午前3時過ぎ。ルフスが最後の見張り役となった。
パートナーの人機体フェンリルと共に見張るのだが、下手に遠くに行って皆の傍を離れるわけにも行かないので実質ホケーっと起きているだけのようなものである。
かといって寝落ちしてもいけないのでルフスは自分の頬を数発叩きながらまるで餌を狙う動物のようにギラギラとした目で起きていた。
寝そうなルフスを心配しての事か、皆の前では言えないのか、フェンリルはポツリと話し始める。
「なあルフス。」
「んー?」
フェンリルは闇夜に輝く月を見ながら言う
「この戦い、いつ終わるんだろうな。」
人間の様な事を言うとルフスは思った。
人機体と言えど戦いに身を投じるよりかはやはり平和な世の中の方がいいと思うのは同じなのだろうか。
「急にどうしたんだ?」
「いや、こうやって月とか周りの自然を見てるとさ、なんか虚しくなってよ。」
「ん?急にどうしたんだよ?」
「いや、ルフスや周りの皆を罵るわけじゃないが、人間って昔から争いをやめないだろ?そのせいで周りの自然とか動物とか無関係なのに殺されたり荒らされたり可愛そうだなって。そう言う意味ではおれら人機体も同じだけどな。」
ルフスは暫く黙って考えた。
本来地球は生物達が平等に過ごす場所だ。
ビッグバンから始まり、食物連鎖と化学反応が自然を育て、季節によって栄えそして朽ちていく。
それが本来の自然であり地球という[世界]の摂理なのだ。
長い歴史の中で人間が生物界の頂点に君臨してからと言うものの、人類は母なる地球など眼中に留めず発明や進化、身勝手な戦争でボロボロにしているのだ。
やっと最近になって事の重大さに気づき、エコだのなんだの始めたがもう地球の化石燃料はほぼ貪りつくされた上に伐採された森林や破壊された自然を戻すには長い年月がかかり更には国際的な事情や住んでいる人達がどうのこうの……。
リベリオンの人機体達はそんな勝手な人間を地球から抹殺すべく反旗を翻したのだ。
寧ろそう思えば抗うよりも受け入れる方が地球から見れば当然の事だろう。
反逆ではなく救済だ。
……だが、フェンリルのように人間と共存する道を選んだ人機体は少なからず人間に反省を求めているのではないだろうか?
そして、皮肉ではあるが地球を汚す要因となった科学技術で今度は地球を癒せないか?
その手伝いが自分達にも出来ないだろうか?
自分達を生み出してくれたのは人類で、その人類を生み出したのはこの地球だ。
だからこそ争っている場合ではない。
人間にだって出来ることはまだまだあるし、反省の念だってある。
折角犠牲を払って進歩させて来た技術を受け継ぎ、発展させなければそれこそ地球にとっても無駄な行為にしかならない事になる。
ルフスはフェンリルの顔を見ながら改めて決意する。
「そうだな。一刻も早く終わらすためにもオレたちは分かり合う必要がある。きっと人間だって人機体だってそれぞれ心はあれど分かり合えるんだ。」
心。
フェンリルにとって、人機体にとってその言葉には深い意味があった。
ルフスは何の気無しに言ったつもりでも、機械である自分に心があると言ってくれた。
AIと言う作られたものではなく、正真正銘の、心。
フェンリルはルフスから顔を背けるように微笑むと、見張り時間が終了したルフスをコクピットに入れて寝かした。
その晩周りの人機体達はスリープモード(電源は付いているが必要最低限の機能にしかエネルギーをまわさない状態のこと)だったが、フェンリルは眠ることはなかった。
朝になった。
ソラが一番最初に起き、他のメンバーを起こしまわった。
点呼を取ろうとしたが四時に寝たルフスは起きなかったので寝たままにしておき、朝食となった。
起きる時間を計算して人機体達は昨晩からスリープモード中に朝食を製造機で作り終えていた。
それを口にしながら彼らはまた進行を開始する。
ふわぁーっと言う欠伸の声が続け様に無線から情けなく聴こえてくる。
すると半眠りのメンバーにソラから各機体のデータベースに画像が送られて来た。
ソラは訪問チームの班長のため、ルートの安全確認も行なっておりその都度班員に連絡をするのだ。
各自送られて来た画像をコクピットのウインドウに表示して見てみると、訪問の際にいつも通る廃墟となった都市の上空写真だった。
ソラから音声通信が入る。
「今まで通っていたこのエリアだが、前回の支部訪問の後にビルがいくつか崩壊したらしい。前の画像も今から送るから合わせて見て欲しい。」
今度は別の画像、つまり崩壊前の上空からの写真が来た。
「倒れたのは地表百階建てがほとんどだ。以前は上手い具合に遮蔽物として使えていた使えていた他のビルも巻き添えを喰らっているようだから、今回は瓦礫を上手く使って行くしかないな。そろそろ敵と遭遇してもおかしくない。」
前回の支部訪問では都市部を過ぎて10km程の所で敵と遭遇したので、次は都市部に居てもおかしくない。
「全員で行動すると目立っちまうからここは二手に分かれようと思う。写真に書いてある赤線のルートが二つあるだろう?それに従って進むんだ。メンバーは、
第一ルート
ソラ アモン
睦月 トリニティ
第二ルート
ルフス フェンリル
ホムラ ゼロ
の組み合わせでいいだろう。
もし敵を発見したらすぐに別ルートの班に知らせる事。
長居はしたくないから若干急ぎ足で進んでもらうが出来るだけ音をたてないように。
何か意見はあるか?」
メンバーは特になしと答えると、最後にフェンリルに起きたらルフスに伝えて欲しいと言って連絡を終了した。
このまま進んでいけばお昼を過ぎたあたりから廃都市に入る予定だ。
因みに、ルフス達の訪問先である中東支部には、民間人は少ないが荒くれ者な人機体と充実した防衛力を備えた城壁があるので襲われる心配はないが、アモン達のような偵察チームが多く居ないので情報戦に弱いのが弱点だった。
幾度か敵に襲撃されたが持ち前の強さで何度も生き残っており、リベリオンも場所はわかっているものの、手が出せない状況ではあるのである程度は問題ないが、流石に何も知らないままにもいかない。
そのため定期的に近くの東南支部との連絡が必要不可欠なのだ。
昼になってフェンリルに起こされ進行プランの概要を聞いたルフスは昼食という名の朝食を食べ始めた。
他のメンバーも各々の食事を取り始めていたが、歩みが進むにつれて緊張感が漂って来ていた。
食事が済んで間もなく、件の廃都市に入った。
行きで二手に分かれて進んでいき、出る間際に合流するルートだ。
「それじゃ、何かあったら知らせてくれよ。」
とソラに念を押されて各々は進み始めた。
ルフスとホムラのペアは住宅街の間を主に進むコース。
人機体は個体差はあれど二階ほどの高さはあるので住宅街などの低い建物が集まる区域では少々目立つので姿勢を若干低くして進む。
「この体勢…慣れない…。」
とゼロがこぼすと
「はいはーい、そんな事言わなーい。」
とホムラが棒読み気味に鞭を打つ。
因み今のゼロの姿勢はと言うと、蹲踞で歩行して居るような感じだ。
人機体は疲労感は感じないので[慣れない]と言ったが、人間であれば[痛い]のレベルだ。
「と言うかこれ、かなり間抜けな図なんじゃ…。」
「大丈夫だよ、誰も見てない誰も見てない。」
ゼロは言い返そうとしたが黙って進んだ。
フェンリルは脚部の関節が特殊なので屈んだりする体勢には慣れているがスマートな構造であるゼロには少々無理な姿勢である事はホムラも分かっている上でやらせているのだろう。
幸い武装もゴテゴテした物ではなかったので引っかかったり邪魔になったりと言うことはなさそうだ。
進行開始から15分、段々と気が緩んで来たルフス達に突然無線が入る。
「こちら睦月!ポイントE3にリベリオンの人機体と思しき機影を6機捕捉!向こうもこちらに気付いたようなので間も無く交戦します!」
一気に全員に緊張感が走る。
と、すぐに爆発音と地鳴りが響いてきた。
ソラ達の予測が見事悪い意味で当たってしまう。が、ルフスは緊張を跳ね除ける。
「こちら第二ルート班!すぐに援護に向かう!ホムラ、行くぞ!」
「おうよ!」
フェンリルとゼロのスラスターが出力をあげ、地上を飛び立つ。
幸運にも周辺が住宅街で見通しがよかったため、すぐに交戦している彼らを発見出来た。
ルフスは地上で睦月の乗るトリニティが三機と交戦し、上空ではソラのアモンが自分達に引きつけるような形でもう三機の敵と地上から離れていっていくのを確認した。
「ホムラとゼロはソラ達を、俺は睦月を援護する!」
「了解!」
ホムラ達はそのまま飛行してアモン達を追走し、ルフスは進行方向を変えて路上で交戦中の地上の敵に向かって巨大なドリルランスを構えながら内蔵バルカンで牽制しつつ、怯んだ敵に急接近して思いっきりランスを叩きつけた。
悲鳴の様にも聞こえる金属の衝突音が響き、粉塵で辺りが包まれる。
ランスを叩きつけられた敵の装甲は情けなく歪み、モノアイが輝きを失う。
間髪入れずフェンリルは側にいたもう一機の腹部に向かって突き刺そうとするがほんの一瞬敵の防御の方が早く盾でいなされてランスを掴まれてしまい、互いに硬直状態になった。
ルフス達から少し離れた所では睦月が交戦中だった。
睦月の操るトリニティは敵機の斬撃を交わしつつバックステップで距離をとり、それを追撃した相手が剣を振りかぶった瞬間にツインバスターライフルを構え、至近距離で照射した。
半ば突進していた敵は避けられず、モロに正面から食らって下半身の一部を残して消失した。
睦月はあえてそのままツインバスターライフルのトリガーを押しっぱなしにして銃口をフェンリル達の方向に向けた。
突進してくるビームを横目に見たルフスは睦月の真意が分かったのか
「フェンリル!」
と叫ぶと、フェンリルも察したらしく左足の踵のパイルバンカーを地面に刺し、コンパスの様にくるっと左に半回転してランスを掴んでいた敵をツインバスターライフルの射線の上側に向かって投げる。
アスファルトがスライドする右足に削られめくれあがる。
フェンリル目掛けて突っ込んで来たビームは直撃寸前の所で上昇し、そのまま投げられた敵機を切り裂いた。
と、すぐに敵機は爆散して辺りに残骸が降り大口径ビームは空に吠えた。
照射を終えてフスーっと蒸気を吐くライフルをトリニティが西部劇のガンマンの様に回し、睦月が自慢げな声で
「今日のMVPは私とこの子って事で!」
と言ってきた。
ルフスは
「まだ気を緩めんなよ?残りの敵を倒した後にMVPかどうかは決めてやるからな。」
と返事をするとすぐに飛び立ち無数の廃墟の上空を飛んで睦月と共にソラ達の元に向かった。
地上での戦闘をよそにソラとゼロは空中戦を繰り広げていた。
アモンは偵察機という事もあって機動力に優れている為、追撃してきた敵機を鮮やかに崩壊したビル群を掻い潜って翻弄して上手く背後に回り込み、その内の一機目掛けて鷹の爪の様な足でブーストキックを決めた。
吹っ飛ばされた敵が地表に激突する直前、急降下して接近したゼロが流麗な刀を構えて地表をかすめながらすれ違い様に切り裂く。
胴体から綺麗に真っ二つにされた敵は二つに分かれて地上に激突して爆散した。
ホムラの無線にソラの称賛の声が聞こえて来る。
残りの二機は爆散する仲間の姿をみてアモンに恐れを成したのか軽装備のゼロを標的に定め、後方から挟み撃ちの形で襲いかかった。
ホムラはまるで自分に襲いかかってくる事を知っていたかの様にくるっと後ろを向くと、「さ〜ん、に〜…。」
とカウントダウンを数えながらじっとその場に留まる。
敵のペアはその場に浮くゼロを見て
「ハッ!アイツカッコつけたくせにビビって動けねえぞ!」
「このまま切り裂いてやるぜ!」
と哀れな思い込みをしてスピード緩めつつ左右から近接武器を構える。
と、その直後ゼロのヘッドが変形し、隠れていたツインアイが現れて蒼く光る。
びっくりした敵ペアは緩みかけてスピードに更にブレーキをかけてしまい、半ば空中で静止した状態となる。
次の瞬間ゼロは刀を構えて猛スピードで急接近し向かって右側の敵を縦に下から切り裂いた後そのまま上昇し、爆散した仲間に気を取られたもう一機目掛けて急降下し、同じように縦に切り裂き、撃破した。
「援護に来たぞ!、、、って終わっていたか。」
とルフスはスピードを緩めるとトリニティと共に残骸の中に立つゼロの側に行く。
「相手が間抜けで良かったよ!おかげでカッコよく決められたしね!」
と明るいホムラの声が聞こえてくる。
「全員無事か?」
とソラが心配そうに聞くが、
「敵を見つけた直後は緊張しましたけど、終わってみると呆気なかったですね!」
「今日の様に間抜けな敵だらけなら良いんだよなぁ。」
「あ、そうそう、聞いてくださいよ!さっきの戦闘で……!」
と、はしゃぎながら話す様子を見て安心した。
既にいつの間にか夕日が空を彩り、彼らを照らしていた。
その光がこれからの彼らを明るく照らし続けてくれる事を願う。
こんにちは(о´∀`о)
バトルシーンってめちゃくちゃ書くの難しいね、と当たり前の事を告げるルシェラです。
遂に、入れましたよ笑
戦闘シーンを笑笑!
情景浮かぶくらいかけていたら良いんですけどね…
ではまたの機会に…
機体、キャラクター投稿希望は不定期ではありますがたまに募集しています。
作品に関する事や関係者の方々への質問は受け付けていないのでよろしくお願いします。