【葉秋side】
「………さて、どう動こうか。」
俺は最上階に置いた核爆弾(偽物)の前で胡座をかきながら目をつぶって音と空気の動きを捉える。
……屋外ならやってもあまり効果はないが、ここは屋内、相手の位置はくっきりと分かる。
「……成る程な。」
空気の流れと走る音から敵の位置を正確に割り出し、立ち上がる。
まずは変態ぶどうから狩りに行こうか。
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【八百万side】
「はあっ……はあっ……。」
私は柱の影に隠れながら核爆弾を探す。
今回、葉秋さんと闘うために即興ではあります。
それは、私が葉秋さんを部屋のなかに誘い込み、その隙に峰田さんに壁面をよじ登ってもらい、核爆弾を確保すると言うもの。
葉秋さんは音の速度にも匹敵する速さを出すことは出来ます。けど、それは直線距離での話です。部屋のようなそこまで広さのない場所に誘い込んでしまえば直線なら相手を一秒とかからずに瞬殺できてしまう葉秋さんを……私に縫い付けることが出来ます。
これなら……葉秋さんに勝つ事が出来るかも―――
ドコオオオォォォォォン!!
「な、何なのですか!?」
突如、外から何が崩落するような音が鳴り響く。
まさか……仕掛けてきたのですか!?
「いってええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「えっ……?」
外から聞こえてくる峰田さんの泣き声を聞いて窓から身を乗り出して下を見る。
下には……瓦礫に挟まれた峰田さんがいました。
「いっ、一刻も速く助けないと!」
私は直ぐにロープを作り出して近くの柱に括り、窓から慎重に降りていく。
挟まっているのは腰の部分。そこを抜けば恐らく自力で抜け出せ――――
「えっ?」
突如、私の命綱であったロープから力を感じなくなり、空中に落ちる。
作り出して直ぐにこんなことは起きないです……。だって、造れるものは基本的に……新品ですから。
「がっ!?」
「………………………。」
瓦礫の上に落ちた私を……葉秋さんは窓から冷徹な眼で見下ろし……練習終了のお知らせが鳴った瞬間……私は、意識を手放した。
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【葉秋side】
「よし、これでおしまいだな。」
俺は意識を失った百を見て下に降りる。
いやー……ここまであっさりと誘導されて助かったよ。
俺がやっとことは単純。
まず、峰田がブドウを壁にくっ付ける僅かな音を探り、来そうだなと思う位置で壁を破壊、足場と手のつっかえが失くなった峰田はあっさりと落ちていく。この際、峰田が張り付いている場所が走っている百に近い位置でなければならない。
次に、音を出さずに静かに降りていき、峰田を助けようとしている百のロープを切り落として地面に落下させる。注意点としてあげるのなら……ロープを切るタイミングを間違えると死ぬ可能性があるから注意することかな。
峰田?あいつは多分生きてるだろ。見た感じ、近くの瓦礫にくっついて衝撃を殺してたし。
「……さて、回収しますか。」
「いてえええええじゃねぇか藤多ああああああああああ!」
「五月蝿い。」
俺は壁を這いながら地面に降り、二人を回収する。その際、五月蝿く泣きわめく峰田の首筋に手刀を打ち込んで気絶させる。
全く……うっさいな……。中学時代でもこんな軟弱はいなかったぞ?
まぁ、さっさと医務室に運んで講評を聞かないとな。