「えー、では、今日は
翌日、俺たちはバスに乗って移動していた。
レスキュー訓練か……多分、昨日使った場所ではないだろうな。
「おい、藤多ぁ……!そこ代われよ……!」
「断じて断る。」
俺は恨めしそうに話しかけてくる峰田の言葉を首を横に振って拒否する。
俺の右側には葉隠が、左側には百がいるからだろう。
しかも、どっちも俺を挟んで睨みあっているし……どゆこと?
「そういえば、百は昨日のケガは問題ないのか?」
「あ、はい!リカバリーガールさんによって癒してもらいましたし。」
リカバリーガール、確か珍しい回復系の個性で治癒能力を高めることで傷を癒すヒーローだったな。
俺はまだ直接会話することは無いから分からないが……一応、百を治してもらった礼を言っておかないといけないかもな。
「そうだ!藤多くんって誰か付き合っている人っているの?」
「……いないな。と言うか、興味がないって言うのが正解かな?」
「(良かったぁ……!)」
「?」
何が良かったのか、なんて聞いたら野暮ってもんだろうな。
「羨ましいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「……騒ぐな。」
「はい……。」
==========
「はじめまして、僕は13号と言います。」
俺らは『USJ』……『嘘の災害や事故ルーム』と言うなんとも当て字っぽいで13号先生が話し始める。
何でも、様々な事故や災害を想定した訓練が出来る施設らしい。
「では、移動しますか。」
さーて、どんな訓練があるのや―――!
「ッ!」
「おっと……!」
俺は背後から現れた殺気を感じとり、ナイフを取り出して投擲するが、そのナイフはいとも容易く弾かれる。
……完全な奇襲だった筈だが……かなりの強者だな。
「やぁ!こんにちはヒーローの卵?とヒーローたち!」
茶色っぽい髪に小さな体、頭には熊の耳がついていて、まるでテディベアのような幼い少女が不釣り合いな鋏を振り回していた。
テディベア、ねぇ……。となると……!
「おい、誰だよ!?」
「ボク?ボクは
俺の行動に気がついた上鳴が声をあげるが、無邪気に笑いながら答える。
きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!何で、何でビルダーベアがいるの?何で、何で!?アイェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!?
「それと、僕はヴィラン何て呼ばれてるよ?」
「ヴ、ヴィラン!?」
「隙あり、ですよ!」
しまっ……!この声は『人喰い闇』の……!
==========
「こ、ここは……?」
「なんだこりゃ……!」
「……一体、何が……。」
葉隠、俺、轟が飛ばされたと思っている場所で……絶句した。
そこにあったのは
拷問のように身体中傷つけられた人、首だけがなくなっている人、首をパッチワークで無理やり繋げられた人……死因は大半が出血多量だが、その異常性は十分だった。
パッチワーク……恐らく、『ビルダーベア』の個性である『パッチワークのハートがあるクマ』の特性だろうな。となると、ここで来るのは……!
「やっほー!じゃあ、死んでね!」
「ッ!危ねぇ!」
「ふぇっ!?」
俺は狙われた葉隠の腕を掴んで引き寄せて裁断しようと開かれた鋏の付け根に大剣を挟み込んで防ぐ。
こいつ……!この気配は……!
―――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせころせコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセコロセ!!
まずい!
「轟!葉隠を連れて逃げろ!」
「ッ!一体、何を……!」
「いいから逃げろ!」
じゃないと……
「分かった……!必ず助けを呼ぶからな……!」
「え、ちょ、どういうこと――!?」
轟と葉隠が俺と『ビルダーベア』との戦闘範囲を逃げるのを第六感で察知しながら、俺は……
俺は、どこかで分かっていたんだ。
俺の個性に含まれた存在……『不死身の爬虫類』も『アベル』も……なんやかんや言って使っていた。けど、そのデメリットは?個性は基本的に何かしらのデメリットがある筈なのに、それが見付からない。では、俺の個性のデメリットは?簡単な事だ。そう、本当に簡単な事だった。それだから……その可能性を排除しようとしていたのではないか?
「やっばっ!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!」
俺は獣の雄叫びのような言葉を発言しながら力業で鋏ごと『ビルダーベア』を後方に吹き飛ばす。
単純なことだ。俺の個性は『特定条件下での暴走』。恐らく、『不死身の爬虫類』と『アベル』の二人の人間に対する激情が表に出るのだろう。
実際、俺は見ているけど俺自身が身体の操作権限が無いしな。
因みに、暴走の条件は恐らく『ビルダーベア』の鋏だ。
この鋏からは俺が最も嫌う『何か』の匂いがしてたまらない。直ぐに壊してしまいたいほどに。
「これ……完全に詰んだ……?」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!!!」
獣が、吠えた。