第11話
映司は、先程まで激戦を繰り広げられたオーディンの洞窟に戻っていた。
暗がりの中を見渡すと、暗いにも関わらず小さく煌めく物を、映司は見つけた。
「…やっぱり。」
映司は拾い上げたそれを見つめた。セルメダル。多くの数が地面にちりばめられていた。
「あの戦いの中に、グリードやヤミーはいなかったはず…。だとするならば…。」
映司は、改めてこの世界の仮面ライダーを思い浮かべた。
ミラーワールドに存在する仮面ライダー達。彼らは皆クレストの描かれたカードデッキを用いて変身し戦う。そしてライダー達の力の根源であるミラーモンスター。それらもまた異形の存在。もし、そのミラーモンスターがセルメダルを生み出しているとしたら。ミラーモンスターそのものがセルメダルで出来ているとしたら…。
ライダーが倒されると、ミラーモンスターもまた消滅する。であるならば、ミラーモンスターの消滅と共にセルメダルが飛散するのにも説明がつく。そして、ライダー達の願いが、ミラーモンスターの中でセルメダルを増やしているのも分からなくはない。
「やっぱり、ミラーモンスターはヤミー。けど…。」
しかし、新たな疑問が残る。セルメダルは、人の欲望で増殖するものであっても、セルメダルそのものが単独で生み出されることはあり得ない。必ずそれらを生み出すグリードが存在するはず。では、このミラーワールドの中にグリードが?
「…うーん。」
そこまで考えた上で、映司は再び首をかしげた。
グリードは、オーズが変身に用いるコアメダルを内包する怪物である。鳥類系、陸棲系、昆虫系、水棲系、重量系の五種、そしてイレギュラーである恐竜系を含めれば、六種のグリードが存在していた。そして、鴻上ファウンデーションの会長であり、メダルを研究していた男、鴻上光正によれば、この六種以外のグリードの存在は確認されていない。しかし、彼らは数年前にオーズとの戦いに破れ、消滅したはず。
ならば、死の商人・財団Xが複製したグリードか?
しかし、映司の中で再び否定的な考えが過った。
グリードとヤミーの関係は至って単純である。例えば昆虫系のグリードがヤミーを生み出せば、そのヤミーもまた昆虫型となる。つまりヤミーのカテゴリーさえ分かれば、それを使役しているグリードも突き止めることができる。ということになる。
ただし、仮にミラーモンスターがヤミーだとすれば、その種類は多種多様であり、カテゴリー分けをするには難し過ぎる。故に生みの親であるグリードを特定するのは非常に困難であり、それが複製されたグリードなのかも疑わしいのだ。となると、ミラーモンスターを生み出した存在は何なのか。新たなグリードなのか、全く別の存在によるものなのか。
メダルの考察が浮かんでは消え浮かんでは消え。映司はだんだんと混乱し始めてしまった。
「やはり現れましたね。火野君、と言いましたか。」
そんな映司を現実に引き戻すかのように、後ろから声がした。
振り替えると眼鏡をかけた男性がいた。
「貴方は…、確か!」
映司は構えた。ファムを倒したライダーである男。やはり、同じくライダーである自分を潰しに現れたのか。
ところが、その男は困った表情を作っていた。
「成る程。概ね察しはついているようですが、私は貴方と戦う気はありませんよ。」
眼鏡の男・香川英行はそう言うと両手を開いて見せた。
「え…。でも、貴方も自分の願いの為に戦っているんじゃないんですか?」
「確かに。私は、こんな下らない戦いを止めたいと考えています。その邪魔をする者は排除しますが。だが、"貴方"と戦う理由にはならないんですよ。」
香川が含みのあるような言い方をした。
「どういうことですか?」
映司は香川に尋ねた。
香川は、地面に落ちていたセルメダルを手に取った。
「自慢じゃないんですが、私は一度見たものは決して忘れることはないんですよ。つまり、私の記憶の中に、こんなものは存在しなかった。」
セルメダルを映司に見せつけながら香川は言った。
「それに、"君という存在"もね。」
「え…?」
香川の言い方に、映司は違和感を覚えた。そんな映司を無視して、香川が言葉を続けた。
「"本来"のライダーバトルは、神崎士郎という男が、死んでしまった自身の妹に新たな命を与える為に仕組んだものでした。その新たな命を得る為に、ライダー達に願いを叶えさせると唆し、神崎の切り札であるオーディンをライダーバトルの勝者に仕立てようとしたのです。」
「じゃあ…、この戦いは、その神崎士郎が引き起こしたっていうことなんですか?」
映司が尋ねると、香川は首を横に振った。
「いえ…、"今回"の戦いに神崎士郎は関与していません。もっと別の、何者かの思惑が働いていると言っても過言ではないでしょう。その証拠がこれです。」
香川は、再びセルメダルを映司に見せつけながら言った。
「これは一体何なんです?君は何者なんですか?」
香川は改めて映司に尋ねた。
「それは、セルメダル…。グリードと呼ばれる生命体から生み出されたものです。」
映司は、オーメダル、グリード、ヤミーについて、そして、それらと深い関わりがあるのが仮面ライダーオーズであることを香川に話した。
「なるほど…。やはりそういうことか…。」
映司の話を聞いた香川は、何か腑に落ちたような様子を見せた。そこで、映司も自身が抱えた疑問を香川に投げ掛けた。
「あの…。貴方は何を知っているんですか?まるで、一度全てを経験しているような素振りがみられます。」
映司の言葉を聞き、香川は考えるように黙ったが、静かに口を開いた。
「…しかし、まだ確証を得た訳ではありません。」
香川はそう言うと、洞窟を後にしようとした。
「え、ちょっと待って!」
映司は香川を呼び止めようとした。
「用事を思い出したので、これで失礼させてもらいます。貴方は貴方のやるべきことをするといい。…ああ、そうそう。」
香川は思い出した様に、映司に言った。
「榊原耕一。彼に気をつけた方がいい。私の記憶、そして仮説が正しければ、彼もまた、かつての戦いには存在していませんからねぇ。」
「え!?それって、どういうことですか!?」
映司は再び尋ねたが、香川は振りかえることもなく、洞窟を後にした。
映司は香川の後を追いかけようとした。
「バルルルルル!!」
しかし、映司の行く手を阻むかのように、猪型のモンスターが襲い
かかってきた。
「モンスター!こんなときに!!」
映司は、白いコアメダルを三枚取り出し、オーズドライバーに装填した。
「変身!」
サイ!ゴリラ!!ゾウ!!!
don don サゴーゾ!
DON DON!!サゴーゾ!!!
サイヘッド、ゴリラアーム、ゾウレッグを持ち、オーラングサークルには重量系が描かれた白亜のコンボ・サゴーゾコンボに変身したオーズは、現れたミラーモンスターと交戦した。
洞窟を出た香川は、映司とのやり取りを整理しながら、自分の仮説と照らし合わせた。
「…かつての戦いは、神崎士郎が仕組んだもの。そこで、私は死んだ。彼の裏切りに遭って…。しかし、今回の戦いは、別の何かの思惑によって再び始められてしまった…。私達もまた、"ある意味"ではイレギュラーな存在として、ここにいる。そして、私の記憶には無いオーメダルと呼ばれるメダル。人の欲望によって増殖す…。」
そこまで考えた香川はあることに気がついた。
「そうか…。この戦いもまた、何者かの欲望を満たすためのもの。それは、ライダー達の願いではない。ライダー達の欲望を利用し、メダルの増殖させている者。数え切れぬ程の莫大な数のメダルを欲する者。そして、メダルを求めるはグリード。グリードはライダーと異なる存在。ならば、この戦いを引き起こした元凶は…!」
その時、香川の背後に気配を感じた。香川が振り向くと、そこにいたのは、黒いスーツに紫のネクタイを身につけた青年だった。
「誰ですか。」
スーツの青年にそう言った所で、香川は青年が誰か気づいた。
「あぁ…。また貴方ですか。さっきも言ったはずです。私には用があります。貴方は貴方のやるべきことをしなさい、と。」
「…ああ。だから、"それ"をやらせてもらうよ。」
青年は、オーズドライバーを身につけ、三枚の紫のコアメダルを装填した。
「変身!」
プテラ!トリケラ!ティラノ!
プ!ト!ティラーノ!!
ザウルース!!!
青年は、銀の身体に紫の頭、腕、脚を持ち、胸部のオーラングサークルに恐竜が描かれたオーズ・プトティラオーズに変身した。
「…残念です。君とは戦いたくなかったのですが…。変身!」
香川もまた、オルタナティブ・ゼロに変身した。
「うおああああああああ!!!!」
プトティラオーズは、けたたましい雄叫びを上げる。その直後、右腕を地面に叩きつけた。地盤を砕き、深々と突き刺した右腕を引き抜くと、手には大斧型の武器・メダガブリューが収まっていた。
SWORD VENT!
オルタナティブ・ゼロもスラッシュダガーを呼び出した。
ACCEL VENT!
続いて、カードの効力を得たオルタナティブ・ゼロが大剣を構えた。
「はっ!」
オルタナティブ・ゼロは加速しながらプトティラオーズに迫った。
「はあああ!!」
プトティラオーズは頭部・プテラヘッドから翼竜の羽を模したスタビライザーを展開し、オルタナティブ・ゼロに向けて大きく羽ばたいた。その瞬間、絶対零度の冷気が発生し、迫り来るオルタナティブ・ゼロに襲いかかった。
「何…!?」
突然の出来事に対処しきれなかったオルタナティブ・ゼロは、プトティラオーズが放った冷気に捕らわれ、身動きを止められてしまった。
ゴックン!
プトティラオーズは、メダガブリューにセルメダルを装填した。
プ!ト!ティラーノ!!
ヒッサーツ!!!
「はああああ!!!!」
プトティラオーズは、セルメダルをエネルギーに転化させ、剛刃と化したメダガブリューをオルタナティブ・ゼロのバックルに向け振り下ろした。
バキィン!!
「がはっ…!?」
メダガブリューはバックルを砕き、肉体をも大きく斬り裂いた。
「何、故…?」
オルタナティブ・ゼロは、プトティラオーズに言った。
「…全てを破壊したい!」
プトティラオーズは言った。
「もう、少…し…、で…。」
オルタナティブ・ゼロは言葉を言い切る前に消滅した。
プトティラオーズは、自身の変身を解いた。そして、黒いスーツに身を包んだ火野映司は口角を上げていた。
第11話、いかがでしたでしょうか。
乱戦の後に散らばるセルメダル。それを見つけた映司は、様々に思考を働かせます。そこに現れたのは、オルタナティブ・ゼロこと香川英行。全てを覚えていた彼は、映司の話を元に本作の黒幕に気づきました。
しかし、直後に現れたプトティラオーズにより、答えにたどり着く前にリタイアしてしまいました。
既に失われているはずの恐竜系コアメダルを手にしている、黒スーツの火野映司。彼は何者なのか。
次回をお楽しみに!