「寒いので帰りましょうよ~日菜さん」
「だ~め! 冬の大三角形とか見れるかもしれないよ?」
「別に見なくても……」
とぶつくさ言いながら日菜さんについて行く僕。休憩がてらに上を見上げてみると空には満点の星空が浮かび上がっていた。
「わぁ……綺麗……」
「ホントだね……」
すっかり星の綺麗さに見蕩れていた。
今、僕は氷川家次女、氷川日菜と星を見に河原まで来ていた。まぁ、無理やり連行されたみたいなもんだけど。
「誰も居なくてちょうどいいね」
「だってあたしが来る穴場だもん!」
望遠鏡を持って落ち着きなく、はしゃぐ様子は、まるで子供のようだった。
土手にビニールシートを敷き、そこに座る。
「あ! あれ乙女座のスピカだ! そしてあれは北極星のポラリス! はちぶんぎ座もテーブル山座もある!」
「それって日本じゃ見る事出来ない星じゃなかったっけ……?」
「えへへ~バレちゃった」
ペロリとお茶目に舌を出す日菜さん。
「そう言えば来る途中にポテト買ってきたので食べましょう」
「ポテト! ほんと!?」
行く途中についでにと思って買ってきたポテトと聞いた途端目をキラキラとさせて、ポテトが入っている袋に飛びつく日菜さん、ポテトも口いっぱいに詰め込んで食べている。
そして、やっぱり紗夜さんと姉妹なのだなと思った。
──────
ポテトも食べ、本格的に星を見るぞ! という時に日菜さんはポツリと呟いた。
「あたしにとって星ってよく分からなくてるんっ♪ ってくる面白いものなんだ。皆と違って、天才って言われるあたしはなんでも分かっちゃうし出来ちゃう。だから日常がつまらなかった。でも星はまだまだ分からない事や見つかってない星とか沢山あってそこにあたしは惹かれるんだ」
「へぇ~何か星が分からないけど面白いって分かるような気がします。まだまだ宇宙とかには分からない事が沢山ありますしね」
「やっぱりなっちゃんも分かってくれる!?」
「まぁ、ええ」
なっちゃんとは僕のあだ名みたいなものである。
「やっぱり君はるんっ♪ って来る!」
そこから日菜さんに星に関する話を聞いていた時、ハクチ! という可愛らしいくしゃみが隣から聞こえた。今まで星に見とれていて忘れていたが今は冬。夜なんてとても寒い。厚着をしていても寒いものは寒いのだ。
「ジャンバー入ります? いや、答える前に掛けるんですけどね」
「それだとなっちゃんが寒いじゃん!」
「いや、僕はこれでも男なんで大丈夫ですよ。日菜さんが着てて下さい。アイドルだし、何より女の子なんですから体を冷やすのは良くないですよ。風邪でも引かれたら困ります」
「……っ! でっ、でも! なっちゃんも……なら……一緒に着ようかうん、それがいい!」
日菜さんは僕が掛けたジャンバーを広げ僕にも掛けた。
男物とはいえそこまで大きくはないので、日菜さんとピッタリくっついている。
「案外恥ずかしいね……」
頬を赤らめる日菜さん。案外初心なんだ。
「僕とくっつくのは嫌でしょうに。やっぱり日菜さんが……」
「ヤダ!」
そして僕は諦めたのだが、ここぞとばかりにくっついてくる。
腕には柔らかい2つの大きな膨らみ。そして温もりが伝ってきている。
このままでは理性が粉々に砕け散ってしまうので、空を見上げる。
「あぁ……日菜さん。月が綺麗ですよ」
「ふぇ……? それってプロポーズじゃ……」
「え? 日菜さん何かのプロなんですか?」
「え!? 違うよ。
……だよねぇなっちゃんには分からないよね……」
「何かバカにされた様な気がします」
ちょっとムスッとすると、日菜さんが恥じらいながらこう僕に尋ねた。
「ね、ねぇ、なっちゃんってさ、好きな人って……いる?」
好きな人、好きな人ねぇ……
「好きな人……日菜さんとか結構好きですよ」
「ふぇ……?」
ボンッといきなり日菜さんの顔は赤く染まった。あれ? 何か変な事言ったかな?
「へ、へぇ、あたしの事好きなんだ」
「はい、好きですよ。あと千聖さんもそうですし、イヴちゃんとか彩さんとか。パスパレの人皆好きです」
「そういう事じゃないのに……」
いきなりとボソボソと呟き始めた日菜さん。
「あたしね~実は好きな人居るんだ」
「へぇ~事務所とかは大丈夫なんですか?」
「うん! ちゃんと申請を出せば大丈夫なんだけど……」
「だけど何ですか?」
「相手が気付いてくれないんだよね~」
「日菜さんに好意を向けられてるのに気づかないなんて、クズ野郎ですね」
アイドルっていうか女の子に好意を向けられてるのに気づかない奴なんているのだろうか。
「すっごいブーメラン発言だ……」
「何でです? っていうかどんな人なんですか、日菜さんが好きな人って」
「えっとね……とっても優しくて面白い、そしていっぱい皆から好意を持たれてて、それに気づかない。いくらあたしが2人で星を見に行っても、どんなにくっついてもどんなにアプローチをかけても気づいてくれない鈍感さんかな~」
「皆から好意持たれてて気づかないって同じ男としてふざけんなって話です」
「うん、そして皆好きだから競争率が高いの。今回だって、誘うまで苦労したんだ~」
「へぇ~僕はモテないので羨ましいです」
「へぇ~」
「何でこっち睨むんですか」
そんな他愛もない話を話しながらその後は過ごした。
でも最後には……
「あ! 着いてきてくれたお礼上げるね!」
「お礼って別にいらな…………」
要らない。そう言おうとした時に頬に絹の様な柔らかい感触と暖かさを感じた。
キスをされたと気づくのに時間はかからなかった
「なっ!」
「えへへ~しちゃった」
きっと僕の顔はリンゴの様に赤かっただろう。
この冬の寒い夜風が早く顔の熱を早く冷ましてくれる事を願うばかりだ。
─────
『って言う事があってですね、驚きじゃありません? 日菜さんに好きな人がいるなんて』
『いえ、別に私でも知ってましたが……』
『嘘!?』
電話の相手は氷川日菜さんのお姉さんの氷川紗夜さん。星を見に行った事について詳しく教えて欲しいという事で電話を掛けられたのだ。
やっぱり妹が心配だったんだな……
『日菜はいつも家でもその人の事ばっかり話してますよ。星を見に行った。とかポテトを食べに行った。とか』
『本当に日菜さんはその人の事が好きなんですねぇ~』
『日菜の好きな人の予想ってつきましたか?』
『いえ、さっぱりなんです』
『何とも千夏さんらしいと言うか……』
『バカにしてません?』
『そんな事無いですよ。それならヒントを上げます。私も好きな人です』
『紗夜さんも……? 姉妹で同じ人を好きになるなんて大変ですね。頑張って下さいね。応援してます』
『えぇ、本当に気づいてくれなくて大変です』
氷川姉妹をも誑かす不埒な男…………
ふむ、謎は深まるばかりだ。
お正月記念の話を出そうと思ってますが、多分無理そう