身の魔力として最適な形に変え、その魔力でもって魔王因子を使いこなせるようになる。口では簡単に言えるが、実際はそんなに簡単ではない。

 しかし、彼女が自信満々にやると宣言したのには理由がある。それが俺————神崎悠斗の研究するテーマだ。

 

 俺が研究しているテーマの一つに、転生特典でもらった一方通行の能力であるベクトル操作を応用した魔力制御がある。相手に触れることで、体内の魔術回路を破壊することができる。ならば、その逆である魔力の制御も可能なのだ。

 そして、俺はこの学園において、最強と呼ばれている。自惚れるわけではないが、周りの知り合いには規格外だと言われる。そして、魔王因子も持っている。それも、俺の魔術を応用して取り込もうとしている彼女と違い、天然の魔王候補だ。

 これが彼女が自信満々だった理由。目の前に座る俺が条件達成の塊だからだ。

 

 まぁ彼女の考えは俺と同じようで、このことを伝えられる。

 正直なことを言うと、反対だ。彼女にそんな危険な橋を渡ってほしくないし、彼女が魔物になった場合、消滅させるのは俺の役目になる。それだけは勘弁してほしい。

 

 

「なら、悠斗が私に魔力制御のコツを教えてくれれば解決よ」

 

 

 そう返された。

 確かにそうなのだが、俺と彼女では、研究テーマはもちろん、書庫も異なる。

 本来、魔導士は一つの書庫、一つのテーマしか扱うことはできない。魔王候補である俺は既に二つの書庫を持っているが、それは魔王因子を使いこなせるからだ。使いこなすために複数の書庫を持つのは手順が逆なのだ。

 

 それらを理由に断ろうとしたが、彼女の真剣な目を見て口に出すのを止める。普段の彼女はからかったり、誘惑してくるが、魔術研究では、真剣になる。

 そんな彼女を見て、俺は諦めた。

 はぁー、とため息をつきながら口を開く。

 

 

「分かった。お前の研究への思い入れは理解しているつもりだ。そんな真面目な顔されたら断れねぇだろ」

 

「ふふ、よろしくね でもぉ、私のお願い聞いてくれるのに、夜のお願いは聞いてくれないのは何でなのかしら?」

 

「それとこれとは別だろ。どころか、夜のお願いなんて聞かねぇからな」

 

 

 彼女のからかいに軽く返しながら、彼女に魔力操作を教えるために立ち上がる。

 

 お互いに立って向き合ったところで、左のポケットに手を突っ込み、中から黒色のチョーカーのようなものを取り出す。言わずもがな、一方通行の電極だ。この世界では、チョーカー型の魔導書になっている。

 

 学園に入学する前、この世界での生家で見つけたものだ。転生特典のオマケだと考え、入学時に持ってきたところ、諸事情で学園長に魔導書を見せる機会があり、彼の口から、このチョーカーが世界に存在する高位の魔導書の一つのルルイエ異本だということが判明した。なんでも、名称と形だけわかっており、どこにあるのかは一切分かっていなかったらしい。

 

 チョーカーを首につけると、俺の体から魔力があふれ出す。普段は、別の魔導書によって魔力の流れを制御しているが、テーマ研究の分野では、こちらの方が向いている。

 スイッチを押し込むと、溢れていた魔力が収まる。

 

 

「ホント、いつ見ても安定した魔力操作ね。それも研究の成果?」

 

「いや、これは研究じゃねぇ。俺自身の意識だけだ。ま、これからお前に教える魔力操作は、研究に基づくやり方だ。比較的やりやすいはずだ」

 

「それでも比較的って……。私の書庫とは違うんでしょう?そう簡単にできないと思うんだけど」

 

 

 なんだかんだ言っても、彼女も一人の少女だ。不安になるのもわかる。が、今はそんな弱音を吐いている暇はない。彼女の不安を取り除くために口を開く。

 

 

「大丈夫だ。そこまで難しいことをやるわけじゃない。それに、自分のために止まるつもりはないんだろう?トリニティセブンの一人なら、泣き言言わずにやって見せろ。それに————」

 

「それに?」

 

「これができたら、ダーリン呼びを認めてやらんことも無い」

 

 

 その言葉に呆けていたが、意味を理解したのだろう。俄然やる気を出す。

 

 

「今の言葉、確かに聞いたわよ。後から取り消しは不可。いいわね?」

 

「あぁ、問題ない。ま、できたらの話だがな」

 

「なっ!?……いいわ、やってやろうじゃない。すぐにマスターして、悠斗をダーリンって呼ぶわ!」

 

 

 ……どうやら焚きつけ過ぎたらしい。まぁ構わないか。

 

 

「〝傲慢(スペルビア)〟の〝書庫(アーカイブ)〟に接続。テーマを実行する」

 

 

 その瞬間。再び、魔力の奔流が吹き荒れる。しかし、先ほどとは違い、垂れ流しの状態ではない。テーマを実行することで、魔力を制御しているのだ。

 

 目の前の彼女は、風で乱れる髪もそのままに、やる気を見せていた。ならば、こちらも全力で臨むとしよう。

 

 

「んじゃ、まず最初は————」

 

 

 いつしか、その光景は光に包まれて、消えていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「悠斗さん!起きてください、悠斗さん!すごいことが起きてるんですよ!」

 

 

 ドンドンと、扉をたたく音で目を覚ます。

 

 洋風な作りの個室。置かれているのは、木製の勉強机。それと、簡素な部屋にはあまり似つかわしくない大きいベッド。本来なら一人が寝れるサイズで十分なソレは、二人で寝るのにちょうどいいサイズだ。

 ふと、横に目をやる。高校生ぐらいなら、もう一人が寝られそうな空間が、壁側に空いている。懐かしい夢を見たからだろうか。その場に彼女が居ないことを改めて確認すると、胸が痛んだ。

 俺が寝ている間に勝手に部屋に入ってきて、朝起きたら隣で幸せそうな寝顔をしていた彼女。彼女が俺たちの前から居なくなって直に半年。彼女が居なくなったという現実を確認するたび、胸の痛みは増すばかり。彼女の考えは知っているし、行方をくらました理由も大体予想がつく。最初こそ気にならなかったが、最近は思い出してばかりだ。

 

 

「悠斗さん!起きてくださいよ!すごいことが起こってるんですって!」

 

 

 外から呼ぶ声で、意識が戻ってくる。その声は聞き覚えがある。クラスメイトだ。普段から元気な彼女の事なので、凄いことだと言われてもピンとこない。常にすごいです!と騒いでいるからだと思うが。

 だが、部屋の前で大声をあげられるのもあまりいいものでもない。

 

 

「ったく……うるさいな……。こっちは寝起きだぞ!」

 

 

 ドアのカギを開け、ドアの前に立っていた少女にそういう。

 

 立っていたのは、金色に輝く髪をツインテールに結び、本来ならカチューシャがあると思われる場所には、逆ナイロールという種類の眼鏡をかけている少女。彼女の名前はセリナ=シャルロック。新聞部に所属しており、カメラとメモを常に持ち歩き、スクープを見つけては記事にしている。彼女を見ると、夢に出てきたアイツの顔が浮かぶ。その顔が目の前のセリナに重なって、胸の痛みがさらに増したように思えた。

 

 

「あ……す、すみません……。で、でも、本当にすごいことが起こってるんですよ!これ見てください!」

 

 

 痛みをこらえようとして顔をしかめたためか、怖がらせてしまったらしい。だが、セリナは少々涙目になりながらも、本来の目的を思い出したのか、気丈にも声を張り、手に持っていたA4サイズの紙を突き出した。

 突き出された紙を受け取って見ると、新聞だった。しかも、編集者はセリナ。

 彼女の場合、ちょっとでも面白そうなことがあると記事にするため、今回もその類だと思い、軽く目を通そうとして————見出しの部分でいきなり目が留まった。

 

 その記事の見出しは、号外と銘打たれており、魔王レベルの魔力を持った転校生がやってくると書かれていた。

 

 一体どういうことかという意味を込めてセリナに目を合わせると、「まぁとりあえず読んでみてください」と目線で言われた。

 記事に目を落とす。そこには、転校生と思われる男子の顔写真が貼られ、その他にはこの学園に来ることになった経緯などが書かれていた。

 記事を半ばまで読み進めたあたりで、再び目が留まった。俺が目を付けたのは、「魔王候補」と「世界構築」という二つの言葉だ。

 驚きと共にセリナを見ると、俺の驚愕している理由に察しがついているのだろう。誇らしげに胸を張ってドヤ顔していた。それにはイラッとさせられるが、そうも言ってられないようだ。

 

 

「ちょっと待ってろ、制服に着替えてくる。その後に詳しい話を聞かせてくれ」

 

「分かりました!外で待ってます!」

 

 

 とりあえず話を聞かないことには始まらないという結論にたどり着いた俺は、学園に行くための準備の後に話を聞くことにする。それをセリナは快諾し、廊下で待っていると言ったので、素早く制服に着替え、ベッドの横の壁に立ててあった、現代風な杖を手にすると、部屋を出る。

 

 これから先起こるであろう面倒ごとや、それを押し付けようとしてくる学園長(クソ眼鏡)の顔をちらつかせながら。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 廊下で律義にも待っていたセリナから話を聞きながら教室へと向かった。セリナはすれ違う学園の生徒たちに新聞を手渡しながら、現在彼女が知っている話を聞かせてくれる。なんでも、数日前に観測した重力振動————俺たちが崩壊現象と呼んでいる————の発生地へと、俺たちのクラスの担任が調査のために向かったらしい。しかし、着いてみると、被害にあったとは思えないような、何の変哲もない町並みが広がっていたらしい。崩壊現象は、発生と同時に周囲のものを全て粒子に変えて吸収する。無機物も有機物も関係ない。すべてが無になってしまう。当然、人もそうなる。だから、町があり、人が存在しているのは明らかに異常だ。

 それに気づいた先生は、これが魔術によって作られた世界なのではないかと仮説を立て、調べたところ、原因がとある少年にあると知ったらしい。それが今回やってくる転校生らしい。名前は春日アラタというらしい。

 アラタは、自分が夢の世界を作った自覚がなかったようで、先生がそれを教え、処遇を検討する際に、アラタがここ、王立ビブリア学園に入学することを決めたらしい。先生は最後まで渋っていたようだが……。

 まぁ、話を聞けたのは大きい。

 

 

「なぁ、その転校生は魔導に関しては全くの素人なんだろう?何でそんな奴が世界構築なんて大それたことをできたんだ?」

 

「さぁ……私も噂を聞いただけなのでよく分かんないんですけど、何でもスッゴイ高位の魔導書を持っていたみたいで、転校生の願いを勝手に叶えたとか言われてますよ」

 

「ふーん、高位の魔導書ねぇ……。一般人が持ってるなんて考えられないんだけどなぁ」

 

「そう言う悠斗さんだって、強力な魔導書を二冊も持ってるじゃないですか!それに、悠斗さんの部屋から出てきたんでしょう?そっちの方が驚きますよ」

 

「ん……まぁな」

 

 

 確かにそう言われたらそうだと答えるしかないが、自分が転生者だということを考えれば当然だと思える。言っても信じてもらえないかもしれないから言わないが。

 

 

「あ、忘れるところでした!」

 

 

 唐突にセリナが大きい声を出し、周りの生徒たちから注目を集める。あまり注目を集めるのは嫌なのだが、興奮しているセリナは、周りの状態なんて見えていないのだろう。

 思わず思考が表情に出てしまったが、セリナはまったく気にしていないのか、続ける。

 

 

「悠斗さんも確か魔王候補でしたよね?世界構築とかはできるんですか?」

 

 

 いきなりぶっこんできやがった。そりゃ確かに俺がビブリア学園に来た時から〝魔王候補〟や〝魔王に最も近い魔導士〟などと呼ばれている。あのムカつく学園長が俺のことを生徒たちに吹聴したからだ。それのせいで面倒な後輩に声を掛けられ、とある職務に就いたのだが、どちらかと言えば、そういう風に呼ばれるのは嫌だと感じている。

 

 

「あ……すいません。そう呼ばれるの嫌でしたよね……」

 

 

 表情に出ていたのか、ようやく自分の暴走に気づいたらしいセリナが申し訳なさそうな顔で謝ってくる。さすがに、俺も罪悪感を感じてしまう。

 

 

「あぁ、悪い。別に怒ってるわけじゃねぇんだ。確かにその呼び名は嫌だが、セリナに対して怒るのは違うからな。悪いのはあることないこと言ってた学園長だろ。だから、そんな泣きそうな顔しないでくれ。アイツに知られたら俺が殺される」

 

「……そうですよね!お姉ちゃんだったら、私を泣かせたって理由で悠斗さんに襲い掛かりそうですよね」

 

 

 セリナのその言葉で、夢で見たアイツのことを再び思い出してしまい、胸の痛みに顔をしかめる。

 そう言って笑っていたセリナだが、俺が顔を歪めているのに気づくと、焦って弁解を始める。

 

 

「あ……すいません……。お姉ちゃんのことは……」

 

「あぁ、気にしないでくれ。確かに、ときどき思い出してつらくなることはある。けどさ、アイツは実験に失敗していたとしても、何食わぬ顔で俺たちの前に帰ってくるんじゃないかって思うんだ。なんなら、悪の魔導士よ、とか言いながら襲撃を掛けてきそうなんだよなぁ……魔力貰うわよって」

 

「ふふっ、確かにそうかもしれませんね」

 

「あぁ、だからセリナがアイツのことで色々考える必要はねぇよ。どうせひょっこり帰ってくる」

 

「はい……あの……ありがとうございます。そう言ってもらえると気が楽です。それに~」

 

「ん?どうした?」

 

「いえ、私としてはいいことが聞けたなぁ~って」

 

「?いいこと?」

 

 

 俺の問いに、セリナは悪戯っぽく笑い、答えた。

 

 

「はい!お姉ちゃんは、悠斗さんからこんなにも想ってもらえているんだなって」

 

「なっ……//はぁ……そういうことにしといてやるよ……」

 

「いいなぁ~お姉ちゃん。こんなにもカッコいい人から大切にされてるんだもん。あ!悠斗さん!このこと記事にしてもいいですか?!」

 

「あ?いいわけねェだろうが」

 

「ぴゃぁぁ!」

 

 

 ニヤニヤと笑いながら煽ってくるので、ちょっとすごんでみると、奇妙な声を上げながら飛び上がった。

 

 

「うぅ……ごめんなさい……」

 

「ったく……話を脱線させやがって……。さっさと噂の転校生とやらについて教えてくれ」

 

「いえいえ!話脱線させるきっかけ作ったのは悠斗さんですよね!?」

 

 

 隣でギャーギャー騒ぐセリナと共に、俺は自分の教室へと歩いていく。やってくる転校生————春日アラタについて考えながら。そして同時に、その青年が数多くの厄介ごとを持ってくるだろうと言う、根拠のない確信を抱きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 読了ありがとうございます。
 では謝辞を。本来だったら、この話の中で転校してきたアラタと学園長室の前で会い、レヴィも交えて会話するところまで持っていきたかったのですが、最初の回想シーンが長すぎて、かなりの字数を取ってしまったので、前半と後半に分割することになってしまいました。読みづらいとは思いますが、ご了承ください。まぁリーゼ登場(ただし夢の中)ですし、別に構わんだろう?
 私の他の作品の最新話も、少しづつ書いています。もうしばらくお待ちください。感想や、指摘など送っていただければ、糧にして成長していきたいと思っています。よろしくお願いします。では、また次回の更新でお会いしましょう!


 最後に一言。リーゼとセリナの口調これでよかったっけ……?
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