明かされませんでしたm(__)m
「香川…?悪いが…。」
蓮は青年が口にした人物の名を呟いた。そして、知らない。と答えるつもりだった。しかし、蓮はその名を知っているような気がしていて言葉を詰まらせた。俳優業界の人間だろうか。
「わからないな。俳優の誰かか、制作関係の誰かか?すまない、俺もこの業界に入ってまだ…。」
「そうじゃありません。」
青年がきっぱりと言った。
「貴方はご存知のはずです。香川英行と貴方は、以前お会いしている。」
「何…?」
しかし、やはり蓮は香川という人物と会っている気がしていた。そんな記憶がないはずなのに。
「あの…。もしかしてどなたかとうちの主人と間違われているのでは?」
恵里が青年に言った。
「は…?そんなはずは…。本当にご存知ないんですか?」
青年は少し戸惑いを見せた。
「…そもそも、誰なんだ君は。」
蓮が青年に尋ねた。
「僕は…。」
青年が答えようとした時だった。
きゃあああああ!!!!
うわあああああ!!!!
突然、辺りが騒々しくなった。
「っ!!」
「何だ!?…あ、おい!!」
青年は、悲鳴が上がった方向へ走り出していた。
「ちょっと、蓮!?」
蓮もまた、青年の後を追って駆け出した。
「何だこれは!?」
蓮の眼にあり得ない光景が飛び込んできた。
「キシャァァァァ!!」
全身銀色をした、得たいの知れない化物が人々を襲っていた。それも1体だけでなく複数体も。
「逃げて、早く!!」
青年が逃げ惑う人達に叫びながら行った。しかし、青年は、逃げる人達とは逆方向、銀色の化物の元へ向かっていた。
「何を考えて!!」
蓮も同じく青年の方へ向かった。
「うわああ!!」
蓮は、子供が化物に襲われそうになっている所を見つけた。
「止せ!!」
蓮は走った勢いのまま、化物に体当たりをした。
「ンギッ!?」
「早く行け!!」
子供を逃がした蓮は、化物の方に身体を向けた。得たいの知れない存在。恐怖を感じるはずだが、不思議と蓮はそれを感じていなかった。
「ギギャ!」
化物が蓮に襲いかかる。
「はっ!」
蓮は、化物の攻撃をかわし、蹴りを浴びせた。しかし、化物の身体は堅くまともに蹴りが入った感触は無かった。
「ギィ!!」
「うわっ!?」
化物は、蓮の蹴りを何とも思っていないようですぐさま蓮に反撃した。
「秋山さん!!何故変身しないんです!?」
青年が蓮に言った。
「何を言っている!?」
蓮は青年に聞き返した。
「っ!」
青年は近くにあった建物の硝子に身体を向けた。
その時、蓮は再び不可解な現象を目撃した。
青年は懐から四角い何かを取り出し、硝子に向け突き出した。すると、硝子からバックルのようなものが現れ、青年の腰に装着された。青年は化物の方へ身体を向け、そして、四角い物体を宙に投げた。
「変身!!」
青年は投げた四角い物体を手に取り、バックルへ装着した。
すると硝子から鎧の幻影が幾つも現れ青年の身体に重なっていった。そして、青年は藍色に銀のラインが入った鎧を纏った。
「…あれは!?」
蓮は青年が変身した姿に見覚えがあった。しかし、それが何なのかは、未だに思い出せないでいた。
鎧を纏った青年はバックルに装填した四角いものからカードを一枚引き抜き、右腕の手甲へリードさせた。
SWORD VENT!
女性の音声と共に、硝子から刀身の細い剣が現れた。鎧を纏った青年は、剣を手に取り化物へ攻撃し始めた。
鎧を纏った青年は、化物を次々と切り伏せていく。
シャリンシャリン。
時折、化物からはメダルのようなものが血飛沫のように吹き上がる。
「数が多い!」
鎧を纏った青年は、再びカードを二枚のカードを引き抜いた。
SHOOT VENT!
TRICK VENT!
硝子の中から、拳銃に似た銃器が現れ、鎧を纏った青年の手に納まった。その瞬間、鎧を纏った青年から5体の分身体が生み出された。
「はっ!!」
「ンギッ!」
剣と銃を使い、分身体が敵を次々と撃破していく。
化物の数は、ついに最後の一体となった。
「逃がしません!」
鎧を纏った青年は、何かのクレストの描かれたカードを引き抜いた。
FINAL VENT!
硝子から、今度はバイクが一台飛び出した。
青年は、それに跨がると化物に向け、銃を放った。
「ギ!?」
銃弾は、まるで投網されたようにネットとして広がり、化物を捕らえた。
「はああああ!!!!」
青年は剣をバイクの外に向けながら、バイクを独楽の要領で高速回転させた。そして、速度の乗った刃が、すれ違い様に化物を両断した。
「よし…。て、あれ?」
青年は、安全を確認しながら元の姿に戻った。その時既に、蓮達の姿は無かった。
「しまった。せっかく見つけたのに。」
青年は肩を落としながらも、蓮達を探しにその場を後にした。
「今のは一体?」
遠くで戦闘を見届けていた比奈が、士に尋ねた。
「あれは、オルタナティブ。疑似ライダーだな。」
士が答えた。しかし、どこか曇った表情になっていた。
「…どうかしたのか?」
後藤が士に言った。
「…。龍騎の世界は、かつてライダーが存在していた世界。今となっては、ライダーバトルの果てにその全てが消滅した…。」
士が答えた。
「ライダーが消滅した?だが、あの疑似ライダーとかいうのは?」
後藤がさらに尋ねた。
「そればかりか、死んだはずの秋山蓮も、ここでは生きている。」
士は、妙だと言わんばかりに言った。
「それに…。さっきの化物。あれってヤミー、ですよね?」
比奈が士に言った。
「しかし、あの見てくれ。龍騎の世界の化物・ミラーモンスターそのものだ。何がどうなっている…?」
士が言った。
「…これからどうするんだ?」
後藤が言った。
「ともかく、この世界を調査する必要がありそうだ。まずは、聞き込みだな。」
士はそう言うと歩き始めた。
「聞き込みって…。というか、士さんのその格好は?」
比奈が士の姿を見て言った。
士はこの世界を訪れる前まで白衣を着ていた。しかし、今は背広にピンクの腕章を着けていた。
「どうやら、この世界ではATASHIジャーナルのジャーナリストらしい。この世界は、中々粋な計らいをしてくれる。いくぞ。」
「…どういう意味です?」
「…さぁ?」
士に促され、比奈と後藤は疑問を持ちつつも行動し始めた。
「行くのか、恵里?」
「うん。さっきの騒動で、人手が必要だから。」
公園での一件から逃れた蓮と恵里は自宅へ帰っていた。それから間もなく、恵里の勤める病院から連絡が入り、やむを得ず職場へ向かうこととなってしまったのだ。
「そうか。送っていくよ。」
蓮は黒いロング丈のジャケットを羽織りながら言った。
「いいよ、蓮だって怪我してるじゃない!」
「大丈夫だ。幸い掠り傷程度だからな。それに、恵里の身に何か起こった方が、俺は辛い。」
「…ごめんね、ありがとう。」
蓮はバイクに跨がり、恵里を自身の後ろに乗せ、走り出した。
「ありがとう、行ってくる。」
「ああ。行ってらっしゃい。」
病院に着き、恵里を降ろした蓮は、再びバイクを走らせた。
「せっかくの休暇だったのにな…。」
蓮は、バイクを走らせながら、ぼそっと呟いた。
ごく当たり前の日常が、突如現れた化物のせいで壊されてしまった。そもそも、あれは一体何だったのだろうか。それに、自身の前に現れた青年。彼は何かの力で鎧を纏い、化物と戦った。あの鎧。蓮は既視感があった。結局、それが何なのかはわからない。
ただ。
『何で変身しないんです!?』
青年は、蓮にそう言った。
変身。もし、青年が鎧を纏ったことを指すとしたら、自分にもそんな力があるのだろうか。だが、そんな記憶、蓮は持ち合わせていなかった。しかし、確かに記憶の欠落があるのは承知していた。それに、自分では説明できない身体能力の高さも、説明できるのではないか。だとするならば…。
「…まさかな。」
蓮は馬鹿馬鹿しいと思い、考えることを止めた。
仮に自分が鎧を纏って戦っていたとして、何のために戦うというのか。あんな化物相手に、危険過ぎる。正義のヒーローをしていたとでもいうのか。
やはり、自分も鎧を纏って戦っていたなど、到底信じられなかった。
暫くバイクを走らせていると、ある喫茶店が眼に入った。
せっかくの休日だ。そう思った蓮は、その喫茶店にバイクを停めた。
『TEA 花鶏』
看板に刻まれた文字に既視感を感じながらも、蓮は入店した。
店内はあまり広いとはいえない。しかし、それが返ってアットホームさを醸し出していた。どこか落ち着く店内には、男女3人の客がテーブルに着いている程度で、他に客はいなかった。
蓮は、目の前のカウンター席に着いた。
「すみません。」
蓮は、店の奥へ声をかけた。
「はーい。」
奥から、若い男の声が聞こえてきた。
「お待たせしてすみません。ご注文は?」
店員と思われる青年が尋ねてきた。
「珈琲は置いてないのか?」
「あ、お客さん初めてのご来店ですね?うちは紅茶専門店でして、珈琲は置いてないんですよ。」
店員が答えた。
「そうだったのか。すまない。」
「いえいえ。もしよろしければ、こちらで紅茶を用意しても?うちの店長が直接作るものでして、オススメですよ?」
店員がにこっと笑いながら言った。
「じゃあ、それを。」
「ミルクとシュガーは?」
「ストレートで頼む。」
「かしこまりました。」
店員は、厨房の奥へ向かった。
「母さん、紅茶頼まれたよ。え?違うよ、母さん。男の方だよ。まったく…。」
奥の方で店員が言っていた。
暫くすると、店員が紅茶をもって現れた。
「お待たせ致しました。」
「店長って、君のお母さんなんだな。」
蓮が尋ねた。
「え…、聞こえてましたか?お恥ずかしい。」
また店員がニコニコしながら言った。
「この程度の規模ですから、昔は僕の母が切り盛りしていたんです。最初は一人で頑張っていたみたいなんですけど、従姉妹の姉さんや、何人かバイトの方がお手伝いしていたらしいんです。」
「そうか。」
「ただ、いつしかそのバイトの方も従姉妹の姉さんも姿をくらましちゃいまして…。」
「姿を?」
蓮が言った。
「はい…。特に、従姉妹の姉さんが消えてしまったことが、かなりのショックだったみたいで、それから何だか生きようとする気力というか、弱々しくなってしまったんです。お店を閉じようとしたんですけど、それを聞いて、僕がお店を続けようとこうして何とかやってるって訳です。」
店員が言った。
「そうだったのか。すまない、聞くべき話じゃなかったな。」
蓮は店員に謝った。
「あ、いえいえ。僕が勝手に話しただけですから。それにお陰さまで繁盛とはいかないですが、お客さんも来てもらえて、お店が続けられてますし。母さんも、紅茶を作ることで、ある種の気晴らしにしてるところもありますから、今さら閉じようとは思いませんよ。」
「そうか。」
蓮は微笑んだ。
「…あ、すみません。ずっとべらべらと喋ってしまいまして。ささ、当店自慢の紅茶をお楽しみください。」
店員はペコッと頭を下げると、再び厨房の奥へ消えていった。
蓮は、紅茶をポットからティーカップへ注いだ。紅茶独特の香りが鼻を通っていった。なるほど、香りだけでもとても美味しそうだ。
蓮は一口、紅茶を口に含んだ。程よい温度のせいか、口の中を紅茶の風味が広がっていく。糖類を入れた訳ではないのに、この紅茶の特徴なのか、仄かな甘味が舌の上を通っていく。喉を通り過ぎると、幸福感が身体全身に広がっていくのを感じられた。店内の雰囲気と合わさり、穏やかな気持ちになった。
そして、どこか懐かしさも感じていた。
「あのぅ…。」
暫く紅茶を楽しんでいる蓮に、先程テーブルに着いていた女性が声をかけた。
「何か?」
蓮が言った。
「俳優の、秋山蓮さんですよね?」
女性が言った。
「そうだが、君は?」
「あ、えと…。私は…。」
ガタッ!
女性が答えたかけたとき、さらにテーブルに着いていた男が立ち上がり、蓮の元へやってきた。
「やはり秋山蓮さんでしたかぁ!失礼、わたくしATASHIジャーナル編集部の、門矢士です。」
男はそう言いながら、名刺を蓮に渡してきた。名刺には男の名前と所属、そして、バーコードのようなマークが記されていた。
サイドストーリー編
第3話、いかがでしたでしょうか。
前回、蓮に接触してきた謎の青年。突如、出現した化物を相手に、鎧を纏って戦い始めます。それは、後に士が言い当てた、疑似ライダー・オルタナティブ。その発展型・オルタナティブ・セカンドです。設定は以下の通りです。
〈オルタナティブ・セカンド〉
かつて香川英行と仲村創が変身した疑似ライダー・オルタナティブシリーズの発展型。香川の死亡と教え子東條悟の暴挙により、香川がまとめていたミラーワールド関連の資料は殆ど消されてしまった。しかし、研究室とは別の場所で保管されていた『香川の手記』に記されたものを元に、新たに開発されたのがオルタナティブ・セカンドである。今までのオルタナティブシリーズの黒い体色に金のラインが入っていたものと違い、体色はネイビーブルーで銀のラインが入っている。
基本スペックはオルタナティブ、オルタナティブ・ゼロと同等であるが、アドベントカードの種類が増えていて多彩な攻撃を繰り出すことが可能となっている。しかし、オルタナティブ・セカンドが開発された時点では、既にミラーワールドは閉ざされていた為、ミラーモンスターと契約してはおらず、FINAL VENTも独自のものになっている。また、ミラーワールドへ突入する機能も備わっていない。
このオルタナティブ・セカンドを纏う青年の正体とは。
また、龍騎の世界へ訪れた士一向でしたが、既にライダーのいない世界となっているにも関わらず、疑似ライダーの存在や死亡したはずの蓮の存在から、士は違和感を覚えます。
今回、士に与えられた役割は『ATASHIジャーナルのジャーナリスト』。ディケイド本編における龍騎の世界に存在していた出版社です。
終盤、ついに蓮と士が対面します。
物語の行く末は。
次回もお楽しみに!