機動戦士ガンダム·プレデターズ   作:ルシェラ

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機動戦士ガンダムプレデターズ 第七話 融解

地球機構化計画班長のツェーンは統率機フォールンの元に呼び出された。万能因子の加速生成の研究報告を聞くためだ。

「…進捗はどうだ?」

重く厳しい面接官の様な声がツェーンの聴覚器に響く。

「は、はい!現在研究に全力で望んでおりま、ます!」

フォールンの眉があがる。いつものツェーンと明らかに様子が違うのだ。

「…どうした?」

何の気なしに聞いたつもりが逆に恐怖を煽ってしまったらしく、「も、申し訳ございません!べ、別にその、!ど、どうか。」

と益々おかしくなってしまった。

「…何かあったのかね?研究資金が足りないだとか、設備が古くなったとか。」

「いえいえいえいえ!そんなことはそんなことはござ、ません!あの、つまり…少し問題が、浮上し、しまして。」

ほう?と少し身を乗り出すフォールン。ツェーンのようなスペシャリストと言えど失敗は付き物だ。きっと失敗でもして咎められるのを恐れているのだろう。

「…何に怯えているかは知らんが、正直に言ってみろ。」

ツェーンの脚部関節がガタガタと音をたてる。

「その、申し上げ難いのですが…じ、実は、万能因子の生成速度を上げるには、に、人間の脳が必要なのです。」

フォールンは驚愕した。なんて事だ。

「…今まで殺してきた人間達におめおめと謝って協力してもらおうとでも言うのか?」

「ち、違います!ひ、一人だけで大丈夫なんです!」

フォールンは訳が分からなくなってきた。

確かに計画に人間の助けが必要と言うことは報告すべき事だが、報告だけにこんなに怯える事なのか?私は何か怖がらせるような事でもしたか?

リベリオンでは「英雄」とも称されるフォールン。

しかし、ツェーンもそうだがリベリオンの人機体は皆フォールンに尊敬とそれをかき消すほどの恐怖の念を抱いていた。

ただ単にフォールンの声が怖いだけで別に彼は虎狼の心ではないが、やはり他の人機体は人間で言う小学校の怖い先生と同じくらい怖いのだ。それが平常時で発動しているのだからそれはそれはこうなれば恐怖に駆られるだろう。

「…一人なら今すぐにでもそこら辺の人間を捕まえてくればいいだろう?」

「そ、それが、普通の人間ではダメでして…。えっと、要するに、過度な負荷に耐えられる脳を持った人間でないとダメなのです。ただ単に万能因子の生成加速をする事は私達だけでも出来ますが、いざ自然界を浄化した後、複雑な自然界の情報や食物連鎖を再現して新たな生態系をクリーンに生み出すには[機械]では不可能でして…。」

 

そもそも地球機構化計画は人間以外の全ての生物は残す上でリベリオンの人機体が地球の支配者(最上位種)となって古い地球を浄化し、再び新たな形へと作り上げていく算段だった。が、機械には無い[本能]とも呼ぶべき生物間同士のシンパシーや生き物の脳が紡ぐ思考、感情はどれだけ技術が発達しようともコピーできない事が分かったのだ。

その独自データを忠実に万能因子にプログラミングできなければ自然は生み出せても永久に存続しない。

皮肉にも、生物である上にはっきりとした自我を持ち、純粋な感情を生み出して忠実に具現化出来る唯一の種は人間である。

他の動物の脳では生物ごとで知らない生態系があったり人間の様にリアルに具現化出来ないのだ。

自分達リベリオンが淘汰すべきと見下していた人間がここになって必要になったのだ。

 

だが、疑問点が一つある。

「…過度な負荷に耐えられる、とはどう言う事だ?」

「は、はい!えーっと、つまり、当初の計画としては、生成した万能因子をモノローグと呼ばれる装置に入れた後、モノローグを無数のスーパーコンピューターに接続します。そしてスパコンに内蔵された自然界の情報と万能因子を同期させて生態変化を起こさせ、一気に地上を喰わせる、と言うプロセスでした。

ですが先ほども説明した通り、生物特有の感情…要するに[心]までは万能因子といえども再現出来ない事が判明しました…。新たに生まれた自然界の生物は心や感情がインプットされてないので一切の感情を持たない状態になります。つ、つまり、形骸化と言いますか…見かけは自然であってもナチュラルな自然界のサイクルは決して起きなくなります。

そ、それを避ける為に人間の、の、脳が必要なのです。生物界の頂点に君臨した人間の脳は他の生物と比べれば発達していている事は言うまでもありません。

それを突き止めた我々は昨日早速人間を捉えて試作モデルのモノローグとスパコンで実験したのですが…接続と同時に大量の情報やエネルギーを脳が受け止めきれずに焼き切れてしまい、それで、今日報告させて頂きまし、た…。」

フォールンは頭を抱えた。

どうしろと言うのだ。人間などそこら辺にまだ居るが、ツェーンが言う特殊な脳を持った人間など「残っているのだろうか」。

「…その脳を持つ人間の特徴は?」

「特徴と、言いますか…、その…過度な負荷に耐えられる脳は阿頼耶識システムと呼ばれる特殊な有機リンクデバイスシステムに適合出来る人間に備わっている、若しくは負荷に一番耐えられる、と言う結論が、出ました。し、しかし、数百年前に行われていた阿頼耶識システムに接続する為の施術では殆どがその施術段階で死亡、または廃人化しており…仮に合格した人間が居たとしても、その者はとうに死んでいるかと…。」

フォールンは焦りと絶望に加えて憤りまで感じていた。

「…今更っ……!どうしろと言うのだ!!!」

ツェーンの悲鳴が響く。

フォールンはツェーンに「…今すぐ打開策を練ろ!!」と告げ、下がらせた。

どうすれば…どうすればいいのだ…何か…、何か策は…!

考えに考えて考えた結果、ある計画の事を思い出す。

「…たしか…あれは…この戦争が起きる前に行われて筈だ…。細かい内容は私も覚えてないが…たしか旧モデルがベースの人機体の搭乗テストだったか?」

フォールンの権限で直接ネットワークに接続し、トップシークレットの情報も表示させた上でデータベースに次々と単語を入れていく。

人機体、モビルスーツ、阿頼耶識システム、施術、過度な負荷、テスト、人間

スクロールと検索を繰り返し、遂に一件それらしき実験データの報告書を見つけた。

 

[BH:08フェンリルの搭乗テストについての報告]

 

これか…?と言うかそもそもフェンリルとは誰だ?

今度はフェンリルで検索をかける。ヒット。

なるほどなるほど。

「今でこそフェンリルは人機体と言う扱いだが、元はバルバトスと言い、数百年前に起きた厄災戦と呼ばれるモビルアーマーと人間の戦いにおいて使用されたモビルスーツである。

ガンダムフレームよ呼ばれる特殊なインナーフレームを採用していたモビルスーツだったとされている。」

独自解釈も含めるがおおよそは合ってるだろう。

次にガンダムフレームを調べる。

「厄災戦時の機体はガンダムフレームと呼ばれる特殊なフレームを採用しており、バルバトスは開発された七十二機の内の一機である。バルバトスはその中でも特に汎用性に重点を置いた調整が施され、様々な環境に適応させるべく各種武装の換装やボディ改装を可能としている。

ガンダムフレームを搭載する機体には阿頼耶識という特殊なシステムが搭載されている。これは機体本来のポテンシャルを発揮する為に機体の制御を阿頼耶識システムを介することでパイロットと機体との交感をし、パイロットの空間認識能力を高め、高い反応性とプログラムに頼らない生身の身体に近い姿勢制御が可能になるというものだ。」

段々掴めて来たぞう。

…だがこれらを見る限りツェーンが言っていた負荷に耐えられる脳でなくとも大丈夫ではないのか?

今度は阿頼耶識について見る。

「モビルスーツやその他の機械向けに開発されたシステムを軍事転用したもので、パイロットの脊髄に「ピアス」と呼ばれる接続機器を外科手術によって埋め込み、これと操縦席側と接続することで機体とパイロットをナノマシンを介して直結させる。これによってパイロットの脳に疑似的に空間認識を司る器官を形成し、機体を自身の体の様に自在に動かす事が可能になる他、コンピューターによる機械的挙動を脱した人間味ある動きが可能になる。

また、脊髄にナノマシンを定着させる必要から施術できるのは成長期中の10代前半までとなっている。

しかし、操縦やシステムが簡素な機体ならともかくモビルアーマーと太刀打ちするべく開発されたガンダムフレームの機体や艦船の操縦に用いた場合は管制情報量の多さからパイロットの脳への負担が大きく、特にモビルアーマーとの戦闘からパイロットを保護する装置として予め付けられているリミッターを解除した場合は絶大な力を発揮するかわりに脳が焼かれてしまったり神経に障害を残す事が多いとされている。」

過度な負荷に耐えられるとは、脳へ送られる膨大な情報を受け止め切れるか、と言う事か。

だとするとツェーン達の導いた答えは正解だな。

以上の事を踏まえて、

 

①その人間は少なくとも十代前後で施術後も生存している。

②阿頼耶識システムの施術や実験に関わった事がある者。

③施術に成功し、脊髄にピアスが埋め込まれている者

④直近のデータで残っているフェンリルと呼ばれる機体のテストパイロットが候補(生存しているとみられるので)

 

これに該当する人間を探せば良いのだ。

何も、ツェーンの様に人間全員を調べなくていい。こんな非人道的な機密実験に携わった事があるのは精々BeyondHEAVENの暗部にいた人間だけだ。とりあえずこの四項目でサーチを掛けてみよう。

 

すると、一人の赤髪の少年が検索結果として表示された。

経歴を見る限り四項目にほぼ該当している。

年齢は十七、フェンリルのテストパイロット、阿頼耶識施術に成功済み…

「…見つけたぞ。」

至急ツェーンを呼び戻す。恐怖で錯乱しなければすぐ来る筈だ。

そうだ、肝心の名前は…

 

 

「ル、フ、ス?」

 

 

その少年は機構世界からはるか彼方の大地でくしゃみをした。

 

 




こんにちは(о´∀`о)
ストーリーの修正にめちゃくちゃ手間取って焦ったルシェラです。
ルフスくん…どうなるんやろうな…()
今回は密室劇にして台詞を多めにしてみました。
ではまーた。

機体、キャラクター投稿希望は不定期ではありますがたまに募集しています。
作品に関する事や関係者の方々への質問は受け付けていないのでよろしくお願いします。
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