トリニティセブン~魔王候補と学園最強~   作:双剣使い

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 お久しぶりです。双剣使いです。何とか二月中に二話投稿することができました。38度の熱を出して寝込みましたが、何とかなってよかった……

 ちなみに、今回無茶苦茶長いです。駄文です。書きたいことをダラダラ書いているとこうなるっていう模範例ですね。長くてもいいよって方は本編へどうぞ!


魔王候補~後編~

 

 

 王立ビブリア学園の二年生の教室で俺は、教室の窓際にある自分の座席から、空を見ていた。半年ほど前、俺の仕事の相方が行方不明になってから、一人の時は常にこうしている。それまでは、相方だった少女が常に隣の席に座っており、やたらと話しかけてくるため、会話はしていた。俺に話しかけてくるアイツは、まるで飼い主に懐く犬のようだった。本人が聞いたら怒りそうだから直接言うことはないが。まぁそのおかげで、話し相手は相方か、セリナに限られていたが。

 そもそも、話し相手が二人しかいないこともおかしいのだが、転入初日に俺が魔王候補だと学園長が言いふらしたため、ほとんどの生徒が近づかなくなるのは、すぐだった。最初こそ、興味本位で話しかけてくる生徒が居たのだが、徐々に俺が才能を開花させ、魔力量が増大するのを見た生徒たちは距離を置くようになった。そのうえ、俺の能力の一部を高く買われ、崩壊現象に対抗する組織の次席官に選ばれたことが拍車をかけ、俺に話しかけてくるもの好きはいなくなった。それこそ、組織の同僚か、セリナぐらいだろう。

 

 まぁこれが今の俺の現状だ。セリナは、他のクラスメイトと談笑している。別にそれでいい。アイツは、俺と違って社交性が高いし、提供できる話題の数も相当だ。俺みたいな特定の分野にしか強くないやつとは話さない方がいい。

 

 時刻はそろそろHRが始まる時間だ。担任の先生が来るのを待つ。

 

 待つこと数分。腰まで伸びた赤い紙を靡かせて、担任の浅見リリス(先生)が扉を開けて入ってきた。後ろには、学園指定の男子制服に身を包んだ少年が付いてきている。

 

 

「皆さん、席に座ってください。HRを始めます」

 

 

 リリス先生の言葉で、立って話していた生徒たちが一斉に席に座り始める。リリス先生は俺らと同い年だが、既に教師としてこの学園に在籍している。彼女の言葉にクラス全体が従っているのは、全員が彼女の実力を認めているからだろう。

 

 リリス先生はクラス全員が着席したのを確認すると、講義を始める前に連絡事項があると言い、転校生の説明を始めた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「————というわけで、転校生の春日アラタさんです」

 

 

 生徒たちがワイワイと騒ぐ中、リリス先生の説明が終わった。正直なところ、魔王としての素質があるようには見えなかった。まぁ外見から判断しただけだ。実際に話してみないことには分からないだろう。

 そして、件の転校生————春日アラタはリリス先生のことを「お前」呼びしたため、注意を受けていた。

 

 

「はいはーい!質問ですっ!!」

 

 

 どうやら、今は彼についての質問を受け付けているらしい。クラスの誰もがためらう中、真っ先に手を挙げたのは、やはり、セリナだった。

 リリス先生は彼女を指名する。

 

 

「はいセリナさんどうぞ」

 

「好みの女性はどんなんですか?」

 

 

 いきなりお前は何を聞いているんだ。

 

 

「胸のでかい人だな」

 

「うわっ直球だっ」

 

 

 即答かよ。あと、それかっこよく言うところじゃないぞ。

 

 

「まあなくても愛せると思うが」

 

「しかも微妙なフォロー来た!!」

 

 

 どっちつかずかよ。

 

 

「後は顔が良ければいいよ」

 

「ぶっちゃけ女の敵ですね。了解しましたっ」

 

 

 訂正。ただのクズだったようだ。

 

 

「コホンッ。気が済みましたか? では————」

 

 

 セリナと春日アラタの漫才のようなやり取りをリリス先生が中断させようとした瞬間。

 

 

「魔王クラスにしかできない〝世界構築〟をしたって本当ですか?」

 

 

 セリナの口から、今日一番であろう爆弾が投下された。

 知られていないと思っていたのだろうか。リリス先生の顔が驚愕に変わった。

 

 

「ああ……あれくらい誰でもできるんじゃないの?」

 

「ちょっ……アラタ!?」

 

 

 セリナの書いた記事の通り、魔導に関してはただの素人のようだ。もし魔導に精通していたら、今の発言はしないからな。

 

 

「おお————!!本物だー!!」

 

「魔王候補キタ————!!」

 

 

 だがそれでも、生徒たちの注目を簡単に集められたようだ。みんな立ち上がって大騒ぎである。授業なんて始められなさそうだ。まぁこの学園に通っていれば、世界構築がどれだけすごいのかはわかる。しかも、魔王候補だって滅多に現れる存在じゃないしな。リリス先生を除けばこのクラスでは二人目の魔王候補だ。

 

 春日アラタは何故騒がれるのか分かってないようだし、リリス先生は頭を抱えている。リリス先生、お疲れ様です。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「はぁ……本日も晴天なり」

 

 

 俺は、授業が終わるのと同時に教室を出て、校内を徘徊している。

 

 教室では、授業の終了と同時にリリス先生が春日アラタを連れて学園長の所に向かった。話題の人物がいないから静かだろうと思っていたらそんなことはなく、生徒たちは皆春日アラタについて(正確には魔王候補であることについてだが)騒いでおり、うるさいから抜け出してきた。断じて教室に友人が居ないとか、知り合いのセリナも他のクラスメイトと話し込んでたからとかじゃない。気分だ、気分。

 

 誰にともなく独り言を呟いていると、不意に視線を感じた。周りを見ても人影は一切ない。ということは、上だ。

 

 

「おや、自分の気配に気づいたっスか。さすがは魔王候補筆頭の悠斗さんっスね」

 

 

 校舎の天井にポニーテールの少女が張り付いていた。しかも、漫画でよく見る、忍者が壁に擬態するときに使う布のようなものまで持っている。

 

 

「……何してんだ?レヴィ」

 

 

 少女は、俺の問いに答える代わりに、「よっ」と天井から一回転して目の前に降り立った。

 彼女の名前は、風間レヴィ。外見的特徴を挙げるなら、ポニーテール、前髪で左目が隠れている、マフラー(?)をしているの三つだろう。そして、彼女曰く忍者らしい。

 確かに、天井に張り付いたり、気づいたら俺の部屋の中に侵入しているから、忍者と言えばそうかもしれない。リリス先生に質問したところ、学園では様々な分野について学べる環境があるから、レヴィのような忍者が居てもおかしくないそうだ。

 忍者の基礎とも言える忍術のほかに、様々な魔術を扱う、世界で五指に入るほどの実力者だ。そして、王立ビブリア学園の魔導の頂点であるトリニティセブンの一人だ。司るのは≪嫉妬≫。テーマは≪期待≫だったはずだ。

 俺がこの学園に入学してすぐに話しかけられたから、それなりに長い付き合いだ。

 

 

「何って……悠斗さんを待ってたんスよ。聞きたいこともありますし」

 

「聞きたいこと?」

 

「えぇ、今日新しく転入してきた魔王候補さんについてっス。悠斗さんと同じクラスでしたし」

 

「別にいいが……それよりも他の理由があって待ってたんだろ?大体予想はつくが……」

 

「多分、悠斗さんが考えてることで間違ってないスよ。転入生さんが学園長室にいるらしいので、会いに行きませんか?」

 

「別にいいが……あいつについて知ってることなんてほとんどないぞ?」

 

「大丈夫っスよ。悠斗さんの所感と、自分の目で確かめたことを照らし合わせるためなんで」

 

 

 そう答えるレヴィと並んで学園長室に向かって歩き始める。

 歩きながら、春日アラタについて今現在知っていることを伝える。

 彼には魔術の知識がほとんどないこと。それでも世界構築ができたことから、魔力が普通の魔導士よりも多い、もしくは所持している魔導書がよほど有名であることのどちらかが予想される。思春期の男子らしく、欲望に素直であること。

 それを聞いたレヴィが一言。

 

 

「転校生さんはともかく、悠斗さんに性欲ってあるんスか?」

 

 

 とりあえずレヴィの頭を軽く小突いた。

 

 

「自分が誘惑しても悠斗さんは全然興味を示さないじゃないっスか」

 

 

 おかしな結論に至った理由を聞いたところ、そんな答えが返ってきた。まったく、失礼な奴だ。

 

 

「別に性欲が無いってわけじゃねぇ。ただ、お前のことは仲のいい異性の友人として見ているからな。それに、今はアイツのことが忘れられねぇから、当分は女子と深い仲になることはねぇな」

 

「ま、自分もそのあたりは弁えてるっスよ。悠斗さんにとっての一番はリーゼさんでしょうけど、自分は諦めてないっスよ。ちゃんと悠斗さんに女性として見てもらえるようにするんで」

 

「……それはいいが、色仕掛けなのは方向性が違くないか?」

 

「別にいいんスよ。リーゼさんが戻ってくる前に既成事実を作っておけば自分が悠斗さんの正妻になれるんで」

 

「お、おう」

 

 

 ストレートにそう言われるとこっちまで恥ずかしくなる。多分俺の顔は赤くなっているだろう。レヴィ自身も平静を装っているが、耳が少し赤くなっているのを俺は見逃さなかった。

 好意をここまでぶつけてくるのはリーゼとレヴィだけだ。まぁ二人が一番付き合いが長いからそういった感情を向けられているのには気づいていた。ましてや、リーゼに至っては寮の部屋が同じだ。彼女の誘惑を躱すのも楽ではない。

 

 

「ま、悠斗さんの性欲は今は置いといて、転校生さんの話をしましょう」

 

 

 レヴィに促され、春日アラタという少年について改めて考えてみた。先ほども言ったように、今は大きすぎる魔力に振り回されているだけだが、すぐに使いこなすようになるだろう。そうでなければ、元一般人の転入をあの学園長が認めるわけがない。まぁあの学園長のことだ。「実に面白そうじゃないか」とか言って勝手に入学を認めた可能性もあるが……。

 そして何より、彼が持っている魔導書はそこらの魔導書とは一線を画すだろう。なんせ、世界構築を自分の意思で行うのだ。かなり高名な魔導書だ。

 

 

 春日アラタについての考察をレヴィとしながら歩いていると、いつのまにか学園長室の前に着いていた。

 扉は締まっており、中には複数人の気配が感じ取れるので、まだ中で話しているのだろう。

 そのことをレヴィに伝えると、「じゃあ自分は天井に張り付いて身を隠すっス」と言って天井にジャンプすると、布のようなもので姿を隠した。大方、アラタがレヴィの存在に気付けるかどうか調べるのだろう。

 俺も特にすることが無いので、制服の上着の内ポケットに入れておいた拳銃を取り出し、解体、組み立てを高速で行う。普段は銃を使わないが、魔術よりも使い勝手がいい。魔術を発動させる前に懐から抜いて狙撃できるからだ。

 しかし、この学園では俺以外に銃を使う生徒はいない。一応、俺らのクラス担任のリリス先生は銃器を扱うが、彼女は≪錬金術≫で錬成した銃であり、魔術によって作られたものを使うため、常に携帯することはない。その点、俺の方が緊急時に即座に対応することができる。定期的にメンテをする必要があるが、知識さえあればすぐなので、そこまで苦ではない。

 それに、この学園に転入してきてから気づいたことだが、生徒たちは皆魔導士であるためか、銃器や刀剣などを軽視しがちだ。刃物も、儀式に使うナイフなどが主で、武器として剣を扱っているのは、俺の知る限りレヴィだけだ。銃器も、使用している生徒はおらず、俺以外だとリリス先生。

 だが、俺と彼女では銃の使用目的が異なる。彼女が弾に魔術的効果を付与した魔弾を使うのに対して、俺が使用するのは魔術の付与されていない実弾だ。所属していた組織の仕事内容上、魔弾のほうが効率はいいが、わざわざ魔術効果を付与するのがめんどくさい。そのうえ、俺の研究テーマは魔弾以上の魔術を行使できるため、護身用として持っている。

 そうやって時間をつぶしていると、学園長室の扉が開かれ、中からリリス先生と春日アラタが出てくる。

 

 何かあったのだろうか、リリス先生は溜息を吐きながら春日アラタに小言を言っている。

 

 

「「あ」」

 

 

 その小言から逃げるように目を背けた春日アラタと目が会い、お互いに間抜けな声を出してしまう。

 

 

「あら、悠斗さんではないですか」

 

「……なぁリリス……悠斗って」

 

「ん?俺の事なんで知ってるんだ?」

 

「あぁ……さっき学園長が言ってたんだよ。魔王候補は俺以外にもいて、そいつはこの学園の頂点のトリニティセブンのうちの半数を手籠めにしてるんだって。で、名前が神崎悠斗」

 

 

 あのクソ眼鏡、勝手なこと言いやがって。てか、いつ俺がトリニティセブンのメンバーを手籠めにしたって言うんだ。後でじっくりと話を聞く必要がありそうだ。

 

 

「言っとくけどそれあの学園長が勝手に言ってるだけだからな?信じる必要なんてねぇからな」

 

「お、おう」

 

 

 ちょっと怒りが顔に出ていたか。引いてるようだ。

 

 

「まぁいい。名前は聞いてるだろうが、神崎悠斗だ。一応同じクラスだ」

 

「春日アラタ。アラタでいいぜ」

 

「ん。じゃあ俺のことも悠斗でいい。よろしくな、アラタ」

 

 

 そう言って右手を出すと、アラタも手を握ってきた。

 

 

「よかったです。アラタにも男性の話し相手ができて」

 

 

 ちょうどリリス先生が話しかけてきた。

 

 

「まぁ俺も教室で普段一人だからな。話し相手が居るのはいいことだ」

 

「それは悠斗さんが周りに積極的に話しかけないからなのでは……?」

 

 

 先生が何か言っているが無視だ。

 

 

「ところで、悠斗さんは何故ここに?学園長に用事でもありましたか?

 

「いや、あのクソ眼鏡に用はねぇよ。あるのは、アラタだけだ」

 

「俺?」

 

「そう、お前」

 

「まぁ確かにアラタはかなり特殊な事例ですけど……悠斗さんが他人に興味を持つなんて意外ですね」

 

「リリス先生……先生の中で俺がどういう人間だと思われてるかはこの際置いておきます。まぁ他人に興味が無いことは否定しませんが、今日ここに来たのはレヴィに誘われたからですよ」

 

「あぁ……確かに彼女ならアラタに興味を持つ可能性が高いですね」

 

「なぁリリス……レヴィって誰だ?」

 

「あぁ……レヴィさんというのはですね————」

 

「自分ならここにいるっスよ」

 

 

 説明しようとした先生の声を遮って、天井から声がかけられる。

 その声にアラタが天井を見上げ、リアクションに困ったような顔をする。そりゃ天井に人が張り付いてたらそうなるわな。

 

 

「よっ」

 

 

 俺の時と同じように、一回転して着地するレヴィ。

 

 

「すげえ……忍者だ」

 

「凄いでしょう?」

 

 

 驚くアラタにドヤ顔のレヴィ。彼女は立ち上がると自己紹介を始める。

 

 

「初めまして、アラタさん。忍者やってる風間レヴィっスよ」

 

「あれ……魔導士なんじゃねぇの?」

 

 

 レヴィの自己紹介に疑問を覚えたようで、不思議な顔をしている。

 

 

「この学園には様々な魔術を学べる環境がありますから」

 

「なるほど……」

 

「忍術も占星術もオーラ診断も房中術も、みんな魔術っスよ?」

 

「ぼっ……」

 

「ストップだ、レヴィ。リリス先生の許容範囲超えるぞ」

 

「おっと……からかいすぎたっスかね」

 

「房中術って何だ?」

 

 

 どうやらアラタは知らないらしい。だけど————

 

 

「アラタ、世の中には知らなくてもいいことがあるんだ」

 

「?まぁいいけど」

 

 

 これ以上下手なこと言うとリリス先生に怒られそうだしな。

 

 

「とっ……とにかくっ……」

 

 

 顔を赤くしたリリス先生は場の空気を入れ替えるため、コホンッと一つ咳払いをする。

 

 

「アラタ……この方が先ほど学園長がおっしゃったトリニティセブンのお一人です」

 

 

 どうやら学園長は、俺だけでなく、トリニティセブンのことについてもアラタに話したようだ。

 

 

「おお……なんか凄いんだっけ?オレにはよくわかんねーけど」

 

「……まあ転入したばっかりじゃわからなくて当然っスよね」

 

「なんかそれぞれの道のプロレベルなんだって?」

 

「そりゃもう凄いっスよ。なんせ自分忍者っスからね?」

 

「まじか!?」

 

 

 違うと思う。

 

 

「暗殺からエロい忍法までなんだってこなすっスよ?」

 

「エロいのもか!?」

 

「コラーっ!!」

 

「レヴィ、それ以上はやめとけ。アラタの目を見てみろ、既に野獣に変わってるぞ」

 

「わー、襲われるっス(棒)」

 

「二人ともひどくね?いくら俺でも……うーん」

 

「アラタ!?そこははっきり否定してくださいよ!!」

 

「でもこれが俺だからな!」

 

 

 何でちょっとカッコよく言うんだ。

 

 

「まっ、冗談っス。なかなかストレートで面白い人っスね」

 

「俺では普通にしているつもりなんだけどなぁ……」

 

「絶対におかしいです、アラタは」

 

 

 間違いない。

 

 

「そんなことより他の連中はどんななんだ?アンタとリリスは何となくわかるんだが」

 

 

 レヴィと先生以外のトリニティセブンのメンバーか……

 

 

「正直に言って、あんまりアラタとは会わせたくない奴らだな」

 

「?何でだ?」

 

「面倒なことになるんだよ。先生とレヴィ、あともう一人のメンバーはアラタと関わっても問題ないだろうが、残りの奴らが一癖も二癖もあるんだよ。特に面倒なのが、≪傲慢≫のトリニティセブン。アイツのテーマからだと、アラタは目の敵にされるだろうな」

 

「確かに……ミラさんはアラタのことを嫌っているでしょう」

 

「そのミラって奴……そんなにやばいの?」

 

「ああ……アイツの実力は先生以上だからな……おっと、噂をすればだな。外見てみろ」

 

「ちょうど検閲任務に向かうところみたいっスね」

 

 

 窓から下を見下ろすと、ビブリア学園の制服の上から白いローブを纏い、水晶玉を持った少女と、昔のスケバン風の格好をした女性が歩いている。

 

 

「先ほど名前の挙がっていた、純粋な能力だけならリリス先生の上を行く山奈ミラさんと、攻撃力だけなら他の追随を許さない不動アキオさんっス。破壊力でいったら悠斗さんと良い勝負だと思いますよ」

 

「アキオのあれは異常だからな」

 

「……なんかバトル漫画のノリだな……」

 

「ま、その辺は間違ってないな。実質、検閲任務なんて言っても、魔術で戦うだけだしな」

 

「やっぱり、最前線に出ていた人の言葉だと説得力があるっスね」

 

「それはレヴィだけには言われたくないな」

 

 

 と、こちらの視線を感じたのか、ミラとアキオはこちらを振り返った。杖を突いているのとは逆の左手を挙げて挨拶の意思を見せたのだが、ミラは不機嫌そうな表情で正面を向いて歩きだしてしまう。アキオはそんなミラに苦笑を浮かべ、こちらに手を振るとミラを追って駆けていった。

 

 

「ミラさん、相変わらずっスね」

 

「アイツも大概しつこいからな。ホント、困ったもんだ」

 

「納得してないんでしょう。ミラさんは悠斗さんのことを尊敬していましたから」

 

「俺が悪いみたいな言い方はやめてください、リリス先生。俺は所詮アイツの補佐でしかないんですから、そのまま第二席に昇格みたいなことはよくないでしょう。それに、アイツが居なくなったことに俺が関係しているとまで言う奴もいましたからね。さすがに犯罪者まがいの男を置いておくわけにはいかないじゃないですか」

 

「それはミラさんも分かってるんじゃないっスか?アキオさんの話だと、悠斗さんを辞めさせないようにミラさんも色々と頑張ってたらしいっスよ」

 

「そうか……だとしたら、ミラには悪いことしたかもしれねぇな」

 

「まあそこまで気にする必要はないでしょう。ミラさんなら割り切って行動できるでしょうし」

 

「お~い!俺を無視して知ってるメンバーだけで話を進めないでくれ」

 

「あ、すいませんアラタ」

 

「ってかホントに女ばっかりなんだな……」

 

「魔導は精神的、感情的なものの研究っスからね」

 

「男性は論理的、理屈的な思考が得意なせいか、なかなか魔術に浸透しないんですよ」

 

「なるほど……じゃあ何で悠斗はレヴィたちを手籠めにできるほどの実力があるんだ?」

 

「おい、勝手に俺がレヴィたちを誑かしたみたいに言うんじゃねぇ」

 

「でも彼女は確実に悠斗さんに好意を寄せてるようっスけど?」

 

「アイツは今関係ねェだろォが……とりあえず、アラタの質問に対する返答だが……お前と同じだよ」

 

「俺?」

 

「そ、俺もお前と同じ魔王候補って呼ばれてるんだよ。だから、魔力量も普通の魔導士たちとは格が違うし、行使できる魔術の威力も数も桁違いなんだよ」

 

「ですが、アラタや悠斗さんが何故魔王候補になれたのか、ということは未だに判明していません。噂では、永劫図書館にのみ存在すると言う魔王因子が体に宿ることで力を得ると言われていますが、永劫図書館に接続できたのは、私が知る限りでは一人しかいません。彼女もすでにここに居ませんし」

 

 

 そう言いながら、リリス先生は俺の方をチラリと見る。永劫図書館への接続。それは、アイツだけが成したこと。それがもとで追放されたわけだが、今彼女はどうしているだろうか。

 今はいない少女のことを思い、窓から空を見上げる。

 

 

「黄昏ちゃってどうしたんスか?」

 

 

 レヴィに声を掛けられ、後ろを向くと既にアラタとリリス先生の姿はなかった。どうやら、教室に戻ったらしい。

 

 

「ん……ちょっとな」

 

「やっぱりリーゼさんの事スか?」

 

 

 どうやらレヴィに隠し事は通用しないようだ。なら、話してしまった方が楽でいい。

 

 

「ああ。……アイツが力を欲しがってたことも知っていたし、魔王候補になりたがってたことも知ってた。けどな、やっぱり思うんだよ。俺がアイツの研究意欲を刺激しなければ、危ない実験なんだから止めておけばよかった、ってな」

 

 

 それを聞いても、レヴィは窓の外を見つめたままだ。それも当然だ。いきなり自分とは関係のないことを話されているのだ。困惑するのも仕方がないだろう。

 それから、俺とレヴィは数分、外を眺めていた。

 

 

「別に、悠斗さんがそこまで気にする必要は無いと思うっスよ。リーゼさんが魔王候補になりたがってたのは自分も知ってるっス。仕方のないことだったんスよ」

 

「じゃあなんだ?俺がアイツに関わらなければよかったのか?」

 

「別にそういうことを言ってるんじゃないっスよ。ただ、悠斗さんが自分の行動が間違っていたと思うのなら、リーゼさんを復学させるために動くのが大切だと自分は思うだけっスよ」

 

「俺がアイツを復学させるためか……」

 

 

 なるほど、その方法は思いついていなかった。

 

 

「ん、ありがとな、レヴィ。俺のつまらない話を聞いてくれて」

 

「気にしてないっスよ。悠斗さんの力になれるのは自分の望むところっスから。それよりも、自分も聞きたいことがあるんスよ」

 

「ん?答えられる範囲ならな」

 

「難しいことじゃないっス。ユイさんの事っス」

 

「それはアイツの魔力が暴走するかどうかって意味か?だとしたら答えはイエスだな」

 

「それは……やっぱり」

 

「ああ、今後アラタが何らかの理由で魔力を暴走させるだろう。魔導については全くの素人だし、それを利用しようとするやつがいる。そうなったとき、ユイの魔力があふれ出す可能性は高い」

 

「そうなったら……」

 

「確実にミラが動くだろうな。それも、魔力を抑えるんじゃなくて、ユイを消す方向でな」

 

 

 それだけミラは魔力の暴走を嫌っている。彼女のテーマにも関係することだが、度が過ぎてるんじゃないかと思うほどに嫌う。俺も、当初は魔王候補ってことで不浄って言われまくった。それなりに信頼を勝ち取るため、検閲官として仕事したのは大変だった。

 

 

「分かりました。それだけ聞けたら十分っス。それに、悠斗さんもユイさんを守ってくれるんスよね?」

 

「まぁな。リーゼと一緒で、どこか放っておけないからな」

 

「えー、自分は守ってくれないんスか?」

 

「お前は自分で自分を守れるほど強いだろ……」

 

 

 他愛ないことを話しながら俺とレヴィは歩き出す。アラタを中心に巻き起こるであろう事態への対策を考えながら。

 

 

 

 

 

 

 




 読了ありがとうございます。9300文字……もっとスマートにまとめろよって苦情が来そうな文字数になってしまいました。ダラダラと書かないようにしようと思っていても止められないのはダメですよね。もっとスマートにまとめられるように頑張っていきたいと思います。
 次回の更新も不定期になりますが、読んでくださると嬉しいです。それでは、また次話でお会いしましょう
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