記憶を失ったフリをしてみた結果   作:あばずれ

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遅れました、申し訳ないです。

前回までのあらすじ
深海棲艦でも性事情はある。


12. すいませんでしたと言いたい

 深海棲艦ズが過ぎ去った後は執務室が惨状と化したので黙々と掃除しました。

 

「はぁ……見事に荒らして帰りやがったなアイツらめ……」

 

「本当に害悪な奴らね。後で戦争仕掛けてやろうかしら」

 

「それについては賛同します陽炎姉さん。ストレス発散の為にちょっとだけ行きますか」

 

「コンビニ行く感覚で出撃するのはやめて」

 

「元はと言えば司令官がこんな事するからよ。皆がおかしくなったのも提督が私達のアプローチに気づかないし、性癖は童貞並に気持ち悪いほど溢れてるし、童貞だし、ケッコンしてるのに未だに童貞だし、まさに童貞中の童貞よね」

 

「ねぇ童貞って何回言った? 俺死んでいい?」

 

「ダメよ」

 

「ダメです」

 

 いやアプローチについては本当に気づかないというか、俺が鈍感過ぎるのかな。まったく記憶に無い……。

 

「Admiral!!」

 

 Admiral?

 という声はつまり海外艦の娘達かな? 

 

「身体は大丈夫なの? 体調はどう? 怪我はない?」

 

 振り向いた瞬間に身体をぺたぺた触ってくるこの艦娘は……、

 

「あ、あのー……」

 

「あ、そういえば忘れてたのよね……私はQueen Elizabeth Class BattleShip Warspite! Admiral……またよろしく頼むわね……」

 

 俺ならある程度話せるから聞いてても分かるけど、多分普通の人なら『え? なんて?』って聞き返すと思う。

 英語って案外難しいんだよな。

 

「え、えぇ……よろしくお願いします……」

 

「……本当に失ってるのね……」

 

「はい……まぁ……」

 

「はぁ……ホントに面白い事をしてくれるな……Admiralは」

 

 今度はアークロイヤルが来てくれた。

 

「貴女は……」

 

「……私はHer Majesty's Ship Ark Royal……アークロイヤルとでも呼ぶといい。改めてよろしく頼む」

 

 アークロイヤルが頭抱えてるなぁ……まぁ上官の記憶喪失となれば面倒臭い事この上ないだろうし、同情しますよこれは。

 

「何故こんな事になったんだか……急に仲間もおかしくなり始めたし、何だか別世界にいるような感じだ」

 

「そうね、少し気味が悪いわ」

 

 二人がこの話をしているという事は少なくともまだ正常なタイプかもしれない。

 まぁ海外艦だから問題ないかな。

 

「ところでAdmiral、Warspiteとはいつ結婚するんだ?」

 

「What!!!?」

「What!!!?」

 

 いきなりぶっ込んできやがったなアークロイヤル!! 

 お前さっきまで他人事のように話してた癖にそのまんまお前もおかしいじゃねーか!!! 

 

「ちょ、ちょっとArkroyal? What Are you saying!? 私がAdmiralと結婚だなんて……」

 

 そうだぞ! 

 失礼過ぎるだろ!! 

 謝れ! ウォースパイトに!! 

 

「もう……してるのに……///」

 

 あーダメだったーッ!! 

 こいつもおかしかったーーーッッ!!!! 

 

「え? も、もうしてるんですか?」

 

「してるでしょ?」

 

「してたのか?」

 

「どうなんだ?」

 

「……あまりのボケに耐え切れなくてこっちに話題振ってきたわねあの司令官……一度ぶん殴ってやろうかしら」

 

「出来たての産業廃棄物をプレス機で潰した様な顔をしてますね」

 

 別に僕の事何と言おうと一向に構わないけど、君達のその罵倒のレパートリーはいくつまであるんだい? 

 

「こら、やめたまえ二人とも」

 

 この声は……? 

 

「貴女は……?」

 

「こんにちは……いやはじめまして、だな。私はGraf Zeppelin級航空母艦一番艦のGraf Zeppelinだ。以前はグラーフと呼んでいたのでこれからもそうしてくれると嬉しい。これからまたよろしく頼むぞAdmiral」

 

 自己紹介と共に握手してくれたこの艦娘はグラーフ・ツェッペリン。

 前は名前が長いからグラーフって呼んでて結構仲は良かった気がする。海外艦同士の衝突の仲介役が多くてかなりの苦労人。それでいて冷静沈着且つ洞察力が素晴らしく、物事を奥深く見定める大人な姿勢を兼ね備えた常識人だな。

 だか時たまに休むよう言ってるけど彼女自身はあまり休む事は好まないんだよね。とても苦労してるだろうし、感謝してる身としては休憩してもらいたいな。

 

「しかし本当に記憶を失っているのだな……悲しいが少しずつ取り戻していこう……なに、大丈夫さ、私達がいるからな……それに」

 

 グラーフがいきなり顔を近付けてきた。

 一体何を──、

 

「後、その嘘くさい演技で既にバレバレだ。しかしそれはそれとして面白そうだから乗ってやるつもりでいる。ありがたく思うことだな」

 

 バレてたァァァ!!! 

 

「よっしゃ!! やっと来た!! これで勝つる!!」

 

「ッ!!! ッッッッ!!!!」

 

 コソコソ話だから周りには聞こえなかったからいいけど、後ろの陽炎と不知火が初めての仲間にめちゃくちゃ感動してガッツポーズしまくってるのは気付かないで置こう。

 

「待ちなさい!! 私達もいるわよAdmiral!!」

 

「出たわねビスマルク!!」

 

「えぇそうよ!! 残念だったわねウォースパイト! 私達がいるからにはもうAdmiralの安全は保たれたも同然よ!」

 

「ビスマルク、オイゲン、せめて自己紹介してからAdmiralに話してくれ」

 

「いいでしょう! 私はドイツが誇るBismarck型超々弩級戦艦のネームシップ、Bismarck!!」

 

「そして私がアドミラル・ヒッパー級の重巡、プリンツ・オイゲン!!」

 

Z3(マックス・シュルツ)よ」

 

Z1(レーベレヒト・マース)……」

 

「そしてそこにいるのがGraf Zeppelin!! 最近また胸が大きくなってブラを買い換えようと思ってるらしいわよ!!」

 

「余計な事言うな!!!!」

 

 グラーフがツッコんだ……。

 

「以上! よろしく頼むわよ、Admiral!!」

 

 何か前にも見たなこのシーン。

 あれか! 白露達の登場ポーズと似てるやつだ。

 やっぱああいう集合ポーズは好きなのかな。

 

「イギリス艦がAdmiralの記憶を改竄しよう√1000分早いのよ」

 

「そちらこそ自己紹介に12/24秒は掛かりすぎじゃないのか? もっと縮めたらどうだ?」

 

「よく言うわ、朝寝坊してSin(α+β)分遅刻した貴女こそ縮めたらどう?」

 

「ふん大したものだな。時間にreasonableなお前が日本のインスタントラーメンを12÷2分して忘れた事を覚えていないとでも思ったか?」

 

 色々気付いて言わなかったけど、一々お前ら時間の言い方ややこし過ぎんだよ!!! 

 単純に言えよ!! 分かりづらいわ!!

 

「いいから貴女達はそこで指くわえて見てなさい! Admiralの記憶を改竄するのは私よ!!」

 

 堂々と本人の目の前で改竄宣言しやがったぞコイツ!!! 

 

「何が改竄だ!! Admiralにそんな事はさせるものか!!」

 

 いやお前それさっきやろうとしてただろうがァァ!!!! 

 

「そこまでだ!!」

 

「ッ!?」

 

「うわっ!!」

 

 グラーフが大声出してビスマルクとアークロイヤルを退けてくれたおかげで口喧嘩が止んだ……。

 流石は仲介役はやる事が違う……見習わなければいけないな。

 

「双方そこまでだ。今は喧嘩している場合ではないだろう、Admiralも困っている……改竄は後にしてくれ」

 

 いや改竄も止めさせて!!? 

 

「とにかく今は記憶を取り戻す方法を考えるのが得策だろう。互いに協力し合い、Admiralを導かせていくのが我々の役目だ。聞いた話によると記憶喪失の原因は巨大なカブトムシの激突による頭への衝撃で記憶喪失になってしまったらしい」

 

「なるほど……仕方ないわね……まぁ別に? 私達は構わないけど」

 

「私達も一向に構わないわ」

 

「ならそうしてくれるとありがたい。では早速だが、Admiralの記憶を取り戻せる効率のいい方法は無いか?」

 

 めちゃくちゃ先導して順調に進んでるけどグラーフさん、俺の記憶喪失のフリを知ってて進めてるんだよな……何考えてるのか怖い。

 

「私達とAdmiralの共有した記憶の一片を語るかまたは実際に演じてみて、Admiralの記憶にShockを与えてみるのはどうかしら?」

 

「なるほど。いわゆるショック療法のようなモノで、一連の行動を流してみれば何かしら思い出すかもしれないという算段だな。悪くないだろう」

 

「確かにその方法であれば確率は高いわね。やってみる事に価値があるわ」

 

「オイゲンは賛成です!」

 

「私達も賛成よ」

 

 あぁ確かにそんな方法聞いた事があるなぁ。

 あまり確実性は低いけどやってみて効果はあったとか無かったとか書いてたような気がする。

 

「なら早速やってみよう。まずはAdmiralとどんな事をしたか、何か思い出しやすそうな記憶はあるか?」

 

「あるわよ。まずこのビスマルクに任せてもらえないかしら」

 

「お前がか? 大丈夫なのだろうな?」

 

「貴女達とは違うのよ、見てなさい! 私とAdmiralとの感動秘話を!」

 

 

 

 ──あれは夏の暑い日……私とAdmiralが初めて出会う前の事……。

 ──私はいじめを受けていた。入学した高校で妬まれて同じクラス女子のから「ちょっと待てエエェェェェ!!!!!」

 

「何なんだ今の全く関係無い時代設定は!!! お前とAdmiralがHigh schoolで同じなハズないだろ!!! 自分の妄想を重ねるなよ!!」

 

「うるさいわねアークロイヤル!! 話はまだ途中なのよ! 黙ってなさい!!」

 

「黙っていられるか!! 妄想に溢れたepisodeなど聞きたくないんだよ!!」

 

「どこが妄想よ!! この話にはちゃんとした続きがあるのよ!! いいから聞いてなさい!!」

 

 

 

 ──私はいじめを受けていた。入学した高校で妬まれて同じクラス女子のから酷いいじめを受けていたのだ。

 ──何故いじめを受けているのか当時の私は理解出来ず、ただただいじめられる毎日だった。

 ──いじめの主犯はアークロイヤ「お前ェェェェェ!!!!」

 

「何でいじめの主犯が私なんだ!!! 明らかお前、私の事からかっているだろ!! そもそもこんな記憶なんぞ捏造なのに何でそう易々と入れ替えられるんだよ!! ふざけるのも大概にしろ!!」

 

「いやこれはAdmiralに分かりやすく例えただけよ。決して誰一人貴女だなんて言ってないから、貴女がやってたなんて言ってないからぁぁ??」

 

「こっんの……!!」

 

「ビスマルクお姉様! 続きを!」

 

「えぇ勿論!」

 

 

 

 ──いじめの主犯はアークロイヤルとウォースパイト。アイツらは私が美し過ぎるからって自分の醜さを思い知らされたから妬んでいじめてきた。

 ──いじめはとても酷かった。体操着はボロボロにされるし、トイレに入れば水はかけられるし、無理矢理下着を撮ろうとしてきた。

 ──そのいじめが辛くて私は帰ってからいつも自分の部屋で泣いていた。とても辛くて、辛くて、死にたいと思った。でもある日……。

 

 ──私はいつも通り登校して教室に向かっていた。今日もいじめられるんだろうな……そう思って顔を俯きながら歩いていたその時。誰かにぶつかってしまった。

 

 ──私は恐る恐るぶつかった相手の顔を見る。そこにいたのは……、

 

 ──巨大なカブトムシだった「いや何でだああああああ!!!!!」

 

「そこは普通Admiralだろうが!! 何で巨大なカブトムシが出てくるんだよ!!! さっきのグラーフの言葉引きずってるじゃないか!!! 何なんだよ本当に!!」

 

「う、うるさいわね! 仕方ないじゃない、話してる最中に突然出てきたんだもん! 私は悪くないわよ!」

 

「さっきから妄想に妄想を重ねておいてその言い草か!! 本当にAdmiralの記憶を取り戻したいのか貴様は!!」

 

「そこまで言うんだったら貴女こそ何かエピソードは無いの?! さっきから事ある毎に大声出してうるさいのよ!!」

 

「ぐっ……それは……!」

 

「あるわよ」

 

「っ!?」

 

 ウォースパイトが手を挙げてくれたぞ。

 黙って聞いてたけどコントでもやってんのかビスマルク達は。

 

「Warspite? 本当か?」

 

「えぇ本当よ。Admiral、聞いてくれるかしら?」

 

「は、はい……分かりました」

 

 ──私もAdmiralと初めて会った時の事を語りたいわ。

 ──当時友軍としてJapanに行く事になった私は不安だらけで夜も眠れなかった。

 ──そして遂にJapanへ到着し、この鎮守府に着任した当日。私は初めてAdmiralと顔を合わせた。

 ──その時私は驚いたの。

 

Hello.(こんにちは) I'm pleasure to meet you(お目にかかれて光栄です)

 

 ──まさかAdmiralが英語を話せるとは思わなかったから、無意識に驚いていたわ。

 ──でも必死に練習したような形跡が執務室のあちらこちらで見えていて、Admiralは私の為に頑張って喋ってくれていたの。

 ──私は嬉しかったわ。日本にもこういうフレンドリーな人がいるだなんて予想もしなかったから、不思議とそこで一気に不安は無くなった。

 ──そしたらAdmiralは私の顔を見つめ続けて固まっていたわ。どうしたのかしらと声を掛けたらAdmiralは片膝を床につかせ私の手に触れてこう言ったの。

 

Please mar(私と結婚して)──』「はあああああああああ!!!??」

 

「ちょっと待ちなさいよ!! 貴方達がEhe(結婚)なんてしてる訳ないでしょ!! 何さりげなく改竄しようとしてるのよ!! 最初ちょっといい話だと思っちゃったじゃない!!!」

 

「いいえ事実よ。Admiralは記憶が無いだけでこれから本当にさせるから問題無いわ」

 

 置いてけぼりにされてるけどこれは本当です。

 互いに円滑な関係が進む様に前もって発音練習してんだよね。英語はある程度出来るけど海外の人達とは実際話した事が無くて、不安がられないように頑張ってた。

 

「何なのこの戦艦は!! 改竄に何の躊躇いも無いわね!!! アークロイヤル! どうなってんのよこれは!!」

 

「Warspiteの意志は私の意志だ。当然結婚する事は当たり前だろう、では次は私が語ろうか」

 

「はァ!? ちょ、勝手に進め──」

 

 ──あれはJapanが冬の頃だな。

 ──薄暗い夜、とある森の道でAdmiralが狼に襲われていた所を私が……! 

 

 ──白馬と共に駆けつけた!! 「おいコラ待てええええええ!!!!!」

 

「色んな世界観混ざり過ぎてとんでもない事になってるわよ!! さっき私のエピソードに文句言ってた癖に貴女も妄想入れ込んでるじゃない!! 何が世界観が違う、よ!! 他人の事言えないわよ貴女も!!」

 

「Japanは幻想が織り成す四季とりどりな国だ、多少世界観が違くとも成り立つ場所など何処にでもある」

 

「薄暗い夜と森の道ならともかく、白馬と共に駆けつける人間が日本のどこにいるってのよ!!」

 

「そういうお前こそ祖国が違う癖によくHigh schoolが同じだとか言えたものだな!!」

 

「貴女だけには言われたくないわよ!!!」

 

「あのー……次、私いいですか?」

 

「っ? あぁそうね、今度はオイゲンの番ね」

 

「ったく誰かのせいでめちゃくちゃだ。今度こそは頼むぞ」

 

「はい! このオイゲンにお任せあれ!」

 

 ──これは私とAdmiralの思い出です。

 ──まず初めて会った場所は高校の屋上で、そして初めてデートした場所が森の道で、プロポーズしてくれた場所がこの鎮守府の執務室で、それはそれはとても……

 

 ──いい……思い出でした。「もう色々全部混ざってんじゃねーかァァァァ!!!!!」

 

「なに一人で思い出に浸ってるんだ!! 全て私達のepisodeをパクって言ってるだけだろ!! どうなってるんだソイツの頭は!!!」

 

「あの戦争では負けても私とAdmiralの思い出は誰にも負けません」

 

「私だって負けないわ。戦争では勝ったけどね」

 

「無駄に張り合おうとするな!!! もういいだろそんな事!!」

 

「ふははははは!!! 無様ねウォースパイト!! 上司の顔が見てやりたいわ!!」

 

「何でお前はそこまで威張れるんだよ!!!」

 

「グラーフ……これ収拾つくと思うか?」

 

「いや無理だろうな」

 

「ですよね」

 

 




海外艦の下りはまだ続きます。
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