記憶を失ったフリをしてみた結果   作:あばずれ

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3. 本当の本当にごめんなさい

 いやー今日は実に快晴、おひさまの力が素晴らしいですねぇ。

 涼しい風と暖かい日差しが何とも心地よい。

 

 まぁこの二人がいるおかげで全て掻き消されるんですがね。

 

「さーて今度は誰に会えるのかなー」

 

「何故こんな事に付き合わなければならないのよ……」

 

「全くもって同感です」

 

 ごめんなさい、後で色々奢るから許して。

 

「あっ噂をすれば提督じゃんか!」

 

 この声は……摩耶か? 

 

「アタシは摩耶だ! よろしく頼むぜ!」

 

「私はその妹の鳥海です。提督、これからよろしくお願いします」

 

 あの姉二人とはまた違った姉妹だな。この娘達は戦闘面で感謝してばっかりだったなー……。

 ……いや、エロい事も考えていました。

 

「摩耶さんと……鳥海さん、ですね。よろしくお願いします」

 

 でも記憶失ってる(前提な)のでそんな事は一切覚えておりません。

 

「記憶喪失とはたまげたもんだなぁ提督も。あたし達の事、何もかも忘れてる訳かよ」

 

「ごめんなさい……どうやらそうみたいで……」

 

 そんな「は?」みたいな顔で睨まないで。

 陽炎さん、不知火さん、気持ちは分かるけど表情だけは抑え込んでね。

 

「はぁー……そっか……忘れちまったんだもんな……仕方ないか……」

 

「摩耶、気を悪くしないで。悲しいけど……」

 

 え? また捏造していくタイプ? そんな寂しげな表情して? 

 

 もう騙されんぞ。

 どれだけ不遇な目にあったか、経験値はめちゃくちゃあるんだからな!! 

 

「今日酒飲む約束してたのに……」

 

 ごめんなさい、本当に忘れてました。

 

 そういえば記憶喪失のフリをする前日に約束してたんだよな。興奮しちゃってすっかり忘れてたわ。

 

「え!? そうなんですか!?」

 

「あ、あぁ。約束してたんだけど記憶失ってちゃ意味無いもんな」

 

「初めて会った様なものなのにまた誘うのも提督にとっては難しいですものね……仕方ありませんよ」

 

 うっ……心にグサッと何かが……!! 

 

「あの時の提督の笑顔は良かったなー……」

 

「楽しそうに飲む姿は眼福でした……」

 

「クソッ……あの時あたしが無理にでも言えば……!!」

 

「やめて摩耶、貴方の所為ではないわ」

 

 ん? 何か重くない? 

 

「鼻毛が出てるのを……教えられたのに!!」

 

 くっそどうでもいいなオォイ!!!! 

 

 鼻毛が出てるって何だよ!! 初めて君達からそんな言葉聞いたよ!! 

 

 そんな事の為に重い空気出してたの!!? 

 鼻毛が出てただけで!!? 

 馬鹿じゃないの!? 

 そんな出てる訳──、

 

「あ、本当だ」

 

 あったよ!! 出てたよ!! 

 思いっ切り長いの出てたよ!! 分かんなかったよ!! 

 

 じゃあ何!? 

 俺ずっと鼻毛出しながら記憶失ったフリをしてたの!!? 

 

 恥ずかしいんだけど!!! 

 物凄く恥ずかしいよ!! 

 って事は陽炎と不知火もこれを──、

 

「ぷっ……しゅー……!!」

「っ……!!!」

 

 お前ら最初から気付いて言わなかったのかコノヤロー!!! 

 薄情者!! 変態!! 

 

「仕方ないわ摩耶、これからまた注意すればいいだけよ」

 

「あぁそうだよな、落ち込んでる暇なんて無いよな」

 

 俺の鼻から鼻毛出てた事が注意出来なかったぐらいで落ち込んでたの? 

 しかもこれからって何!? 俺ずっと出してたの!? 

 

 ちょっと傷つくんだけど!! 

 

「あ、そうだ陽炎と不知火。これから遠征らしいからそろそろ行った方がいいと思うぜ」

 

「そ、そうですか……! 分かりました……今行きっ……ます……!」

 

 笑いこらえながら答えるのかよコノヤロォ……!! 

 

「じゃあな提督、これからよろしくなー!」

 

 クソッ……また狂わされた……!! 

 ちくしょう、振り回されっぱなしだぜ。

 

「すいません……どうしても面白くて……!」

 

「ギャハハハハ!!!」

 

「笑わないで、死にたくなる」

 

「まぁまぁ、これから気を付ければいいだけよ司令官」

 

「そうです……気をつけれブフォ」

 

「ギャヒャヒャヒャヒャ!!!! ヒャーヒャッヒャッヒャッヒャッ!! 突然吹かないでよ不知火! 笑いが……!」

 

 もう……誰でもいいから俺の事を誰か殺してください。

 

 死にたいです。

 

「って事で私達は遠征に行ってくるから、精々勘違いしない事ね!」

 

「今度は私達も助ける事は出来ないので、では」

 

 元々助ける気なんてさらさら無いくせに……。

 

「はぁ……」

 

「あれ提督ですね。どうしました?」

 

「あっ、えーっと……君は?」

 

「そういえば記憶喪失でしたよね。私は榛名、金剛型戦艦三番艦の榛名です! これからよろしくお願いしますね!」

 

 あっ、癒される。

 この笑顔最高に可愛い。今まで傷ついた心が癒されてく。

 これが、尊い……かっ……。

 

「って提督、何倒れてるんですか!? 大丈夫ですかー!?」

 

「あっとごめんなさい、少し目眩がしたもので……」

 

「目眩? ですか……少しお疲れの様ですね、私の部屋でお休みしますか?」

 

「そうですね、ちょっとお休みしたいです」

 

「ふふっ……敬語じゃなくていいんですよ。貴方は私の提督なので」

 

 やばい涙出てきた。

 何だよこの純粋さ。りんご果汁100%並に純粋過ぎて前向けない。

 

「着きましたよ提督。ここが私の部屋です!」

 

 普通のお部屋だね。どこの部屋ともそんなに変わらない。

 んでも待てよ? 確か榛名って金剛達と同じ部屋だった気が……。

 

「提督、これを」

 

 んんん??? 

 何で手錠されたの? 身動き出来ないんだけど? 

 

 新手の拘束プレイ? 

 

「榛名、何で手錠なんて……エェェェェェェ!!!!??」

 

 押し倒されたァー!! 

 ちょっと待って!! 本当に身動き出来ない!! 

 

「何を慌ててるんですか? 昔はこうして二人で遊んでいたじゃないですか……」

 

 いや全く記憶に無いんだけど!!? 

 また捏造する気か!? 

 

「ちょ、ちょっと待て榛名!! これはさすがにまず──」「私は問題無いので」

 

 俺に問題があるんだよ!!! 

 記憶喪失のおかげで周りの憲兵達も少し心配してくれてるの!! 

 こんな俺でも何故か信頼されてんの!! 

 何故か分かんないけど!! 

 

 それに俺の威厳が無くなってしまう。

 提督として一定の関係は保つべきだ。

 色々変態みたいな事ばかり言っていたような気がするけれど、いや言ってない様な気もする……言ったっけ? そんな事。

 

 ……多分言ってないけど色々あるから、榛名には仕方ない。

 

 ここはちゃんと説明して──、

 

「どうですか……? 私の胸に蹲る気分は……」

 

 ちゅき。

 

 もうどうでもいいや。威厳とか信頼とか。

 

 深海棲艦と戦ってる事とかもういいんすよ。幸せを勝ち取る事は即ち人生において勝利を意味するんすよ。

 

 僕ちんの桃源郷はここにあったんだ。

 

「って何やってるんですか!! 提督!! 榛名姉さま!!」

 

 この声は……あーもう誰だっていいや。

 

「霧島!? 何故ここが……!!」

 

「提督の跡を……ではなくて、大きい声が聞こえたのでもしかして……と」

 

「何も悪い事はしてないわ霧島。ただ愛し合ってただけよ」

 

「記憶喪失中の提督には刺激が強過ぎます! そのような事は仲良くしてからやってください!! ほら、行きますよ!」

 

 え? ちょっと待って? まだ俺、この桃源郷にいたいんだけど? あ、待って引っ張らないで。

 

 手錠されてるから! 身動き取れないから!!! 

 

「待って! えっと……えーっと……! 霧しまむぅアァァァァァァ!!!??」

 

「……チッ」

 

 

 

 

 

「えーっと霧島さんだっけ!? 引き摺る前に手錠解いてください!!」

 

「あ、そうでしたね。すいません提督」

 

 鎖を手刀で軽々と破壊するこの超人的な力ははっきり言って怖い。

 まぁでも自由の身だから考える必要はないか! 

 

「全く……記憶喪失中の提督に何でもかんでもやりたい放題とは、気遣いも出来ないのでしょうか……」

 

「あはは……そうですね……」

 

 本当だよ!!! 

 

 マジでおかしいもん!! 

 

 記憶喪失のフリをするまでは皆あんな事言わないはずなのに、とても健気で可愛い娘達ばかりだったのに! 

 

 記憶喪失のフリをすればひたすら身に覚えのない記憶を捏造して、自分のモノにしようとしてるんだもん! 

 

 殆ど下ネタでしかないよ!! 健全の「け」すら無いよ!! 

 

 艦娘との仲の良さを調べる為にした事がまさかこういう結果を生むとは知らなかった……。

 ああやって既成事実みたいな発言をするのは恐らく異性に対する感情が溢れた結果なんだろうな。

 ただでさえ女性が多いこの鎮守府じゃ、ストレスの発散方法も少ないし。

 少し見直す必要があるなぁ……。

 

「あ! すいません、自己紹介が遅れました! 私は金剛型戦艦の四番艦、末っ子の霧島です! よろしくお願いしますね」

 

 初めてまともな艦娘に出会った気がする。

 いや騙されるなよ俺。こうやってまともに信じれば後のダメージが大きい。

 常に警戒網を貼るんだ。

 

「記憶喪失という事もあって色々大変かと思いますが、頑張ってくだ──」「ここにいたのね霧島」

 

 この声は比叡だな。あれ? 金剛がいない……おかしいな。比叡は金剛にべったりなのに、一人でいるとは珍しい。

 

「あら比叡姉さま、金剛お姉さまは?」

 

「金剛お姉さまは今! 準備をしております!!」

 

 その準備という物を教えてください、寒気がしました。

 

「あ、提督! こちらは私と同じく金剛型戦艦の二番艦、私の姉である比叡姉さまです」

 

「よろしくお願いしますね! 提督!」

 

 元気な声で耳も素晴らしい気分だよ比叡。

 元気があって大変よろしい。

 

「よろしくお願いします、比叡さん」

 

「いえ敬語は使わないでください提督! いつものように話していただけたらと思います! さん付けも必要ありません!」

 

「そ、そうか……んじゃこれからよろしくね」

 

「はい! よろしくお願いします! それで霧島、少し頼み事があるのですが……」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「今すぐそこを退いて提督とセッ〇〇させてください!!!」

 

 

 率直過ぎるだろォォォ!!!! 

 

 




割と素直な艦娘は好きだよ。
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