ギルドで、初依頼を受けて、『猫屋敷の清掃』に向かう。地図を頼りに目的地へと向かうのだが、嫌だ、もう帰りたい。
目的地に近付くほど、風に乗って不快な異臭が漂ってくる。なるほど、これは、かなりヤバい依頼だ。
ツンとする鼻を殺す、吐き気のする異臭。猫屋敷の周辺は、閑散としているが、おそらくはこの異臭が原因だろう。家々の窓は固く閉められており、人通りはない。近くの酒場は、誰もおらずガランとしており、さながら、ゴーストタウンのようだ。
「帰りたい、帰りたいっす。」
「駄目だ。ハクレン、これが、お仕事だ。うぇっぷ。」
「頑張って、2人とも。」
嗅覚の優れた獣人には辛いのだろう。俺も吐きそうだ。
石族のコイシちゃんだけ、影響が無いのかハクレンの背中で涼しい顔をしている。羨ましい事だ。
ほんの少しの金と名誉のために、新米冒険者は、地獄へと、一歩、一歩、近付く。
「うぅぅうーーっ。」
「ひにゃーぁぁっ、ぅゔぅー。」
猫屋敷の中からは、不快な動物の鳴き声が聞こえる。猫の鳴き声は、ニャーニャーと可愛い物だと思って、この依頼を受けたのだが、劣悪な環境では、どうも違うらしい。
立派な屋敷だ。この高級住宅街の中でも一際、立派だ。しかし、この強烈な刺激臭が、全てを駄目にしている。うろちょろする猫すら徘徊するモンスターと錯覚させるほどに。
「ハクレン、生きて帰ったら、ニンジン祭りをしてやる。だから、死ぬなよ。」
こくこくと、泣きそうな顔で頷くハクレンの前で、決意を固めて、呼出の魔道具を押して、心を殺し、じっと待つ。
どれくらいの時間が経っただろうか。いっそ、このまま開かないでくれと、弱気になった時、動きがあった。
勇者を迎える魔王城ように、不愉快な猫屋敷の立派な玄関扉が、ゆっくりと、ゆっくりと、開いていく。
長らく手入れをしていないのか、悲鳴のような錆びた音で、扉は叫ぶ。
ギィィィ。
地獄の門が開いた。
それを合図に、門の中に、閉じ込められていた魔王軍が、開放されたかの如く、勇者達に猛烈に襲いかかった。
「うおぇっぷ。」
その濃度は、数倍。
頭を殴るような濃度。猫屋敷の中で熟成された異臭は、外の比では、無かったのだ。
さながら、猫の死体。そんな表現が的確な、刺すような吐き気のする異臭。
ハクレンは、ぶるぶると震える。獣人の優れた嗅覚が限界を迎えたらしい。
哀しそうな純真な眼で、ダストちゃんを見つめると、決意を込めて、予想外の言葉を言い放った。
「御主人様、うちは、戦線離脱っす。また生きてお会いしましょう。」
なんという事だ!駄馬は、コイシちゃんを抱えたまま、あろう事か、御主人様を残して逃げた。
「こぉのっ、裏切り者ぉーーーっ。」
走り去る最速の乙女。
・・彼女には誰も追いつけない。
こうして、不快な猫屋敷の魔女セルゲイの罠にハマり、仲間と分断された勇者ダストちゃんは、1人だけでの戦いを余儀なくされた。
はたして、この不快な魔女セルゲイに勝てるのか?頑張れ、生きて帰るんだ。
主人公は誰がいい?
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豚野郎 ダスト
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美少女 ダストちゃん
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男の娘 ダスト君
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美男 Dust
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でぶ女 D