「■■■■■■■■■■■■■!」
両手で持った大剣と『ビルダーベア』が持つ鋏がぶつかりあい、辺り一体に凄まじい衝撃波を撒き散らす。
いやー、こうみると、俺はまだまだ肉体を十全に扱えていないことがよくわかるなー。
「そんな事よりも早く手伝え!」
「こいつをぶっ殺さないと気がすまねぇ!!」
「へいへい。」
前の方で身体を動かす爬虫類と攻撃を繰り出す人形に言われて俺も立ち上がる。
こいつらは『不死身の爬虫類』と『アベル』。やはり、と言うべきか俺の個性の中にはこの二人の人格があるらしい。
「右の足下に死体がある。」
「蹴り飛ばせ!」
「あいよ!」
命令をした瞬間、クソトカゲは死体を蹴りあげ、アベルが死体ごとキチグマを突き刺そうとする。
にしても……なんでこいつらは俺の指示に従うんだ?こいつら、生きとし生けるものを嫌っている筈だが?
「お前は人間じゃないからな。見た目は人間に近いけど中身は俺に近い。……それでも殺したくてうずうずしているけど。」
「まぁ、この体は君という人格が消えた瞬間、消滅するらしい。だから生きてもらわないと。」
さいですか。
「はぁっ!」
「よっとぉ!」
突き出される鋏を剣で真上に弾き飛ばし、そのまま上段から振り下ろされ、その剣が『ビルダーベア』の体に当たり、血を撒き散らしながら後方に飛んでいく。
よし、一応だけどヒットした。
「くっ……!やっぱり、強いね……!」
「武器を錬成、そして投擲しろ!」
「了解!」
「■■■■■■■■■■■!」
体の傷をパッチワークで縫合している内にクソトカゲが一瞬で様々な武器を錬成し、それを雄叫びと共に『アベル』が投げつける。
縫合させている時間はないぜ!
「くっ……!」
「大丈夫ですか!?」
万事休すだった『ビルダーベア』の前に立体的な黒い影が出現し、剣を消失させる。
……こいつは……。
「おい、肉体の権限を返せ。」
「……分かった。」
「ちっ……!ちゃんと砕いとけよ。」
俺は二人から了承をもらって暴走状態を解除し、落ちてきた鋏を『覇源』の応用で粉砕する。
さて……こいつが出てきたとなると、かなり厄介になりそうだ。
「『ビルダーベア』様はアジトに戻っておいて下さい。『カイン』様のご命令です。ここからは、私が。」
「ちぇー、分かったよ。」
『ビルダーベア』は少し不機嫌になりながら黒霧の中に入っていく。
さて、ここに残ったのは俺と『人喰い闇』だけか。
「お前の個性は通じないぞ。」
「ええ。ですが―――!」
黒霧は個性を発動させ、人形の異形を召還する。
……なんだありゃ。人をベースにしているようだが……。生命的なエネルギーが多すぎる。まるで、パッチワークで無理矢理繋ぎ止めたような、そんな歪な生物だ。
「がぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁ!」
「……遅い!」
突っ込んでくる怪物に向けて音速で剣を振るい、身体を切り裂く。
音速で動かせば、真空の刃を造り上げる事ぐらいは出来て当然だろ?
「がぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁ!」
「っ!ちっ!」
傷ついた身体に向けて更に真空の刃を当てるが一向に止まらない。
後ろに下が―――!
「『覇源』―――『曇天』!」
る訳ねぇだろ!
身体を捻り、音速のエネルギーを剣に伝えて地面に打ち付けた瞬間、爆発したような衝撃が辺りに飛び散る。
これで――!
「甘いですよ!」
「きぃええええええええええええええええええ!」
羽の生えた怪物の背中に黒霧が飛び乗り、俺に黒い靄を伸ばしてきたため、剣を振るう。
「がっ!?」
振るった剣は腕ごと消失し、苦悶の表情を浮かばせる。
消え……!まさか、転移か!腕だけを転移させたのかよ!?
「甘いですよ……!私だって、あの敗北から学んだのですから!」
「ちっ……!」
腕を修復させ、拳を構える。
相手は高い機動力を持っていやがる上、俺への対策も万全……
「来いよ、『人喰い闇』……!化け物同士、その力を使いあおう。」
「く、ふふふふっ!いいでしょう、受けてやるよ!」