「はぁ……。」
俺は憂鬱そうにため息をつきながらアホみたいにデカイ門の前に立つ。
これ、何処にインターホンがあるのか分からないんだよな……いや、それっぽいものはあるけど触れたら粉砕しそうだし……。
「あれ?葉秋さん?」
「久しぶり、八百万。」
ちょうど幼稚園から戻ってきた八百万と合流する。
……こいつの家に引き取られるなんて夢にも思っていなかったな……。
「その……、ご両親についてはお悔やみします。」
「あー、その辺は取りあえずいいよ。……一応、お前の家に引き取られることになるなんて予想出来なかったし。」
「では、中に入りましょう!」
そう言って八百万……いや、百に連れて行かれて家の中に入る。
うお……外から見たときにも思ったけど、やっぱり豪邸だな。圧倒されるよ。
けど、前の爆発事件の時に若干トラウマになったのか……大きな建物があまり好きではなくなったんだよな……。
結果的に、百に対する嫌悪感は自然と薄れているようだけど。
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「そう言えば、一つお聞きしたいのですが。」
「……何だ?」
俺に宛がわれた無駄に豪華な部屋で右手で据え置き型のパソコンを運び、左手でクローゼットを運びこんでいる時に、百は話しかけてきた。
全く、一体なんなんだ?
「葉秋さんの個性、一体なんですか?」
「……蜥蜴だけど。」
「ですが、貴方のその筋力は一体なんですか?」
…………………あっ。
しまった。やらかした。
このクソトカゲ、再生能力も凄まじいけど身体能力も凄かったこと、すっかり忘れてた……!
「あー、俺の個性についてはお前の両親にも嘘をつく予定だったけど……絶対に言うなよ?」
「えっ……?わ、分かりました。」
こいつ、本当に歳の割に頭が回るな。
それなりに助かるけど。
「俺の個性は『クソトカゲ』って言うのが名前だ。」
「……その名前、酷すぎませんか?ただの罵倒なのではないのでしょうか?」
解せぬ。
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「……す、凄い個性ですね……。」
「凄さの反面、巧く力を加減しないといけないのが難点だけど。」
俺と百は別の場所に預けられた俺の道具を取りに車に乗って走っている。
車、とは言ったものの断じて普通の車ではない。高級車である。
さすが、お金持ち。
「けど、それならヒーローにもなれるのではないでしょうか?」
「ヒーローか……俺には向かないかな。」
「……???」
前の爆発事件で俺の心が少し変わったのか、クソトカゲの精神が入り込んだのか分からないけど、狂暴性が増した気がする。
そんなのがヒーローになってはならないと思うけど。
「ん……?ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「っ!?百、危ない!」
「えっ!?」
突如、運転手のおっさんのハンドリングが失敗し、電柱にぶつかる。
俺は百の腹を抱えて扉を尾で吹き飛ばして百を庇いながら転がる。
くそ、一体なんなんだ!?
「に、にげ、逃げて……!た、たす、助けて……!」
道路の中心で泣きながら歩く少女に俺は目を向ける。
赤い髪をボサボサにし、簡素な手術服のような服には血痕が残っていて、それが今も広がり続けている。また、身体の至るところから血が流れ、地面に血痕を残していく。
少女の腕は赤い翼で、まるでハーピーのようで、辺りには文字の羅列が並び、まるで赤い赤い
(あっぶねぇ!!)
俺は一気に思考をシャットダウンし、百の目を隠しながら全速力で走り去る。
おいおい……!俺のようなKeterクラスがこっちにいるのはヤバいけどさ……あんなのもいるのかよ……!
「えっ!?えっ!?葉秋さん、一体何を!?」
「いいから黙ってろ!それと手をどけようとするな!あれを目にしたら死ぬぞ!」
「えっ!?」
手をどけようとしている百を脅して俺は全速力ではしる。
あれは……間違いない。日本生まれのSCPであり、クソトカゲの収容違反よりも遥かに大きな収容違反を侵し、それ故に最悪の収容違反と言われたSCP……!あまりにも被害が大きすぎてKeterの枠を越えたてクラスすら与えられていないSCP……!
SCP444……『認識の鳥』だ……!