ビビーッ、ビビーッ、ビビーッ!
けたたましく目覚まし時計が叫ぶ。
時刻は朝の6時前。まだ暁前だがその少年はおもむろに身体を起こす。
ここは大自然の中に作られた人類の新たな住処[キャラバン]。人機体達から逃れて来た人間達が集まり形成された地下大型居住区。
「……寝みぃ…。」
と、その青年は紅色の髪の毛を翻して自室の洗面所に向かう。
彼の名前はルフス。苗字は元々あるようなのだが彼自身が幼い頃の事故による記憶喪失で忘れてしまっており、その上親や親戚とも既に離別しているので必然的に下の名前で呼ばれている。
その17歳の青年は洗面所で顔を洗い、僅かな普段着に着替え、自室を後にした。既に自分より先に起きた人達が朝食のバイキングに並んでいる。
[万能因子]により栽培や畑仕事をしなくても手軽に生成が可能になった為、地下と言えども自炊が出来るのだ。
万能因子とはBeyondHEAVENによって生み出された物で、DNAの組み換えを独自に行ったり、環境や外部からのアクセスに合わせて様々な形状変化が自律的に、短時間で可能な新世代のバイオテクノロジーの結晶である。人機体の装甲にも使われており、ある程度なら自己再生することも出来る。
ルフスは自分の方では早起きしたつもりだったが予想以上に先を越されていたため、長い列に並ぶ事にがっくりと肩を落としながらも渋々列に並んだ。
「1、2、3……。10人か。多いなぁ。」
と言いつつ食材のメニュー表を見る。
「まあ杏仁豆腐は確定として、あとはコーヒー牛乳にケロッグ、あとチョコレート…。」
と、選定していると、
「よォ!おはようさん!」
と、聞き慣れた男勝りの女の声がした。
「ホムラ、おはようさん。」
藍色の整った髪と、ヘソ出しシャツが目立つ彼女の名前は暁ホムラ。男勝りな性格が特徴で、いつも明るいお姉さん肌。冗談以外のネガティブな発言は大嫌いで、どんなに不利な状況でも決して諦めない姿勢がとても周りに好かれ、姐さんと呼ばれている。
ルフスとはキャラバンで知り合い、よく用事に付き合わせている。(一方的にではあるが)
「ま〜たお前は栄養のねぇ飯食ってんなあ」
「いいじゃんか別に……。と言うか姐さんも毎日同じ物ばっかりで飽きないの?」
ホムラはよく人機体達のメンテナンスを任されるのでエネルギー補給は絶対に怠らないようにしている。その事もあってか食材に気を使うようになり、黄金のサイクルと命名したメニューを予定や体調に合わせて日毎に食べ変えているのだ。
「これがベストなのさ!おかげで毎日健康で過ごしてるし。」
「姐さんはそれでいいかも知れないけど、やっぱり俺は健康よりかは自分の趣向を取るな。」
そう話している内に列が段々と進んで行き、ルフス達の番になった頃には後ろにおびただしい数の人が並んでいた。
二人は手際良く食材を取ると、食堂のテーブルには座らず、お盆を持ったままエレベーターで人機体達の格納庫に向かった。
キャラバンには人間との共存を望む人機体達がおり、人間達の生活を守る代わりに整備や補給をしてもらうという契約を結んでいる。
一見ただの利害の一致に見えるし、万能因子がある人機体達にとっては修復の加速に過ぎない物ではあるが、彼らから言い出した訳ではなく、人間達の優しさから始まった物なのだ。
エレベーターが格納庫フロアに到着し、二人は自分のパートナーの人機体の元へと向かう。人機体達には人間で言う寮の様な物があるが、基本寝る時以外は[ラウンジ]呼ばれる大きな広場でたむろしている。
二人のパートナーであるフェンリルとゼロはルフス達を見ると手を振って場所を知らせた。
互いにおはようと言い合って、フェンリル達はその場に、ルフス達は近くにあった機材の上に腰を下ろした。
「そーいや今日は中東支部の所に行くんだっけ?」
とホムラはゼロに聞く。
「ああ。情報交換と中東支部周辺の敵部隊の掃討だ。」
キャラバンは少数ではあるが各地にあり、そのひとつひとつがかなり巨大である。
地上には城壁があり、東西南北の監視塔に人機体と人間がペアで見張りをしている。
城壁の内側には地下へと通じる巨大ゲートがあり、エレベーター式で人員や物資を地下に運んでいる。
かなり堅牢ではあるが、それでも大規模な攻撃に晒されればそれなりの被害を受けるため、定期的に周辺の人機体を迎撃しに行かなければならなかった。
「敵に傍受される危険があるとは言え、いちいち支部に行くのどうにかなんねえかなぁ。」
「まあまあ。こんな閉塞感満載の所にずっと居るよりかはマシだろう?」
と、ルフスの愚痴をフェンリルが受け止める。
「て言うかよくここにうじゃうじゃ人機体居るのに探知されないよな。」
「そりゃあゼロのお陰じゃんよ。」
ホムラが自慢そうにゼロを褒める。
[ゼロ]
初めて製作された人機体で、後に全ての人機体のベースとなった存在で、青と白のカラーリングと武士の様なスマートな機体フォルムが特徴。
ゼロにはかなりデータ上での権限の優越が認められており、管理システムで全ての人機体をリアルタイムで監視する事も出来た。
ただ、BeyondHEAVENの本拠地が敵対している人機体達に占拠されてしまった為ゼロの権限はほぼ失脚状態となってしまい、今は自分と周りの人機体達の反応を管理する程度に収まっているのだとか。
「ホムラ、あまり買い被らないでくれ…。」
「いいじゃんか〜事実なんだから。」
過信を恐れての警告なのか、それとも人間味のある照れなのか、それは分からなかったがこんな会話も人機体ならではの物だ。
ただ、ここまで密接になっているペアは各支部を漁ってもほんのひと握りしか存在してないが。
そうやってくだらない話をしていると、館内アナウンスが流れ出した。
「本日の支部訪問の担当チームの方々は、10時までに東の監視塔に集まってください。繰り返します……。」
ラウンジが一気に静まる。
「さあ、ソラ達哨戒班の報告を聞きに行くか。」
そう言って彼らはエレベーターへと向かった。
こんにちは(*´∇`*)
毎日眠いルシェラです。
第一話になります!
ここから物語がグアっと始まって行きますよ!
拙い文章には寛大な心でお願いします…
機体、キャラクター投稿希望は不定期ではありますがたまに募集しています。
作品に関する事や関係者の方々への質問は受け付けていないのでよろしくお願いします。