仮面ライダーオーズ 15 GREEDS   作:ラズベアー

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第12話

いつまでも塞ぎこんでいても仕方がない。

そう思い立った榊原は、北岡がいるであろう『北岡秀一法律事務所』へ向かった。

 

事務所前に着くと、榊原は玄関の戸に手を掛けた。すると、簡単に戸は開き、中に入った。

外観こそ無機質であるが、高級車が数台駐車され、庭園も丁寧に整えられ、いかにも最高級の内装が施されていた。そして、広々とした執務室に入ると、大きなソファーに北岡が横たわっているのを見つけた。

「北岡?」

榊原は一言呼び掛けたが、北岡は眼を瞑ったまま動かない。

まさか…。

北岡が永遠の命を求める理由。それは、自身が不治の病に犯されたと聞いていた。死からも逃れられないとも…。

ガラス製の机の上には、緑色をしたゾルダのカードデッキが無造作に置かれていた。

「北岡…、おい、北岡!!」

榊原は、北岡の肩に手を掛け、身体を揺すった。

「おい、何だよ…!」

「おわっ!?」

北岡は、ガバッと起き上がった。突然起き上がった事に榊原は大きく驚いてしまった。

「榊原…?人の安眠を妨げるなんて、一体何の了見だ!?」

北岡は悪態をつきながら立ち上がった。

「何だ驚かすなよ。俺は、てっきり…。」

榊原は驚きつつも胸を撫で下ろした。

「何だって?」

しかし、北岡は榊原の言葉が聞こえてないようだ。

「お前、聞こえないのか?」

安心したのも束の間、再び榊原に不安感が押し寄せた。

「は?…あ。」

北岡は何かに気づいた様子を見せた。すると、自身の両耳から耳栓を取ってみせた。

「おい、勘弁してくれよ…。」

榊原は、ふうと息を着くと、その場にしゃがみこんだ。

「何がだよ?てか、何しに来たんだ?」

北岡が榊原に尋ねた。

「…さあな。俺も何で来たんだか。けど、仲間の死をいつまでも嘆いていたんじゃ、何も解決しやしない。」

榊原が言った。

「それで、仲間の仇である高見沢サイドにいた俺を殺りに来たってわけか?」

北岡が言ったが、榊原は首を横に振った。

「そうじゃない。お前も俺達をリュウガから救ってくれた。だから、お前も信じたい。そう思ったんだ。」

「…全く。お人好しの馬鹿だな。」

北岡は、はあ、と肩を落とすものの、その表情は穏やかだった。

「俺も、こんな所で死にたかないさ。そりゃ、永遠の命を捨てる訳じゃない。ただ、最悪この戦いを生き延びられれば、それでいい。」

その言葉を聞いた榊原の眼に、活気がみられた。

「…オーディンを倒して、全てを終わらそう!」

「ああ。んじゃ、火野を探しに行きますか。」

そう言うと、榊原と北岡は事務所を後にした。

 

出発して間もなく、榊原と北岡をミラーモンスター達が襲いかかってきた。

「全く、早いとここんな世界からオサラバしたいね。」

北岡が、ため息を付きながら言った。

「ライダーの数が減ったことで、モンスター達が必然的に俺達を襲ってくるんだ。」

榊原が言った。

「「変身!!」」

榊原と北岡は、それぞれ龍騎とゾルダに変身した。

「一気に突破するぞ!」

 

STRIKE VENT!

 

LAUNCH VENT!

 

龍騎はドラグクローを、ゾルダはギガキャノンを装備した。

「はぁ~、はいいいい!!!!」

「ふん!!」

ドラグクローから発せられた火炎弾とギガキャノンから放たれた砲弾により、モンスター達は瞬時に灰となった。

「全く、手間をかけさせやがって…。」

ゾルダが、デッキを外そうとしたときだった。

「う、うぅ…。」

誰かの呻き声が、建物の陰から聞こえてきた。

「うん?」

ゾルダは声の方を警戒した。

「誰かいるのか?」

龍騎も陰に向かって言った。

「うぅ…。あ、あぁ…。」

呻き声は段々と近づいていた。そして、建物の陰から姿を現した人物を見て、ゾルダは絶句した。

「お前…!?」

北岡は、自分の眼を信じられなかった。それもそのはず。今、龍騎とゾルダの目の前に現れた者は、オーディンの手によって倒され、消滅したはずだからだ。

陰から現れた人物、それは、ベルデだった。

ベルデは、苦しそうに頭を抱え、おぼつかない足取りで歩いてきた。

「ベルデ…!?オーディンに倒されたんじゃなかったのか!?」

龍騎がゾルダに言った。

「ああ、間違いなくオーディンに殺られた。」

ゾルダは答えた。

ベルデは尚も、二人に寄ってきた。

「ちっ…。」

痺れを切らしたゾルダが前に出て、ベルデを押した。そして、そのままコンクリートの壁に押さえつけた。

「うぁ…。」

「おい、北岡!」

龍騎はゾルダに呼び掛けたが、ゾルダは聞く耳を持っていなかった。

「高見沢!そんな気持ち悪い演技は止めろ!」

「高、見…沢…?」

ゾルダの問いにベルデは問い返した。

「そういうの止せって言ってんだよ!」

そう言うと、ゾルダはベルデのデッキを掴み、バックルから引き抜いた。

「…あぁ?」

「これは…!?」

ベルデの変身は解かれたが、その姿を見て、ゾルダと龍騎は驚いていた。ベルデから姿の戻った人物は、高見沢ではなかったからだ。ベージュのトレンチコートに身を包んだ青年。その顔は、酷く憔悴しきっていた。

「お前、誰だ?」

ゾルダが青年に尋ねた。

「俺は…、木村…。仮面ライダー、ベルデだ。」

 

 

ミラーモンスターを倒した映司は、香川の後を追うように洞窟を抜けたが、香川の姿はどこにも見当たらなかった。

「いったいどこに…。それにしても…。」

映司は香川の言った言葉が引っかかっていた。

 

『榊原耕一。彼に気をつけた方がいい。』

『彼もまた、かつての戦いには存在していませんからねぇ。』

 

あれは一体、どういう意味なのだろうか。

榊原耕一。彼は、ライダー同士の殺し合いを嫌い、手塚や秋山と言った仲間の死にも、酷く打ちひしがれる程の心優しい人だ。それに、新参者である自分を疑うことなく受け入れる懐の深さも持っている。そんな彼に"何か"があるなんて、映司は到底信じられなかった。

では、香川の虚言なのだろうか。いや、そうとは言い切れない自分がいることを映司は自覚していた。香川は、間違いないなく"何か"を知っていた。まるで、全てを一度経験しているかのように。映司を欺ける為の嘘をついていた可能性も無い訳ではない。だが、ライダーバトルにおいて相当の実力者でもある男が、身一つで映司に接触してきた。その潔さから、彼も適当な事を言っていた訳ではないだろう。

ならば、何を信じたら…?

「…アンク。」

映司はふいに、親友の名を呟いていた。

 

鳥系グリード・アンク。他のグリード同様、自身の完全復活の為に、映司の仲間である泉比奈の兄・信吾に取り憑き、映司達と行動を共にしていた。しかし、グリードでありながらも、映司達と関わることで、アンクは単なるグリードでは得ることのなかった満足感を感じ、最後まで映司達と共にグリードと戦ってきた。しかし、戦いの中で自身の意思を内包するコアメダルにヒビが入ってしまい、最終決戦直後に、メダルは割れ、アンクは消えてしまった。その戦い以来、映司は割れたアンクのコアメダルを直す為に、割れたアンクのコアメダルを所持し、鴻上ファウンデーションの研究員として研究を続けたり旅を続けたりしてきた。今までに、二度、アンクに再会することは出来たものの、それはコアメダルが直ったことによるものではなかった。いつか必ず直してみせる。映司の願いを敢えて言うとすれば、"アンクとの再会"なのだろう。

 

映司は、ある場所へと向かった。それは、映司が初めてミラーワールドに捕らわれた場所だ。ここへ来れば何か分かるんじゃないか。そんな思いから、足を運ばせた。理由はそれだけではなかった。

「…俺は、火野映司。仮面ライダーオーズだ!」

映司は一人言のように、自己紹介を始めた。

「俺は、この場所でこの世界に誘われた。俺の願い。それは、親友との再会。どうしたら俺の願いは叶う?教えてくれ!ネグ!!」

映司の叫びに近い言葉は、反転した空に空しく響くだけだった。

「…やっぱダメか。」

その時だった。

「やぁーっと、君の願いがわかったよ。」

突如、何者かの甲高い声がした。

「こっち、こっち。」

映司は声の方を向いた。それは宙に浮いていて、全身銀色をしていた。銀色ながらも、その模様から道化師のような風貌だった。間違いない。今、目の前にいる者が"ネグ"だ。

「はじめまして!ネグの名前はネグだよ!」

ネグは、自身の名を名乗った。

「あなたが…。」

「それで、君の願い。えーっと、しんゆうとさいかいする?で、あってる?」

ネグは、とぼけるように言った。

「ああ、そうだ!どうすれば叶う?」

映司は言った。

「簡単だよ!オーディンを倒せばいい!こんな世界にしてしまった総ての元凶!彼のせいで、穏和だったこのミラーワールドは、化物まみれさ…。」

ネグは肩を落として言った。

「…なんで、オーディンを倒すと願いが叶うんだ?」

映司はネグに尋ねた。

「え?」

ネグは声を漏らすように言った。

「いや…、オーディンには願いを叶える力があるから…。もちろん、ただではないさ。代わりにオーディンを倒す。そうすると、オーディンが持つ願いを叶える力が他のライダーに移るんだ。だから、倒すと願いが叶う。ていうより、願いが叶えられる力が手に入る。が正しい言い方かなぁ。」

ネグはそう言った。

「…違う。オーディンは元凶じゃない!」

映司はネグの話を否定するように言った。

「オーディンだって、他のライダーと変わらないはずだ。オーディン。いや、神崎士郎が自分の妹を甦らせたいという願いを持って。」

黙るネグに向けて映司は言葉を続けた。

「お前は何だ?何が目的でライダー達を戦わせているんだ!?」

しばらく黙っていたネグだったが、にんまりと大きく口角を上げて言った。

「ライダー達の願いを叶えることさ。」

ネグの言う声色は、先ほどまでの甲高いものと変わりひどく低いものだった。

「ネグは、何も嘘を言っていない。オーディンを倒せば願いが叶う。そして現実世界に帰れる。願いを叶えようが、現実世界に帰りたいと願おうが、全ては"願い"となる。そして、願いは…。」

「…欲望となる。」

映司は、自然とネグの言葉の続きを言い当てた。その瞬間、映司はネグの正体を察した。

「お前、やっぱり…!」

「あー、でも残ね~ん。君の願いは叶えられそうにないや。」

ネグは再び甲高い声になってそう言った。

「どういう意味だ!?」

映司はネグに聞いた。

「ふふ…。君には、その"資格"がないからねぇ。」

「何…っ?」

その時、映司とネグに近づく人影があった。蛇柄のジャケットを着た男、浅倉威だ。

「こいつか、オーズってのは?」

浅倉はネグに聞いた。

「そうそう!このライダーは、他のライダーと一味違うよ!きっと楽しめると思うよ~?」

「ほう…。なら、俺と遊ぼうぜ。変身!」

浅倉は王蛇に変身した。

「あぁ~…。」

 

SWORD VENT!

 

ベノサーベルを召還した王蛇は、映司に剣を振りかざした。




第12話いかがでしたでしょうか。

北岡と合流した榊原達の前に現れた、死んだはずのベルデ。その正体は高見沢、ではなく木村という青年でした。
『RIDER TIME』にて登場した、綺麗なベルデこと木村。まさかの参戦となりました。
しかし、再び現れた仮面ライダーベルデ。一体何故なのか…。

映司は、香川の言葉から何が真実なのか混乱してしまいます。その答えを求める為に、ネグと接触を果たします。そして、ネグの言動から、映司はネグの正体に気づきました。

しかし、直後に現れた王蛇こと浅倉威が、映司に襲いかかります。この戦いの行く末は…。

次回もお楽しみに!
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