ガキィン!!
しかし、プトティラオーズの斧は横から入ってきた剣によって阻まれていた。
「城戸さん…!」
映司とプトティラオーズの間に割って入ったのは、リュウガだった。
「おりゃあ!!」
リュウガは、プトティラオーズを押し返した。
「邪魔するな!」
プトティラオーズは、メダガブリューを持ち直し、リュウガに迫った。
「火野の声!?」
リュウガは、プトティラオーズの声を聞いて驚いていたが、プトティラオーズの攻撃に、冷静に対応していた。
FLAME VENT!
「はっ!」
リュウガは、剣に黒炎を纏わせ、それを斬撃波としてプトティラオーズに放つ。
「はぁ!」
しかし、プトティラオーズもまた、メダガブリューを横に振り切り、冷気を帯びた斬撃波を飛ばした。
バァァァァン!!!!
炎と冷気がぶつかり合い、大きな水蒸気爆発が生じた。
リュウガとプトティラオーズ。互いに一歩も退かず、互角の戦いを繰り広げていた。
「…まぁいいや。」
プトティラオーズが言うと、オーズドライバーからメダルを取り外し、黒スーツの映司の姿に戻った。
「俺を破壊するのは、後でもいい。まずはこの世界の全てを破壊することにするよ。」
黒スーツの映司は、踵を返し何処へと行こうとした。
「待て!」
「うっ…。」
リュウガが黒スーツの映司の後を追おうとしたが、体力の限界によって膝を付いた映司を確認し、そっちに寄った。
「一旦休もう。」
リュウガは映司の肩を担いで歩き出した。
「みぃつけた。」
何処かの高層ビルの屋上で寛いでいたネグがにんまりと笑顔を作って言った。
「やっぱり、ネグの思った通りだ。ライダーヤミーも何体か潰されたけど、君さえ手に入ればどうでもいいよ。」
ネグは、遠く地上でリュウガと戦うプトティラオーズを見ながら言った。
「ただ…。あいつは何なんだ?」
シザースとアビス、二体のライダーヤミーがやられた。幸い、メダルを破壊する力がなかったのか、破壊まではされていないようだ。しかし、ライダーヤミーを倒した存在は、紛れもなくミラーワールド由来のライダーだった。
「う~ん…。リュウガもそうだけど、どこから紛れ込んだのか…。まぁ、いいや。」
そう言ってネグは再びごろんと身体を横にした。そして、空に右手をかざした。
「もうすぐで、全てが手に入るよ…。うひゃ、うひゃひゃひゃ!」
真司に連れられて来たのは、小さなカフェだった。
「ここは、俺が世話になった所だ。ある意味、始まりの場所とも言えるのかな。」
カフェの2階、客室に入り、真司は映司をベッドの上に座らせた。
「ありがとう、ございました。」
映司は礼を言った。
「良いってことよ。連戦で疲れただろうしな。」
真司が言った。
「…残りのライダーは?」
映司が真司に尋ねた。
「新たに現れた4体も倒した。あと5体か?」
真司は、言うと深いため息をついた。
「はぁ~…、残りが、龍騎、王蛇、オーディン、シザースにアビスか。シザースとアビスはともかく、あの3体が厄介だな。」
「そうですね…。」
一瞬の間が空いた後、再び真司が話しだした。
「そういえば、あの黒いスーツを着た火野。あれに心当たりはないか?」
「もう一人の俺、ですか?」
真司の問いに、映司は直ぐには答えられなかった。黒スーツの映司。何者なのか、考えはしたが明確な答えは見つけられないでいた。しかし一つだけ、思う所はあった。
「俺も、良くはわからないんですけど…。あれは俺の、もう一つのたどり着いた結果。な気がします。」
「え?どういうこと?」
真司は、映司に尋ねた。
「…俺、実は親が政治家なんです。ある出来事から、実家に帰る選択肢を捨て、旅をしていたんです。もし、実家に戻っていたのなら、俺も政治家になってたんじゃないかなって。」
「…それで、スーツ姿ってことか。だとしたら…。」
真司は納得した様子だった。
「あれは、お前の裏の部分。なのかもな。」
「俺の…、裏?」
「…さっきも話したけど、リュウガの力は、元々もう一人の俺が持っていたものなんだ。そのもう一人の俺ってのは、まさしく俺の裏の姿、心の闇を映したものだったんだ。まぁ、未だに自分の闇って言われても、ピンと来ないんだけどね。」
真司は言った。
「その、もう一人の城戸さんはどうなったんですか?」
映司が尋ねた。
「あいつは、俺を取り込もうとした。そうすることで、鏡の世界でしか存在できない自分を現実世界での存在となろうとしたんだ。でも、そんなことされたら、俺が俺でいられなくなっちまう。だから、俺は何度もあいつと戦った。」
真司は一呼吸置いて、言葉を続けた。
「けど、倒してもあいつは何度も現れた。そりゃそうだ。あいつは俺だからな。極端な話、あいつを消すには自分が死ぬしかない。だから、気づいたんだ。抗うんじゃなくて、もう一つの自分の一面と向き合う必要がある。てね。そしたら、あいつは消えた。いや、俺の中に戻ってきた。て言った方が正しいかもな。」
「つまり…。あのもう一人の俺と戦う為に、自分の闇と向き合えってことですか?」
「多分な。もう一人のお前は、やたらと破壊しようとしていた。それについて、何か思い当たる節はないか?」
真司の問いに、映司は再び考えた。そして、黒スーツの自分が投げ掛けてきた言葉を思い出した。
『助けが必要な状態や場面、それを生み出した元凶を破壊する力…。つまり、俺の願いは、いや、君の願いは、全てを破壊することさ!』
『どこまでも届く腕?無限の絆?まだ、そんな綺麗事を言っているのかい?綺麗事を並べた結果、どうなったか、忘れた訳じゃないだろう。』
『自分を偽るな。己の欲望に従えばいい。破壊という、本能のままに…!』
「俺は…、恐いのかもしれません。」
映司は呟くように言った。
「恐い?」
「昔、良かれと思ってやった俺のある行いのせいで、一つの村が消えてしまいました。そして、自分もまた命の危機にありました。でも、俺が政治家の息子だという理由で、簡単に助けられ、メディアにも良いように報道されました。」
映司は続けて言った。
「その日から、俺は生きる意味も、自分の欲も無くしました。だから、欲望の王・オーズになれた訳なんですけど…。そして、俺の無欲に呼応して、あの紫のオーズの力を手にしてしまいました。あれは全てを無に帰す力…。目に映るもの全てを破壊する危険なものでした。でも、仲間のおかげで、俺は、ある欲望を手にしたんです。」
「欲望?」
「はい。誰かが助けを求めて手を伸ばしていたならば、その手は絶対に離さない。どこまでも届く腕、無限の絆。それが、俺の望んだものでした。その欲望が破壊の力を抑えていたんです。ただ…。」
映司は、自分の手のひらを見ながら言葉を続けた。
「もし…。もし、俺の手が届かなかったら…。また、目の前で誰かが傷つくことになってしまったら…。そう思うと、恐いんです。今まで、意識して来なかったから、余計に。」
「…その恐怖の表れが、もう一人の火野だって言うのか?」
「多分…。あいつは、助けが必要な状況を破壊することが、俺の願いだと言いました。」
「そういうことか…。」
真司は、映司の話を聞いて納得した様子をみせた。
「…。そんな自分と向き合えと?」
映司は、改めて真司に尋ねた。
「それしか、やつを消す方法はない。ただ、それを乗り越えられれば、映司は本当の自分を知ることができるはずさ。」
真司が答えた。
「本当の自分…?」
「今の映司とあの黒スーツの映司。どっちが本当の自分なのかな。戦って向き合わないことにはわからないんだよ。自分のことなんて、自分じゃよくわかんねぇしな。ははっ」
真司は笑いながら言った。
映司も笑いかけたとき、目眩が映司を襲った。
「大丈夫か!?」
「大丈夫、です…。ちょっと横になってもいいですか…?」
「…ああ。休んだ方がいいな。」
真司がそう言うと、映司は倒れ込むように、ベッドに横たわった。
「…これ以上、無茶はさせられないな。」
真司は一言呟くと、部屋を出ていった。
真司は、再び噴水広場へ足を運ばせていた。これが最後の戦いだという決意と共に。
「まさか、自分から死にに来るとはねぇ。」
広場には、榊原が待っていた。
「俺は、この戦いを終わらせに来た!」
真司が榊原に向かって言った。
「そう言う割には、火野の姿が見えないけど?」
榊原は挑発するように言った。
「あいつがいなくても、俺は戦う。」
真司はそう言うと、ジャケットのポケットからリュウガのデッキを取り出した。
「あ、そう。でも、悪いけどこっちは手加減しないで行かせてもらうねぇ?」
榊原が気味の悪い笑顔を作ると同時に、アビスとシザースが姿を現した。
「関係ない…!これで終わりにする!」
真司は、リュウガのデッキを前に突き出した。
「うひゃひゃ!じゃあお望み通り、終わりにさせてやるよ!」
榊原もまた、龍騎のデッキを掲げた。
「「変身!!」」
真司と榊原、それぞれ黒と赤の龍の鎧を纏った。
第21話、いかがでしたでしょうか。
間一髪の所、リュウガの介入により、映司は助かりました。ちなみに後の描写はありませんが、インペラー(ヤミー)は、リュウガがさくっと倒しました。
カフェ・花鶏にて、真司は自身の経験から黒スーツの映司と向き合うことを諭します。映司は、もう一人の自分と向き合うことができるのでしょうか。
そして、休む映司に代わり、真司は最後の戦いに望みます。対するは、榊原の龍騎、シザース、アビス。
戦いの行く末は。
次回もお楽しみに!