「……はい?」
『ゼノフォビア』の言葉につい唖然としてしまう。
俺が……ヴィラン連合に入れ……だと?
「ふざけているのか、お前は。」
「ふざけている訳ではない。私はとある人物から要請されているだけに過ぎないのだから。」
「……バックにいるのは誰だ。ヴィラン連合やお前らのような凶悪犯を従わせる程の力を持つ奴なんて限られているはずだ。」
「さぁね。それに、私はヴィラン連合に入っているのはとある存在を探すため。」
互いに警戒を解かず、互いの腹の内の探りあう。
こいつは……敵対させない方が得策だろう。こいつの個性が『ゼノフォビア』である以上、一定以下の光の室内だったら何処にでも出現できる特性がある。となれば、防御不可能だろう。
「何の目的でヴィラン連合に入っている。」
「……逆に聞こう。何故、貴様はヒーローに憧れている。貴様の本質は『悪意』。人類を憎悪する悪意その物だ。それなのに、何故ヒーローになろうとしている。」
「愚問だな。俺は緋鳥を守る為にヒーローになろうとしているだけだ。」
「質問の答えになっていない。」
「……本当に簡単な話さ。俺は藤多葉秋だ。クソトカゲやアベルとは違う。それだけの話だ。」
「成る程な。私としても緋鳥と敵対すればメリットよりもデメリットの方が大きい。あれは一種の災害その物だ。」
……やはり、緋鳥の個性を知っているのか。俺はそもそも死なないから『認識の鳥』が食うことが出来ないが……恐らく、『認識の鳥』は認識系……『ゼノフォビア』のような人の形をした『認識』には干渉出来ないのだろう。
「それで、俺の質問に答えて貰おうか。」
「……今回の事件、その黒幕を操っている別の組織のトップがいる。私はそいつを倒すためにヴィラン連合に協力しているだけに過ぎない。」
「成る程ねぇ……。けど、何故そいつを追っている。」
「私は、そいつの仲間の一人……『僧正』という老人に家族を皆殺しにされた。その復讐の為に生きている。」
こいつは……『ゼノフォビア』は家族を殺した『僧正』と呼ばれるヴィランを殺す為にそのヴィランが所属しているであろう組織のトップを殺そうとしているのか。
ヴィランを憎悪しながらヴィランに堕ちた少女……それが『ゼノフォビア』の正体か。
「けど、その組織について何か知っているのか?」
「……いや、全くと言うほど全容が分からない。ただ、そのトップが私たちと同系統の個性持ちを集めている事が分かっている。ブレインの『カイン』に誘いの手紙が来たからそこが分かっている。」
『ゼノフォビア』がお手上げのジェスチャーをする。
……SCP系統の個性持ちを集めている……?つまり、そのトップもSCP系統の個性持ちか。多分、『タイムマシンリボルバー』も集められたSCP系統の個性持ちだろうな。
それに、それを把握するためにはその情報を持った諜報員が必要になる。……どこかにいるのか、SCP系統の個性持ちの情報を流出させている存在が。
「『カイン』はどう返答している。」
「『興味ない』。それだけよ。」
成る程な。忌々しい事だが、あの『カイン』がそっちにつかなくて助かる。
「連合には入らない。だが、その組織については情報共有する。これが最終的なまとめかな。」
「……まぁ、そうなるかな。それでは、私はここで失礼する。」
礼をした『ゼノフォビア』は影の中に沈んでいく。
さて……情報の整理でもしようかな……。
ピロリン♪
「ん……?誰かからメールでも来たのかな?」
俺はポケットにしまっていたスマホの電源をつける。
『葉秋君!午後から町に遊びに行かない?峰田君に上鳴君、切島君、耳郎ちゃん、芦戸ちゃんも呼んでいるから暇だったら来てみて!場所は――――』
……葉隠からのメールか。……これから情報整理でもしようかと思っていたが……気が変わった。ちょっと出かけよう。