東南支部では、レールガンの運用試験をする為にエイミー達がドックに集まっていた。
小型ならまだしも、レールガンの様な大火力な兵器はキャラバン内ではテスト出来ないので外の世界で試験する。
その際は試験する機体と開発者、その護衛複数機と言う組み合わせでテストする。
今回は
エイミー/インパチェンス、レオディル/ウィリアハート、ジン/リミテッドキャリバー、キャラバン内の人機体複数機と言う構成だ。
「いつもはルフスが護衛役だったから多少安全に出来てたけど、今日は居ないからしっかり頼むよ!」
とジンは護衛機に念を押す。彼らを信用してない訳ではないが、ルフスとは安心感という点でどうしても不安が残る。
「ウィリア、いざと言う時は頼むよ。」
レオディルは機体のセッティングをしながらコクピットのスクリーンに写るウィリアの顔を見る。
普段ウィリアはアンドロイドで活動するが、戦闘時にはモビルスーツ型「ウィリアハート」と呼ばれる人機体にレオディルと共に搭乗すると言う変わった特徴がある。
一見利便性に欠ける様に見えるが、パイロットが二人いると言うことは普通の有人人機体よりも性能が高いと言う事だ。
しかもアンドロイドのサポートなら迅速且つ正確に戦況に対応出来ると言うアベレージもある。
「もちろんです。安心して下さい。」
返答してスクリーンに写るレオディルにウィリアはピースする。
ジンはパートナーの人機体リミテッドキャリバーの最終調整をする。
「ジン、何かあっても無茶だけはするなよ。」
「わーってるわーってる。」
リミテッドキャリバーは、敵のレーダーや肉眼から完全に姿を消すミラージュコロイドと呼ばれるシステムを搭載しており、手持ちのバスターライフルで遠距離からの奇襲攻撃を得意とするいわば「支援機」の括りだが、ジンの操縦性とリミテッドキャリバー本体の性能も相まって前線での活動も可能という万能な機体である。
調整が終わり、キャラバンの外に出る。
試験エリアは2kmほど離れたところにある寂れた露天掘りの採掘場で行われる。
リベリオンに発見されるのを防ぐ為、試験時間は二時間と決まっている。往復の移動時間も含めるから実質一時間の様なものだ。
到着するとすぐに準備に取り掛かる。護衛の人機体は採掘場の四方に散らばって監視をする。
ウィリアとレオディルはコクピットから出ると試験用のコンピュータを外に出し、データ読み取り用の配線をインパチェンスにつなげる。テスト後にキャラバンへ試験データを転送すれば、あとは自動的に上手く纏めてくれる。
「よし、早速やろう。」
レオディルの合図と共にインパチェンスがレールガンを構える。その様子をジンはリミテッドキャリバーのカメラアイ越しに見る。技術者の目で不具合があるかないかを確認する。
[はい] とエイミーはインパチェンスの発声欄に文字を入力すると、インパチェンスが はい と喋った。インパチェンスも喋れるが、エイミー個人との音声でのやりとりはこれが普通だ。
レールガンを構え、トリガーを引いて電力が充填されていく感覚を感じる。
バーニアから噴射する時の様な独特の音が聞こえて来る。レール部から青い稲妻が迸る。
コクピットに写るスクリーンの照準を岩壁に付けられた擬似ターゲットに合わせる。オートフォーカスの様にピピッと照準が合う。
トリガーボタンをグッと押す。瞬間、閃光が辺りに満ちる。瞬きをして再びスクリーンを見ると、擬似ターゲットは岩壁の一部ごと跡形もなくなっていた。
「おー予想以上だなあ。」
ジンは威力に関心するが、今の発射から既に課題を見つけていた。
「ん〜発射までが遅い。要するに電力の充填がね。あと、発射の際に発光してるのを見ると、もしかしたら放電してるのかも知れないな…。それから…」
たった一発撃っただけでここまで分かるのか。同じ技術者でも頭の構造は月とすっぽんだな、とレオディルは心の中で嫉妬も含めて尊敬した。そんなレオディルの心中を察したのか、「あなたには私が居るじゃないですかっ。」と、ウィリアは半ばヤキモチの様な表情で口を尖らせた。直後レオディルが宥める。
「インパチェンス、大丈夫?」
とエイミーは相棒に聞く。大切なパートナーに何かあったら大変だ。
「大丈夫だ。問題ない。」
傍から聞けば事務連絡、一部の業界からはネタ台詞の様に聞こえるが、エイミーには十分感情が伝わった。
その後何発か試し撃ちをしてデータをとる。
改善点も確立出来た所でそそくさと撤収の準備を始めた一同。
何事もなくて良かったな、とその時
「大変です!周辺に人機体反応!」
護衛の人機体の一人から通信が入る。直後に途絶したが。
すぐに残りの三機がエイミー達の元に集まる。彼らは敵を確認出来ていないらしく、無線を聞きつけてとりあえず戻ってきた様だ。
「ど、どうしましょう?!敵の数とかは…?!」
慌てる三人にジンは余裕の声で
「慌てるな。こうなったら戦うしかない。いつでもぶっ放せる様にしておけ!」
ウィリアとレオディルも機体に載る。機体の操作はレオディルに任せ、ウィリアは周辺を索敵する。
「敵捕捉!反応パターンからオリジンの人機体が五機と思われます。」
「リベリオンじゃなくて良かった…。」
レオディルは冷や汗を拭う。
オリジンとは、ライフ(共存人機体サイド)にもリベリオン(反逆人機体サイド)にもつかないいわば第三勢力である。
細かな組織化はされておらず、ルフス達の様に感傷的な団結力がある訳でもなく、かと言ってリベリオンの様に厳密に統制されていない事から、「個の集まり」という意味でオリジンと呼ばれている。
オリジンは無差別に攻撃をするため、しばしばライフとリベリオンの戦闘に介入してくるのが常だが、この様なケースは初めてだ。
「奴らは組織化されていない事がかえって恐ろしい。オリジンは殆どが自分のエゴで戦っているからな。底が見えないのが本当に怖いよ。」
レオディルは安心しつつも恐怖を感じながら戦闘態勢を整える。どっからでも来い。
他のメンバーも武器を構え臨戦態勢に入るが、オリジンと思しき機体は見えない。
「どこだ…、どこにいる。あいつの仇を取ってやる…!」
怒りの形相で武器を構える護衛三機。
しかし、湧き立つ怒りを他所にオリジンは一向に姿を見せない。
場に緊張感が走る。パイロットは心音が聞こえ、汗をかく。
すると足元が急に揺れ出した。余震に似ているが、明らかに違う。
と、エイミー達の後方の地面から急に粉塵と爆発が起こる。
地中からドンっ!と言う音と共にサソリ型の人機体が突っ込んで来る。地響きを感じ取っていたエイミー達は即座に反応して回避するが、護衛の一人が逃げ遅れて再び地面に潜ったサソリに連れて行かれる。
二機の護衛の内の一機が絶叫を上げる。直後、地面に気を取られていたエイミー達目掛けて上空から残りのオリジンが攻撃を仕掛けてくる。
回避こそしたものの、辺りを粉塵が埋め尽くして視界を奪われ、同時に分断させられる。仲間の所在を把握しようとレーダーを見るがノイズに阻まれた。どうやらジャミング弾も撃ち込まれたらしい。
「ウィリア、ソードユニット展開!」
了解!の声と共にウィリアハートのバックパックに搭載された刃状の武器が展開し、宙を舞う。
そして辺りの粉塵に突っ込んだ後牽制も兼ねてその場で動き回り、視界をクリアにする。
散り散りになっていく粉塵越しに敵がライフルを構えているを確認したジンはバスターライフルのトリガーを迷わず引く。一本線の閃光が残りの粉塵を貫きつつ敵を撃ち抜く。レオディルが視界を確保してくれなかったら自分達が先制攻撃を仕掛けられていただろう。
敵の爆発と共にエイミー達はその場を離れつつ残りのオリジンが追ってきているのがレーダーから確認出来た。護衛達が牽制するが、敵が上空にいるせいで中々当たらない。
インパチェンスはレールガンを愛用のロングライフルと持ち変える。まだ慣れていない上に下手に使って壊してしまったら目も当てられない。
「リミテッドキャリバーのバスターライフルより幾分か取り回しは良いはずだ。」
トリガーを引き、敵目掛けて光弾を連射する。最初の何発かは避けられたが護衛の牽制を避けた所を待ち伏せする形で狙って撃つと命中し、高度が下がった。
「まだ落ちないのか!」
被弾こそしたものの辛うじて態勢を整える敵。この野郎と敵がライフルを構えた瞬間、ウィリアハートが大剣を構えて地上からジャンプ。落ちかけの敵目掛けて剣を振り上げる。エイミーに照準を合わせていたせいで接近するウィリアハートに反応が遅れ、あっけなく切り裂かれる。
それを見ていた残りの敵機はウィリアハート目掛けてビームライフルを連射するが、ウィリアが操作するソードユニットのディフェンスモードでビーム粒子を拡散されてしまい、ダメージを与えられずに終わる。
「ナイスだウィリア!」
「もちろんですっ!」
連携とは何もチームだけに言えることではない。互いが互いの事を理解し、信頼し合えるからこそ成り立つ連携もあるのだ。
切り終えたウィリアハートは地上に降り立ちエイミー達の援護に向かおうとするが、さっきのサソリ野郎に妨害される。ウィリアが即座にソードユニットで討ち取ろうとするが、巧みにかわされてしまう。
「こいつっ!」
まるでサソリ野郎はウィリアの剣裁きを煽るかのようにクネクネと動くとエイミー達の元へ向かって再び地中に。
「エイミー、インパチェンス!そっち行ったぞ!」
レオディルの警告も虚しく、サソリ野郎は残りのオリジンの機体と交戦状態のインパチェンスの背中目掛けて突っ込んでくる。
まずい!と思ったその瞬間、最後方にいたリミテッドキャリバーのバスターライフルが吠えた。
丸太の様に太い光線はダイレクトに射線上に入ったサソリ野郎目掛けて突っ込んでいき、突進状態から避ける事が出来きなかったサソリ野郎は綺麗に爆散する。
インパチェンスはサソリ野郎の接近と爆散を振り向き様に見たためかなりびっくりした様子だった。
その後、残りの護衛二機がオリジンの生き残りを討ち取り、散って逝った仲間の仇を取った。
なんとか危機をしのいだエイミー達は残りの護衛を探したが結局見つからなかった。恐らく二機とも地中で殺されたのだろう。
涙の旅路にはなったがレールガンのテストはかなりの恩恵が期待出来そうだ。上手くいけば量産までもっていけるかも知れない。
彼女らは採掘場を後にした。
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「…ツェーン先程はすまなかったな。」
またまた呼び出しを食らってガタガタ震えていたツェーンは「ふぇ?」と思考停止に陥る。まだ何か残っていて怒られると思ったのに。
「は、え?は、はい、別に私は…。」
とりあえず、なにか言っておこう。
それにしてもまたまた呼び出しとはなんだろう。
「…今からお前にリンクを送る。確認してくれ。」
と、ツェーンはデータベースに送られてきたリンクを確認する。
それは[BH:08フェンリルの搭乗テストについての報告]と書かれたトップシークレットクラスの報告書のリンクと、それが保管されているビヨンドヘヴンが表沙汰に出来ない様な情報や実験が網羅されたフォールンやゼロ(今はフォールンのみだが)などの上位機体でしか閲覧出来ないサーバーへの閲覧パスコードだった。
恐る恐る報告書を確認し、そこにいる少年が条件を満たしている事を確認する。
「こ、これは…見つけたと言う事でよろしいのでしょうか…?たしかにこれなら耐えられると思います、が…。」
逆説が来る。
「…が、とは何だ?なにか問題でも?」
「ああ、いえその、たしかに施術にも成功しておりますし、阿頼耶識システムへのリンクも合格してるのなら希望はありますが、リンクして機体を動かすだけなら脳への負荷は殆どありません。ここに書いてある、モビルアーマーとの戦闘時にリミッターを解除して負荷を掛けさせている状態の時のデータが重要なんですが、いかんせんそれについては明記されてないので…。モノローグに繋いだ時はここで言うリミッター解除時並の恐ろしい量の情報が来ると思われますので、その時は負荷に耐えられるかと…。」
たしかにそうだ。この報告書には実験の成果は述べらているが実際にモビルアーマーとリミッター解除して戦わせ、パイロットが無事だったと取れる内容は記されていない。
恐らく施術後のリンクは通常時と見て良いだろう。負荷は殆どない筈だ。
フォールンは黙り込んでしまった。
「ふ、フォールン様?」
今度はダンマリ…?疲れてるのか…?
「…ああ…いや、確かに明記されてないなと思ってな。」
なんだ、びっくりしたな。
「ん〜っとですね…確かにリミッター解除の結果は書いてませんが、何か解除させる方法ならあるのでは?」
「…そうだな…だが、そもそもこいつを見つけられるのか?ゼロの影響でリベリオン以外の人機体達の位置は直接把握出来ないだろうし、仮に散らばらせている殲滅部隊に監視カメラの役割を持たせても効果は薄いと思うが?」
すると今までフォールンの側にいながらも一言も発しなかったアメノハバキリが
「フォールン様。ここは参謀班を頼ってみては如何でしょう。彼らからきっと有効な策を打ち立ててくれる筈です。」
と返答に困っていたツェーンに援護射撃した。
「…そうだな…よし、参謀班を呼べ。」
はっ、とその場を後にして参謀班を呼びに行った。
アメノハバキリにはあとでお礼を言っておこう。
程なくして参謀班と呼び出し人のアメノハバキリが到着。
紫のグローカラーがチャームポイントの班長クロナードはフォールンの前に参上して緊張しながら深々と頭を下げた。
「参謀班班長のク、クロナードと副班長シュピール参上しました。お呼び出しとの事ですが、用件は何でしょうか…?」
フォールンはこれまでの経緯を話す。
話を聞き終わったクロナードはホワイトボディに天使の翼を持つ人機体、シュピールに話を纏めさせている間に策を練る。因みもう一人の副班長アスターは別件で手が離せず、今回は不参加。
「要するに、そのフェンリルとやらのリミッターを解除状態にさせてパイロットがその負荷に耐えられるか、また、その少年をどうやって見つけるかをはっきりさせたいと言う事でよろしいでしょうか…?」
「…そうだ。しかしどうすればいいのかが悩みどころなのだ。」
「となると、モビルアーマーを各キャラバンに差し向けるのが一番かと。」
シュピールが会話に割り込む。
「…どう言う事だ?」
「元々そのフェンリル、ガンダムフレームの機体はモビルアーマーと戦うために作り出された機体であり、リミッターにはモビルアーマーと戦闘する際にパイロットを生かすため脳への情報量に制限をかけているセーフティーがある。となれば簡単なことです。モビルアーマーを仕向けて人間達をおびき寄せ、出てきたフェンリルのリミッターを戦況的に解除させればいい。」
確かにシュピールの意見は最もだ。
だが、とクロナードは聞く。
「だが、フェンリルを操るルフスと言う少年が出てくる来ないは置いておいて、リミッターを解除させる事が出来なければ状況的に追い込めても意味がないと思うが?まさかそんな危ないシステムが人機体側の独断で出来るとは思えないし。」
すかさず返答
「方法なら、ありますよ恐らく。無理にでも解除させる策なら。」
フォールンは身を乗り出し、「…是非聞かせてくれ。」と喰いつく。
「その為にはフォールン様。誠に恐縮ではありますが、フェンリルのテストデータへのアクセスを了承して頂けないでしょうか?確か貴方の権限でしか閲覧出来ない区画にあったはずなので。」
最初にツェーンにやった時と同じようにシュピールにもリンクを送る。因みにサイトアクセスのパスコードは一度一つのデータを閲覧するとその時点で使用不可になると言う仕組みになっているので、外部に情報が漏れる心配はない。
シュピールのデータベースにリンクと解除コードがインストールされる。
インストールの完了を確認したシュピールは「ありがとうございます。」と、すぐにテストデータへ目を通す。
なるほどなるほどと読んでいき、解決策が纏まる。
「…どうだ?」
「やはり…予想した通りです。」
クロナードとツェーンは実際にデータを閲覧してないので予想も何もねえよと言う様子で半ば飽きてきている。
「どんな解決策なんだ?」
「説明します。まず、セーフティーがかけられてしまうのはモビルアーマーの反応をフェンリル=ガンダムフレーム搭載機がキャッチした時です。厄災戦の時点でそれは判明していたので、フェンリルは内蔵されている万能因子を一部利用してリミッター解除とセーフティの機体性能の低下を万能因子が持ち堪える限り半永久的に防いでいる状態になってますね。」
さらっと言ったシュピールに対してフォールンが険悪な表情を浮かべる。さっきと言ってた事が違ってるではないか。
「…では?どうするんだ?」
怒ってるよこの人、とツェーン達は一歩下がる。しかし全く動じずシュピールは続ける。
「はい。なので仕向けるモビルアーマーに万能因子のガードを破って強制的にリミッターを解除させるシステムをつけるのです。フェンリルのデータは私達の手中にありますので、ブロックされるパターンを見破ることも出来ます。例え解除とまで行かなくてもリミッターを解除させまいと万能因子が抵抗し、その内ガードが切れて機体には過度なセーフティが掛かり機体性能が低下します。そこで戦況が我等に好転していればやむを得ず解除させられるかも知れません。」
理論上完璧な策だ。現段階では何とも言えないが、異論をあげる者はいない。
「…なるほど、だとするとどのモビルアーマーに搭載させる?今機構世界に居る奴となると…。」
モビルアーマーは強大な力を持っているが、いかに技術を進化させようと生産出来る数にも限りがある。殆どは既に各地へと派遣されてしまった為、いざ残っている奴となると…。
「あ、そう言えばメガロバスターってまだ居ましたよね?」
クロナードが思い出したかのように名を出す。途端に周りの空気が微妙になる。
「え?皆さんどうしたんですか?」
「俺…あの人苦手なんだよな。」
「…う、うむ。」
フォールンまで俯きながら微妙な表情を隠す。
「え〜俺あの人結構好きですけど。」
「アラありがとう。クロちゃんイイコト言うじゃなぁい。」
と、真後ろにメガロバスターがニヤニヤした顔でたっていた。
クロナードは振り向きながら「うわぁ?!」と飛び上がり、大剣ラグナロクを物凄いスピードで変形生成して構える。
「何よぉ、ゼロ距離で褒めてあげたのにぃ。」
「急に後ろに居るとか、あなた殲滅型っての絶対嘘でしょ?!」
「なぁ〜によぉ〜、背後にこっそりと近寄って、そこからあたしのメガ粒子キスをあげるのよ。銃口を擦り付けてねぇ。」
「いや、生々しい上に気持ち悪いんで結構です。」
つれないわねえ、とおネエ口調で話すこのモビルアーマーこそメガロバスターその人だ。
カーキ色のボディと巨大な長いランチャー、そして脚と腕が一体化したいかにも危なそうな外見がますます妖しさを際立たる。
殲滅型という括りで開発された彼/彼女はこの濃すぎるキャラと巨大な容貌も相まってモビルアーマーでも一二を争う強さを持っている。
なお、(自称)おネエなので人柄は良いのだが好みは分かれる。
それにしてもかなりのサイズなのによくクロナードや他のメンバーに気付かれずに後ろを取れたな、と一同は思った。
フォールンはおろおろしながらも、
「…よく来てくれた。おかげで呼ぶ手間が省けた。」
いちいちアメノハバキリに部屋を出入りさせるのも面倒くさいし色んな意味で迅速に動けるのは決して悪い事ではない。
「あらぁフォルちゃん、まさか今夜はあたしを指名しようとしてたのぉオオオオ!?ちょっと待って!!!」
アメノハバキリが鞘から刀を抜いているのを見て察したのか脚兼腕を上げて浮遊しながら降伏の姿勢を取る。いかに自分の方が性能が優れていても、立場では勝てない。
「次に無礼をしたら問答無用で斬りかかるぞ。」
「あらぁアメちゃん怖いわぁ。最近欲求不満なの?ってちょ!!ストップ!!」
もう斬りかかっていたので他のメンバーが取り押さえる。全く、ペースが狂うよ、とツェーンは顔に手を当てる。やっぱり苦手だ。
「け、汚されちゃった…。」
いかにもと言う声で冗談を言い終えたメガロバスターは用件を聞く。
「それで、あたしはどうすれば良いのかしら?」
「…シュピールが説明する。」
指名を受けたシュピールはさっとメガロバスターの前に出る。
「では手短に、新システムのテストと搭載をお願いしたい。」
手短すぎてハテナのマークを浮かべるメガロバスター。
「ん〜っと、それはいつどこでやるのかしらぁ?実戦もお会計に入ってる?」
お会計ってあんた、とツェーンは心の中でツッこむ。
「新システムを作るのに一日二日かかるからまだ断言は出来ません。テスト自体はラボの実験室でやる予定です。実戦は勘定に入ってますよ。」
その場にいた全員は、
(シュピール、いつも淡々と働くお前がギャグに合わせるとはよ…!)
と思った。いつもは合理主義で遊び心なんぞないと思ってたくらいだから尚更驚きだ。これもシュピールの一部なのであろうか。
「あらぁそう?分かったわ。そのシステムとやらが出来たらまた呼んでねぇ〜。」
と言うとお辞儀してその場を後にした。出る際入り口の扉に脚をぶつけて悶絶してた所を見ると、本当にどうやって音もなく忍び込んだのかが気になる。
出て行ったのを確認してツェーンははぁ〜っとため息をつく。
「…それで、新システムの搭載はヤツに任せるとして…もう一つの問題はどうやってルフスを見つけるかだ。」
そうだ、メガロバスターに夢中になり過ぎて肝心なそれを忘れていた。
「シュピールが言ってた確実な方法だと、メガロバスターのみ新システムを搭載する事になるから、耐性確認と特定の両方を行うのは難しそうですね…。となると派遣済みのモビルアーマーに伝えて本人の特定を先にして、それから耐性の確認をすればいいかと。」
クロナードの提案は最もだ。流石は参謀班班長と言った所か。
メガロバスターには本人の特定が出来てから襲わせよう。無理に出してやられでもしたら目も当てられない。
「派遣中の部隊に全域調べさせるのはかなり無理がある。大まかでもいいからある程度程度絞った方がいいと思う。」
クロナードの意見にツェーンが付け加える。
いかにリベリオンの人機体といえど、闇雲に戦っていては無駄に戦力を浪費するだけだ。功を焦れば自分達が追い詰められる可能性だってある。
「…観測班を呼べ。確実に仕留めよう。」
アメノハバキリが再び出て行く。
観測班は地球全土に散らばっているリベリオンの人機体から得られる各地の環境情報を扱う仕事をしており、敵人機体の索敵も行っている。一部の特殊チームは、発見した際には敵には攻撃せず味方は援護しないと言う情報を確実に持ち帰る事を専門とした部隊もある。
しばらくして班長のノートが到着する。副班長のバタフライは観測室の仕事が手いっぱいで来れなかったそうだ。
「お呼びでありますか統率機(リーダー)。」
「…うむ、そうだ。このルフスと言う少年、若しくはフェンリルと呼ばれる人機体を探して欲しい。今画像を送る。」
画像が送られ確認する。
「なるほど。しかし、衛星が使えない今個人を捜索するのはかなり大変ですよ。」
ノートがもっともな事を言う。だからこそ観測班を呼んだのだとフォールンは言い返す。
「そうですね…特殊偵察班=ブラックナイトに捜索させてみます。彼らならきっとやってくれると思いますが、時間はかかるかと思います…。」
観測室にいるバタフライにブラックナイトへ捜索命令を出させる。
回りくどくなるのはわかっていたが、本当にゼロが憎らしい。奴のせいで万事面倒くさい上に時間がかかり、非効率で不確実だ。無駄なストレスが溜まる。
フォールンはよろしいと頷くと、アメノハバキリにグリスウオッカ(人機体が飲む酒)を全員分注がせた。
皆に配って一杯飲み、報告会を解散させる。長くなり過ぎてしまった。自分も疲れたが呼び出された彼らの方が疲れたろう。
今日は部屋に戻る、と玉座を降りて近衛兵とアメノハバキリも下がらせる。
久々に疲れた。今日はゆっくり休もう。
こんにちは( ・∇・)
気づいたら9000文字超えててびっくりしたルシェラです。
今回はエイミー達の初戦闘シーン、オリジンの存在、リベリオンのコミカルシーンなど色々詰め込んだからかなあ。
まだ未登場のアスターとバタフライも早く登場させたいです(^◇^;)
それでは、また。
機体、キャラクター投稿希望は不定期ではありますがたまに募集しています。
作品に関する事や関係者の方々への質問は受け付けていないのでよろしくお願いします。