機動戦士ガンダム·プレデターズ   作:ルシェラ

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機動戦士ガンダムプレデターズ 第十七話 ハルファス

 

出発日まではあっという間に過ぎていった。新システムの開発を依頼されていたジンはレオディル、ウィリアハートらと協力してなんとか完成させて出発にこぎつけた。

また、出発する各人機体は念の為耐水処理や暴風に備えて機体固定用のワイヤアンカーをいくつか装備された。局地を通る際姿勢制御の為の燃料消費を避ける為らしい。

アモンとゼロはドックで遠征班が到着するまでぶっ通しで監視をする。人間ならシフト制で交代するのだろうが、ここが人機体の便利な点である。支部周辺の監視はディエスとアズールがリーダーの監視班の人機体らとアモンの部下の混合チームとなった。

「それじゃ、アモンとインパチェンス達が居ない分しっかり働くよ!」

小柄な身体からは想像出来ないほどはっきりと大きな声で指示を出すアズール。普段の働きぶりから人望も厚く、仕事もしっかりこなせる彼女に自然と周りはついていく。

 

 

出発当日の午前1:00。

一般人や他の人機体らはとうに休眠しており、ドックの一部と出撃ゲートには最低限の明かりが灯っているだけだ。そんな中出撃準備が整ったインパチェンス、リミテッドキャリバー、トリニティに加えて同行する事になった数機の人機体らが出発前にミーティングをする。今回班長となった睦月がトリップスケジュールを読み上げる。

「えーっと、今回は異例にも夜中に出撃する訳ですが……出発まで後15分ですね。さっさと読んじゃいましょう。今回は北東支部に向かいますが、知っての通り台風の動きに沿って移動する事になります。暴風雨の中飛行するのは危険ですし、燃料を浪費することにもなりますので今回は東南支部から200km以上離れるまで歩行移動になります。また、人機体の皆様はカメラを常に撮影モードにして下さい。ジンが開発したシステムのデータ収集の為に使用しますが、恐らく電波が乱れてリアルタイムでは発信出来ませんし、それが元で敵に見つかってしまうかも知れませんので台風を抜け次第各自トリニティに転送をお願いします。トリニティのGN粒子を利用して上手く見つからないようにゼロ達にデータを送れるかも知れないので。暴風域を抜けるまではそれ以外の箇所をゼロとアモンが監視班と協力してデータを取ってくれるのでそこは安心して下さい。パイロットシステム(人間も操作出来るタイプの人機体の事)を組み込んだ人機体にパイロットは操作を任せても良いですが、常に気は抜かないようお願いします。また、無線は出発時から常にONにしてて下さい。……何か質問は?」

沈黙。

「では、時間になり次第出発しましょうか!ゼロ、アモン、監視の際は頼むよ。」

「撮影モードを切らすなよ。データが取れんからな。」

正座の状態で開いたままのコクピットから大量のコードを伸ばして監視用のモニターやら機器類やらと接続されているゼロとアモン。ちなみに日中だけだが監視にレオディルとウィリアハートも手伝う事になっている。ジンから渡されたシステムの説明書にも既に目を通してあり、何か不具合があれば直す役目だ。

 

1:15分。水野支部長らが見送る中北東支部遠征班は東南支部から出発する。

天蓋を開けると雨が入ってくるので城壁のゲートを開けてそこから出る。ゲートを開くと強風と弾丸のような雨が一気に支部に入ってくる。すぐに傍にあった重そうな機材がいくつか動かされた。

「北東支部に着いたらレイフ支部長によろしく伝えてくれ。くれぐれも失礼のないようにな。」

レイフ支部長が怖いのか、それとも風が冷たく寒いのか、水野は表情が半ば強ばりながらも彼女らを見送った。

「大気流動観測システム、起動。カメラを撮影モードにして索敵レーダーに各機設定をしてくれ。」

ジンの指示に従い起動、設定を変更する。

「こちらエイミー、設定完了。」

「こちら睦月、設定完了です。」

「護衛人機体団、各機設定完了です。」

全員の設定を確認し、台風の進路をコクピットのスクリーンに写して見ながら歩く。

外はかなり風が強く、分厚い装甲を通ってラップ音のような音と風が当たる音が絶え間なく聞こえてくる。

燃料やバッテリーを無駄に消費しないようにコクピット内はLEDのスタンドライトのような物で必要最低限しか照らせない。そして夜という事もあってジン、睦月、エイミーらはパートナーの人機体に操作を任せて眠りにつく事にした。

長期の任務にも対応出来るように、パイロットシステムを搭載した人機体はコクピットのシートを倒してベッドのようにする事が出来る。但し寝心地は機体による。

ジンは早速相棒であるリミテッドキャリバーに操作を一任すると、シートを倒して寝る準備に入った。

「そうそう、これを忘れちゃいけない。」

モニターの設定欄から乗員保護項目をタップしてパイロット保護用胴体部サスペンション減衰率という項目を手際よく変更する。パイロットシステム搭載の人機体はパイロット保護用でコクピット周辺にサスペンションが張り巡らされているが、この設定を変えることで歩行中の揺れも完全にカットする事が出来るのだ。最もこの裏技を知っているのはこの中でジンだけだが。

 

他のメンバーもシートを倒して眠りについた頃、人機体らは暴風雨の中雑談を始めた。

雨に打たれながらリミテッドキャリバーが会話を始める。

「風強いな……。まあオレ達人機体は人間のように飛ばされる事もないし寒さも感じないが。」

続いてトリニティ。

「関節部に雨水とか溜まるのは嫌だけどね。結局細かい所は人間の手がないと直せないし。」

護衛人機体団もログイン。

「僕らのような一般的な構造の人機体ならまだしも、御三方のような特殊要素がふんだんに盛り込まれた構造だと人の手は必須ですよね……!」

「私は君らのような簡潔な構造の方がすっきりしてて好きだな。ほら、私って汎用性重視だから色々と面倒くさいんだ。たしかに換装パーツの互換性は高いけど、どうしても万能因子を介在させてパーツをくっつける時もあるから、君らのようなインテリジェント化された構造は羨ましいな。ほら、パーツ交換とか簡単でしょ?」

汎用性重視のインパチェンスは日頃思っている事を呟く。

「ん〜そうですね、たしかに故障した際の付け替えなんかはホント直ぐに出来るので煩わしさは感じないですね。」

最近のエコカーと同じようなもんだ。コストカットと構造の単純化によって大量生産もしやすくなる。もっとも、人機体にとってはインパチェンスとは違う意味での汎用性と改良や整備のしやすさを考えての事である。

「俺はGNドライヴこそ強みとしてあるけど、人の手で直接組み上げられた部品が多いんだ。俗に言う職人業ってやつ?ロストテクノロジーになりかけているし、いかに技術が進歩したとは言っても機械が再現出来る限度の限界に近い物もあるから、人間がいないと困るよ。」

トリニティは今のご時世滅多に手に入らないGNドライヴを装備している。逆に言えば阿頼耶識システムのように資料が殆ど残ってないのだ。元々トリニティの父親が開発した機体で、BEYONDheavenに納入される物であった為GNドライヴについてはライフも知らない事が多い。だからこそ開発の傍に居たパートナーの睦月は整備に必要不可欠だし、これまで培って来た友情と言う面面も決して蔑ろに出来る物ではない。

平和と共存を一番に願うライフの人機体達だが、自分達の【身体】を存続させる為にも人の手はいずれ必要になってくるし、そう言った面である意味ライフの理念に賛同する人機体もいる。

「そう言えば睦月は整備士だったか。何でジンは整備班に呼ばないんだろう。」

「恐らく俺の整備に手一杯だからだろう。仕組みが分かってるのも睦月だけだから、実質一人でやっているようなもんだし。」

「なるほどな。」

 

その後も喋り続けて歩く事30分。時刻は午前2時前となった。風は一層強まっている為突風で体制が崩れそうになる事も増えてきた。レンズに当たる雨粒がデカくなってきたせいか「目」を擦る人機体達。

現在地は東南支部から25キロ程北東に進んだ小さな平原。台風の移動進路に沿って歩く為、廃墟を通過する時もあれば山を突っ切る時もある。25キロとはいえリベリオンやオリジンを見かけないのは事前に台風下におかれないよう事前に予想進路から離れたのだろう。支部長の判断は半分正しかった。しかし、問題は衛生関連の件だ。

「こんなに分厚い雲と雨風じゃリベリオンの技術力でも僕らを見る事は出来ないですよね?」

護衛人機体の一人がボヤく。

「そうだな…。いかに技術が上がっても結局殆どは電力に頼ってるし、何よりトリニティのGN粒子があるからな。」

地上かつ25キロしか離れていない支部とも連絡がロクに取れない彼らなのだから、上空何十キロから乱雲を通して自分達の動きを観察する事など出来るはずもないしジャミング用のGN粒子を散布してもいる。だが不安というのは人機体といえども拭える物ではなかった。

「カメラ、ちゃんと録画出来てるか?」

トリニティが念の為確認する。直後全員の「大丈夫」の返答。

まっさらな平原の中、暴風雨と不確かな監視の目を気にしつつも彼らはひたすら進む。

するとさっきから遠くで光っていた雷が今度は遠征班のすぐ近くに落ちた。が、彼らはイタズラにビクビクする事もなく歩いていく。人機体の外装には万能因子を応用してあたかも避雷針のように雷を屈折させて直接機体に当たらないような性質を持たせている。これにより直接でない限りEMPのような攻撃を防ぐ事が出来るようになった。ただし電波は通信効率も考えて逆に通りやすくしている。

漆黒の平野の中、鉄の背中が続いていく。

まだ北東支部は遠い。

 

 

夜が明けた。目覚まし時計はない代わりに体内時計で午前9時過ぎ頃に各々は目を覚ましていった。

朝になったとは言え依然として台風の中だ。そんなに明るくないし、太平洋を飛行中なので周りは海ばかり。波が時々カメラの位置まで飛び散って来るのでスクリーンに水滴がいくつか着いている。

朝飯は今まで通りコクピット内の万能因子簡易製造機を応用して作られた人工フード。

ジンはバランス良く和食。白米と味噌汁に焼き鮭、小松菜と漬物を少々。

エイミーはたらこスパゲティにオニオンスープとサラダの詰め合わせ(シーザードレッシング付き)。

睦月はベーコンとレタスのサンドイッチを2つに牛乳と目玉焼き、コーンポタージュ。

睦月は飯を食いながらお気に入りの曲をコクピット内のスピーカーで聴く。『女王』とか言うバンドで、イギリス出身らしい。

エイミーは暇なので所持しているタブレットを開くと、コクピットから見える外の景色を描き始めた。晴れならなお良かったのだが、こう言った景色は滅多に見れない。手際よくタッチペンを滑らせていく。

ジンは自らが開発した雨雲レーダーのソフトで台風の勢力を確認する。台風の進路は列島の太平洋側をかすめた後勢力を弱めながらおおよそ北東の進路を進んでいる。恐らく夕方前には低気圧に変わるだろう。現在地は千島列島とカムチャッカの間の辺りで北太平洋寄り。もう少しベーリング海寄りの位置でユーラシア大陸に上陸したかったが早めにカムチャッカ半島に降りて陸路を通る方がいいかも知れない。リミテッドキャリバーのレーダーを見る。今のところ敵影は無さそうだし、大海原の中台風がなくなると最悪の場合丸裸で監視に見つかるかも知れないので朝飯を食い終わり次第カムチャッカ半島上陸を目指す事にしたいと遠征班の班長である睦月=トリニティに連絡をする。

「あーもしもし、睦月聞こえる?」

「ん?なんでふぉーか?(なんでしょうか?)」

サンドイッチを咀嚼している最中だったためくぐもっている。

「…えっと、今後の進路についてなんだが。今いいかな?」

「いいでふよぉ。ふぉっとみふほましてふだはいい。(いいですよ。ちょっと水飲まして下さいい。)」

数秒後クリアな音声でどうぞと聞こえる。

「レーダーを見る限り早ければ今日の午後には台風が死ぬ。当初予想したよりも早いな。こんな広い太平洋の中じゃGNドライブのジャミング効果があっても一旦監視に目を付けられると逃げようがないから早めにカムチャッカ半島に上陸すべきと思うんだが……どうかな?あ、レーダーの情報はそっちに送る。」

ジンが転送し、睦月はスクリーン上で確認する。予想図はとても分かりやすい物で天気予報そのものだ。

「うーんそうですね…。台風を抜ければゼロ達からの連絡を受け取れますし、今回は監視の目を気にしないといけないので……私はジンの提案に賛成です。エイミーには私から連絡しておきますね。」

「おう、サンキューな。」

数分後エイミーからも了承を得たので今度は各人機体に連絡する。

「人機体の皆さんおはようございます。先程ジンから提案があり、予想以上に台風が消えるのが早く、それによって見つかる前にカムチャッカ半島付近に上陸しようと思います。今回は異例の行動スケジュールなので違和感はあると思いますが……どうでしょうか?」

「陸路の方が燃料をあまり消費しないしな。私は賛成だ。」

「例のシステムのデータも転送して、早いとこ解析してもらいたいから俺も賛成だ。」

そもそもいつもなら日本海を突っ切って中国大陸から北東支部を目指すが、今回は海路。加えて監視の目を気にしなければならないので訪問先の安全も考えて人機体らは次々とジンの提案に賛成をした。

「よし、では決まりですね。では30分後に台風から徐々に離れてカムチャッカ半島を目指します。」

 

 

 

 

北東支部は崖を削って造られており、気候面、環境面の過酷さも相まって天然の要塞とも呼ばれている。年平均気温は5℃程。冬は常に吹雪が強い為マイナス20℃に達する事もある。加えて支部よりも更に麓、南側には針葉樹林がまるで絨毯のようにひしめき開けた地形なので、そこから上に位置する支部と戦うには条件が不利すぎる事、かと言って反対の北側から攻めようにも頑強な崖に隠れた支部を叩く事は難しいし、何より支部以北には凍った海が続いている事、これの要素が相まって「天然の要塞」と呼ばれている。

しかし何よりリベリオンやオリジンらが攻め込めない要因としてはそこに所属する人機体の一機一機が強者揃いだからであろう。中にはBEYONDheavenが分裂する直前まで存在していた『アンブレイカブル』と呼ばれる超精鋭チームに所属していた人機体も居る。戦争が始まるとチーム内の数機はリベリオンに所属したり、或いはオリジンとなったりした。そんな中人間との共存を目指すライフ側の思想を持った数機がここ、北東支部に結集したのだった。元々アンブレイカブルは北極に専用の施設、今で言う支部のような所を詰所としていたが、戦乱で施設の大部分が破壊されてしまった為北東支部の一部はその施設でまだ使えそうな機材等を転用している。

北東支部を設立した当初はアンブレイカブル内の4機のみでメンバー構成されていた。しかし他支部からの移動や数機のオリジンがライフに寝返りした事もあって現在は9機まで増えている。

支部長のレイフはアンブレイカブルのリーダーであった『レゾーベル』の元パイロットの妻という変わった立場。戦乱の中で北東支部の支部長を務めた夫は病によって亡くなってしまい、変わって妻であるレイフが支部長となったのであった。なお、レイフは人機体の操作は慣れていない為レゾーベルのコクピットはパイロットシステムを取り外してシステム面の強化装置をを代わりに組み込んでいる。

人機体のメンバー構成は、

リーダーであるレゾーベル。

副リーダーであるヴァレンチノとロッテンフォロウ。

支部管理を任されているスティンガー。

設計段階で言えばゼロと並ぶほど前の世代であるマッドロータス。

オリジンから寝返ったレガーメリアン。

同じくオリジンから寝返った傭兵と名乗るクロードリーガンとパートナーの人機体であるナベリウス。

ナベリウスの私兵であるサーベラス兄弟。

この内レゾーベル、ヴァレンチノ、ロッテンフォロウ、マッドロータスがアンブレイカブルに所属していた。

また、人間は支部運営や機体整備に必要な者のみで構成されている為東南や中東支部のような民間人はいない。

ちなみに東南支部が今で言う日本にあり、北東支部が在するのはロシアのアナディル付近である。北東支部周辺は夏ということもあって流石に雪こそないが、真夏の東南支部周辺に比べれば幾分か寒い。

時差が東南支部に比べて3時間ほど早い北東支部は正午になった。昼食を早々と済ませたレイフは水野支部長に連絡をした。北東支部は崖を削って作った為、支部長室といえども配管やコード類がむき出しになっている。そのせいか元々狭い部屋が一層狭く感じる。しかも支部は必要最低限の設備しか殆ど置いていないし、連絡する時は旧式の携帯電話を改良した親機でする事になっている。しかしレイフは「ごちゃごちゃしているよりも落ち着くし、粗い感じも嫌いじゃない」と本人は気に入っているらしい。

受話器を手に取る。昔のように番号を入力してかけるのではなく、後付けされたプーリーのような部品で周波数を合わせた後に連絡用の確認パスコードをダイヤルで入力してやっと連絡出来る仕組みだ。素人がやるとかけるまでに2分くらいかかるがレイフは10秒もしないうちに電話をする。どこの支部とも違うし、リベリオンすら使ってない手法で連絡する為、傍受の可能性はほぼ皆無なのが強みだ。

数秒コール音がなり、直後東南支部の支部長室に繋がる。電話の声は水野支部長本人。

「おはようございますレイフ支部長……っとそっちはもうお昼でしたな。」

「気にする事はない。朝食を済ませた頃だと思ってこの時間に電話したが……よろしいかな?例のモビルスーツについてだ。」

水野は真面目な声色で聞き入る。

「……何か新しい情報でも入ったのでしょうか?」

レイフは予め周辺を見回ったクロード達の報告資料を見ながら答える。

「この前の連絡の後、ウチの兵に周辺捜査をしてもらったのだがな。恐らくもっと内陸寄り、つまり北東支部の西側に居そうな事が分かった。北太平洋からベーリング海の沿岸沿いを一通り調べてもまるで反応がないし、チュクチ海方面を調べても反応はなかったらしい。それと、遠征班は既に東南支部から出発したのだろう?」

「はい、今日未明に出ました。台風の進路に沿っているので少し到着が前後するかと思いますが。」

「構わん。遠征班には北東支部に一回来てもらうからな。私から伝えておこう。それで、監視関係の方はどうなっている?」

「現在我が支部の整備班と技術者達が開発したシステムで警戒しています。しかし台風が通るせいか列島付近の上空にはあやしい動きは特に見当たりません。やはり衛星なのでしょうか……。」

「…今の我々には宇宙(そら)から大地の様子を詳しく見る術は確固たる物としてはないからな。確証は得られんが……それでも衛星は管理に手間がかかる。技術力があるとはいえ利便性を取るだろうし、宇宙よりもまだ空中の方が地上に近いから詳しく様子も見れる。監視の可不可が気象に左右されるのは衛星も偵察機も同じだろう?私だったら後者を取るがね。」

大気流動観測システムは現在もゼロとアモン、整備班と技術者らが必至にデータの構築と観測を行ってくれている……が、台風を抜けてから進路部分のデータは転送される。判断はそれによるだろう。

「台風から抜ければ遠征班から随時観測データが転送されてくるのでそれまでは様子見ですね。ただ、衛星か偵察機かと言うと私は偵察機に賛成ですね。衛星と偵察機を比べたら利便性の差があり過ぎる。ともかく、観測は引き続き徹底させますのでまた何かあればいち早くお知らせしますよ。」

「頼むぞ。こちらはモビルスーツについての情報をもっと探してみよう。では、また何かあればかけてくれたまえ。時間を取らせて済まなかったな。」

 

 

 

数日後、無事カムチャッカ半島に上陸出来た遠征班は陸路で北東支部に到着した。観測データは上陸時に東南支部のゼロに転送して既に解析中だ。

北東支部に到着し、すぐに発掘作業に同行するクロード、レガーメリアン、マッドロータスと情報交換を行う。

「遠路遥々ご苦労だった。ゆっくり休んでと言いたいところだがこっちも立て込んでてな。発掘を早めに終わらせて北北東支部の援護に向かう事になってな。大体の位置……つっても半径500km圏内だが、ここから西の内陸部に居る可能性が高い。沿岸部は一通り調べたがそれらしい反応がないからな。それに、過去ガンダムフレームの機体とモビルアーマーの戦場はユーラシア大陸の内陸部で盛んだったらしい。だとすればそこにあってもおかしくないからな。探す際は各機個別で遠くまで散らばるとリベリオンやオリジンに見つかった際面倒だから間隔は5km。北東支部から西に向かって進行する。リベリオンやオリジンを見つけた、或いは見つけられた時はすぐに通達しろ。戦闘はなるべく避けてくれな。」

かなり早口だったが褐色肌の暑苦しそうな男、クロードはここ最近の偵察記録と共にガンダムフレーム機発掘に向けての説明をした。クロードは代々傭兵を生業とする家に生まれ、戦前はBEYONDheavenで人機体の兵装関係に携わっていた事もある。僚機のサーベラスも彼が製作した物で、戦乱前にBEYONDheavenが製作した試作機を奪取し完成させたらしい。

続いて探索方法についてクロードが説明する。当時ガンダムフレームに使用されたであろう外装やらパーツ類やらの鉄分を大雑把ではあるが見分けられる特殊な探知機を使うそうだ。コクピット内部に付けて各センサー類と同期させる。また、その装置からは常に電波を発信しており跳ね返りから物体の様相を推定するというステルス戦闘機の技術の一部を利用した機能もついている。

「反応があればメーターの針が吹っ切れる。それを頼りに見つけるんだ。セットが完了次第出撃しよう。あ、レガーメリアンはオレから離れるなよ?お前のクローは地面に埋まってた際に必要だが、如何せんお前は怖がりだからな。」

う、うん…とそのレガーメリアンと呼ばれる少し小さな人機体は頷く。両手にはマニピュレーターの代わりに鋭い刃が3本ずつ、腕は可動域を重視したのか多関節蛇腹機構を搭載した珍しいモデルだ。(世間ではズゴックの腕で認知されているアレ)

「元々コイツはオリジンだったんだがな。リベリオンに殺られそうになってるのをオレの僚機サーベラスが発見してな。明らかにイジメな光景だったもんで助けたら支部に住み着いちまって今に至る訳さ。付き合ってて楽しいし支部長も来るものは拒まず主義だから今は仲間さ。」

「え、えっと……あんまり戦うのは苦手ですけど、お役に立てるよう頑張りますっ!」

遠征班は総じてよろしくと挨拶を返す。イカつい見た目に反して気弱な性格のギャップさがなんとも愛嬌のあるものであった。

「レガーメリアンは元々作業用に開発された人機体のフレームを使用してるからこんなイカつい見た目なのさ。さっき渡した探知機もレガーメリアンに搭載されていた技術を応用したモンだ。ただ人機体とはいえ戦闘用って訳じゃないからな。捜索の際にはオレやサーベラスらが護衛役をするんだ。……まあ、アイスブレイクはこんなもんでいいだろう。そろそろ出発するぞ。」

 

北東支部を彼らが後にするのとほぼ同時刻、支部管理を任されているスティンガーは緊急連絡をキャッチする。発信源は北東支部より更に北に位置する『北北東支部』から。

「こちら北東支部から北北東へ。緊急連絡をキャッチした。」

「聞こえるか?私は北北東支部所属人機体のジンクシズムだ。現在リベリオンと戦闘中だが、そろそろ支部がもたない。至急応援に駆けつけて欲しい……と各支部に緊急連絡はしたのだがな。地理的に他支部から離れている事や今すぐには向かえないで断られてしまっていてな。北東支部は規模も人機体も少ないから連絡するか迷ったが……どうだろうか…?」

そのジンクシズムと名乗る人機体はかなり疲弊した声色だった。音声の背後には爆撃音も聞こえている。前から北北東支部が周辺のリベリオン小隊と戦闘状態にあったのは知っていたが、予想以上に長引いて今では総力戦となっているのか。

「兵力はどうなっている?民間人は?」

「殆どが殺られた。民間人も出来るだけ避難させてはいるが……半分は亡くなった。こちらは一機でもいいからすぐに増援が欲しい。なんとかならないだろうか…。」

「……了解だ。増援は送るが今すぐとなると数は期待しないでくれ。もう少しの辛抱だ。待っていてくれ。」

感謝する!と、ようやく希望が見えてきたような声になる。

支部管理を任されているとはいえレイフ支部長を通さなくても増援を出すことを許可出来たのは、それだけスティンガーや他の人機体らが優秀であると認められているからだろう。また、レイフは常日頃各々の判断力を養うスタンスを取っていた為、大抵の事は各機に任せられている。

一機でそれ相応の力を発揮出来る者となると……。

「聞こえるか?一機確実に力になれる者をそちらに送る。機体名は『レゾーベル』だ。到着次第あなた達は彼に任せて安全地帯への撤退準備を始めてもらって大丈夫だ。」

 

 

 

 

 

クロードの調査のお陰で大体の位置は絞れていたので、ユーラシア大陸を往復する事は避けられそうだが、未だにそれらしい反応はない。調査メンバーは縦一列に並んであたかもコピー機が資料をスキャンするかの様に大陸を舐めていく。

しかし調査開始から2時間、反応はどうでもいいオリジンを数機程度見つけたくらいで一向にガンダムフレームは見つけられない。

一同は調査予定エリアを一通り調べると、一旦エリア外の、今で言うトルコの辺りにある森林に集合する。人間が手入れをしないせいで暴走した植物は、まるで森その物が意志を持っているかのような雰囲気を放っていた。歴史的建造物や街並みも、時の流れには逆らえずに朽ちている様子を目に留める。

動物達の囀りの中、話し合いをする。その間探知機はオーバーヒート回避の為に電源を切る。この調査の為だけに開発した為、いつ壊れてもおかしくない。

「……反応は未だ得られず。どうしたもんかなぁ。」

クロードは苦悶の表情を浮かべる。元々レイフが過去の資料を元に位置を予測したのである為、間違いという可能性もある。しかしあのレイフ支部長の言う事だ。今まで間違っていた事はないし、その資料を見てもこの周辺に居ることはたしかなのだ。

皆が今後の調査方針について会議をする最中、レガーメリアンは周囲の防衛と称してサーベラス兄弟を引き連れて森を見回る。ありのままに生きる動植物達を見ながら探知機とレーダーを横目に会議する彼らの周りを、木々に気をつけつつ円を描くように歩く。

 

すると数分後、大地を歩く彼の足は自然のそれとは違う感触の物を踏む。レガーメリアンは元々土地開発用という事もあり、地形の変化には敏感である。違和感を察知した彼は歩みを止めて足元をクローで探る。すると、クローが土壌のそれとは違う手触りを覚える。たまたまONにしていた探知機に目をやる。反応を示すアイコンがまるでその存在を主張するかのように点滅していた。

「クロード!!!いたぞ、いたぞお!!!」

一気に森林が騒がしくなった。

各々探知機を再びONにしてその存在を認める。森林に入る前に探知機は切っていたのと、土壌がある程度覆いかぶさったいた事が探知機に引っかからなかった要因だろう。レガーメリアンが掘り進めていくと、1枚の縦30m、横20m程の鉄の板が顕になる。恐らくこれは『蓋』のような物であり、現物はこの下に埋まっているのだろう。

「……見つけたはいいですけど、どうやって回収します?ライフルで蓋を破るついでにガンダムフレームまで溶かしたくないですし……。」

「そうだな……ここは一つ、蓋を斬ってみよう。恐らくこの板は『天井』だろうからな。斬る所に注意して開けてみよう。」

レガーメリアンが持ち前の掘削用クローで器用に鉄板を切り裂いて聞く。

「鉄板の表面自体は何百年と経ってるせいからかなり酷い状態だけど、その下の頑強さはまだ残っているね。」

順調にカットしていくレガーメリアン。しかし彼の元来のおっちょこちょいさが出たのか、自分の周りを見事四方に斬ってしまう。

クロードらからは、突然レガーメリアンが地面に吸い込まれた、あるいは瞬間移動したかのように目の前から消えた。

「…っておおい?!レガーメリアン!!」

「大丈夫ですか?!」

「体勢を整えるんだ!!」

上から見ていたクロードらは狭い穴に人機体と身を乗り出して地下の暗闇に叫ぶ。

フェードアウトしたレガーメリアンは悲鳴と共に地下施設…ガンダムフレームが安置される地下へと吸い込まれていく。あまりにも焦っていたのでスラスターを吹かすことを忘れていた彼は、地面直撃のスレスレでフルブーストでブレーキをかける形で着陸(?)する。何百年と溜まった誇りや土やらが一気に舞うのを感じる。

イテテテと言わんばかりに腰をさする。上からは心配する仲間の声が聞こえてくる。

「大丈夫ですよ!!でもかなり深いので危ないですよ!!」

無事を確認した彼らは、ガンダムフレームの存在を問う。

額のサーチライトを一番明るくする。さながらお化け屋敷のような周りにギョッとする。

地下はシンプルな構造で、恐らく入口に向かう為のリフトや整備用の工具、パーツ、当時使われていたであろう機体の残骸などが当地の様子を物語っている。

恐る恐る奥に進んでいき、開けた区画で面を上げる。

「……居ました。ガンダムフレーム。」

居たか居たかと叫ぶクロードらの声と対称的に、レガーメリアンは落ち着いた声でそう答えた。

サーチライトに照らされた機体は黒いボディに馬のようにたくましい4本の脚で、埃を被りながら毅然とした様相でそこに立っていた。何百年と経っている筈なのに、まるで「死んじゃいない」その厳格な姿形と、そのいかにも「悪魔」な姿に心を奪われていたのであった。魅了されていた。

そしてその額には『Halphas』の文字が小さく、それでいて遠くからでも、何百年と経っていてもしっかりと読める程力強く刻まれていた。

 




いよいよ受験が近くなってきてしまい……Twitterにも殆ど顔を出せてないルシェラです……。
今後は受験終了まで最新話の更新はないです。(多分前書きにキャラクター紹介やらあらすじやらを載せるかも?)
とりあえず短めですがこれにて失礼します✋!!
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