乱世を駆ける者 未来を歌う者   作:妄想族

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 これは「アイドリッシュセブン」と「刀剣乱舞」のクロスオーバー作品です。何番煎じネタかもしれませんが、自分の妄想が止まらず書いてしまいました。また作者はアイナナもとうらぶも、忙しくてまともにプレイできていない、にわかプレイヤーです。そんな人が書いた作品ですが、それでも良いという方はどうぞ!


第1話「謎の男」

 それは季節が秋から冬へと移り変わり始めた頃の、とある日の夜の出来事だった。

 

 IDOLiSH7のメンバー全員は今日の収録を終えて、彼らの寮への帰り道を歩いているところだった。

 

「みんな今日もお疲れ!」

 

 三月が帰り道を歩きながら、疲れを感じさせない程に明るい声で言う。ユニット結成当初は苦労も多かったが、七人は今や大人気アイドルとして多忙な毎日を送っている。今日の仕事は七人全員が集まっての冠番組の収録だった。そして無事に収録を終えた彼らは、そのまま七人で帰ることにした。

 

 大和は収録が終わってワイワイと騒ぐ仲間達を眺めていた。今日の収録での失敗(といっても些細なことなのだが)について、一織と陸が相変わらず喧嘩をしている。しかし二人共どこか楽しそうだ。そんな二人の横では、女性の姿を見つけたナギが思わずガールハントに繰り出そうとしている。そんなナギを三月が必死に止めている。環は帰り道の途中にあるコンビニで買った大量の「王様プリン」が入ったレジ袋を大事そうに抱えている。壮五は「プリン以外もちゃんと食べないと!」と、心配そうに環へ声を掛ける。

 

(楽しそうなことだ)

 

そうこう騒いでいる内に寮が見えてきた。大和は寮の方に顔を向ける。そして「あれ?」と声を漏らした。

 

「大和さん、どうかしましたか?」

 

 陸と喧嘩していたはずの一織が、一番に大和の声に気が付いた。一織の声に釣られて、他のメンバーも大和を見た。一斉に六人からの視線を浴びることになった大和は、何だか居心地が悪い気分もしたが、彼らの疑問に答えるために人差し指を指して言った。

 

「あいつ、誰だ?」

 

 大和が指差した方向に六人は視線を向けた。

 

 寮の前には一人のスーツ姿の男が立っていた。男はこちらに背を向けて立っている。だから後ろ姿しか分からない。分かることは、男の白銀の髪が美しく煌めいていることと、細身の身体が均整にとれていることだけ。

 

 IDOLiSH7は見覚えの無い男に首を傾げた。自分達の寮の場所を知って押しかけて来たファンだろうか。それとも別の用件があって尋ねて来た者だろうか。大和は取り敢えず、男に声を掛けることにした。

 

「すみません。どちら様?」

 

 大和に声を掛けられた男は七人の方へ振り向いた。

 

 大和は目を見張った。他の六人も同じように驚いて声も出なかった。振り向いた男があまりにも美しかったから。

 

 男の年齢は大和と同じか、少し年上くらいだろうか。肩まで伸びた白銀の髪が夜風に吹かれて靡いている。肌は新雪のように白く透き通っている。そして白銀の髪とは対照的な、月を思わせるような金色の瞳が輝いている。どこか儚げで浮世離れした絶世の美男がそこに立っていた。

 

(まるで研ぎ澄まされた刃のようだ……)

 

 大和は自分でもなぜそう思ったのかはよく分からないが、目の前の男の美しさについてそんな感想を抱いた。仕事柄いわゆるイケメンと呼ばれる人達と仕事をしているし、大和自身も仲間のIDOLiSH7メンバーも世間からはイケメンとして扱われる。つまり大和を含めIDOLiSH7全員、イケメンを見慣れている。だが目の前の男は、そんなイケメン慣れしているメンバー全員を驚かせる程の美貌を持っていた。

 

 男は声も出せずにいるIDOLiSH7を見て、おもしろそうに笑っていた。

 

「おっ、お前さん達が『あいどりっしゅせぶん』って奴らか? お前さん達の『まねーじゃー』に会いたいんだが…」

 

 男の言葉に、IDOLiSH7のメンバー達は顔を見合わせた。彼らのマネージャーとは紡のことだ。いつもなら彼女はIDOLiSH7と一緒に行動しているのだが、今日は別の用事があるらしく、彼らとは別行動だった。だから彼女は今この場にはいない。男は彼女に用があるという。紡にどんな用事があるというのだろう。それに……

 

「……なんでうちのマネージャーに会うために、俺達の寮に来たんですか?」

 

 大和が男に尋ねる。IDOLiSH7のマネージャーに会いたいなら、小鳥遊事務所に直接向かえば良い。マネージャーに会いたいからと、そのマネージャーが担当するアイドルの寮を訪問するというのは不自然過ぎる。

 

「ある……じゃなかった。あの子はお前達と一緒にいることが多いからな。事務所で待つより、こっちで待つ方が早いかと思ったが……。どうやら一緒にはいないようだな」

 

 男はそう言って頭を掻いた。男の言い方からして、この男は紡のことをよく知っている。さらに言えば、男は紡に仕事関係の用事がある訳でもなさそうだ。一体、この男は何者なのか……?

 

「失礼ですが、あなたと彼女の関係は何でしょうか?」

 

 耐え切れなくなった陸が男に尋ねると、男はにやりと笑った。

 

「恋人」

 

「えっ……」

 

 男は短く答えた。陸はその答えに目を丸くして動揺していた。それは大和も他のメンバーも同じだった。

 

 紡に恋人がいるなんて聞いたことがない。彼女の恋愛事情を詳しく知っている訳ではないし、そもそも彼女とそういった話をすることもなかった。だから自分達が知らなかっただけで、本当は恋人がいるのかもしれない。だが彼女に男の気配なんて微塵も感じなかった。

 

「いいね。その驚いた顔! 人生に驚きは必要さ。でないと心が先に死んでいくからな」

 

 男はIDOLiSH7の様子を見て楽しそうに笑った。……何だか先程から、この男に振り回されている気がする。大和はこの男のペースに呑まれていることを感じた。

 

「嘘だと思うなら、彼女に確認してみるといい。お前さん達は彼女の連絡先くらい知っているんだろう? 『鶴丸が来た』と言えば、彼女は分かるはずさ」

 

 さっきから思うが、この男の話し方はどこか馴れ馴れしい。少し腹が立つ気もするが男の言うことも尤もなので、大和はスマホを取り出してラビチャで彼女に連絡をした。

 

――鶴丸(?)っていう奴が寮に来ているんだけど、マネージャー知らない?

 

 そう打ち込んで送信する。少し時間が経つと、彼女から返信が来た。

 

――その人は私の知人です。今用事が終わったので、すぐにそちらに向かいますね。

 

 どうやら彼女は男(鶴丸という名前らしい)のことを知っているようだ。他のメンバーにもそう伝えると、壮五が鶴丸に申し出た。

 

「彼女が来るまで少し時間があります。外で待ってもらうのも申し訳ないですから、寮の中で彼女を待ちますか?」

 

 壮五の申し出に鶴丸は

 

「それはいいな! それでは上がらせてもらおうか!」

 

と無邪気に笑った。

 

 

 IDOLiSH7は鶴丸を寮のリビングに案内した。人当たりの良い壮五が鶴丸にお茶を出す。

 

「ああ、ありがとな!」

 

 鶴丸は壮五に礼を言うと、コップを掴む。その何気ない仕草からも、彼の気品が溢れ出ている。完璧な美しさ。壮五が鶴丸を見て思ったのは、そんな言葉だった。

 

「ミスター・ツルマルは、モデルの仕事でもしているのですか?」

 

 鶴丸に問いかけたのはナギだ。鶴丸はきょとんとした顔でナギを見ている。

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

「アナタはとても美しいです。ですからワタシ達のように、芸能関係のお仕事をしているのではと」

 

 ナギの言葉を聞いた鶴丸は、にこやかに笑って否定した。

 

「俺はそんなんじゃないさ。『もでる』なんて仕事も、お前達のように芸能界で人前に出るような仕事、俺は一切していないぜ。ま、美しいって褒められるのは嬉しいことだな」

 

 これには壮五も驚いた。これだけ優れた容姿なら引く手数多だろうに。町中を歩いていたら絶対にスカウトされる。

 

「じゃあ、ツルさんは何の仕事をしているの?」

 

 初対面の相手にさっそく独特なあだ名をつけた環は、ゆったりとした口調で尋ねる。すると鶴丸は一瞬だけ顔を強張らせ、すぐに笑って答える。

 

「……役人みたいなものさ」

 

 壮五は鶴丸の答えに違和感を覚えた。鶴丸は何かを隠している。壮五の直感がそのように告げた。

 

「……胡散臭い方ですね」

 

 一織がぼそっと呟いた。「失礼だよ」と言いたいところではあるが、壮五も一織と同じく鶴丸に胡散臭さを感じた。鶴丸の容姿、振る舞い全てが完璧で、どこか作り物のように思える。それが余計に鶴丸の不自然さを際立たせる。

 

「胡散臭いだなんて心外だな。俺はお前さん達の質問にきちんと答えたというのに」

 

 鶴丸はやれやれとばかりに肩を竦めて見せる。飄々としていて掴み所がない。そんな鶴丸に一織がさらに何か言おうとしたが、それはインターホンの音によって遮られる。

 

「おっ、マネージャーが来たみたいだぜ」

 

 三月が玄関へ歩いて行く。玄関のドアが開く音がして、女性の声が聞こえる。

 

「すみません! 遅くなりました」

 

 リビングに彼らのマネージャー・紡が駆け込んできた。

 

「ああ、君待ちくたびれたぞ!」

 

 鶴丸は彼女の姿を見つけると、嬉しそうに駆け寄った。そんな鶴丸を彼女はキッと睨みつけた。

 

「ちょっと鶴丸さん! 何でIDOLiSH7の寮に来るの⁈ いつもの悪戯よりびっくりしたよ!」

 

 彼女の様子を見たIDOLiSH7のメンバーは少々驚いていた。父親である社長以外の人に対して、ここまで気軽に話す彼女の姿を彼らは見たことがなかった。どうやら彼女は鶴丸とかなり親しい仲のようだ。

 

「君が驚いてくれるなら、これからもちょくちょく寮にお邪魔するとしようか」

 

 鶴丸が冗談交じりに言う。

 

「やめてよ……大和さんから鶴丸さんが来ているって連絡が入った時、心底驚いたんだから……皆さんにもご迷惑をお掛けして……。皆さん、すみません。鶴丸さんには後できつく言っておきますから」

 

 紡は申し訳なさそうな顔をしながら、IDOLiSH7に向かって頭を下げた。

 

「おいおい、せっかく迎えに来たというのに説教とか無いだろう?」

 

「勝手なことをしたから当然でしょ。ところで……そのスーツどうしたの? 鶴丸さん、スーツ持っていなかったよね?」

 

「あ、これか? これは光坊に借りたんだ。似合っているだろう?」

 

「燭台切さんの……確かに、いつもの恰好で来られたら、目立つ容姿がさらに目立って大変だけど……サイズ、よく合ったね」

 

「おい、それはどういうことだ? 確かに俺は光坊と比べて細身に見えるかもしれないが、そこまで貧相じゃないぜ!」

 

「別に貧相だなんて言ってないじゃない……」

 

 困ったように笑う紡に、しょんぼりとした様子の鶴丸。話の内容は理解できない所もあるが、息の合った二人だということはこちらにも伝わった。

 

「あの……マネージャー、一つだけ聞いてもいい?」

 

 息ぴったりの二人の間に入るかのように、陸が戸惑いを隠せないまま彼女に尋ねた。

 

「その……鶴丸さんとは、恋人なの?」

 

 陸の言葉を聞いた彼女は眉を顰めた。そして鶴丸に尋ねた。

 

「ねぇ鶴丸さん。あなた、皆さんに何を吹き込んだの?」

 

 すると鶴丸はあっけらかんとした様子で答えた。

 

「俺と君は恋仲だって言っただけだが?」

 

 すると紡は呆れたとばかりに大きく溜息をついた。

 

「……いつからあなたと私は恋仲になったの?」

 

「おや、冷たいなぁ。二人で熱い夜を過ごしたこともあったというのに……」

 

「過ごしてない! ああ、皆さん。この人は人を驚かせることを生きがいとしているので、時々凄い冗談を言うことがあります。聞き流してください」

 

 紡はそう言った。どうやら鶴丸の恋人発言は冗談だったらしい。……では鶴丸と紡の関係は何だというのか?

 

 誰もがそんな疑問を抱いていた時、鶴丸が思い出したとばかりに「あっ!」と声を上げた。

 

「もうこんな時間じゃないか! 早く帰らなくてはな!」

 

 そう言って鶴丸は紡をひょいっと抱きかかえた。いわゆる「お姫様だっこ」である。抱きかかえられた紡は「鶴丸さん!」と咎めるように彼の名前を呼んだ。

 

「私、まだ仕事が……」

 

「君はもう少し『休む』ということを覚えた方がいいと思うぞ」

 

 結月は抱えられたまま鶴丸に抗議をするが、鶴丸は軽くあしらう。そしてIDOLiSH7のメンバーに笑いかけた。

 

「それではこれで失礼するとしよう! 『あいどりっしゅせぶん』、またどこかで会おう!」

 

 そう言うと、鶴丸は彼女を抱えたまま寮を飛び出してしまった。

 

 突然取り残されてしまったIDOLiSH7は暫く呆然としていた。

 

「まるで、嵐のような人だったね……」

 

 壮五の呟きに、メンバー全員が深く頷いた。

 

「あれ、ナギっち? どうしたの?」

 

 環がナギに声をかけていた。その声に釣られて、壮五はナギを見た。ナギは険しい顔で、鶴丸が去った方向を睨んでいた。

 

 

「あのツルマルという男……只者ではありません」

 

 いつになく真剣な様子でナギは言った。

 

「確かに、四葉さんに職業を訊かれた時に少し躊躇う素振りを見せるなど、妙に怪しい所がある人でしたが……」

 

「その指摘は間違ってはいません、イオリ。しかし、ワタシが気になったのは別のことです」

 

 ナギは一織の指摘に対して、そう返した。その意味がよく分からない他の者の代表、陸がナギに質問する。

 

「他に何が気になったの、ナギ?」

 

 するとナギは眉間に皺を作りながら答えた。

 

「ツルマルの手に、胼胝ができていました。ペンによってできたものではありません。あれは武道……おそらく剣を握っている内にできたものでしょう。それに、あの隙の無い身のこなし……間違いなく、彼は武術に長けた人でしょう」

 

「でも、それなら剣道を習っていたっていう可能性もあるんじゃないか?」

 

 三月はそう意見するが、ナギは首を振った。

 

「ワタシもその可能性を考えていました。でももう一つ、気になったことがありました」

 

 ナギの真剣な口調に、六人は飲み込まれていく。妙な緊張感が辺りに広がっていく。

 

「ツルマルから、物騒な気配を感じました。ワタシの直感でしかありませんが、ツルマルは普通ではありません。あれは、戦闘経験がある男ではないかと」

 

 ナギの言葉に、ある不安を抱いた陸が強く問いかけた。

 

「じゃぁ、あの鶴丸さんと何か関係があるマネージャーは、大丈夫なのな……?」

 

 ナギと陸以外の男達はハッとして互いに視線を交わし合う。ナギの直感を信じるなら、鶴丸は只者ではない。では、そんな鶴丸と親しい仲であるらしい紡は大丈夫なのかと。ナギは重たげにその口を開いた。

 

「……皆さんには黙っていましたが、ワタシはマネージャーに初めて会った時から、彼女に不穏な空気が漂っていることを感じていました」

 

 ナギの告白に、六人の間で衝撃が走った。いつもは最年長として冷静な態度がとれる大和も、動揺を隠しきれていない。

 

「で、でも、マネージャーは、俺達のマネージャーということを除けば、どこからどう見ても普通の女の子だ。あの鶴丸っていう奴とは違って怪しい所は何も……」

 

「ノー、ヤマト。ワタシが言いたいことは、そういうことではありません。……そうですね。もっと正確に言えば、マネージャーの周囲の空気が不穏だということです。マネージャー本人は、とても素敵なレディであることは間違いありません。……ですが、彼女の周囲に漂う不穏な空気と同じものを、ツルマルから……いえ、これも正確に言えば『ツルマルの周囲』に漂う空気から感じました」

 

 ナギはそう言うと、大きく息を吐き出した。そして、小さな声で付け加えた。

 

「マネージャーの周りには、どこかきな臭いものを感じます。……何だか不安です。彼女が大変なことに巻き込まれている気がするのです……」

 

 ナギの目は不安で揺れていた。

 




 取り敢えず、ここまで書きました。今後TRIGGERやRe:Valeなど他のユニットの方達や刀剣男士を登場させたいと思っています。
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