ヴィットーリオ達は、バッターが来ることを予言で知っていたものの……?
ロマリアでの亡霊騒動後、ヴィットーリオは、即座にこれ以上の被害が世界中に蔓延するのを防ぐため、各国、そしてこれまでの歴史で敵対し続けたエルフとも連携して、バッターを支援し、世界を救済して貰うことを提唱した。
トリステイン、ゲルマニアは、すぐにその言葉に反応を返したが、問題は…ガリアだ。
無能王と呼ばれているジョゼブは、ロマリアからの手紙に対し、無言を貫いた。
ロマリアの調査では、ガリアも亡霊による被害を被っている。なので、迅速に亡霊の問題を解消しなければガリアが滅びてしまう。
ヴィットーリオは、バッターが来たということは、すでに虚無の担い手達が世界に現れたとみており、自分自身も含め、ガリアにも虚無の担い手がいると見ている。
「バッター殿。あなたが行う世界の浄化とは、いかなる形で?」
ヴィットーリオがロマリアの要人達を集めた会議の場でバッターに聞いた。
バッターは、少し間を置いて。
「…虚無の担い手を揃えること。そうすることで、大いなる意思というモノが浮上すると、聞いている。」
「おおいなるいし?」
「俺も詳細は知らない。だが、それを破壊することが世界の浄化に繋がる。」
「なるほど…。」
ヴィットーリオは、少し考えるような仕草をした。
「やはり…、ジョゼブ王を玉座から降ろすより他ないようですね。」
「どういうことだ?」
「我々の調査が正しければ…、ガリアの虚無の担い手は、ジョゼブ王であると考えられます。」
「それを玉座から引きずり下ろすことが、虚無を揃えることになると?」
「ええ。少々強引ですが…、世界のためです。ジョゼブ王には、死んでもらうしかありません。」
「死を…?」
「あなたはご存じありませんか? 虚無の力は、担い手の死で次の担い手に移るのですよ。その場合、近親者がその対象となります。」
「移る…か。」
ならば、ルイズが死んだとしても他の人間に移るということだ。
しかし、虚無の担い手となった者を探し出すのは面倒だろう。だからこそ、今いる担い手を死なさず揃える必要があるのだが……、どうやらジョゼブという人間はそうはいかないようだ。
「つまり…従わなければ殺すということか?」
「……世界の救済のため、やむを得ないことです。」
ようするに例え虚無の担い手であろうとも、従わず逆らえば殺して次の担い手を利用するということだ。
このヴィットーリオという男……、手段を選ばないようだ。
「仮の話だ…。」
「なんですか?」
「もし俺が世界を救済しないと断ったらどうしていた?」
「それはあり得ません。」
「なぜ?」
「あなたは、救済者。そのためだけに存在する。違いますか?」
「…違わない。」
「そういうことです。」
ヴィットーリオは、そう言って微笑んだ。
バッターは、そんなヴィットーリオから、狂気じみた信仰…のようなモノを感じた。
彼は、信じているのだ。盲目的に。ただただ、世界のためと。それを信じている。そのためならいかなる犠牲も必要であるし、自分が悪の立場になることも辞さない構えのようだ。
だからこそ、バッターは、少し…思う。
バッターがやろうとしていることを…、バッターがもたらす救済がいかなるモノかを知った時…、彼はどうなるのかと。
この場にいるヴィットーリオに従っている者達もだ。
真実を語るべきか?
はい
いいえ ←
バッターは、開きかけた口を閉じた。
『聞かれなかったから』
謎の声がそう言った。
なるほどっと、バッターは納得した。
聞かれなかった。だから答える必要も無いのだと。
なにせアルビオンの滅亡の理由だって彼らは、深くは聞いてこなかった。それが答えだ。
まあ、聞いてきたら聞いてきた時だろう。その時は、謎の越えに判断を委ねるだけだ。
「バッター殿?」
「ん…、なんだ?」
「いえ…、なにやら考え事でもさていたのですか?」
「そうだな。」
「では、先ほどの話は?」
「聞いてないな。」
「分かりました。では、再度お願いします。ジョゼブ王を倒すため、まず彼の使い魔であるミュズニトニルンの相手をしてもらいたいのです。」
「ミュズニトニルン?」
「虚無の使い魔のひとりです。あらゆる道具を使いこなしたとされる伝説があるのです。こちらの情報では、ジョゼブ王は、エルフと結託し、そしてその魔法技術を取り入れたゴーレムを制作している可能性があります。ミュズニトニルンならば、それぐらい容易いのです。」
「ほう? つまりそのゴーレムを破壊しろということか。」
「いえ、すべてを破壊しろと言うわけではありません。あくまでも牽制。我々がジョゼブ王と相対するまでの時間を稼いでもらいたいのです。」
「…俺が直接ジョゼブを浄化しても構わないのだぞ?」
「しかし、それで万が一あなたに倒れられてはとても困ります。ですから、ジョゼブ王に関しては我々に…。」
「…分かった。」
「ありがとうございます。」
バッターの承諾を得ると、ヴィットーリオは深く頭を下げた。
バッターは、そんな風にするヴィットーリオの様を見おろす。
やはり、この男……、バッターがもたらす浄化の意味を知らないようだ。アルビオンの最後の本当の原因も……。
それを好都合とるべきか……、はたまた無知を哀れむべきか……。
バッターは、黙ったまま、ヴィットーリオ達の成り行きを見守った。
バッターなりに、これから浄化され滅びる世界に思うことはある。っということにしました。