白露型可愛すぎ問題。
「そういえば提督、工廠には行きましたか?」
「こうしょう、ですか?」
「はい。建造や装備の開発、また私達の艤装のメンテナンスなどをしてくれる場所ですよ。ご案内致しますね」
あぁそういえば工廠にはまだ行ってなかったなぁ。
途中まで色々ありすぎて案内されてる事なんて忘れてたし。
にしても、笑顔満開の加賀さんがこんなにも可愛いとは……。所謂ギャップ萌えとやらだろうか。
普段はクールだった分の反動というか、何かしらが跳ね返って来たのかな。
「ここが工廠です」
いつも通り大きいなぁここは。
妖精さん達が小さな身体でせっせと働いてる姿は可愛いし、ありがたみしかないなぁ。
「あれ提督、どうしたんですか?」
「おぉ明石──ブフォ!!!!」
「「えぇ何かいきなり吐血したぁ!!?」」
危ない……思わず明石の名前を言ってしまう所だった……。
俺とした事が陽炎や不知火と同じ過ちを犯すところだったぜ……、
……まぁ記憶喪失のフリをしてる時点で過ちを犯すもクソも無いんだけどさ。
「ちょっとごめんなさい加賀さん、待っていただけますか?」
「え? あ、はい……大丈夫ですよ」
明石が俺の肩を掴んで、加賀さんに聞こえないように話し掛けてきた。
「……何があったんですか……!」
「記憶喪失のフリしてるのは分かるだろ?」
「あぁそうでしたね。ただ私達の反応を確かめたいだけの下水道の壁の汚いシミに匹敵する程のドブに棄てられてもおかしくないゲス野郎の考えですが」
「ねぇそこまで酷い事言わなくてもよくない?」
(長いなぁ……二人共……仲が良いのかしら)
「んで、思わず名前を呼びそうになったと……前例ありますよね?」
「はい……あります……」
「はぁ……分かりました。一時的に演技してあげます、元はと言えば提督と私が起こした事なので」
「にしたってあのスタンガン普通に痛かったぞ」
「大丈夫です。短時間で人が死なないようには設計してます」
「えっ、それってどうゆう──」「はーい! 終わりました! 時間かけてすいません加賀さん!」
(あら終わったみたいね、何を話してたのかしら。気になるわ)
「何を話してたのかしら?」
「色々ですよー! 色々!」
「そそそうですよ加賀さん! 駆逐艦の娘達の事について教えてもらっただけです!」
これで明石呼んだこと忘れてくれないかなー……。
「そ、そう……まぁそれはいいけど、さっき何故明石さんの名前を呼んだのかしら?」
まぁ無理ですよねー。
「そそそそそういえば本当に何故でしょー、何かふわっと出てきたんですよねー」
「うわぁ……」
明石、確かに引くほどの棒演技なのは見てわかるけどあからさまに反応しないで。
「成程……そういう事もあるんですね……っ!?」
「っ? どうしました加賀さん?」
「いや貴方の後ろに……何かいるんだけど……」
ん? 明石の後ろに?
「あぁこれですか……あ」
あっ、てこれ俺の記憶喪失にさせた原因の兜虫型非殺傷武器「あたしはカブトムシ」じゃん!!!
何で隠してないの明石ィィ!!?
「あははははー、何ですかこれー、いつの間に作ったんですかねー?」
お前も余っ程の棒演技だなオイ!!!
人のこと言えねーぞお前!!!
「これがまさか、提督を記憶喪失にさせた原因……! 明石……」
「いやいや私は知りませんよ!? 元はと言えばこの男が──」「那っ珂ちゃんだよー☆」
(((What?)))
「カブトムシだと思ったー? ざんね~ん、正解はカブトムシ型の着ぐるみを被った那珂ちゃんでした~!!」
「……」
(……)
……。
「え、ちょっと待って。何か悪い事した? 待って、待って、無言で近付かないで? 分かった、分かったから! 謝ります、ごめんなさい!」
「那珂!!」
「ひゃい!!」
「……よくやった……!」
「何で私褒められたの!!?」
「那珂さん……」
「は、はい……明石さん……?」
「何いっちょ前に私を驚かそうとしてるんですか、ぶっ〇しますよ」
「何で!!? 騙しただけで何でそんな事言われるの私!!!!?」
「那珂……」
「は……い……?」
「貴方が提督の記憶を失わせたのね……!! よくやっ、許せないわ!!!!」
「今なんて言った加賀さん!!?」
(思わず口に出てしまったわ……気を取り直さないと)
「失礼、少し気が動転してたわ。那珂、貴方では無いのね?」
「あったりまえだよ~? ったく~、これだから年上の空母は──」「提督、今すぐ海に沈めていいかしら」
加賀さん、那珂ちゃんにヘッドロックかけるのはやめてあげてぇ!!!!
「加賀さん、それはやめてほしいかなー……なんて……」
「……分かりました」
「解体ですね、こんな小娘は」
「えぇ!? 何で!? 悪かったって! ごめんなさい!! 那珂ちゃん、可愛くてもしませんから!!」
「明石さん……それはやめた方がいいんじゃないかと……(解体はやめろ!! 解体は!!)」
「(ここぞとばかりに演技してますね……この男は……)じゃあ分かりました、慈悲を与えます」
「え!? ほんと!?」
「【①解体する】
【②解体する】
【③解体する】の中から選んでください」
全部解体だけじゃねーか!!! 慈悲もクソも無ぇなオイ!!
「あ……えーと……四番で!」
ほらもう現実逃避しちゃったじゃん!!
目が虚ろだよ、光が無いよ!!
お先真っ暗だよ!!
「四番ですね。ではカブトムシで」
どういう事!!?
「まずこうやって」
「へ? グフッ──」
殺人現場ーーーッ!!!
警察と憲兵を呼べーッ!!
事件は鎮守府内で起こりましたーー!!!
「あ、あの……明石……?」
「ん、大丈夫ですよ。死にはしません」
「お前の言葉が信用出来ないんだけど!!!」
「まぁまぁ見ててください。この那珂さんを近代化改修装置に入れて、っと」
「あぁ那珂ちゃんが!!!」
(近代化改修装置に入れて何をするのかしら……)
「一回こねくり回します」
「こねくり回す!!? 一体何やってんのこれ!!!」
「次に特製オーブンで膨らませます」
(オーブン!!? 初めて聞いたわよそんな物!!!)
「那珂ちゃんが!! 那珂ちゃんがぁぁ!!」
「焼き上がったら一回冷やして、もう一回オーブンで焼き上げます」
「那珂ちゃぁぁぁぁぁぁぁんんんん!!!!!」
「はい、出来ました……とても素行が良くなった那珂ちゃんです」
「川内型軽巡洋艦の三番艦、那珂です。改めてよろしくお願いします提督」
「いや何があった──!!!?」
(いや何があった──!!!?)
「那珂ちゃんおかしくなってない!? めちゃくちゃ真面目だけど!」
「私はいつでも真面目ですよ、貴方達と違って」
「あぁでも一言余計な性格は変わってなかった!!」
真面目な那珂ちゃんは……何か違う!
何か違うんだ! 何かこう……元気溢れるようなパワーを持ったようなー……──
「──あぁ、バカってことッブフェ!!!」
(いやまぁ……殴られて当然よね……)
「はぁ……明石、これ大丈夫なのかしら?」
「大丈夫じゃないんですかー? 素行も良ければ余計な性格も直りますよ」
「一言余計だなんてそんな……そんな訳無いじゃないですか。私はこれでも貴方達と違って真面目にしてるんですよ!?」
「それが一言余計なんだよ!!!」
「それが一言余計なのよ!!!」
「明石!! 流石に戻してくれ!! カブトムシの着ぐるみ着たまま真面目な那珂はシュール過ぎてツッコミきれない!!」
「えー……」
あからさまに嫌な反応するなお前!!!
「はぁ……じゃあ分かりましたよ。ほれ」
那珂ちゃんがまた近代化改修装置に入れられたな。
よし、これで戻っただろう。
「んじゃこれでどうですか?」
「何かカブトムシになってるーーーッ!!!?」
「何かカブトムシになってるーーーッ!!!?」
「もーう那珂じゃないじゃん! カブトムシじゃん!! 虫だよ!! 人から虫になっちゃったよ!!! 人類退化だよ!!」
「名前は那珂ブトムシです」
「上手くないわァ!!!!」
「その話は聞かせてもらいました」
(あれは……大淀さん……っていうかその話ってなに!!?)
「明石さんが提督とカブトムシのBL本を作ろうとしていた話は聞き込み済みです」
「いやホントにどんな話!!!?」
「って言う前にも何故那珂さんさカブトムシに?」
何でこのカブトムシが那珂ちゃんだって分かるんだ大淀さんは……。
「私が近代化改修で変えました」
「そうですか。さて先程の話ですが──」「いやスルーしないで!!? 割と重要な話だよこれ!!!」
「黙りなさい!! 今は提督とカブトムシのBL本の方が重要です!!」
「アンタの着眼点どうなってんだよ!!!」
「アンタの着眼点どうなってんのよ!!!」
大淀さんまで変わっちまってる……。
どうなってるんだこれは……。
頑張れ提督。