淡々と浄化を行うバッター……。
アルビオン王家の、皇子であるウェールズ・テューダーは、空賊に化けて荷を奪い、父達が籠城している最後の砦であるニューカッスル城へ戻って来て異変に気づいた。
イヤに…、静かなのである。
そしてウェールズ達を出迎える者達もいなかった。
まさか…、自分達がいない間に現在敵対している貴族派に襲われたのか?
そんな不安がウェールズ達を襲う。
しかし、用心しながら入って行くと、濃厚な血のにおいと共に、剣や槍などの武器でもなく、かといって魔法でもなく、撲殺された死体がアチコチに転がっていた。
「ち…父上…。」
玉座の前には、頭と胸を潰された状態で、アルビオンの王であるウェールズの父親が仰向け倒れていた。
そして、その死体の傍には……。
「貴様が……、貴様がやったのか?」
ウェールズは、恐怖と怒りでグチャグチャになる心を必死に律しながら、その存在に問いかけた。
血塗れのバットを手にしているソレがウェールズの方を見た。
ウェールズを守る兵士達が恐怖と戦いながら前に出る。
「お前が…。」
「?」
「……最後の…、欠片…。」
「何を言って…。」
「ウェールズ様! お逃げ…。」
次の瞬間、一番前にいた兵士の一人が横へ吹っ飛び、血を撒き散らしながら床に落ちた。
そこには、白い輪っかのようなモノがいた。それが吹き飛ばしたらしい。
ウェールズの父親を殺した存在が、ゆっくりと歩いてくる。
ウェールズを守る兵士達が武器を構えると、再び見えぬ攻撃が兵士をひとり吹っ飛ばして殺した。
ウェールズは、直感で輪っかが攻撃しているのだと気づき、風の魔法を使って輪っかを攻撃した。風の攻撃を受けた輪っかが軽く吹っ飛ぶが、すぐに体制を整えるように転がり、近づいてくるソレの傍に寄り添うように移動した。
「くっ…、こんな形で…!」
ウェールズ達は、ニューカッスル城を残してすべての領地も仲間もすべてを失っていた。それほどに追い詰められ、明日には玉砕する予定を立てていたほどだった。
誇り高く、最後を迎えること、それだけが彼らを支えていたのだ。
しかし、それを打ち砕いたのがそこにいる、化け物と…輪っかの存在だ。
ここに来るまでに、城内に残されていた女子供までも死んでいた。間違いなくコイツらが殺したのだ。
ウェールズは、巨大な怒りに震え、杖の先を怪物に向けた。
だが、次の瞬間、横から凄まじい攻撃が来て、ウェールズは、吹っ飛び床に転がり、血を口から吐いた。
見ると、そこには、もうひとつ……、白い輪っかがいた。
残っていた兵士達も殴り殺され、息も絶え絶えなウェールズは、立ち上がろうとしていたが、怪物の影が彼を覆った。
「……アンリ…エッタ……。」
振り上げられたバットを見上げながら、ウェールズは、愛する人の名を呟き、そして振り下ろされた衝撃と共に意識を闇へと落とした。
「これで、この地は、浄化された。」
頭を失ったウェールズの指から風のルビーの指輪を抜き取り、グシャリッとウェールズの心臓を潰した化け物……、バッターがそう呟いた直後、アルビオンが赤い光と白い光に包み込まれた。
白い灰のような砂のような物が、風に乗ってトリステインに雪のように少し降ってきた。
それが赤と白の光に包まれたあとのアルビオンから吹いてくる物だと分かったとき……、アンリエッタは、愛するウェールズの異変を悟って泣き崩れたのだった。
アルビオン、浄化完了。
浄化後のゾーンのように、灰色と白と黒のみで彩られた滅んだ場所になりました。
なお、ティファニアは……生きています。