「門矢…士?ジャーナリストか。悪いが取材は事務所を通して…。」
「事務所からの許可は頂いていますから、ご心配なく。」
士はそう言いながら、懐から許諾書のような紙を一枚、蓮に見せた。
「いつの間に…。」
後藤はぼそっと呟いた。
「事務所からそんな話聞いてないが…。店の迷惑にならないか?」
「お構い無くぅ!」
厨房から店員の声が響いた。
「…はぁ。わかった、何が聞きたい?」
蓮は取材にしぶしぶ承諾した。
「では、さっそく。…ほら。」
士は、突然後藤に促した。
「は?何で俺が?」
「いいから。」
士はピンクのカメラを構え、写真を撮り始めた。
「…じゃあ、まず俳優になったキッカケを…。」
「おい。何を真面目に取材しようとしてるんだ?」
後藤が言い出した途端、士が口を挟んだ。
「くっ…、だったらお前がやれよ!」
後藤が言った。
「全く…、出来の悪いアシスタントだな。」
士がはぁ、と溜め息をついた。
「こんの…。」
「後藤さん、堪えて!」
比奈が後藤を宥めるように言った。
「…コントを見せる積もりなら他を当たってくれ。じゃあな。」
3人の様子を見ていた蓮は、大きな溜め息をつきながら言った。そして、席を立ち店を出ようとしていた。
ガチャっ
再び店の扉が開いた。
「見つけましたよ、秋山さん。」
「!?お前は…!」
店に入ってきたのは、あの時オルタナティブと呼ばれる疑似ライダーに変身した青年だった。
「よく思い出してください!貴方は間違いなく、香川英行をご存知のはずです!」
青年が蓮に詰め寄りながら言った。
「知らないものは、知らない!そう言っただろう!」
「いいや、あんたは知ってるはずだ。」
蓮が青年に答えた瞬間、士が口を挟んだ。
「…何だと?」
蓮が言った。
「あなたは…?」
青年もまた士達の存在に気づいた。
「その青年がいう香川英行。いや、オルタナティブ・ゼロをあんたは知っている。それは、あんたもライダーとして戦っていたからだ。」
「俺が…、ライダー?…うっ!?」
蓮は、突然頭痛が走ったことで頭を抱えた。
その瞬間、黒い鎧を纏った二体の騎士が戦っている光景が浮かび上がった。
「…あり得ない。そんな筈はない!!」
蓮はそう言うと足早に店を出ていってしまった。
「あ…、いいんですか?」
比奈は、蓮が出ていった扉を見つめながら士に言った。
「良くはないが…、あの様子なら、失われた記憶を刺激したようだし、まぁ問題はない。」
士はそう言うと再びテーブルに着いた。
「あの…、あなた方は一体…?」
青年が士達に尋ねた。
「あ、私は…。」
「お前こそ何者だ?ライダーは全て消滅したはずだが、何故オルタナティブに変身できる?」
比奈が名乗ろうとしたが、士が遮り青年に聞いた。
「何故、オルタナティブ・セカンドをご存知なんですか?」
青年は目を丸くして言った。
「まぁ…こちらも色々と訳ありでな。」
士が言った。
「…失礼しました。確かにこちらから名乗るべきでしたね。僕は、香川裕太といいます。」
青年・香川裕太はそう名乗った。
「香川…?香川英行の…。」
「はい。息子です。」
士の問いに裕太は答えた。
「父を知っているのですか?」
「大体な。」
「それに、あなたは秋山さんについても何かご存知の様子…。あなたも、もしかしてライダーなのですか?」
裕太が士に尋ねた。
「通りすがりのな。ただ、俺とこいつは、この世界のライダーじゃない。」
士は後藤を指しながら言った。
「どういうことです?」
裕太の問いに対し、士は、後藤達に説明したことと同じことを裕太に話した。
「にわかには信じがたいお話ではありますが…。では、あなた方は、仲間のライダーである火野映司さんを探しにこの世界へ来た。ということですか?」
裕太は士の話したことを確認した。
「そういうことだ。」
「今度はこちらの番だ。君は何故秋山蓮にコンタクトを取ろうとしているんだ?」
後藤が裕太に尋ねた。
「…父を探しているんです。」
「父を?」
後藤が言った。
「父は、僕がまだ小さい頃に姿を消しました。警察にも遭難届けを出したのですが、結局見つからず…。母も、父が行方不明になったことで憔悴しきってしまい…、数年前に亡くなりました…。」
裕太がうつむきながら言った。
「それから、父は死んだことになり、遺品整理をしている中で、これを見つけたんです。」
裕太はスラックスのポケットから古びた手帳を取り出した。
「それは?」
後藤が尋ねた。
「父が残した日記です。ここに、ライダーバトルのことが事細かく書かれていました。それで、父がこのライダーとして戦っていた事を知りました。」
「…だったら、察しがついているんじゃないのか。」
士が言った。
「それは…。分かっているつもりです。正直、この日記を見つけるまでは生きていてほしいと願っていました。でも…。ただ。」
「ただ?」
比奈が言った。
「ライダーバトルは、ライダー達が己の願いを掛けて戦うと、これには記されています。馬鹿げたことだとも書かれていましたが。それでも、父は疑似ライダーとなって戦う事を選んだ。父が何を掛けて戦ったのか。それを知りたいんです。」
裕太が言った。
「知ってどうする?」
士が言った。
「分かりません…。でも、もし父がライダーとして戦い、志半ばで倒れたのなら、その意思を僕は継がなくちゃいけないと思うんです。だから、僕もライダーとなる道を選んだんです。」
裕太は、デッキを見せて言った。
「父の日記には、オルタナティブの開発データも遺されていました。それを基に、次世代型オルタナティブシリーズ、セカンドを開発しました。残念ながら、ミラーワールドへの突入機能までは再現できませんでしたが。」
「しかし、この世界のライダーは皆死んだのだろう?今更ライダーとなる理由は何だ?」
後藤が裕太に尋ねた。
「セカンドは、対ライダー戦を想定していません。強いて言うならば、これが僕の正義なんです。」
裕太が言った。
「正義、ねぇ。」
士がぼそっと言った。
「でも、その力でさっきはヤミーを倒せましたよ!凄いですね。」
比奈が感心して言った。
「あ…、いえ、そんな大したことでは…。ええっと…。」
裕太は何故かたじろぐ様子を見せた。
「えへん…。そうそう、秋山さんですが、父の日記に記されていたライダーの中で、彼だけは生きていたんです。だから、父の最期を知っているのではないかと思って…。」
裕太は咳払いをしながら言った。
「だが、肝心の秋山はライダーだった頃の記憶を無くしている。骨が折れるな。」
士が言った。
「…手を組みませんか?」
裕太が言った。
「何?」
士が言った。
「目的は違えど、秋山さんを目標としていることは同じなのですから。一緒に秋山の記憶を取り戻すのは、どうでしょう。」
「そんなことをして、何のメリットが…。」
「いいじゃないですか!そうしましょうよ!」
後藤が言う前に比奈が提案に乗った。
「映司くんを見つける為にも、ね!」
「あ、えと…。い、いかがでしょうか?」
裕太が、比奈から視線を反らして言った。
「…まぁ、早いとこ何とかしないと、お前らオーズの世界の消滅も早まってしまうからな。仕方がないか。」
士が言った。
「…分かりました。」
後藤もやれやれと言わんばかりに言った。
「じゃあ、日を改めて、秋山さんを探しに行きましょう!」
「そうだな、今日の所は休んで、秋山蓮を探すのは明日だな。」
裕太の提案に後藤と比奈は承諾した。
「それでは、また。」
裕太は、そう言って店を出ていった。
「私たちも、宿を探しましょうか。」
「そうだな。」
比奈と後藤も店を出ようとした。
「…。」
「どうかしたか?」
後藤は、鏡を見つめている士に言った。
「…先に行け。後から追い付く。」
士が後藤に言った。
わかった。と一言言い残し、後藤は店を出た。
「…こそこそ隠れていないで、さっさと出てきたらどうだ?まぁもっとも、"そこ"からは出られないようだがな。」
士が鏡に向かって言った。
すると、鏡の縁から、ベージュのロングコートを着た細身の男が姿を現した。士の後ろに立っているのだが、士が振り返ってもそこには誰も立っていなかった。
「神崎士郎、だな?」
『…お前が世界の破壊者・ディケイドか。』
細身の男・神崎士郎が言った。
「光栄だな。ミラーワールドの創造主様にも周知して頂けていたとはな。」
士は大袈裟に言った。
「…だが、本来ならあんたはとっくの昔に消滅しているはずだ。それが、何故…?」
『この世界の俺は、な。』
士の問いに、神崎が答えた。
「どういうことだ?」
『ミラーワールドが、いくつもの世界と繋がった。ミラーワールドを再び開いた、異物を排除する為に。俺は、その繋がった世界から来た。』
神崎が言った。
「なるほどな。あんたは、妹を助けたいが為に何度もゲームをやり直したらしいからな。その数だけ、平行世界がいくつも生まれたという訳か。それで、平行世界にいたあんたが、ここに現れた理由は何だ?」
士は、神崎に尋ねた。
『門矢士。秋山蓮の、ライダーとしての記憶を取り戻せ。偽りのライダーバトルを終わらせ、ミラーワールドを閉ざす為にも。それが、お前達の望みを叶えることにも繋がる。』
「ミラーワールドを閉ざす?」
士は、神崎の言葉に違和感を感じた。
「ミラーワールドはあんたが作り出した世界だろ?妹に新たな命を授ける為に。秋山蓮をライダーとして送り出し、世界を閉ざす。それに何の意味がある?寧ろ、ライダーバトルを継続させる方が、あんたにとって都合がいいんじゃないのか?」
「…優衣は、それを望んでいない。」
士の問いに、神崎は一言答えた。
「…そうか。」
士もまた、それ以上追及しなかった。
『余り時間はない。急げ。秋山蓮の記憶を取り戻せ。』
神崎は士にそう言うと、鏡の額縁の外へ消えていった。
「誰かに指図されるのは好きじゃないが、仕方がないか。」
士もまた、店の外へ出ていった。
俺が、ライダーだった?
蓮は士とかいう男の話が信じられなかった。しかし、ライダーだったという話を聞いた瞬間、ライダーと思われるビジョンが見えた。前に夢に見た光景にそっくりな。
やはり、自分はライダーなのか。だとするならば、何故、自分にライダーとしての記憶がないのか。
「俺は、一体何なんだ。」
自宅へ戻った蓮は、洗面台の鏡を見つめて言った。すると、一瞬だが、蓮の顔を仮面が覆い被さった。
「!?」
蓮はすぐさま水を流し、顔を洗った。何度も何度も。
「はぁ…、はぁ…。」
蓮は再び鏡を見た。そこには、水が滴りながらも困惑している蓮の顔をが映っていた。
第5話、いかがでしたでしょうか。
ようやくオルタナティブ・セカンドに変身する青年の正体が明かされました。
香川裕太。龍騎本編でもちょろっと出てきた、香川英行の息子です。
前回明かされたナイトの世界において、唯一ライダーの肉親として残されていたのが彼だったので、一種の舞台装置として登場させました。
そして、裕太が蓮を探す理由。それは、父・英行の最期と彼の遺志を知る為でした。
目的は違えど、蓮を探す裕太と士達一行は協力することを約束しました。
そして後半、士の前に、龍騎の世界での全ての元凶である男・神崎士郎が現れました。彼の望まない形で開かれてしまったミラーワールドを閉ざす為に、神崎もまた蓮を追っていました。
そんな蓮も、徐々にライダーとしての記憶を取り戻しつつあります。蓮は、再びライダーとして、ナイトとして立ち上がることができるのでしょうか。
次回もお楽しみに!