「君、大丈夫だったかい!?」
「ええ、まぁ……死にませんし。」
「取りあえず、病院に行って検査してもらいます!」
刑事さんの気迫に乗せられたまま、パトカーの中に乗る。
へー、パトカーの中って意外と綺麗なんだなー。なんとなく後ろにあんパンがわんさかと詰め込んでいるのかと思ってた。
「そういえば、君の名前は?聞いていなかったけど。」
「ああ、藤多 葉秋。……一応、八百万の家に引き取られたけど……。そういえば、百は?」
「百?あぁ、サー・ナイトアイが保護していた子のことか。彼女なら今病院で傷の手当てをしてもらってるよ。」
ついでに、他のことも聞いておこ。
「あんたの名前は?」
「僕かい?僕は塚内、階級は警部補かな。」
「あの子は?」
「あの子は骨に少し亀裂があったけど元気だよ。けど、面会謝絶中だから、君は会えないよ。」
「あの子に手を出すなよ?」
「これだけの事を引き起こしたんだ、それなりの覚悟があるとは思うけど。」
なるほど、この人は『認識の鳥』が自分の意思で事件を引き起こしたと思っているのか。
……仕方ない、少し説明するか。
「あの子は、なにもしていない。やったのは個性だ。」
「……個性を操るのは人間だ。」
「生憎、あれは普通の個性じゃないからその常識は通じない。てか、あれは暴走状態だったからなんだけどな。」
「暴走?」
「何かの拍子で二つ目の個性が発動して認識災害が引き起こされたんだよ。」
「に、認識災害?それに、二つ目の個性?」
「要するに、あの子の二つ目の個性は際限なく広まる災害そのものなんだよ、理解できたか?」
「なら、一つ目の個性は?」
「あの子の姿を見れば分かるだろ、戯け。」
「ふーむ……つまり、君はあの子の意思と関係なく事件が引き起こされた、と見ているんだね?」
「あぁ。というか、それ以外に何があるんだ?」
これくらい説明すれば、問題ないかな。
「君に聞きたいんだけどさ……彼女の個性、何か知っているのかい?」
「知っている。けど、言えない。」
「認識災害が影響しているのかい?」
「あぁ。この個性は『知る』ことがトリガーとしているからな。」
「なら、何で君は生きているんだい?」
「俺が不死身だから。」
「……取りあえず、あの子は私たち警察の管理下におかれると思ったほうがいいと思うよ。」
「あんた、さっきの説明で分かっていなかったのか?……あの子の個性のトリガーは『知る』こと。逆に言えばさ……能無しどもでは防ぎようがないんだよ。」
『警部補、大変です!』
お、無線が入ってきた。
声からするにかなり切羽詰まっているように聞こえ
『鳥が……赤い赤い鳥が……!』
「ふん!」
刑事さんが声を聞く寸前に無線機を剣で粉砕する。
危なかった……!赤い赤い鳥なんて聞けば一発で殺られていたぞ……!
「は、葉秋くん!?いきなりどうしたんだい!?」
「また暴走した。今のを聞けば確実に死んでたぞ。」
「……!さっきまで安静にしていたのに一体なぜ……!」
「おい、あの子は四歳だぞ?不安になって個性が精神状態によって変化することくらい予想できていなかったのか?」
「で、出来ていたけど……。」
「おおよそ、あの個性の起動条件は……『不安』、かな。不安を和らげないとまた暴走するぞ?それと、警察上層部に伝えておけ。……あの子を管理しようものなら……
「……!」
「取りあえず、もっと加速させろ。」
「わ、分かった!」
俺は刑事さんの背中を加減して蹴り飛ばしながら加速を要求する。
取りあえず早く行かないと……!被害が大きくなる前に……!