真司は、リュウガのデッキを握りしめながら、それを見つめていた。
再びミラーワールドが開かれた。
信じたくはなかった。しかし、もう一人の自分が現れた時点で認めざるを得なかった。それに、そのミラーワールドの中でライダーバトルが行われている。それも、かつてライダーとして戦い、自身の願いの為に命を散らした彼らの残留思念を利用して。確かに、録でもない願いの為に戦う奴らもいた。しかし、それでも命を掛けてまで叶えたいものがあったことは、真司も理解しているつもりだった。蓮の恋人を起こすという願い、北岡の永遠の命の渇望…。そして、妹を助けたいという、神崎士郎の願い。そんな彼らの願いを利用しようとしている存在がいる。それは決して許せることではなかった。
しかし、再びミラーワールドに突入するのか?今、この現実世界にいられるのも、蓮の犠牲があってこそだった。本当なら、あの時死ぬのは自分だった。恋人の為にも、蓮を帰還させる為に。だが、蓮は違った。恋人の安否もそうだったが、それよりもかつての仲間の命を優先したのだ。蓮が命を賭してまで救ってくれた命を、再び危険にさらしていいのだろうか。それは蓮の犠牲を無駄にしてしまうのではないか。
真司は迷っていた。そして、気がついた頃には、大久保が新たに用意した小さな事務所へ帰った。
「…戻りました。」
「おぅ、何かいいネタ掴んで来たか?」
大久保は揚々と声を掛けた。しかし、真司が何かを悩んでいることに気づいた大久保は、静かに声を掛けた。
「何かあったか?」
「いえ…、何も。」
そう答える真司だったが、大久保は大きくため息をついて言った。
「はぁ~…。分かりやすいな、相変わらず。馬鹿正直というかよ。」
「へへ、すいません。」
「…悩むくらいなら、行動しちまった方がいいぞ。真司。」
大久保は言った。
「えっ…。」
「悩んだ挙げ句、行動しなかった結果、後悔しか生まれなかったら、何の為に悩んだのか意味がなくなっちまう。行動して、それで後悔したとしても、悩んだことに価値が生まれる。」
大久保は続けて言った。
「ジャーナリストだってそうだろ?仕入れたネタを果たして使っていいものなのか悩んで、使わなかったら、他のとこがそのネタ使って儲けられたら面白くない。だったら使えばいい。例えバッシングを受けようが、それが世間の反応として受け入れれば、そこにまた新しい価値が生まれる。人生ってのは、それの積み重ねだろ?だから、悩むなら行動しろ。例え、戦うことだとしてもな。」
「編集長…!?」
大久保の眼差しは鋭くも信念を含んだものだった。
「行ってこい。ただし、ぜっっったいに帰ってこい!お前がいなきゃ、新しいOREジャーナルが進まないからな。」
「…はい!必ず帰って来ます!」
真司はそう言うなり、事務所を飛び出して行った。
そうだ。もう後悔したくない。自分が今まで戦ってきたことだって、人を守りたいという想いがあったから。それはたとえ自分の命を狙うライダーもそうだった。彼らは何者かによって利用されている。ならば、彼らを助ける為に戦えばいい。そして、必ず帰る。それだけだ。
そして、近くの建物のガラスに向け、リュウガのデッキをかざした。すると、ガラスの中からVバックルが浮かびあがり、真司の腰に装着された。
「変身!」
デッキをバックルに装填すると、鎧の幻影が真司の身体に幾重にも重なり合い、やがて黒き龍の騎士・仮面ライダーリュウガになった。今まで龍騎としての姿に慣れていたこと、そして自分が何度も戦ってきたライダーの姿に違和感を感じながらも、一度、深呼吸して落ち着かせた。
「…しゃあ!」
リュウガは、そのままガラスを通ってミラーワールドに突入した。
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「…それで、俺はリュウガとして戦い続けていたんだ。」
真司は、映司に言った。
「そうだったんですね…。でも、だったらすぐに俺に教えてくれれば。」
映司は、今までのリュウガ、もとい真司の行動を思い返しながら言った。
「ごめん。それはもう一人の俺との約束だったんだ。」
「約束?」
「リュウガに成りきる。でないと、あのネグとかいうヤツに正体がバレる。早い段階からバレると後が面倒になる。ってね。それに…。」
「それに?」
「早い段階で、君に打ち明けていれば一緒に戦うこともできたけど、逆を言えば二人だけで15人のライダーを相手取ることになる。流石にキツいだろ?だから…。」
「ライダーバトルを忠実に戦い抜くことで、正体を隠すと共に、自然とライダーを倒せる。」
映司が、真司の言葉を続けて言った。
「そう言うこと。ただ、偽者だって分かってても、やっぱりライダーを倒すのはキツかったなぁ。正直、蓮や木村の偽者を倒した瞬間、自分がリュウガであることブレたしな。」
そう言って、真司は少し俯いた。
「そう、何ですか?」
「あの時。俺が、初めて龍騎として戦ってたあの時も、ライダー同士戦い合うことは反対だったんだ。この力は人を守る為に使いたい。その人ってのは、ライダーも同じだってね。」
「俺も、そうだと思っています!ライダー同士、助け合うべきだって!」
映司は強く頷いた。
「だよな!やっとそう言ってくれる人に会えたよ。ははは。」
真司は笑いながら言った。
「さて…、これからどうするか。ネグを倒すにしても、ライダー達を倒さないことには、ヤツの元にはたどり着けないだろうな。」
真司は立ち上がって言った。
「そうですね。でも、ライダーヤミーを倒した所で、ああやって復活されたんじゃ…。」
映司も立ち上がって言った。
「ん…?でも、さっきライダー、ヤミー?てのが復活した時、ナイトとオルタナティブ・ゼロは復活しなかったな…。何でだ?」
「確かに…。」
真司の問いに、映司は考えた。そして一つの考察が、映司の頭に浮かんだ。
「そうか…。城戸さんの、リュウガの力が関係あるのかも!」
「え…、どういうこと?」
真司が尋ねた。
「グリードを倒すには、グリードの核にあたるコアメダルを破壊しなければなりません。そのコアメダルを壊せるのは、恐竜系の力。恐竜系には幻想の生物も含まれますから、リュウガの龍の力が、ライダーヤミーを形成しているコアを破壊することが出来たんです!」
思えば、ナイトを倒したのはリュウガだった。それが一つの根拠として言える。映司はそう思っていた。
「なるほどな…。けど、ナイトはともかく、オルタナティブ・ゼロは倒してないぜ?それに、ベルデは倒したのに復活したぞ?」
真司が言った。
「オルタナティブ・ゼロは、俺もわかりませんが…。ベルデに関しては、"もう一人のベルデ"の存在がありましたから、そちらを倒したってことなんじゃないかと。」
「てことは、俺が倒したのは木村の方で復活したのが高見沢の方か…。何か、分かったようなそうじゃないような…。」
真司は頭を掻きながら言った。
「残念ですが、俺には恐竜系のメダルは持っていません…。城戸さんが要になります。」
「…よぅし、分かった!とりあえずニセライダー達を倒そう!あんなヤツに取り込まれてしまった彼らの意思を解放する為に!」
「はい!」
映司と真司は、ライダーヤミーを倒すために歩みだした。
同時刻
「うーん、どこに隠れちゃったのかなぁ。」
シザースとアビスは、逃げた映司と真司の行方を追っていた。その口調は、須藤や鎌田のものではなく、やはりネグのそれと同じだった。
「…うん?」
アビスは、一つの黒い人影を見つけた。
それは、二人のライダーヤミーに近づいていた。遠目からでも、それが仮面ライダーであることがわかった。そして、その姿が判明すると二人のライダーヤミーはすぐさまカードを装填した。
STRIKE VENT!
STRIKE VENT!
シザースはシザースピンチを、アビスはアビスクローを装備し、黒いライダーへ向かっていった。
黒いライダーは、一枚のカードを引き抜いた。そのカードには、青い背景に金色の片翼が描かれていた。カードを引き抜くと同時に、携えていた剣が大きな盾に変化した。
黒いライダーは、片翼のカードを盾に装填すると、盾から剣を抜いた。
SURVIVE!
「うっ!?」
黒いライダーを中心に、突風が吹き上がった。突然の突風に、ライダーヤミーは怯んだ。
突風の中、黒いライダーの姿が、黒から青色に変化。マスクには金の装飾が施された。そして、背中に黒い一対のマントが装着された。
「はあっ!」
青くなったライダーは、抜刀した剣で、ライダーヤミーを切り刻む。
「うっ…、何で!?君は消滅したはずだよ??」
アビスが、青いライダーに言った。しかし、青いライダーは答えず、何度も切りかかった。
BLOW VENT!
剣に風の力を上乗せさせると、青いライダーは、ライダーヤミーに向け大きく振り切った。
「はああああ!!!!」
「うげゃあ!!」
胴を切り裂かれた二体のライダーヤミーは、そのまま爆散した。
青いライダーは、変身を解くと黒いロングコートの男の姿になった。
「…。」
黒コートの男は、黙って足を進めていった。
第19話、前回の真司の話の続きとなります。
戦うことに悩む真司を後押しした大久保。彼の言葉がなければ、真司は、再びミラーワールドへ突入することは出来なかったでしょう。
そして、ナイトとオルタナティブ・ゼロらが復活出来なかった理由にリュウガの龍の力、つまり幻獣系による破壊の力によるものであると再認識した二人は、リュウガを軸に戦うことを決意しました。
そんな中、シザースとアビスを倒した謎のライダー。
描写から想像がつくかと思いますが、リュウガによって死んだはずの彼が何故…?
次回もお楽しみに!