機動戦士ガンダム·プレデターズ   作:ルシェラ

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機動戦士ガンダムプレデターズ 第十二話 阿頼耶識

退路方面は中東支部の残存兵とアモンの空爆もあってそんなに手こずる事はなかった。加えてモビルアーマーとの分断により、地の利と数の多さを生かして上手く兵を展開する事に成功して効率よく戦いを進められた。

最初はターゲット(ルフス)を確保するべく動いていたリベリオンも多勢に無勢で、ルフスの確保以前に自分達がやられる事を悟り、必死に抵抗するのがやっとの状況だった。

しばらくは生き残っていたが、段々とすり潰されていき、最終的にアモンの空爆で沈黙した。

急いで駆けつけた睦月とホムラだったが、着いた頃には粗方片付いており加勢する程ではなかった。

 

程なくして戦闘は終了し、サポート係が敵味方問わず辺りに散らばった破片を回収し始めた。味方の人機体は弔い用に、リベリオンは使えるものだけ外して後は予備パーツなどにまわすのだが…

「こりゃひでえな…再利用できるか分からんぞ…」

退路方面のリベリオンは殆どがフェンリルのドリルランスに豪快に貫かれていたり、巨大なネイルハンドで装甲が情けなくひしゃげられていたりと、再利用以前に目視で「廃棄だろ」と言えるくらいに損傷が目立っていた。

カーゴで応急処置が終わったリベイクは谷底に降りると、サポート係が処理に困っていたリベリオンの亡骸を確認する。

「こりゃあ派手にやったなあ。見ろ、モビルスーツで一番頑丈にされている胴体が、ホレ、見事に貫かれてらぁ。向こう側の景色が見えるぜ…。」

リベイクは無残にやられたリベリオンを弄りながらルフス対して畏怖の念を抱いて苦笑いした。

「その内喧嘩したらこうなると思うと、ゾッとするぜ。」

周りがどっと沸く。

フェンリルはその荒々しい戦闘スタイルもあってか他の人機体よりも傷が多かった。パートナーのルフスは傷がついた事は悲しんでいたが、大きく破損しなかったのとリミッターを解除するハメにならなかっただけ良かったと微笑んで見せた。

リベイクは残った兵とサポート係を招集して残骸の回収と兵達の応急処置を急がせた。

因みにアグラヴェインとパープルは損傷が酷かった事、戦闘中の応急処置を受ける為に戦闘区域をかなり離れていた事により招集は受けなかった。

程なくして残骸の回収も目処がついてきた。

今回作戦に参加した人機体は中東支部で20機。その中で戦闘に参加した人機体が12機で、その内の6機がやられていた。

その6機の内、殆どがモビルアーマーのシザービットで切り裂かれていた。幸いモビルアーマーは砲身と頭部以外は何とか再利用出来そうなので、シザービットも上手くいけば新たな兵器に出来るかも知れない。

訪問チームの人間は誰一人欠ける事なく帰還した。人機体も大なり小なり傷はあれども機械的な「命」に別状はなさそうだ。

作業が終了すると、リベイクは全員を集合させた。

「…まずは…皆、ご苦労だった。皆の働きがなければモビルアーマーも倒す事は出来なかっただろう…。散っていった仲間は後で弔ってやろう。……通信係!水野支部長に繋げ。班員は全員無事だってな。」

 

東南支部支部長の水野瞬は通信が来た瞬間回線を繋げ、ルフス達の身を案じていたレオディルや支部の人達に聞こえるようスピーカーをオンにして報告を聞いた。

「…私だ……訃報か、朗報か?」

「メンバー、人機体ともに全員無事です!ご心配をおかけしました…。」

無事を伝える通信が入った途端東南支部では安堵と歓喜の声が響いた。

水野支部長は受話器越しに安堵のため息を吐くと、リベイクにお礼を伝えて回線を切った。

報告中にパーツ回収や各機の応急処置も粗方片付き、リベイクは全機に撤収を指示した。

 

 

 

 

 

 

「お、奴らは撤退を始めたようじゃなー。」

「あらぁ、まだまだ時間は残っていると言うのに、冷たいオトコ達ねえ。」

「まあ、仕方なかろ。地上部隊のお陰で疲弊しきっておるからなあ。…ちゃんとやってくれるんだろうな?今回はあのガキを捕獲する事が最優先だからな。」

「勿論よ〜。狙った男は逃がした事はないからねえ。」

 

渓谷の真上、高度3000m付近から参謀班副班長のアスターと、モビルアーマーメガロバスターが、配下に試作型のワンダ10機を引き連れてルフス達の元へと降下していた。

事前にブラックナイト隊から受け取った情報によると、敵部隊は先の戦闘でかなり消耗しているようだ。この機会を逃せば奴らは警戒を強化してしまい、確保が難しくなる。

「今回は試作とは言え、次期主力人機体を10機も付けてくれたんだ。失敗は許されんぞ。」

わかってるわかってると生返事を返したメガロバスターは、スラスターを細かく吹かしながら空中に浮遊する。自由落下中のアスターとワンダ達はルフス達地上部隊を取り囲む様に軌道を変えながら落ちていく。

メガロバスターはランチャーのエネルギー充填を確認すると、

「ファーストキスよッッ!受け取りなさいッッ!!!」

と地表に向けて発射した。

 

 

 

 

轟音、いやそれ以上の破壊音と強烈な光がまるで核爆発の瞬間かの如く地上のルフス達の前に落ちた。

高エネルギー反応を察知し報告したアモンだが撤収は班ごと分かれていた事、度重なる戦闘で疲弊しきっていた事が彼らの命運を分けた。

光線はフェンリルの周りを堀でも作るかの如く一瞬した。フェンリルは撤退郡のかなり後方に居たが、それでも傍にいた中東支部の人機体達が一瞬で蒸発し、直後粉塵に飲み込まれて行く。

巻き上げられた土砂はまるで間欠泉の様に空に舞うと、日光をみるみる遮って行った。

 

メガロバスターは粉塵の中に蹲るフェンリルを捉えると粉塵の傍に急降下し、視界を奪われたフェンリルに巨大なマニピュレーターで掴みかかる。ガンダムフレーム搭載機の特徴でもある剥き出しの内部フレームを器用に掴み、動きの自由を奪う。

「さて、いい声で鳴いてねぇ〜!」

直後、マニピュレーターから電流が流れる。

掴まれていたフェンリルと阿頼耶識接続の真っ最中のルフスは悶える。

「ぐぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

背中のピアス(接続機)から電撃が漏れ、脳に針で何回も刺される様な激痛が走る。

「エグナーウィップ。SMプレイにはもってこいのオモチャね。」

ねっとりした声でその後も電撃を食らわせ続けるメガロバスター。

撤退郡は後方の惨劇の最中、重症機は急いで中東支部に戻らせ、戦闘可能な人機体をまとめて粉塵の中に突っ込もうとすると、

「未確認の人機体とリベリオンの人機体が多数降下して来ます!」

 

見上げると、妖艶な姿の人機体を中央に今までに見た事がない人機体が十機も降りてきているではないか。

「なんだアイツらは?!」

「見た事ねぇぞ!」

「こりゃあ本気でヤバいぞ…」

疲弊しきっていた彼らには物量以前にメンタルダメージの方が強く、普段なら臆することなく立ち向かっていく中東支部の人機体やルフスの仲間達も、今回ばかりは歩みを止めてしまった。

ワンダ部隊は愕然とする彼らを取り囲み、武器を捨てる様に要求した。

「直チニ武装解除セヨ。応ジレバ破壊シナイ。」

一機の人機体が警告を無視して銃を構えようとすると、浮遊していたアスターがビームを照射し、構えた銃が溶けていく。

「今度は貴方自身がそうなる番よ〜。」

そのやり取りを間近にした周りの人機体達は武装解除し、後頭部に手を組まされた。

「何が目的だ!!」

ホムラがゼロ越しにアスター達に問いかける。

「別に貴方達に様はないのよ。本命はあっち。」

と粉塵の中でエグナーウィップの電撃に悶えるフェンリルを指さす。

「フェンリル……ルフスをどうするつもりだ!!」

と問いかけた瞬間ワンダから銃弾を浴びせられる。

「貴方達は知らなくていい事よ。っていい加減もう良さげじゃないの?」

とうとう悶える事すら出来なくなったフェンリルはツインアイも光を失い、完全に機能停止状態となっていた。

「耐性確認って事だったけど、先にイッちゃったみたいねぇ〜。」

阿頼耶識のリミッター解除をさせるのが目的だったが、その前にルフスが気を失った様だ。

「とりあえずお持ち帰りね〜!!アスター、統制機(リーダー)に報告。耐性確認は取れなかったが、対象は確保した、とね。」

アスターは一回ブラックナイト隊に繋いで報告し、フォールンに伝える様指示を終えた。

 

助けたくても助けられない。目の前で仲間が連れ去られてしまう。

「おいルフス!!!寝てんじゃねえよ早く起きろ!!!」

何とか声を上げてルフスを目覚めさせようとする睦月の叫びも虚しく、メガロバスターはフェンリルを抱えたまま、その場を離れていく。ワンダ部隊は十を構えたままゆっくりと離れて行く。

「疲れ切っているとこうも簡単に堕ちちゃうなんて、つまらない子ね。」

とメガロバスターは電流をストップさせ、再び上昇していく。

みるみる小さくなっていくメガロバスターを見送りながらホムラは悲痛な叫びを上げる。

 

「ルフスーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




こんにちは(´∇`)最近リアルが忙しすぎて全く書けませんでした、、、。
ブランクのせいか文字数も多分過去最小だと思いますがゆっくり読んで頂けたら幸いです……!

ルフス、ホムラの叫びに気付け!!!

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