この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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26 お仕置き

 

 裏切り者に制裁を。

 

 強いクランを作るためには、時に、心を鬼にしなければいけない。一致団結するために、ルールを守る必要がある事を教えなければいけない。ちなみに、俺がルールだ。

 拷問方法が次々と浮かび、ハクレンの泣き顔を想像し、暗い愉悦を満たす。

 

 主人を見捨て、敵前逃亡した駄馬ハクレンの調教が必要だった。

 

 そうだ、古来日本で行われた、あの拷問にしよう。これに関しては、ノウハウがある。ジャパニーズの血が騒ぐ。

 

「ご、御主人様、反省したっす。だから、その、そろそろ許してくださいっす。それに、生きて帰ってきたんだから、良いじゃないっすか?」

 

「駄目だハクレン。敵前逃亡するような愚かなる駄馬には、お仕置きが必要だ。次からは、俺を背負って逃げるんだ。良いな?」

 

 ぶるぶると震えて半泣きのハクレンを、容赦なく抑えつける。こくこくと頷き反省しているようだが、俺はまだ満足していない。それに予定の時間よりまだ早い。

 

「ダスト、ごめん。私が変わるよ。むしろ、得意だから。」

 

「駄目だ。コイシちゃんも、逃げる時に俺を捕まえる余裕はあったはずだ。一緒に反省して欲しい。」

 

 しゅんと、なるコイシちゃんに僅かな罪悪感を感じる。

 

 そして、時は、来た。エネルギーが充電されたのが分かる。

 

「ご、御主人様ぁぁあ。ごめんなさい。」

 

「良かろう。ハートが咲き乱れる枕も、なかなか満足であった。」

 

 日本古来の拷問《石抱き》

 をソフトにしたもの、つまりは、ひざまくらである。正座をした事のないハクレンには、少々キツかったようだ。

 

 俺の脳ミソがしっかり詰まった重い頭が、白い綺麗な脚から、離陸する。立上がり、膝枕業務を終了させた。

 

 ホッとして、脚を崩し、ゆるゆるになったハクレンを横目で見る。お仕置きが終わったとでも思っているのか?甘いな、砂糖のような甘さだ。

 

 我が《乙女達の楽園》は、甘い組織では無い。その身に、罪を刻むがよい。

 

「良く耐えたな、ハクレン。さて、今夜は、リリィの行きつけの店で、人参の創作料理をを予約してある。ソースのかかった人参は、絶品だそうだ。ついて来い。」

 

「御主人様ぁ。」

 

 嬉しそうに、立ち上がったハクレンに異変が起きた。よろよろと歩き固まる。

 

「ん?どうした?ハクレン?足がとまっているぞ?」

 

 ハクレンを煽りながら、ぺちぺちと、太ももに、優しく鞭で触れる。

 

「ヒィヒィィン。触らないでくださいっす。痺れて。足が痺れて。」

 

「ふむ。歩きづらいのか、ではハクレンのペースに合わせてゆっくり歩くとしよう。店の閉店時間までに間に合うといいなぁ。」

 

「御主人様は、鬼畜っす。」

 

 ぷるぷると懸命に歩くハクレン。その足取りは、遅い。最速の乙女は、亀のようにノロノロと歩く。

 

 暗い夜道を、店の看板の灯りを目指して進む。頑張れ、痺れに負けるな。

 しかし、現実は、非情。到着間際で、ふっ、と消える灯り。

 

「うわぁぁん。灯りが消えたっす。」

 

「泣き言は許さぬ。これはお仕置きだ。最後まで歩くぞ、歩けるか?」

 

「はい、頑張るっす。」

 

 絶望的な顔をするハクレンは、涙を堪えるように、ぐっと唇を噛む。これは、お仕置きだから、やり遂げなければいけない。だから、フラフラとゴールまで歩いた。

 

 ダストは、そっとハクレンにハンカチを渡したが、ハクレンは使おうとしない。まっ、すぐに必要になるだろう。

 

 しょんぼりしたハクレンの前で豚野郎ダストは、ひゅんひゅんと火蜥蜴の鞭を魔法の杖のように振る。

 おや?夜に使った事が無かったから気付かなかったが、先端のハートの部分が赤く光るのだな。魔法使いらしさがプラスされた。

 

「泣かないでいいぞ、ハクレン。今夜の俺は、魔法が使える。」

 

「魔法?」

 

 その疑問には行動で答えようか。ひゅんひゅんと闇夜の中を、蝶のように舞う赤いハートが、店の呼び鈴を、捉えて鳴らした。赤い燐光が散る。

 

「どちら様ですか?」

 

「ダストだ。悪い、待たせたな、初めてくれ。ハクレン歓迎の人参パーティを!」

 

 その言葉とともに、店の灯りが一斉に点き、扉が開いて、従業員達が、まるで待機していたかのように現れた。

 

「お待ちしておりました。ダスト様、ハクレン様。今夜は、心ゆくまでご堪能ください。」

 

 ハクレンの大きな瞳が、さらに開かれる。店の灯りに、照らされて、驚きに染まる顔は、とても綺麗だ。

 

「ご、御主人様ぁぁあ。」

 

 ほらな、ハンカチ必要だっただろ?

 

 

 俺はダスト。

 裏切り者には、制裁を。

 頑張る者には、報酬を。

 

 我が《乙女達の楽園》は、甘い組織では無い。激甘な組織だ。

 

 おっと、コイシちゃんをポケットからお呼びしよう。食事は食べないが、いて欲しい。

 

 サプライズは大成功。実を言うと、ここまで上手くいったのは、リリィの御用達の店だからだ。計画を話したら、悪ノリしてくれて、アイデアまで出してくれて、この悪戯好きな店員達には感謝しかない。

 

 全ては、極上の笑顔の為に。

 

 

「ソース、ソースが人参に合うなんて。これは人参革命っす!」

 

「そうか、良かったな、ハクレン。こっちのも美味いぞ。」

 

 夢中で創作料理にパクつく、幸せ絶頂のハクレンを、コイシちゃんと、ほっこり見つめる。

 顔にソースがついてるぞ、ナプキンで拭ってやると、恥ずかしそうな顔をした。でも食べるのをやめないハクレン。そして、また、たっぷりソースをつけて一口食べて、それは、もう嬉しそうに笑った。

 見ているこちらまで、嬉しくなる。可愛いすぎかよ。

 

 心が、満たされた。

 俺は、今、幸せを噛み締めている。

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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