匂い…硝煙と火事による燃焼の匂い。あちこちで爆発が起きている。
黒煙と陽炎が辺りを埋め尽くし、逃げ惑う人の群れで何がなんだか分からない。
目を背ける様に視点を上げれば青い空と白い雲と、お日様と……空を舞う大きなロボット。
すると眩しい太陽の光を遮るかの様に爆弾が落ちて来た。
咄嗟の反応で身をかがめて目を瞑る。
怖い、怖いよ!パパ、ママ…どこ?
さっきまで手を繋いでいたはずなのに!
どこ…?どこにいるの…?!
すると突然耳鳴りがして、声が聴こえて来た。
「に、げて…。アズー、ル…。」
そんな…いやだ……!!
「あああああああぁぁぁ!!!!!」
飛び起きた。
気づくと周りは自分の部屋だった。
はぁ…はぁ…はぁ…と乱れた呼吸を直しながらアズールは安堵のため息をついた。
嫌な夢だ。
最近は全く見なかったのに。
時計を見ると夜中の1時。日付的にはルフス達が訪問に出て二日後だ。
純粋な恐怖と夢であったことや睡眠を妨げられた事による腹立たしさが募ったアズールは側にあったタオルで汗を拭くと、それを首にかけて自室を後にした。
向かった先は大好きなディエスがいる監視塔。ディエスは足をぶらりと城壁の外側に垂らしながら辺りを見回している。
ディエスはアズールに気付いたようで、
「どうしたの?こんな夜遅くに。」
と振り向きながら優しい声で尋ねた。
「少し…眠れなくて。」
ディエスはアズールの首にかかった濡れ掛けのタオルを見て察した。
「そうか……。さあ、こっちにおいで。」
ディエスが手を差し出しアズールが乗ると、そのままディエスは手を上げていき、自分の肩にアズールを乗っけた。
「もしかして…お父さんとお母さんの夢?」
ディエスの問いかけにアズールはコクっと首を縦に振る。
「…あの時の。ボクは手を繋いでパパとママと一緒に逃げていた。轟音と悲鳴、爆発と逃げ惑う人々で何が何だか分からなかった。」
唇をキュッと結ぶアズール。
払拭した筈の忌々しい記憶が嫌でも蘇って来てしまう。
「大事な物を全部失って。それでも生きなきゃって思ってひたすら走った。右か左か、どこに行くかとか何も考えないで。少しでもそこから離れたかった。空爆が終わっても人機体達がボクを、人間を殺そうとウヨウヨ見張っていた。
瓦礫の山に隠れても少しも安心できなかった。寧ろ待つ恐怖と寂しさで壊れそうになった。」
ディエスは黙ったままアズールを見つめ、話を聴く。
「ある時思ったの。パパとママに会いたいって。そしてボクも二人の様に爆弾に殺されれば会えるって。それでわざと人機体の前に飛び出した。不思議と全然怖くなくって、逆にやっと解放されると思った。この生き地獄から。」
ディエスもアズールの様にあの時の事を思い出す。
そう、アズールに会えたあの時を。
ディエスは元々リベリオンの破壊行為に参加していたが、人々を殺すフリをして逃していた。
戦場では無差別だ。老若男女問わず全員有無を言わさず殺される。
まだ逃げ遅れている人は…?
辺りを見回しながら探していると、急に自分の目の前に一人の幼い少女が飛び出して来た。その少々がアズールだったのだ。
「ここにいたら殺されちゃうよ!早く逃げて!」
ディエスは優しく手を差し伸べる。
アズールはその場から逃げようともせず、かと言ってディエスの手に乗る事もなく、
「…ボクのパパとママは、お前達に殺されたんだ!!お前も助けるとか言って殺すんだろ?!」
「違う!私はただ、あなたを助けたいだけだよ!お願い信じて!」
ディエスは懇願するが、アズールは信じられない。
するとその会話を聞きつけたのか、他の人機体がディエスの様子を見に来た。
「おい、ディエス何やってんだ…っておい、人間がいるじゃねえか!さっさと殺しちまえ!」
アズールはやっぱりな、と言う顔でディエスを見る。
「ほら見ろやっぱりそうじゃないか!この嘘つき!」
最悪だ…遂にバレてしまった。どうすれば…。
考え込んで動きが止まっているディエスに呆れたのか
「もういい、どけ!おれが殺してやる。」
ビームライフルを構え、アズールに照準を合わせる。
ディエスは覚悟を決める。
ライフルを構えているその人機体にサーベルを突き刺す。
何が起こったのか理解出来なかったのか間抜けな声を出して崩れる機体。
素早くアズールを拾って手の中に匿い、他の人機体に見つからないようにそのエリアを離れる。
安全な場所まで来たディエスはアズールに再び問いかける。
「これで少しは信じてくれる?」
アズールはしばし黙っていたが、やがてディエスの顔を見ると泣きながら頷いた。
どんなに慣れようがやはり女の子だ。
怖かったのだろう、寂しかったのだろう。
そんなアズールの頭をマニピュレーターで撫でながらコクピットにアズールをしまう。
…しばらくは逃亡生活が続きそうだ。
ディエスは安堵と恐怖の中に居ながらも決意する。
「この子だけは守る。何があっても、絶対に。」
ディエスは追憶から離れると、アズールの目を見つめる。
「これからは、もう大丈夫。絶対にアズールを守る。もう二度とあんな苦しみは見せない。」
アズールはそっとディエスの顔にもたれる。
「ありがとう。…大好き。」
明朝五時。
朝早い事で有名な整備班はいつも以上に早起きして働いていた。
ジンとレオディルは五時前に既に準備を始めていた。
日頃のかなりの労働の上に朝早い事もあって疲れ気味のレオディル。すると疲れ気味の元に彼の相棒であるウィリアハートがコーヒーを持ってくる。
「大丈夫ですか?かなり疲れているようですけど。」
「ああ…かなりキツイよ。ここ最近寝付けも悪いし。…ウィリアは食料班のとこ抜け出して大丈夫なのか?」
「他の方々に任せて来ました。まあ、いつもとやる事変わりませんし。」
ウィリアハートは一見10代の少女の様に見えるが実はアンドロイドである。
緑の長いサイドテールが特徴で、人混みの中でもかなり目立つくらいだ。知的に見えて実は天然である所が周りの人には好かれている。
レオディルはコーヒーを受け取りぐぐっと飲むとすぐ様吹き出した。
「ゴホッゴホッ……、ウィリア、前にコーヒーはホットでとは言ったけど似てるからってゴホッ…ココア持ってくるとは思わなかったよ!」
甘い物が苦手なレオディルはココア程度でもダメなのだ。
咳が止まらないのでジンがバシバシと背中を叩くがそれが逆に悪化させている様にもみえる。
「ええ〜、ちゃんとホットにしたつもりなんですけど。」
「ゴホッゴホッゴホッゴホッ。」
そう言う事じゃないと言いたそうだが咳が止まらないレオディルはむせながらウィリアにコーヒーカップを渡す。
コーヒーカップを見つめながらウィリアは本当に分からない様子でカップの水面を見つめ、残りをぐぐっと飲んだ。
レオディルは何とか治まったらしく、急いで元の自分の仕事に戻った。
「ウィリア、手伝って。」
とカップ片手のウィリアも呼ぶ。
今日はエイミーの相棒の人機体パッチワークの新武装の試験運用日なのだ。
パッチワークは本名をインパチェンスと言うが、パッチワークの名の通り機体を構成する殆どのパーツが所謂継ぎ接ぎで構成されており、オリジナルのパーツはヘッドとボディ部分のみという物だった。
そんなインパチェンスにエイミーが出会ったのは今から数年前に遡る。
エイミーは幼い日に誘拐に合い誘拐先で高いニュータイプ能力を見出され、それを薬物などの強化措置でさらに強化されている。
その副作用からか、トラウマからかほとんど喋らず無表情、髪の毛は純白に染まり、会話などはジェスチャーや筆談で行っている。最近はタブレット端末での筆談をしている。
強化措置を受けた後にちょうど回されてきたインパチェンスにテストパイロットとして搭乗、そのニュータイプ能力と機体の反射速度も相まって逆に誘拐先をめちゃくちゃに破壊し逃亡した。
その逃亡生活の中で他の機体のパーツや残骸を継ぎ接ぎにして行った結果今のインパチェンスになったとされている。
因みインパチェンスは[初代世代]=ファーストシーズンと呼ばれる初期の型の人機体でもある。
そんなインパチェンスのパーツや武装の換装が非常にし易い特性を生かしてしばしば新兵器のテストに協力してもらう事があり、今日のテストもその一つだ。
当初エイミーはインパチェンスをテスト機にするのを拒んだが、皆を守る事につながるならと最終的には合意している。
程なくしてエイミーがインパチェンスと共にドックに到着する。
エイミーは出迎えたジンに向かってカタカタカタっとタブレットに言葉を打つ。
[おはようございます。今日はインパチェンスをよろしくお願いします。]
「おう、こちらこそ!んじゃあ早速説明するね。」
班長のレオディルを呼んで説明の補佐役にする。
ジンとレオディルはエイミーへの説明、残りの整備員はインパチェンスの機体メンテ兼新武装を使用するに当たっての改修に入った。
「今回は新武装、それもかなりの傑作だ。聞いて驚くなよ…?」
ジンが誇らしげにニヤニヤしながらブルーシートで隠れている装備の所に連れて行く。
レオディルがガバッとシートをどかし、その姿があらわになった。
「これは…?」
「[対人機体用手動射出型電磁加速砲]。要するにレールガンってこと。元々BeyondHEAVENで製造されていた対艦用の奴を移植して人機体でも扱えるように改造したんだ。まあ、サイズダウンさせただけあって若干威力は落ちているが…それでも10億ボルトで発射出来るんだぜ?」
エイミーは何を言っているのか理解出来なかったが要するに今までよりも強い銃だと解釈した。
[でも、武装を持たせるだけなのに何でインパチェンスにまで改造が必要なの?]
聞かれたジンはう〜んと唸ったあとレオディルに視線で丸投げした。
微妙な面持ちのレオディルは
「…要するにレールガンは発射するには膨大な電力を必要とするんだ。銃本体に電力を供給させるために操るインパチェンスにも改造が必要なんだ。」
なるほど。
エイミーはレールガンの周りを歩きながら細部まで細かく見る。
砲身、いわゆるレールと呼ばれる部分が三本銃本体から伸びている。これで本当に弾が撃てるのかと疑問に思う。
エイミーは専門的な機械の知識は殆ど持ち合わせていないので少々不安になったが、レオディル達の言う事だ。撃てるのだろう。
使用上の注意的な話をする為にデスクや椅子を探すがドックにそんな物は元々置いてなかったので大きめの工具箱を三つ用意してそこに座って話し合いをする事にした。
「んじゃあ説明するね、ほい説明書。」
レオディルがガタッと芸人の様にコケる。これからアンタが説明するんやろがいっ。
ジンは構わず続ける。
「さっきの説明でも言ったけど、レールガンは膨大な電力を使って弾丸を発射するんだ。でもそれ故に発射後は電力の再チャージが必要だし、オーバーヒートを避ける為に強制的に冷却装置が作動するようになっている。加えて過電流やショートによる故障を防ぐ為に連射は出来ないようにもしてある。電力の供給はインパチェンスのマニピュレーターとレールガンのグリップ部だけに電流が流れるように加工している。配線とかでやるのもありだけどそれだと取り回しが悪いだろ?」
ペラペラと喋るジンにレオディルは関心し、改めてジンを尊敬する。なんやかんやできっちり説明出来るじゃん。
「インパチェンスにはコクピットルームに蓄電池と、電源装置をつける。使用時には電源をオンにして使う感じだ。ああ、蓄電池っていってもモバイルバッテリーどころのじゃないぞ。しかもサイズもかなり大きめだからちょいと取り付けには時間がかかりそうだな。」
エイミーは一通り説明を聞き終わった後説明書に目を通す。…凄い読み易い。
しばらく読む事にしたエイミーを後にしてジンとレオディル、それから手伝いでウィリアを参加して再び調整に入った。
こんにちは(о´∀`о)
やっと今まで書いた分投稿し終わったルシェラです。
こうして見返してみると…バトルシーンもっと欲しいよね(⌒-⌒; )
また随時戦闘は入れますけど、果たして自分の文章力でどうにかなるものか…?
それではまた!
機体、キャラクター投稿希望は不定期ではありますがたまに募集しています。
作品に関する事や関係者の方々への質問は受け付けていないのでよろしくお願いします。