機動戦士ガンダム·プレデターズ   作:ルシェラ

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機動戦士ガンダムプレデターズ 第二話 リスニング

エレベーターで東の監視塔に到着したルフス達を待っていたのは、哨戒班の班長のソラと相方の人機体アモン、そしてルフス達の所属するキャラバン東南支部の統括長の水野瞬だった。

水野瞬は元々BeyondHEAVENの上層部の重役で、気弱な新入社員が一回見たら恐ろしさの方で忘れられなくなる様な怖い顔と声をしている。また、重役の仕事も難なくこなすということもあってとても厳しい人と見られがちだが、実際はとても温厚な人で、オフの時や飲み会では自ら幹事を引き受けるなど、実はいい人。

赤いバンダナと袴の様な服が特徴的なソラは、少年兵だった過去を持っている。赤と黒の鳥の様な華奢な外見の人機体アモンは人間に敵対するリベリオンと呼ばれる人機体にとても嫌悪感を抱いており、戦場の中で襲われているソラを助け、以降パートナーとなった。

彼らは軽い会釈と「お疲れ様です」の二つで挨拶を済ませると、ルフス達人間は電子スクリーンを搭載した会議用の長机に、フェンリルら人機体達はその電子スクリーン内のデータを送信してもらい会議が始まった。

 

水野は一回軽くむせた後、

「ではソラとアモン、報告を聞かせてくれないか。」

と、優しい表情と厳しい声で言った。

すると、報告の前にホムラが

「今回もレオディルとウィリアハートは不参加か。」

とぼやいた。途端にゼロがホムラから若干眼をそらして、

「……ホムラ、理由を覚えてくれていると信じてるよ。」

「ん?なんだっけ?」

ゼロが顔に手を当てた。

「……前も言ったけど、レオディルは整備班と一緒に人機体と各施設の整備、ウィリアはアンドロイド体で食事用の万能因子生成機器の点検その他諸々を担当してるんだよ。だから彼らが前線に出るのは直接戦闘時くらい。」

「あー!なるほど…!たしかに2人がいなくなっちまったら[黄金のサイクルメニュー]にとっても死活問題だしな…!」

話の盛り上がりを危惧した水野は二人に会話を辞めるよう促し、アモン達に報告をさせた。

「では、まず東南支部周辺の敵人機体についてです。先日我々哨戒班が、この支部を起点として150km四方の区画を見回りました。スクリーンをご覧下さい。」

すると、長机のスクリーン板に東南支部上空の写真と捜索範囲を示す枠、そして敵の人機体が確認された地点などが次々と表示された。

一同は真剣な表情でスクリーンを見つめる。

「前回よりも[テント]の数が増えてるな…。」

水野は腕組みをしながら唸る。

テントとは人間と人機体を丸ごと収容できる即席のシェルターだ。最初は杭の様な形をしているが、地面に突き刺すと上部が延長してパラソルの様に特殊な布が展開し、半球の形になると言う仕組みである。

収容出来るのは4人4機までという制約こそあるものの、テントの表面の布は光学迷彩を搭載しているため、敵に見つかる可能性がかなり低下するというメリットもある。

また、小さいが最低限の生活は出来る。

ソラ達は超音波を発信して音の跳ね返りからテントの位置を特定するという独自に発見した方法で索敵をしているため、大体ではあるがある程度テントの数を把握している。

「一つのテントに4機の人機体、そのテントが10個……。撃破しておきますか?」

ルフスが面倒くさそうに言う。

「そうだな…。念の為今回の支部訪問のチームに睦月を編入。アズールとエイミーには城壁周辺の見張りに加わってもらおう。彼らには私から伝えておく。何か、他に意見のある者は?」

一同はしばし沈黙した後、水野の声で会議は終了した。エレベーターでラウンジに戻り、出撃するまでの間ルフスとホムラは機体の調整をしながら会話する。

「そーいやアズールってまだ人機体に冷たいんだっけ?」

「姐さん…そんな露骨に言わんでも……。と言うか最近はむしろ段々喋るようになってきてるよ。」

「そうなんかい?」

アズールは幼く可愛らしい容姿の少女で、相方の人機体のディエスといつも一緒にいる。

しかし、キャラバンに入る前に人機体達の攻撃によって家族を亡くしている為、ディエス以外の他の人機体達に対しては心を開かず時々冷たくあたる事もある。

周りの人とはあっという間に仲良くなるアズールだが、ディエス以外の人機体に対してはまだ少し心を開き切れていない。

だからこそ、それ故に、ディエスとアズールは他とは比べ物にならない程強い。

最近は他の人機体達にも徐々に心を開き始めてきてはいるが、それでも冷たい時はちょっと冷たい。

ホムラはデータベースを調整しながら

「私らとは色々任務こなして来たからそれなりに話せるけど、まだ怖い人は怖いんだろうなぁ。」

と呟く。

「可愛いからって調子に乗った奴が馴れ馴れしく話しかけた瞬間向こう脛を思いっ切り蹴られて悶絶したやつもいたな。」

途端にホムラが大爆笑しコクピットルームから落っこちそうになる。

ゼロがびっくりした瞬間に裏返った声が出たのもあってホムラは更に笑い続け、作業中時折ニヤついて吹き出し、「よし!もう笑わない!」と言った数分後にまたニヤついて吹き出すのを一時間程ループした。

流石に落ち着いた頃、一人の見慣れた女性がルフス達の所にやってきて、挨拶をした。

「こんにちは。今回の支部訪問チームに編入された睦月透火です!よろしくお願いします。」

ルフス達も挨拶を交わす。

「あ、トリニティの人か!」

「そう!そうです!」

珍しくホムラが[覚えていた]のでゼロはほっとする。

睦月透火は元々MS製造に携わっていた父の影響を受け、事変前から整備士として人機体などの整備を行っている。

事変後は整備士としてキャラバンの施設や人機体達をレオディルと整備する傍らパイロットとして戦線に出る様になったとの事。

パートナーのトリニティは元々彼女の父親が製造した物で、その高い性能から他国の軍に納品される予定だったが人機体達の襲撃に見舞われ、保管庫とその周辺は大破。トリニティは辛うじて別棟の保管庫に居たために難を逃れたが、納品先である軍の司令部が経済面での問題を理由に納品を拒否したため、結局売り出される事はなかった。

その後彼女の父が納品するはずだった予備パーツをどうせならとトリニティに取り付け、最終調整が完了し今のトリニティがある。

彼女の父は人機体達の反乱の時に亡くなっており、身寄りがなく放浪していた所を哨戒班のソラとアモンにキャラバンに誘われる。

フェンリルの調整を終えたルフスはやれやれと機材箱の上に腰を下ろす。

「もう会議は終わった感じかな?」

「はい!先程のアナウンスで私以外の方々も呼ばれていましたのでもうすぐ全員終了すると思います。」

すると睦月の背後に正統派なカラーリングと整った機体フォルムのトリニティが来た。

「睦月、こんな所にいたのか。」

「うん。出発前に挨拶するのは基本でしょ?さっきソラさん達には会議の場で挨拶したし。」

「そうか。出撃時間はもう伝えたのか?」

「ぎゃッ、伝えてないや…。えっと支部訪問チームは今から……二十分後の十二時に南出撃ゲートから出発です。トリップスケジュールは移動しながらの説明になります。」

途端にホムラが露骨に嫌な顔をした。

トリップスケジュールとは支部訪問の様な遠出時に使用される言わば「遠足のしおり」だ。

本物のしおりの様に細かい時間設定はないが支部長からの伝令や情報交換のネタ、大まかな日時などが記されている。

普通は先程のような会議の場で渡されるのだが今回の様な人員の後付けが行われると訂正が入るため、大抵は移動中に読む。

「え〜飯食いながら説明かよ〜。この二十分の中で読ませてくれよ〜。」

「まあ、渡されるのが二十分後ですから〜、諦めてください!」

周りが一斉に笑う。

「ま、出発まで荷造りでもやってようぜ。」

フェンリルが宥め、彼らは準備を再開した。

 

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東の監視塔に人機体[インパチェンス]と共に腰を下ろしている長く真っ白なツインテールの少女、エイミーホワイトクローバーは城壁の外の風景を写生していた。

エイミーは幼い頃反社会組織に誘拐され、ニュータイプ能力を見出された事で薬物による強化を施されてしまった言わば強化人間である。

その薬物の副作用と強いトラウマからか、髪の毛は真っ白になり、言葉を殆ど話せなくなってしまった。相方インパチェスとは実験施設で出会い、テスト中に逆に組織を壊滅させて二人で逃げ出す事に成功し、長い放浪を経た後キャラバンに二人で加わった。

放浪中に武装等を継ぎ接ぎで足して行った為周りからは〈パッチワーク〉とも呼ばれている。

前述の通り会話が出来ない彼女は支給されたタブレットに言葉を書いて(或いは文字打ちして)コミュニケーションを取る。それがきっかけで絵を描く様になり、よくキャラバンの外の景色や日常の風景を絵に描いている。

【できた…!】

と満足そうな表情で絵を保存しようとした時通知バーに

 

アズール

今どこにいるの?

 

と保存ボタンの上に表示され、通知バーを押してしまう。

【あっ】と思い、すぐアズールに

 

エイミー

東の監視塔。絵描いてる。インパチェスと一緒。

 

と恐ろしい速さで文字を打つとすぐ保存画面に戻る。

と、エイミーはすぐに保存ボタンを押さず、一瞬だけ間を開けた。途端にアズールから

 

アズール

あいよー。ボクもそっち行くー\( 'ω')/

 

と返信が来た。エイミーはホっとした様子で通知バーを上にどかすと絵を保存し、メッセージに既読をつけてタブレットを切った。

間もなくしてアズールがエレベーターで監視塔に来た。

「もうミズのんから連絡は聞いた?」

途端にすごい速さで画面に文字が打ち出され

【うん。メッセージで説明が飛んできた(っ'ヮ')╮ -見張り役二人で頑張ろう(*´`)】

と返信された。

「なるほどね。ボクはたまに別の監視塔に移動したり参謀部に連絡とったりするからちょっとめんどくさいけどね…。」

パパパ

【そう言えばディエスは?】

「ディエスは今レオディルとジン達で役割の情報交換してる。もうすぐ帰ってくると思うけど。」

【はいよー(´-ω-) じゃあとりあえず早めに監視につきますか。】

二人は肩を並べて監視についた。

 

 

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ドックの中でディエスとレオディルとジンは役割について会議をしていた。

好青年な見た目で尚且つ整備の腕も抜群なレオディルはキャラバン内の食料関係もアシスタントとは言え担当している忙しい身だ。普段はルフス達のように前線に赴いたり別キャラバンの訪問に行ったりはしない分内部の仕事が多いのは必然と言えば必然ではあるが、それでもかなりの数の仕事をこなしているレオディルは仲間からの信頼も厚い。

姉弟分として一緒に働いているジン·オーキスはレオディルとは違い整備関係の仕事のみだが、レオディルが食料関係の分担にまわっている時は彼女が人機体の整備や改良を担当している。

彼女は元々ニュータイプの研究のために作られた複製人間だったがニュータイプの適性がないため失敗作の烙印を押された。

その後は研究所の研究員として活動。

自身も生後1年程度であるがほかのクローンの世話係等を務めていた。

そのため割と世話焼き兄気質であり、姉貴面して一緒に働くレオディルにはお節介と思われる時もある。

普段は紫色の髪をポニーテールで纏めているが整備に就くと無造作に後頭部で髪の毛を縛り仕事に打ち込む姿は他の局員から人気を得ている。

ディエスはアズールがエイミーの方に言ってしまったので一人でアズール達見回り組とレオディルら施設内の纏め役との情報交換を行いアズールの元に向かった。

会議終了後すぐさまレオディルが、

「出発まであと20分弱か……。え〜っととりあえずジンさんは5番から10番の人機体基本的なメンテだけしておいて下さい。僕は放送室に行ってきます。」

と伝えると

「あいよー。残りは目視の確認だけでいい?」

とジンが聞き返す。レオディルは背を向けながら片手でお願いしますを作ると居住区に走っていった。

「相変わらずお忙しい身だね〜。」

と整備で黒くなった手の甲で額の汗を拭うとよしっ!と気合を入れて周りの整備士と共に仕事にかかった。

数分後居住区に向けてのアナウンスが流れ出した。

[居住区にお住まいの方々にご連絡申し上げます。本日正午に支部訪問チームが中東支部へ向かいます。少数とは言えこのキャラバンの戦力が一時的に低下します。万が一に備えて居住区の方々は午後2時以降訪問チームが帰宅するまで不要な外出は控えて頂きますようよろしくお願いします。繰り返します……。」

出発まであと数分となり、少なからず緊張が残るルフス達は出撃ゲートに向かった。

トリップスケジュールを受け取りゲートの先、外界へと歩み始めた彼らは長い旅路についた。

 

 




こんにちは(*´∇`*)
投稿したと思ったら全部出来て無くて頑張って投稿しているルシェラです。
遂にルフスくん達が外の世界へ(どこの巨人だよ)!
キャラバンに残ったキャラのストーリーも随時展開させていく予定です。
拙い文章には寛大にお願いね…

機体、キャラクター投稿希望は不定期ではありますがたまに募集しています。
作品に関する事や関係者の方々への質問は受け付けていないのでよろしくお願いします。
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