フェンリルを抱えたメガロバスターが小さくなって行き、ワンダ部隊とアスターが背を向けて空に消え始めた。
疲弊してたとは言え、目の前で仲間が連れ去られていくのをただ見ることしか出来なかった自分の不甲斐なさにキャラバンのメンバー、中東支部人機体達は悔しさと同時に自分への怒りを覚えていた。
そして段々ゲテモノのトゲトゲした姿が点になってゆく空を見つめていると、
その点が急降下を始めた。
傍にいたアモンにゼロが確認を取らせる。
「偵察用の広範囲レーダーとお前の目なら状況が分かる筈だ!」
「待て、今投影する。」
アモンのツインアイから、まるでプロジェクターの様な光が溢れると、そこに偵察用のカメラアイから映し出された映像が再生された。
映像にはメガロバスターとフェンリルが空中で取っ組み合い、絡まる様にして落下している光景が映し出されていた。最初、この映像を見た一同は(メガロバスターがフェンリルを押さえつけている)と解釈した。
しかし実際はその逆で、(フェンリルがメガロバスターに取っ組みかかっていた)のであった。
「なによこの子?!急に発情しやがってええ!!!」
なんとかフェンリルを拘束しようとするメガロバスターの腕にフェンリルの蹴りが入り、ヒットした踵部分からパイルバンカーが飛び出す。
「いってええええええええ!!!!!!」
丁度人間で言えば腕と上腕二頭の位置をパイルバンカーは貫いており、かえしが引っかかって曲げた状態で腕が固定されてしまっている。そうしてある程度の自由を奪ったフェンリルはメガロバスターの背中に回り込むとボディと首の接合部に巨大なネイルハンドの爪をねじ込んだ。
「舐めんじゃないわよこのクソガキィィィ!!!!!」
配線やらパーツやらが接合部から飛び散りつつもメガロバスターは体勢を返し、地面にフェンリルを叩きつける向きで落下する。直後、砂漠のど真ん中に落下。質量ではメガロバスターの方が上なので落下時の衝撃と重さで潰してやろうと言う算段だったが、逆に状況を悪化させてしまった。項の位置に爪をねじ込んでいたフェンリルが叩きつけられた事により、逆に深く爪が食い込む事になってしまったのだ。痛覚は感じないが、『確実にまずい』、『生物で言う所の死ぬ』と言う思考が回路を過ぎり、メガロバスターは半ばパニックに陥る。
「ヤバい!ヤバい!ヤバい!このままじゃイっちゃう!」
パニックになりながらも叩きつけてひしゃげたであろうフェンリルの姿を確認しようとするが、落下時の衝撃で爪が食い込んだ直後に衝撃で激突時に互いに吹っ飛んだのを思い出し、周りを見渡す。
フェンリル自体は近くに居て、疲弊もしていた。あれだけの戦いをして来た上でさっきまで鹵獲されていたのだ。それにしても、でも、それにしても、
「なんであんた全然壊れてないのよぉ?!!!」
恐らく着地の寸前……地面とおネエにサンドイッチになる面積を少なくしたのだろう。メガロバスター本体は四肢こそ長大ではあるが、メインボディは以外とモビルアーマーの中でもスリム。加えて項の辺りとなると、意外と逃げやすいのかも知れない。
とパニック渦の中で自己分析をした。
質量が大きい分落下時の衝撃も大きかったメガロバスターは見掛け上のダメージはそれ程でも無かったが、内部の機器類がかなりやられていた。元々精巧且つ巨大に造られたモビルアーマーだ。それは仕方ない。
「お客様とて許せん!」
とどこかの女将を彷彿とさせる台詞を吐き、怒り心頭のメガロバスターに対するフェンリルも何やら様子がおかしい。下顎が開いたかと思うとそこから蒸気を発し、ツインアイは万緑から深紅へと染まって閃光を迸らせる。獣の様に四つん這いの様な深く項垂れた姿勢をとる。コクピットからカメラ越しにメガロバスターを見つめたルフスは
「ギーギー五月蝿えんだよ。」
フェンリルが飛びかかり、直後メガロバスターも飛ぶ。
初手、メガロバスターの長大なアームがフェンリルを捕らえようとする。しかしこれを読んでいたかの様にフェンリルは身をくねらせ魔の手をすり抜ける。一気に無防備になった顔面へ渾身の殴打を繰り返す。対してメガロバスターは背部からファンネルを総射出して一斉にビームを浴びせる。
どうやらファンネルは十八番だったらしく、
「さっさと溶けちゃいなさいよ!!!!!」
と自信満々に仕掛けてきたが、ガンダムフレームであり、ナノラミネートアーマーを標準装備するフェンリルには効くはずもなかった。
「ずるいわよそんなの!!!!!!」
と言ってる内にどんどんメガロバスターの走行を剥がし、殴り、破壊していくフェンリル。加えて無意味となったファンネルを掴み、装甲と装甲の狭い隙間に握りながら押し込んでいく。挟まれたファンネルは爆発し、それと同時にメガロバスターの関節部も巻き添えにしていく。このまま押し切るかと思われたが、
「貴様ァァァァ!!!!!」
と応援に駆けつけたアスターとワンダ部隊がフェンリルに攻撃を仕掛ける。
フェンリルは柔アスターらを見ると無数の弾丸とゲロビを獣の様に交わしていく。
手始めに傍にいたワンダの脇腹にネイルハンドを突っ込み胴体内部を破壊しながら持ち上げる。最初は抵抗していたワンダだったが内部のコンピュータ類が壊れた事で骸と化した。フェンリルはそのままワンダを振りかざし、次いで他のワンダ達に叩きつけ、振り回すことで質量武器にした。ワンダ達を迎撃に向かわせアスターは瀕死のメガロバスターのクラウドボックス(言わば脳の様な物。ここが無事であれば死んだと言う事にはならない。)を回収しようとするが、先の戦いでフレームが内部からひしゃげているせいでハッチが開かずモタモタする。
「妾の細い指と出力じゃ開けるのは至難の技ぞ!!」
「早くしなさいよアンタ!!」
「黙れ!!集中出来ないわ!!」
とやいのやいのとやっている間にフェンリルはワンダ部隊を惨殺していく。
あるワンダは屈強な脚部に蹴られ、またあるワンダは頭部を頚椎部ごと引きちぎられ、またあるワンダは……と惨い有様であった。それでも残ったワンダ達はマシンガンを連射してフェンリルを足止めしようとする。しかしフェンリルは弾丸を喰らいながら止まることなく飛びかかっていく。
一機のワンダをリンチにしている間に他のワンダがフェンリルの左腕を肩ごとビームサーベルで切り裂く。痛みに叫ぶ様に咆哮するフェンリルだったが、すぐ様そのワンダを鷲掴むと左足で頭部を踏みつけ、右腕でバインダーの辺りを持って引きちぎった。残った残骸をもたつくアスターに思いっきり投げつける。それを華麗な動きで交わし、宙へと舞い上がるアスター。
「貴様の汚い攻撃なぞ、妾には届かんわ!」
すかさずフェンリルはグレイプニールを射出しアスターを捉えようとする。しかしアスターの蝶のような機動力に交わされ、逆にワイヤーをヒートブレードで切られてしまう。高度を下げて攻撃を誘うアスターにフェンリルは思いっ切り飛びかかるが待ってましたと言わんばかりに交わされ、あらわになった関節部を的確に斬られる。体制が崩れそうになるのを必死で抑えるルフス。
「…………おい……逃げてんじゃねえよ。」
フェンリルのスピーカーからノイズ混じりに流れるルフスの声に
「ふふっ!獣の風情がほざいておるわ。」
と小馬鹿にするアスター。
「兵士の敵とメガロの分だ!受け取れ!」
と高度を上げながらビームランチャーのエネルギーを充填するアスター。チャージ中の無防備なアスターにスラスターを全開で吹かし急接近するフェンリル。その右手がアスターを捉える寸前、
「ハッハッハ!!騙されおったな!!」
とチャージを辞めてヒートブレードを振り上げる。しかしルフスは動じる事無く、逆にヒートブレードの刀身部をネイルハンドで掴み握りつぶした。ナノラミネートアーマーに包まれたフェンリル基ガンダムフレームでなければ出来ない芸当だ。
驚愕するアスターの胴に足を絡ませメガロバスターの時の様に振り落とそうとする。モビルアーマーより取っ組み安いせいか呆気なく自由を奪われて地面に向けて加速するフェンリル。激突する寸前にアスターを落としていく、と言うよりかは最早投げつける感じではあったが。
一連の様子を遠目から見ていたキャラバン組と中東支部人機体達はすぐ様援護に向かう準備を始め、数機がもうすぐ現場に到着しようとしていた。そこには無惨に倒れたモビルアーマーと殆どが原形不明のワンダの残骸、横たわるアスター、そして傷だらけのフェンリル。駆けつけたメンバーの中に居たトリニティは現場の凄惨さに畏れを覚えた。
無線で睦月はルフスに連絡をとる。暫くして回線がつながり、ルフスの声が聞こえてくる。どうやらモニター様のカメラが壊れているせいで音声のみだった。
「ル、ルフス?大丈夫か?」
「……わかんない。ただ、頭が痛い。」
「負傷したのか?!もうすぐ私達も着く、それまで耐えて―――」
会話をトリニティが遮る。
「おい!モビルアーマーが!」
メガロバスターが最後の力を振り絞らんと巨大な砲身をルフスの背中に向けていた。背を向けているルフスは気付いていない。
「ルフス!!モビルアーマーが!!」
と言いつつ咄嗟に睦月は持ってきたフェンリルが連れ去られる際に落としたドリルランスをフェンリルの元へ加速しながら投げつける。フェンリルがそれを手に取ると同時にメガロバスターがフェンリルを捕まえようと飛びかかる。ルフスは振り向き様に槍の先端を銃口に向けてドリルランスのダインスレイブ 発射口とシールドブースターに内蔵された新装備、バンカーレールを接続する。
飛び付かれ全身を固定されたフェンリルはドリルランスを銃口に突っ込み、先端部を回転させる。奥でもみくちゃになってランスが固定されると、砲身の生え際、ボディの上にある頭部にダインスレイブ発射口を向ける。
「…………しつこいんだよ、お前。」
ガーーーーーン!!!
と言う轟音と共に一瞬眩しくなる。刹那、メガロバスターの頭部に風穴が空く。続けてルフスは容赦なくダインスレイブを撃ち込んでいく。轟音と共に撃ち込まれたメガロバスターの身体がピクピクと跳ねる。全弾を撃ち終えたフェンリルにもたれながら恐怖のモビルアーマーは活動を停止した。
邪魔だとでも言う風に覆い被さる鉄の塊をどかし立ち上がろうとするフェンリルだが、機体へのダメージが溜まりすぎたのか、関節部から火が上がり膝をつく。倒れる上半身を支える様に右腕を地面に着く。
援護に駆けつけた人機体達は辛うじて生きているアスターを無力化し、メガロバスターの残骸を確認しつつ、周りを包囲する。トリニティのコクピットハッチが開き、睦月がフェンリルのコクピットハッチを開けようとトリニティの手のひらに乗ってハッチに行く。
「ルフス、大丈夫か!!ハッチは開けられるか?」
すると放熱時のプスーーっという音と共にコクピットとルフスの姿が顕になる。蒸気に紛れて、そこには真っ赤な「何か」に絡みつかれたルフスの姿があった。
ブロックノイズ混じりのモニターには、
「Defeat the enemy.Mission complete.」
「満身創痍で何言ってんだよ。」
睦月はアモンに状況の連絡をした。
お久しぶりです!
中東支部編も後半(?)になって来ましたね!
モビルアーマー戦は書いてて楽しかったです。次回以降は暫く戦闘は少なめになるかな……?
次回もよろしくお願いします✋