「はぁーーー、はぁーーー………ここまでこれば問題ないだろう……。」
「は、葉秋さん……いきなりなんですか?」
警官がバリケードを張っている場所まで全速力で逃げ切り、戸惑う百をおろす。
相手は認識の鳥、正直に言って
さっき逃げている時に何故か幻覚・幻聴が聞こえなかった。恐らく、効きにくい相手とかがいるか、もしくは……
いや、この話は仮定だ。それに、こんな可能性は考えたくない。
けど、あの少女はその仮定を実証してしまっているんだよな……。
「先ほど、少女の泣き声が聞こえていたのですが……。」
なるほど、まだそこまで認識を食べていなかったか……。なら、他の奴等が相手にしなければ問題ないと思うけど……。
「分からない。けど、恐らく何かしらの原因で個性が暴走したとしか思えない……。」
「君たち、大丈夫かい!?」
「邪魔。」
「ごふぉ!?」
考え込んでいるときに割り込んできた金髪の筋肉ムキムキのマッチョマンの変態を殴り飛ばして再び考え込む。
恐らく、あの見た目は認識の鳥ではなく、SCP020
『翼人、またはつばさびと』だろう。認識の鳥はあの文字の羅列のほうだろうし……となると、物理的な攻撃は聞くけど……。
助けを求めている奴を、見過ごせないしなー……どうしよう。
「え、ちょっ、葉秋さん!?さっき、オールマイトを殴ってましたよ!?」
「いや、考え事をしている人に話しかけてくる奴が悪い。てか、今回はオールマイトには無理だから。」
「それは、どういうことかな。」
オールマイトが起き上がり、スーツが良く似合う若い男がオールマイトの肩を支える。
えーと、確かサイドキックの……『サー・ナイトアイ』だったか。予知が出来るブレイン系のヒーローの。
てか、今回の事件にはいらないんだよなー。あの子は何としてでも助けたいし。
「いや、だって『認識の鳥』は認識を食べることで強くなるから普通に突っ込んでいっても幻覚やら幻聴を見させられたりして自滅するか狂死するかのどれかだよ?パワー系のヒーローはいらないしブレイン系は更にいらない。てか、今はまだいいけど最悪の場合、お前たちはこの時点で死んでる。」
「君は、ヴィランについて知っているのか?」
「はあ?んな訳ないだろ、サー・ナイトアイ。単純に起こった事象から読み取っただけだ。」
若干イラつきが抑えられていないサー・ナイトアイはずれた眼鏡をもとに戻す。
さて、助けに行こうかな……。
「あ、オールマイト。」
「な、何かな、葉秋君。」
「バリケード内に誰も入れないようにしてくれ。……あんたが追っている男と見分けがつかない。」
「なっ!?一体それをどこで!?」
「お、図星か。」
「しまっ……!」
やっぱり、誰か追っているのか。
となると、そいつが『認識の鳥』に干渉する可能性も出てきた。となると、厄介を通り越して面倒だな。
「取りあえず、百を保護しておいてくれ。」
「き、君はどこにいくのかね!?」
「はぁ?分かんないの?馬鹿じゃねぇの、オールマイト、サー・ナイトアイ。―――――人助け、だよ。」
俺はバリケードを蹴り飛ばして再び『認識の鳥』に向かって走っていく。
絶対に助けてやるよ……、このクソトカゲがな。
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「……すごい、少年だな。」
「はい、オールマイト。」
私はあの少年の行き去った道を見て心から恐ろしいものを感じた。
前に『人食い闇』を名乗る少年に一切動じることなく対応する胆力、ヒーローだろうと真実を告げる気質……そして、誰かを助けようとする心の優しさ。
彼は、ヒーローになる素質がある、そう思う。
「百ちゃん、でいいのかな。」
「は、はい!」
私の笑顔を見て百という女の子は悲しそうな顔から少し明るくなった。
「取りあえず、親御さんがくるまで私が見ましょう。……オールマイト、彼の後を追って下さい。」
「……!分かった。」
私はナイトアイに百ちゃんを預けて彼の後を追う。
彼は、私にだけ教えてくれた。
SCPと呼ばれる存在を。
そして、それは個性として存在していることを。
なら、あの男も来ているかもしれない。
―――――私の師匠志村菜奈を殺したあの男、