この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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17 ハートを刻め

 

 ダストは、獣人『馬』である美少女ハクレンに背負われて王都に向かっていた途中、急遽、「駄目っす」と言って、立ち止まった少女の体調を心配をしたのだが、その心配は、すぐに彼女の残念な頭の心配へと切り替わった。

 

 

「駄目っす。このままのペースでは、王都の八百屋が、閉まってしまうっす。」

 

「え、どうでも良くない?」

 

 現実逃避したいダストを逃さまいと、がしっと、両肩を掴み、大きな純真な瞳で、美少女は真剣に訴えかけてきた。

 

「駄目ッスよぉお!うちは、今、王都印の人参が食べたい気分なんす。」

 

「おおぅ、そ、そうだな。着いたら、腹一杯、食べさせてやる。そうだ。人参フルコースなんてどうだ?」

 

 勢いに押されて、迎合する。ニンジンなんて安いものだから、そんな、つまらない事で、怒らせたくはない。

 

 大量のニンジンをちらつかせ、純真な美少女を籠絡する卑劣なる主人公ダスト。

 

「マジ!御主人様、大好きっす。」

 

「おぅふ。」

 

 安い誘惑に堕ちた美少女に、ぎゅっとハグされた。ダストを背負い、長時間走った身体は、体温が高く、心音が大きい。

 密着した美少女からは、どくん、どくん、と高鳴る鼓動が聞こえる。抱きしめられながら、鼓動を聞いていると、少女が緊張したのか、その鼓動は、ドッドドと早くなり、まるで勇気を振り絞ったかのように、お願いをされた。

 

「御主人様、ダストを真の御主人様と見込んで、お願いがあるっす。うちは、エネルギーを貰えたら、もっと早く走れるっす。」

 

「エネルギー?」

 

 恥ずかしそうに、離れて、もじもじした少女から渡されたのは、細い棒。

 握りやすいグリップから伸びる棒の先端は、ハート型をしている。魔法使いの杖なのだろうか?

 

「これで、うちに、やる気を入れて欲しいっす。」

 

「参ったな。本当に魔法が使えるかは分からないんだが、やるだけやってみよう。」

 

 

武器:火蜥蜴の鞭[SR]を獲得した。

効果:しなるムチは、愛の一撃。その先端についたハートの突起は、奴隷にハート型のアザを刻む。

 

「大丈夫っす。この鞭でうちをブッ叩くだけでいいっす。」

 

「鞭なんか、持たすんじゃねーよっ。この変態美少女が。俺はノーマルなの。巻き込まないでくれ。」

 

「失礼な、フツーすっよ。」

 

 ドン引きするダストに、純真なる少女は迫る。ムチで叩く行為は、白馬ハクレンにとっては、普通の事であったからだ。

 獣人となった今は適用する事は許されない世間とはズレた価値観。

 

 

「さぁ、行くっすよ。」

 

 美少女は、豚を背負い、王都に向けて、再び走りだした。

 

「早くムチを入れてください。」

 

 ペチッ。

 

「はぁ、全然ダメっす。もっと、心を込めて、あと台詞も付けて。」

 

 ヘタレな男に、上から目線でダメ出しをしてくる。イラッとしたので少し力が籠もる。

 

「このっ、変態が!」

 

 べチッ。

 

「まぁ、少し良かったですが、ダメダメっす。童貞の御主人様には、荷が重かったすねぇ。」

 

「ほっほう。キーボードクラッシャーと呼ばれた、この俺を怒らせたな?」

 

「童貞が怒っても怖くなーい。チェリーより、人参フルコース寄こせっす。」

 

 少女に背負われながら、顔を真っ赤にして怒る。良いでしょう、本気をだそう、少し君を見くびっていたようだ。

 音楽家の血が騒ぐ、キーボードを壊れるまで叩いた華麗なる旋律を奏でるピアニストから、指揮棒を振り回すように激しく太ももをムチでしばくマエストロになる。

 

「馬車馬のように、こき使ってやる。きびきび走りやがれ雌馬が!」

 

「ひんっひんっ!」

 

 俺の指揮棒で、嬌声を奏でろ。ビシビシとビートを刻み、狂想曲は、クライマックスにさしかかる。

 渾身のチカラを持って、お相手致す。

 

「その綺麗な太ももに、俺のハートを刻んでやる。悦べ、メスウマぁぁあ。」

 

 ビチィッ!

 

 しなるムチは、白い肌に、真っ赤なハートのアザをつける。ドMな女、ハクレンは悦ぶ。

 

「ひ、ひぃいん!」

 

 

 嬌声をあげ

 興奮した馬は、暴れ馬となった。

 

 ガコラッ、ガコラッ。

 疾走する剛脚は、地面を削り取るように、死の音を奏でる。

 

 すでにヤバい速度だ。落ちたら死ぬ。揺れる背中は、死と隣り合わせのライド。

 美少女の背中から振り落とされないように必死に捕まり豚のように哭く

 

「ひぃぃぃぃ。」

 

 嬌声と悲鳴がマリアージュし、王都には、あっという間に到着した。

 

 

 


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