トリニティセブン~魔王候補と学園最強~   作:双剣使い

6 / 7
 お久しぶりです、双剣使いです。やっぱり一か月近くかかってしまいました……ずっと家にいるから時間あるのにね!
 本来ならゴールデンウィーク中に投稿できたはずなのですが、延びてしまいました。理由はあとがきにあるので、とりあえず本編へどうぞ。

 今回で一区切り(?)になりますね。


虚無魔法と書いてすっぽんぽん魔術

 俺の声に応えて、アラタがユイの夢の世界に呼ばれた後の保健室は険悪なムードになっており、それは不機嫌な顔のミラから発せられている。

 リリス先生やアリンが緊張した表情を浮かべる中、俺は不機嫌なミラに向き直った。

 

 

「さて、何か言いたいことがあるなら聞くが?」

 

「どういうことですか、先輩?何故ここでユイさんが……」

 

「俺がアイツに頼んでたんだよ。アラタをユイの世界に連れて行って、そこでアイツのテーマを見つけさせろってな」

 

「テーマを見つけさせる?ということは、あの男はまだテーマを持っていないということですか?」

 

「ああ、今のアイツは完全な素人だ。自身のテーマも、得意な魔術すらも持たないただの一般人だ。よほどのことが無い限り、魔力の暴走なんて起こらないはずなんだが————」

 

「アリンさんが〝崩壊〟で彼の魔導書の枷を外したから崩壊現象が発生した————先輩が言いたいのはそういうことですか?」

 

「ああ。だから、今回はアラタがテーマを見つければ自然と魔導書との繋がりが再構築される。そうすれば魔力のコントロールがある程度できるようになるから崩壊現象も終わるはずだ」

 

「そんなに簡単にいくものではないと思いますが。そもそも、自身のテーマすら理解しない男が……」

 

「まぁそう言うなって、アイツは必ず自分のテーマを見つけてくるぞ」

 

「……どうしてそこまであの男の肩を持つんですか?」

 

「ま、俺と同じ魔王候補だからってだけなんだが……一つだけ、アイツを見ていて分かったことがあるんだよ」

 

「分かったことですか……?」

 

「ああ、アイツがテーマを決めて、魔道士として完全な姿になったら、この世界はアイツの行動で少しずつ変わっていくってことだ」

 

「あの男が……?いえ、そんなことはあり得ません。仮にそうだとしても、あの男よりも先に魔道士としての道を進んでいる先輩がいるじゃないですか。それなのに————」

 

「アラタが俺以上の魔道士だって認めたくないか?」

 

「ええ。どう考えたって先輩以上の魔道士になれるはずがありません」

 

「ま、今はそれでもいいよ。っと、そろそろ戻ってくる頃か……」

 

 

 そう言ってミラとの会話を終えたのと同時に、アラタが「そいやぁぁ!」と叫びながら地面から飛び出してきた。

 

 

「アラタ!」

 

「やっと戻って来たか……」

 

「ああ、何とかな……。さて、この崩壊現象、俺がコントロールできれば問題ないんだろ?」

 

「何を言い出すのかと思えば……」

 

「そうですよ、アラタ。いくら悠斗さんが保証したとしても出来るはずが……」

 

 

 ミラは呆れ、リリス先生は不安そうにアラタに言い聞かす。まぁ俺が思ったことを言っただけだし、簡単には信じられないわな。

 

 

「分かりました。今すぐあなたを消滅させます」

 

「だーから、落ち着けって」

 

 

 ミラの肩に手を置いて制止の声を掛けると、ミラはしかめっ面で俺を見つめる。

 

 

「まぁそう結論を急がなくてもいいんじゃないか?一回やらせてみて、もしできないようなら俺がアラタごと消滅させるから」

 

「怖いな!?」

 

 

 驚くアラタに向けて当然だろ?と目で伝えると、覚悟を決めたらしく、強くうなずいた。

 そして、アラタは俺たちの見つめる先で軽い感じでアスティルの写本に話しかける。

 表情からは失敗することへの恐怖を感じさせない、堂々としたものだった。それを見て、俺は成功を確信した。

 

 

「てなわけで魔導書よ」

 

『あん?……ああ、何だ。テーマが決まったのか?』

 

「ああ」

 

 

 そう言うと、アラタは口角を上げてニヤリと笑う。

 

 

「オレのテーマは————『支配』だ」

 

 

 アラタがそう告げると、『アスティルの写本』の鎖が引きちぎられ、サイズは元の大きさに戻っていく。強烈な光を放ちながらものすごいスピードで魔導書のページが捲られていく。

 

 

『はーハハハハハ!!確かにお前の心、存在、本質、魂の意味————それはまさに〝支配(インペル)〟だ、マスター!!そしてそれは、〝傲慢(スペルビア)〟の書庫(アーカイブ)にある!!』

 

 

 『アスティルの写本』は実に嬉しそうに声を上げながら告げる。

 

 なるほど、アラタは〝傲慢(スペルビア)〟の〝支配(インペル)〟を選んだか……。ということは、参考にされたのはミラか。

 

 

『今ここにアスティルの写本は〝傲慢(スペルビア)〟の書庫(アーカイブ)に属する〝支配(インペル)〟をテーマにするマスターと契約することを誓うぜ!!さあ言え、アラタ!契約だ!!』

 

「おうよッ!————〝傲慢(スペルビア)〟の書庫に接続。テーマを実行するッ!!」

 

 

 アラタが高らかに告げると、溢れ出していた魔力が弱まり、徐々に服へと変化していく。制服から真っ黒な動きやすい服装になり、マントがはためく。

 

 

「へぇ……」

 

 

 思わず感心してしまった。確かにミラたちにはできると言ったが、いきなりここまでの魔力制御をするとは思わなかった。まぁ今はアスティルの写本がサポートしているだけで、アラタにはそんな自覚は無いのだろうが。

 

 

「それが……アラタのメイガスモード……」

 

 

 リリスたちは信じられないものを見る目でアラタを見つめていた。やはり、彼女たちにとっても予想外だったようだ。

 

 

「ここに溢れる全魔力を支配して打ち消すぜ、アスティルの写本!!」

 

『あいよ、マスター!!』

 

 

 ん?今、アラタはなんて言った?全魔力だと?

 そこまで考えた瞬間、俺は無意識のうちに背中の黒い翼を自身の目の前で交差させ、さらに体の周りを反射の結界で覆った。

 それと、アラタが魔術を行使したのはほぼ同じタイミングだった。

 

 

「崩壊現象だかなんだか知らねーが消え失せろ!!」

 

 

 アラタの言葉の通り崩壊現象は収まった。しかし、オチは最悪だった。

 本人は格好よく決めたつもりなのだろうが、その場にいたほとんどの人間の服を破壊した。例外は、魔術を反射することができる俺とミラだけ。先生やアキオ、アリンのメイガスモードはただの布切れへと変わっていた。

 

 魔道士の着るメイガスモードというのは、魔道士自身の魔力で構成されている。そして今、アラタが行ったのはこの空間に存在する魔力を全て消失。

 それは崩壊現象を消滅させるのと同時に、メイガスモードに使用されていた魔力も消失させたのだ。

 

 

「……あ、あれ?」

 

「……?……ッ!キャアァァァァ!!」

 

「なっ何だこれ!?スッポンポン魔術かよ?!」

 

「……これはびっくりだな。メイガスモードの強制解除までできるなんてな」

 

「おかしいなぁ……途中までは主人公っぽくてかなりイケてたんだが……」

 

『まあそういうのもお前らしくていいんじゃないか?ハッハッハッ!!』

 

「そっ…そうだよなっ!?はは…ははは……」

 

「って、何で悠斗とミラは平気なんだよ!!」

 

 

 体をシーツで隠したアキオが無事な俺とミラを見て聞いてくる。

 

 

「嫌な予感がしたので、彼の魔力を水晶に反射させました」

 

「俺も同じような感じだな。まぁ、羽は貫通されたみたいだけどな」

 

 

 俺とミラがその問いかけに応えた時だった。

 やり切ったと腰に手を当てていい顔をしていたアラタのメイガスモードがただの布切れへと変化し、弾け飛んだ。

 それを至近距離から見てしまった先生とアリンはそれぞれの理由で顔を赤らめる。先生は卑猥なモノを見たため、アリンはアラタの体に興奮したからである。

 

 

「いやあああ!!」

 

「行きますよ、アキオ」

 

 

 アラタたちが騒いでいるのを尻目に、ミラはアキオを連れて部屋を出て行こうとする。

 そんなミラの背中に、アラタの声がかけられる。

 

 

「あれ?見逃してくれるってことは認めてくれるってことか?」

 

「……まあ崩壊現象も止まっているわけですし、不本意ながら退くしかありません。それに……」

 

 

 そこまで言いかけてミラは俺に目を向ける。正確には、アラタの魔術で消し飛ばされた翼だが。

 

 

「私ですら容易に突破できない先輩の絶対的な防御を突破するほどの魔力……やはりあなたは危険な存在です。だから————次こんなことがあったら、容赦なく消し飛ばしますからね」

 

「お、おい!待てって!」

 

 

 さっさと歩いていくミラを追いかけてアキオも部屋を出て行き、残されたのは四人だけになった。

 

 

「何とか命拾いしたみたいだな……これにて一件落着っ!!」

 

「————なわけないでしょ……アラタァァァ!!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁ!!」

 

 

 やっぱりアラタのやつは最後まで締まらねぇなァ……。そう思いながら、俺はリリスの攻撃が飛び火しないように退室する。

 

 

「んじゃ、俺は学園の様子を確認しつつ、学園長シバいとくんで、先生もアラタを殴るのはほどほどにしといてやってください」

 

「ちょっ、悠斗!助けてくれないのかよ!?」

 

「あァん?女子のメイガスモードを剥く奴なんざ助けられっかよ。俺も同罪になっちまうからなァ。なにより、アイツが帰ってきたとき、お前に近づけたくないんだわ」

 

「アイツ?それって……?」

 

 

 ちょっと喋り過ぎたか……まぁいいか。

 

 

「じゃ、そういうことで」

 

「あ、ちょっ、助け————ぎゃあぁぁぁぁ!!」

 

 

 アラタの悲鳴をBGMに俺は校舎の点検へと歩き出す。リーゼを絶対にアラタに近づけないと決意しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  




 読了ありがとうございます。

 さて、前書きにもあるとおり、予定より二週間ほど遅くなってしまったわけなのですが、理由がありまして。
 昨今のコロナウイルスの状況のため、大学の講義が全て遠隔で行われることになったのですが、ほとんどの講義で課題を出さなければいけないのです。単位の上限まで受講している私は、当然比例して課題の量も増えるわけでして、なかなかまとまった時間がありませんでした。少しずつ書いた結果、この日になったわけです。

 まぁ皆さん私のリアル事情なんてどうでもいいと思われるので、少しばかり本編の注釈を。アラタの持つアスティルの写本のセリフですが、『』←この括弧を使用します。
 まぁ今のところはそれぐらいですね。増えるたびに書き足していきます。
 さあ次回からユイちゃん回ですね。ロリキョヌーは需要あるよねってことで。

 皆さん、コロナウイルスには細心の注意を払って生活してください。ほとんどの都道府県で緊急事態宣言が解除されましたが、再発の可能性があるとどこかの専門家の方がおっしゃっていました。油断せず、手洗いうがい、手の消毒などしっかりしてください。

 あとがきが無茶苦茶長くなってしまいました。ここで終わりたいと思います。また次話でお会いしましょう!





 え、530文字……?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。