この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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24 猫屋敷

 

 ギルドで、初依頼を受けて、『猫屋敷の清掃』に向かう。地図を頼りに目的地へと向かうのだが、嫌だ、もう帰りたい。

 

 目的地に近付くほど、風に乗って不快な異臭が漂ってくる。なるほど、これは、かなりヤバい依頼だ。

 ツンとする鼻を殺す、吐き気のする異臭。猫屋敷の周辺は、閑散としているが、おそらくはこの異臭が原因だろう。家々の窓は固く閉められており、人通りはない。近くの酒場は、誰もおらずガランとしており、さながら、ゴーストタウンのようだ。

 

 

「帰りたい、帰りたいっす。」

 

「駄目だ。ハクレン、これが、お仕事だ。うぇっぷ。」

 

「頑張って、2人とも。」

 

 嗅覚の優れた獣人には辛いのだろう。俺も吐きそうだ。

 石族のコイシちゃんだけ、影響が無いのかハクレンの背中で涼しい顔をしている。羨ましい事だ。

 

 ほんの少しの金と名誉のために、新米冒険者は、地獄へと、一歩、一歩、近付く。

 

「うぅぅうーーっ。」

「ひにゃーぁぁっ、ぅゔぅー。」

 

 猫屋敷の中からは、不快な動物の鳴き声が聞こえる。猫の鳴き声は、ニャーニャーと可愛い物だと思って、この依頼を受けたのだが、劣悪な環境では、どうも違うらしい。

 

 立派な屋敷だ。この高級住宅街の中でも一際、立派だ。しかし、この強烈な刺激臭が、全てを駄目にしている。うろちょろする猫すら徘徊するモンスターと錯覚させるほどに。

 

「ハクレン、生きて帰ったら、ニンジン祭りをしてやる。だから、死ぬなよ。」

 

 こくこくと、泣きそうな顔で頷くハクレンの前で、決意を固めて、呼出の魔道具を押して、心を殺し、じっと待つ。

 

 

 どれくらいの時間が経っただろうか。いっそ、このまま開かないでくれと、弱気になった時、動きがあった。

 

 勇者を迎える魔王城ように、不愉快な猫屋敷の立派な玄関扉が、ゆっくりと、ゆっくりと、開いていく。

 長らく手入れをしていないのか、悲鳴のような錆びた音で、扉は叫ぶ。

 

 

 ギィィィ。

 

 地獄の門が開いた。

 

 それを合図に、門の中に、閉じ込められていた魔王軍が、開放されたかの如く、勇者達に猛烈に襲いかかった。

 

「うおぇっぷ。」

 

 その濃度は、数倍。

 頭を殴るような濃度。猫屋敷の中で熟成された異臭は、外の比では、無かったのだ。

 さながら、猫の死体。そんな表現が的確な、刺すような吐き気のする異臭。

 

 ハクレンは、ぶるぶると震える。獣人の優れた嗅覚が限界を迎えたらしい。

 

 哀しそうな純真な眼で、ダストちゃんを見つめると、決意を込めて、予想外の言葉を言い放った。

 

「御主人様、うちは、戦線離脱っす。また生きてお会いしましょう。」

 

 なんという事だ!駄馬は、コイシちゃんを抱えたまま、あろう事か、御主人様を残して逃げた。

 

「こぉのっ、裏切り者ぉーーーっ。」

 

 

 走り去る最速の乙女。

 ・・彼女には誰も追いつけない。

 

 こうして、不快な猫屋敷の魔女セルゲイの罠にハマり、仲間と分断された勇者ダストちゃんは、1人だけでの戦いを余儀なくされた。

 

 はたして、この不快な魔女セルゲイに勝てるのか?頑張れ、生きて帰るんだ。

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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