映司は、広場の噴水の縁に腰かけた。
先の戦いで、映司はある確信を得た。
ネグ。やつは、グリードだ。ライダー達の叶えたい願い、言い換えれば、それは欲望だ。その欲望をミラーモンスターを通して増幅させ、自身の糧にしている。
そう考えれば、この世界にセルメダルが散らばっていることの説明が着く。
しかし、それではいくつか説明が出来ない点があった。
まず、ネグをグリードとするならば、ネグのコアメダルが存在するはすだ。グリードは全6種。映司は、その全てを倒した。つまり、現時点で把握している種類のコアメダルからグリードが誕生することはあり得ない。
映司は一応手元に残されているコアメダルを確認した。コンボが成立する為に、全系統3枚ずつ(頭部、腕部、脚部各1枚)所持している。それとアンクの割れたメダルが1枚。それが全てだ。強いて言えば、唯一恐竜系のメダルだけは所持していない。
では、ネグは恐竜系のグリードか。いや、恐竜グリードは既に倒したし、恐竜系コアメダルは、かつて仮面ライダーポセイドンと戦った時や、財団Xが生み出したグリードコピー体と戦った時には手に入らなかった。
つまり、映司が把握しているコアメダルからは、やはりグリードが誕生する可能性は無いと言える。
では、ネグを形成するコアメダルは何なのか…。
それと、ミラーワールドの仮面ライダー。彼らはミラーモンスターと契約することで力を得ている。もし、ミラーモンスター=ヤミーとするならば、ライダーは、ネグが生み出したヤミーと契約していることになる。ヤミーの誕生の仕方は様々であるが、母体の人間にセルメダルを取り込ませることで、人間から分離してヤミーが誕生することはある。そう考えれば、ある意味自然ではあるが…。
では、あの王蛇の件はどう説明するのか。
母体を失ったヤミーが別の人間に従うなんて有り得るのだろうか。
これは考えても答えが出るものではないだろう。
ライダー達の願いを利用し、メダルを貯えた後、ネグは何をしようとするのか。これも、現時点では答えは出ない。
もし、映司の仮説通りならば、人命を守りつつ、ライダーバトルを止めるとするならば、ミラーモンスターを排除すれば良い。結果、ネグはメダルを得ることは出来なくなる。そして、最終的にネグを倒せば、全て解決するのではないか。
ともかく、映司は榊原にネグのことを伝えようと考えた。
しかし、香川の一言を思い出したことで、その考えを改めた。
『榊原耕一。彼に気をつけた方がいい。』
『彼もまた、かつての戦いには存在していませんからねぇ。』
香川の言った言葉。
やはり、榊原には何かあるというのか。
それに。
『仮面ライダーリュウガ。やつも、全ライダーを潰そうとしている。』
『やつからはオーディンとは異なる得たいの知れない異様さも感じられる。それだけに、リュウガはかなり危険な存在だと言える。』
『あれからは明確な殺意を感じられるの…。』
本当にそうなのだろうか。
確かに、リュウガから感じられる殺意は凄まじいものだ。事実、ナイト・秋山を殺した。ただ、映司にその殺意を向けられることは今まで無かった。むしろ、自身の危機に、リュウガは何度も助けてくれた。故に、リュウガという存在が果たして危険なのか、映司には分からないでいた。
『今はまだ、話す時じゃない。』
リュウガの言った言葉。あれはどういう意味だったのだろうか。リュウガもまた、何かを隠しているに違いない。映司はそう思った。
映司は頭を抱えた。一体何を信じればいい?自問自答した所で答えが得られる訳ではない。が、今の映司には、それしかできなかった。
「どうしたらいいんだ…。」
映司の口から言葉が溢れた。
「簡単さ。」
ふと、何者かの声が聞こえた。
「え…?」
「何も信じることはない。何も信じず、全てを壊せばいい。」
「誰だ!?」
映司は立ち上がり、回りを見回した。その時、映司の瞳に信じ難い光景がとんできた。
「映司、君の願いはなんだ?」
そう問い掛けるのは、なんと映司自身だった。しかし、自身が身に付けている服とは違い、上下とも黒いスーツに、紫のネクタイをしている。
「何なんだ、お前は…!?」
映司は目の前に立つ黒スーツの映司に向かって言った。
「俺はお前だよ。映司。」
黒スーツの映司は答えた。
「ほら、答えなよ。君の願いはなんだ?」
黒スーツの映司は、映司に答えるように促した。
「俺の願い。それは…、アンクに会うこと。」
「いいや、違う。」
黒スーツの映司は、映司の答えを否定した。
「何…?」
「確かに、俺はかつての友、アンクに会いたいが為に、鴻上ファウンデーションの研究員となった。だが、それは戦う理由じゃない。君は何を願って戦っているんだ?」
黒スーツの映司の問いに、映司は言葉を一瞬詰まらせた。
「…誰かが助けを求めているなら、その手は絶対に離さない…。どこまでも届いて掴む腕。無限の、絆…。」
映司は、自身の右手を見つめながら、言った。
それを聞いた黒スーツの映司は、ふふっと笑った。
「何が可笑しい!」
「フフ…、その通りさ!俺の願いは、どこまでも届く腕。それは、助けを求める者を救う為の腕!でも、こうとも言えないか?」
黒スーツの映司がニヤリとして言った。
「助けが必要な状態や場面、それを生み出した元凶を破壊する力…。つまり、俺の願いは、いや、君の願いは、全てを破壊することさ!」
「違う…!そんなんじゃない!」
映司は、黒スーツの映司の言葉を否定した。
「違かないさ。君は、今まで破壊し続けてきたじゃないか。人の命を脅かす異形の存在を。その、オーズの力で!」
黒スーツの映司は、言葉を続けた。
「そして、その破壊の力を君は一度受け入れている。"真のオーズと成る"ことで。否定のできない事実だろう?」
「違う…、そんなんじゃない…!」
確かに、映司は人々を守る為に、オーズの力を行使してきた。そして、ヤミーを倒し続け、グリードを倒す為に、真のオーズと成った。しかし、それは決して破壊したいが為ではなかった。
「どこまでも届く腕?無限の絆?まだ、そんな綺麗事を言っているのかい?綺麗事を並べた結果、どうなったか、忘れた訳じゃないだろう。」
「っ!?」
黒スーツの映司の言葉が、映司の心に刺さった。
忘れもしない。かつて、自分の身勝手な善意のせいで、一つの命が失われたあの日を。それは、黒スーツの映司が言うように、自身が並べた綺麗事の結果だった。
「違う…!」
しかし、映司は反論する術を持っておらず、ただ否定するしか出来なかった。
そんな映司に構わず、黒スーツの映司は言葉で攻め続ける。
「自分を偽るな。己の欲望に従えばいい。破壊という、本能のままに…!」
タカ!ゴリラ!ワニ!
「違う!!」
映司は、自分でも無意識の内にオーズに変身していた。そして、黒スーツの映司に肥大化した拳を振るった。しかし、それは空を切るだけだった。
「ほら、今のは破壊衝動に駆られた行動だ。自分でさえ、否定できないじゃないか!」
黒スーツの映司は、笑いながら言った。
その瞬間、映司自身も我に返り、自分の行いに驚いてしまった。
「そんな…。」
「でも、それでいい。強がらなくていいよ。君は俺だから。」
黒スーツの映司は言った。
「お前は…、お前は、何なんだ!?」
「俺は…。」
黒スーツの映司が答えかけた時だった。
「見つけた…、オーズ!!」
別の方から、声が聞こえた。
オーズが声の方向を向くと、そこには東條がいた。
「よくも、先生を…!」
「え?」
東條は、カードデッキを構えた。
「変身!」
現れたVバックルにデッキをセットすると、東條はタイガに変身した。
BLIZZARD VENT!
デストバイザーに冷気を纏わせたタイガが、オーズに迫った。
タカ!カマキリ!ワニ!
ゴリラアームからカマキリアームに変えると、腕に備わるカマキリソードで、オーズはタイガの攻撃を受け止めた。
「急に何を!?」
「しらばっくれて!!」
タイガは、強引にオーズを押し切った。
「くっ…。あいつは!?」
オーズは、周りに視線を送る。が、さっきまでいたもう一人の映司の姿がなかった。
そんなことに構わず、タイガは迫る。
ワニレッグから生まれる剛脚力で 、迫るタイガに回し蹴りを放った。
「ちっ!」
タイガは、蹴りを受け少し怯んだが、とっさにカードをデストバイザーに装填した。
STRIKE VENT!
タイガは両腕にデストクローを装備し、尚もオーズに迫った。
オーズはタトバコンボになり、トラクローを展開、デストクローを受け止めた。
「あなたも、自分の願いの為に…!」
「今は、そんなことどうでもいい!」
「え!?」
「先生の、仇を取る…!」
タイガの答えに、オーズは驚いた。
「どういうことだ!?」
「だから、しらばっくれるな!」
タイガが、デストクローでオーズのトラクローを弾く。オーズの懐が空いた所をデストクローが引っ裂く。
「うわっ!」
「殺してやる…!」
タイガの猛攻が続く中、突然、振り下ろされるはずのデストクローの動きが止まった。
「何だ!?」
タイガが右腕に視線をやると、ワイヤー状の何かが絡み付いていた。
「あなたは!?」
オーズはワイヤーの主を見て驚いた。
そこにいたのは、ベルデだった。
しかし、北岡の話通りなら、ベルデはオーディンに敗れたはず。
「高見沢!?」
タイガもまた、ベルデの姿を見て言った。
「俺は、高見沢じゃない!」
ベルデが答えた。
「はぁ?…うっ!?」
突然、タイガに銃弾が襲いかかった。
「やれやれ、珍しく殺意全開にしちゃって。英雄になるんじゃなかったのか、坊や?」
ベルデの後に、龍騎とゾルダが駆けつけ、ゾルダがタイガに言った。
「そんなこと…、どうでもいいんだよ!」
タイガは右腕のデストクローを手放し、ベルデのバイオワインダーから逃れた。
「何があった?」
龍騎がタイガに聞いた。
「それは、この人殺しに聞いたらいいよ。」
タイガがオーズを指して言った。
「何?」
「え!?」
ゾルダとオーズが言った。
「僕は見たんだ…。こいつが、先生を殺ったのを!!」
「俺が香川さんを!?」
タイガの言葉に、オーズは驚きを隠せなかった。
しかし、タイガの言葉を聞いた龍騎、ゾルダ、ベルデの三人はオーズを見つめた。
「そんな、俺は殺ってない!」
オーズは必死にタイガの言葉を否定した。
「…必ずお前を殺す。志半ばに倒れた先生の為にも…!」
タイガは吐き捨てるように言うと、その場を立ち去った。
第14話、いかがでしたでしょうか。
香川の言葉、榊原の言葉、そしてリュウガの言動。
すべてが噛み合わないことに気づいた映司は、何を信じたらいいのか、わからなくなってしまいます。
そこに現れたのは、香川を殺害した張本人である黒スーツ姿のもう一人の映司。
まるで、すべてを破壊するように映司を唆す黒スーツ映司。その真意、そしてその正体とは。
奇襲をかけてきたタイガに対し、救援に現れた榊原達。
そして、香川殺害の疑惑をかけられた映司。
彼の運命とは。
次回もお楽しみに!