仮面ライダーオーズ 15 GREEDS   作:ラズベアー

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第四章 鏡の中の欲望(グリード)
第18話


龍騎の背後には、始めに倒されたライアからオーディンまでのライダーが並んでいた。しかし、何故かナイトとオルタナティブ・ゼロの姿だけがなかった。

「うひゃひゃ、驚いたでしょ?」

ネグが、ケタケタ笑いながら言った。

「この世界に蔓延する欲望ってのが凄まじいのよ。志半ばに死んでいったライダー達の欲望が。」

龍騎が言った。

「そのライダー達の残留思念をセルメダルに封じ込め、それをコアとしてライダーを作り出し、お互いに欲望のまま戦わせたって訳!まぁ、ヤミーっていうか、グリードに近いかもねぇ。」

ベルデが言った。

「すると、もうメダルが増えるわ増えるわ。で、足りないままバトルが終われば、もう一度、一からやり直しさせれば、また増える。その繰り返しよ。」

タイガが言った。

「…!」

映司の拳が震えていた。これ程、凄まじい怒りを感じていたことに、映司は身に覚えがなかった。かつて自身の願いを叶えたいが為に戦い、散っていったライダー達の思い。良し悪しはあれど、その願いの為に戦ったライダーの意思を、自分の欲望の為に利用したネグが許せなかったからだ。

「…ふざけるな!」

その時、声を発したのは映司ではなかった。

「ライダー達が…、どんな思いで戦ってきたか!それをお前みたいなやつに利用されてたまるか!!」

リュウガが、ネグやライダー達の前に立って言った。

「リュウガ…?」

映司は、リュウガを見て言った。

「…おかしいなぁ。何で"今回の"君だけ、ネグの言うことが聞けないの?」

ネグが、リュウガを見て言った。

 

SWORD VENT!

 

「はああああ!!」

リュウガは、リセットされたデッキからカードを装填、黒いドラグセイバーを手に、ネグに向かって駆け出した。

「ネグの言うことが聞けない人形は…、いらねぇよ!」

最後の一言をドスの効いた声で言うと同時に13人のライダー達が動き出した。

「はあ!」

各々武器を手にしたライダー達が、リュウガを迎え打った。

あれだけ強いリュウガだったが、先の戦いの疲労からか、数に圧されていった。

「死ねぇ!」

「うっ、ぐっ…!うわっ!!」

王蛇の一撃を受けたリュウガが大きく吹き飛ばされた。

そして、地面に伏せると同時に、とうとう変身が解け、青いジャケットを着た男の姿になった。

「大丈夫ですか!?」

映司も傷ついた身体を押して、倒れ込んだ男の元へ駆けつけた。

「…なるほどねぇ。よくこの世界に紛れ込めたね。」

ネグが、リュウガだった男性を見て言った。

「く、そっ…!」

男は、身体を起こしてネグを睨み付けた。

「まぁ、いいや!オーズ君!さっき聞いたよね?お前は何なんだ?って。ここにいるライダー全員倒したら、教えて上げるよ!だから…。」

「死なないでねぇ!」

甲高い声から、再びドスの効いた声で言うと、ライダー達はゆっくりと映司達に迫った。

「…逃げましょう!」

映司は、男の肩を担いで、洞窟を出ていった。

 

 

「もう、大丈夫だ。ありがとう。」

洞窟のある森を抜け、街の中にあった噴水広場まで辿り着くと、男性が言った。

二人は、噴水の縁に腰を掛けた。

「あなたは、人間…ですか?」

映司は、男に尋ねた。

「あれをみたら、疑いたくもなるよな。でも、君と同じで俺は人間だ。」

男は、弱々しくも笑顔を作ってみせた。

「俺、火野映司って言います。」

映司は、とりあえず名乗った。

「映司か。俺は、城戸。城戸真司。よろしくな。」

リュウガだった男、城戸真司は名乗った。

「城戸さんは、知っていたんですか?榊原さん達、ライダーがヤミーであったことを。」

映司は、真司に尋ねた。

「…ああ。その、"ヤミー"ってのは知らなかったけど。でも、彼らが人じゃないのは、最初から分かっていた。」

真司は答えた。

「話せば長くなるんだ。この世界で起こった異変。そして、再びこの世界に入ったきっかけ。」

「教えてください。」

「それは…。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

時は遡ること、数ヶ月前。

 

ある激戦の中、ミラーワールドから生還した城戸真司は、かつて自分が籍を置いていた職場、OREジャーナルのビルに向かった。

到着したものの、真司の瞳には、OREジャーナルの標識が映らなかった。既に退去していたらしく、建家だけが静かに佇んでいた。

「…だよなぁ。」

肩を落とし、ポリポリと頭を掻いた真司は、その場を去ろうとした。

「真司?お前なのか…?」

自分の名を呼ぶ声がした。それは、聞き覚えのある懐かしい声だった。

振り向くと、だいぶやつれた顔をした男が、そこにいた。

「編集長…!」

かつての上司であり、学生時代の先輩でもある男、大久保大介だった。

「お久し振りです、編集…。」

「馬鹿野郎!!」

いきなり飛んできた大久保の拳が、真司の頬を捉えた。

「いったぁ…。な、何すんスか、編集長!?」

真司は頬を擦りながら言った。

しかし、大久保の瞳には涙が浮かんでいた。

「お前、お前…。死んだかと思ったんだぞ!!真司…!」

大久保は、涙を流しながら真司に抱きついた。

「編集長…。」

真司もまた、涙目になりながらも、大久保の背をポンポンと叩いた。

 

 

そうか。俺は一度死んだんだった。

 

 

真司は、あの日のことを思い出していた。言われてみれば、あの場で死んでいたのだから、自分が死んだ後のことなんて考えもしなかった。

大久保や桃井、島田、浅野といった、かつての仲間達が自分の死を知ってどうなっていたのか。

少なくとも、今の大久保のそれが、全てを物語っているようだと、真司は悟った。

「心配かけました。その…、上手く説明できないんですけど、何とか帰ってきました。」

「そうか…、よかった。本当に!」

 

近くのカフェに場所を移した二人は、あの戦いの後のことを話した。

時代の移り変わりに対応できず、OREジャーナルは閉鎖を余儀なくされたそうだ。仲間はその後、それぞれの道を進んだらしい。

 

桃井は、今も独身でフリーのジャーナリストを続けているそうだ。そして、月に一度、不定期ながらも北岡の墓参りをしているのだと。

島田は、その才能から別の会社に就職し直したという。しかし、そこで何故か彼女の美貌が評価し直されたらしく、その会社のイメージキャラに抜擢されたらしい。大久保曰く、もはや別人レベルで変わったそうだ。しかし、中身は変わっていないそうで、今でも大久保とは連絡を取り合っているらしく、元気でやっているそうだ。

浅野は、ジャーナリストを続けていくはずだったのだが、今は何故か空手の師範代を勤めているらしい。本人曰く「間違えた」ということだが、どこでどう間違えたのか、大久保は未だに分からないそうだ。

そして、大久保自身は、年甲斐もなく現代の情報ツールについて猛勉強しているらしく、OREジャーナルの魂を引き継ぐ新たな情報ネットを作ろうと模索中だと言う。

 

「真司、お前もジャーナリストの魂が消えてなきゃ、俺と一緒にやらないか?」

「…はい!」

真司は、即答した。正直、難しいことは分からない。ただ、みんなが前向きになっている中で、自分も何かをしたい。そう思ったのだ。

 

 

それから暫く経った時だった。

ネタ探しと言って、街を歩いていた時に、それは聞こえてきた。

 

キィーン…、キィーン…。

 

まるでガラスを爪で引っ掻くような、不快な音。しかし、真司は別の意味で不快に、そして、不穏に感じていた。

「…何で…?」

この音が聞こえるなんて有り得ない。真司はそう思っていた。その音を発する世界は、既に消滅したものだと思っていたからだ。

 

キィーン…、キィーン…。

 

しかし、それは一向に鳴り止まない。

そして、真司は近くのビルのガラスを見た。そこに写っているのは紛れもなく真司だった。が、そのガラスに写った真司が、口を開いた。

『ミラーワールドが、再び開かれた。』

ガラスに写った真司、虚像の真司が、真司にそう告げた。

「そんな…。どうして!」

真司は、目の前にいるもう一人の自分に、今さら驚かず、むしろ問いかけていた。

『それは分からない。だが、開かれたミラーワールドは、本来のものとは違う、別の思惑が動いている。』

「別の?」

『何か巨大な闇。それが、かつてミラーワールドの中で散っていったライダー達の残留思念を取り込んで、再びライダーバトルを始めた。』

「何だって?」

真司は、虚像の真司の言葉が信じられなかった。

『お前の力を借りたい。ライダーバトルを止め、ミラーワールドを再び閉じる為に。』

虚像の真司が言った言葉に、真司は首を横に振った。

「断る。そうやって、俺をまた取り込むつもりだろ!それに、止めるなら、お前が止めればいいだろ!リュウガとして!」

真司は、虚像の真司を怒鳴り付けた。

『あのミラーワールドでは、俺は俺としていられなくなる。他のライダー同様、何者かのコマとして動かされてしまう…。いいのか?ミラーワールドで甦ったのは、何もライダーだけじゃない。』

その言葉を聞いて、真司はあることに気づいた。

「ミラーモンスター…!やつらが、現実世界に?」

真司が言うと、虚像の真司は頷いた。

『本来のミラーモンスターは、自分が生きる為に他の生命のエネルギーを求めていた。極端な話をすれば、共食いをして生き延びることだってできる。だが、あの世界のモンスター達は違う。"人を襲うモンスターとしての記憶"が利用されている。このままじゃ、"あの日"のように、現実世界を喰らい尽くすぞ。』

あの日。神埼士郎ですら制御出来なかった、ミラーワールドの秩序の崩壊によって、ミラーモンスターが現実世界に溢れだした日。あの日、一番多くの命が失われていった。自分を含めて。それが、再び繰り返されるというのか。

それだけは阻止したい。真司は、そう思った。しかし。

「…俺には無理だ。龍騎のデッキも、この世界に戻った直後の戦いで失った。俺は、ライダーとして戦えない。」

真司はそう言ったが、虚像の真司は、にやっと口角上げて言った。

『お前には、こいつがあるだろ。』

虚像の真司は、自身のジャケットのポケットから黒いデッキを取り出した。再びそれをポケットにしまうと、真司のポケットに突然重みが生まれた。まさかと思い、自身のポケットを探ると、そこにはリュウガの黒いデッキがあった。

「お前…。」

『俺は、お前の"裏の存在"。俺は俺として存在する為に、お前を取り込もうとした。だが、お前は、裏の自分を受け入れた。結果、俺はお前の中で生きることが出来た。今度は、俺がお前を受け入れる。』

「っ!?」

虚像の真司は、自分の言葉に動揺した真司を見て、言葉を続けた。

『心配するな。今さら、お前を取り込もうなんて思わない。俺も言わばミラーモンスター。自分のいる世界を守りたいだけだ。』

虚像の真司の言葉に嘘はない。根拠はないのだが、真司はそう感じた。

『あまり時間はない。決めるなら早くしろ。覚悟を決めたら、それでミラーワールドに飛び込め。』

そう言うと、虚像の真司は黙り、リュウガのデッキを握りしめながら戸惑う真司の顔になった。




第18話、いかがでしたでしょうか。

ネグの思惑、そしてライダー達の正体が明かされました。
以下がその設定です。

<グリード・ネグ>
ミラーワールドの中で誕生したグリード。誕生の経緯、行動目的は未だ不明。"願う"という言葉をもじって設定しました。

<ライダーヤミー>
ミラーワールドに漂っていたかつての戦いで散っていったライダー達の残留思念をセルメダルに封じ込めた結果、誕生したヤミー。
原点のヤミーとは異なり、ライダー達の残留思念が封じ込められたセルメダルがコアメダルのような役割を果たしており、それが核となっている。その為このコアが破壊されない限り、何度でも復活をする。
ライダーヤミーの意思は、ネグと共有している。その為、ネグの思惑によりかつてのライダー達の記憶を再現させられている。また、グリードに近い存在ではあるものの、ネグに意思を掌握されているので、結果的にネグの為にメダルを集める道具とされている。
完全に倒す為には、コアとなるセルメダルを破壊する必要があり、それが可能なのがコアメダルすら破壊できる恐竜系(幻獣系)の力のみ。(ナイトとオルタナティブ・ゼロが復活出来なかったのはその為)

つまり、第17話までのライダーバトルは、"自身の願いを叶えたい"という欲望によって戦っていたが、叶うどころか、その欲望から生まれるメダルを搾取しようとしたネグによって仕組まれた、いわば出来レースなのです。

そのライダー達の中で、唯一ネグに立ち向かったのが、仮面ライダーリュウガ。

薄々気づいていた方が多くいらっしゃるかと思いますが、その正体は、なんと龍騎本編主人公の城戸真司。

ここにきて、ようやく登場しました。

この真司は、『RIDER TIME』から生還した存在であり、彼が戻った世界は、リセットされなかった世界。つまり、『秋山蓮が恵里を助けるもそのまま力尽きてしまった』世界であります。

故に、真司と大久保の再開は、龍騎本編最終回以来ということになります。

真司が帰還するまでのOREジャーナルの仲間の顛末については、筆者の妄想です。
※島田さんのは、とある作品を思わせるような感じですが、シチュエーションが似てるだけの別物です。笑

そして、虚像の真司との接触。
『RIDER TIME』やジオウリュウガ編における経歴から、虚像の真司は、真司に受け入れられており、丸く(?)なっています。虚像の真司は、ミラーワールドを閉じるよう、龍騎に変身出来なくなった真司に、リュウガのデッキを渡しました。それに戸惑う真司。彼はどう決意を固めるのか。

ちなみに、真司がリュウガとなって戦う設定は、『DRAGON KNIGHT』をオマージュしたものです。


新たに行動を共にすることになった映司と真司。
物語はどう展開していくのか。
次回もお楽しみに!
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