仮題名『ルイズが浄化する者を召喚しました』   作:蜜柑ブタ

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久しぶりの更新。


ミュズニトニルンとの対決。


SS10  浄化する者と、神の頭脳

 

 バッターは、ジョゼブ王対策については、すべてヴィットーリオに任せた。というか、丸投げした。

 自分は、あくまで浄化する者であり、その世界の情勢云々などどうでもいいからだ。

 手っ取り早いのは、自分がジョゼブ王をガリアという国もろとも浄化してしまえばいいことだが、それだとヴィットーリオが把握しているらしい次の担い手候補も消えることになるだろう。四つの虚無を揃え、大いなる意思というモノを浮上させてから破壊するには、おそらくヴィットーリオに丸投げしておくのが一番楽な道だとバッターは判断した。

 大いなる意志さえ浮上してしまえば、あとは……。

「バッター殿。出番ですよ。」

「ん…。」

 陣地で声を掛けられ、バッターは、顔を上げた。

 ジュリオという青年が、説明した。

 ミュズニトニルンが前線に、ヨルムンガンドという巨大なゴーレムを何体も放ち、こちらに攻め入ろうとしているらしい。バッターに、それの足止めをしてもらいとのことだ。

 後援としてロマリア兵達も来るが、基本的にはバッターに戦闘を委ねるとのことらしい。

 その方がやりやすい。そうバッターは、思ったし口にした。

 ジュリオは、微笑み、頼みますねっと言ってから去って行った。

 ジュリオがいなくなったあと、バッターは、立ち上がり、アドオン達を連れて外へ出た。

 陣営のテントの外にいたロマリア兵達がバッターの姿に驚くが、すぐに体制を改めビシッと背筋を正している。ヴィットーリオやジュリオから、バッターが世界を救う最重要な位置にいることは概ね聞いている彼らは、バッターが異形に見えいてもそういう風にする。だが、影では、化け物だと言っているのをバッターは聞き逃していない。別に気にすることではないが。

 バッターは、陣営を出て、荒れ地を歩く。

 やがて、何か大きな物が歩いてくるような…地響きを感じた。

 

『あら? ひとりなの?』

 

 やがて丘の上の向こうから、土くれのフーケのゴーレムよりも巨大なカラクリ人形…、この世界ではガーゴイルと呼ばれる魔法で動く人形が現れた。

『へえ……、噂ではチラッと聞いてたけど…本当に化け物をロマリアが雇ってたなんてね。』

 ガーゴイルから女の声が聞こえてくる。

「お前の主人には、どう見えている?」

『ハッ?』

「お前が、ジョゼブ…、いや、虚無の担い手の使い魔だとは聞いている。ジョゼブには、俺がどう見えている?」

『……あの方を呼び捨てするな。化け物が。』

 死ねっと、ガーゴイルから声が聞こえ、巨大なカラクリ人形であるガーゴイルが巨体からは想像も出来ない速度で動いて、バッターに迫った。

 バッターを踏み潰そうと振り上げた足が、直後に粉々になり、ガーゴイルが勢いで後ろへバランスを崩して倒れた。

 バッターの後ろに控えているアドオンの攻撃によるものだった。

『なっ…、さすが化け物…。得体の知れない攻撃をするね。けど、ヨルムンガンドは、他にもいるんだよ!』

 丘の上からわらわらとヨルムンガンドが現れてくる。

「……イーノック。」

 バッターが前に左手をかざす。

 直後、白い粒子が放出され、ヨルムンガンドよりも大きな巨体が現れた。

『ヤレヤレ…、私達は、“人形”のお前の人形というわけか。』

「奴らを足止めしろ。」

『…ハア……。』

 イーノックは、深くため息を吐くと、イーノックの出現に立ち往生しているヨルムンガンド達を蹴って吹っ飛ばしていった。

『なっ、なっ、なっ!?』

 ヨルムンガンドから聞こえる女の声が驚愕している。

『フーーーー…、それで? このカラクリ人形共を足止めだけしろということかね?』

「後ろへは行かせるな。一体たりとも。」

『お前が他人のために何かをするとはな。』

「違う。」

 意外だと声を漏らすイーノックに、バッターはすぐに否定した。

『なにやら事情があるようだが……、今の我々には関係の無いことか?』

「そうだ。」

『……ふう……。』

 キッパリ言われ、イーノックはこれ以上追求しても無駄だと判断し、ヨルムンガンドを相手にした。

 ヨルムンガンド以上に大きいイーノックを前に、ヨルムンガンド達は挑むも、ガランゴロンと地面を転がされる。

『ふう……、これだけか? つまらな…、…? あれは…。』

 イーノックがつまらないとぼやいた時、空の方から、小型の空中艦が飛んできて、陣営の手前で止まる。

 そして……。

 何かが投げられ、それがなんであるかをバッターとイーノックが認識した直後、その赤い石が、爆発した。

 ヨルムンガンド達をも巻き込み、イーノックの巨体とその傍にいたバッターとアドオン達も飲み込んだ巨大な炎は、膨れに膨れ上がり、ロマリア側の陣営の半分近くを消し去った。

「ふふふ…、とんでもない威力ね。これが、赤石…。エルフの魔法も技術もとんでもないわ。」

 空中艦に乗っているのは、ミュズニトニルンがその威力にさすがに冷や汗をかいていた。

「でも、いくら化け物でもこの爆発じゃ…。」

 もうもうと上がる煙と炎の名残りから、ボンッと何かが飛び出して、船の船首に飛び乗った。

「えっ……?」

 ほんのり焦げたユニフォーム。煤けたバットが船の本体部位を殴るため振り下ろされた。

 砕かれ、墜落していく船。

 ミュズニトニルンは、ガーゴイルの背に乗り、脱出した。そのガーゴイルに、アルファが攻撃アビリティを浴びせ、粉砕した。

「チっ!」

 ミュズニトニルンは、別のガーゴイルを呼び寄せ、落下していく自分自身を拾わせて墜落を免れた。

 炎が晴れた大地に、バッターが飛び降り、煤けたイーノックがケホッと煙を口から吐いた。

 ミュズニトニルンは、イーノックがいまだに五体満足で立っていることに驚愕したし、バッターも無事なことに驚きを隠せなかった。

 だが、ロマリアの陣営の半分近くを消し飛ばせたのは良しとして、とにかくいったん体制を整える必要があると考えて、ミュズニトニルンは、ガーゴイルに乗ってガリアの方へ飛んで行こうとした。

 だが…。

「っ!」

 ミュズニトニルンは、五感共感で気づいた。

 ジョゼブが……。

「………あぁ、私はお役に立てなかった…。」

 ミュズニトニルンとしての力が消えたのを感じ、ミュズニトニルンは、空を飛んだままのガーゴイルから手を放し、背中から落下し、重力に従って頭から地面に……。

 バッターとイーノックは、地面に落下し無残な姿に変わりは立てたミュズニトニルンを見つめ、やがてガリアの方から戻って来たヴィットーリオとジュリオと合流したのだった。

 

 

 

 




バッターがミュズニトニルンを引き付けている間に、ヴィットーリオ達は、ガリア側にいるジョゼブを直接叩きました。倒し方はあえて書きませんでした。
これで、ジョゼブの虚無は、ジョゼットに移ります。

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