裏切り者に制裁を。
強いクランを作るためには、時に、心を鬼にしなければいけない。一致団結するために、ルールを守る必要がある事を教えなければいけない。ちなみに、俺がルールだ。
拷問方法が次々と浮かび、ハクレンの泣き顔を想像し、暗い愉悦を満たす。
主人を見捨て、敵前逃亡した駄馬ハクレンの調教が必要だった。
そうだ、古来日本で行われた、あの拷問にしよう。これに関しては、ノウハウがある。ジャパニーズの血が騒ぐ。
「ご、御主人様、反省したっす。だから、その、そろそろ許してくださいっす。それに、生きて帰ってきたんだから、良いじゃないっすか?」
「駄目だハクレン。敵前逃亡するような愚かなる駄馬には、お仕置きが必要だ。次からは、俺を背負って逃げるんだ。良いな?」
ぶるぶると震えて半泣きのハクレンを、容赦なく抑えつける。こくこくと頷き反省しているようだが、俺はまだ満足していない。それに予定の時間よりまだ早い。
「ダスト、ごめん。私が変わるよ。むしろ、得意だから。」
「駄目だ。コイシちゃんも、逃げる時に俺を捕まえる余裕はあったはずだ。一緒に反省して欲しい。」
しゅんと、なるコイシちゃんに僅かな罪悪感を感じる。
そして、時は、来た。エネルギーが充電されたのが分かる。
「ご、御主人様ぁぁあ。ごめんなさい。」
「良かろう。ハートが咲き乱れる枕も、なかなか満足であった。」
日本古来の拷問《石抱き》
をソフトにしたもの、つまりは、ひざまくらである。正座をした事のないハクレンには、少々キツかったようだ。
俺の脳ミソがしっかり詰まった重い頭が、白い綺麗な脚から、離陸する。立上がり、膝枕業務を終了させた。
ホッとして、脚を崩し、ゆるゆるになったハクレンを横目で見る。お仕置きが終わったとでも思っているのか?甘いな、砂糖のような甘さだ。
我が《乙女達の楽園》は、甘い組織では無い。その身に、罪を刻むがよい。
「良く耐えたな、ハクレン。さて、今夜は、リリィの行きつけの店で、人参の創作料理をを予約してある。ソースのかかった人参は、絶品だそうだ。ついて来い。」
「御主人様ぁ。」
嬉しそうに、立ち上がったハクレンに異変が起きた。よろよろと歩き固まる。
「ん?どうした?ハクレン?足がとまっているぞ?」
ハクレンを煽りながら、ぺちぺちと、太ももに、優しく鞭で触れる。
「ヒィヒィィン。触らないでくださいっす。痺れて。足が痺れて。」
「ふむ。歩きづらいのか、ではハクレンのペースに合わせてゆっくり歩くとしよう。店の閉店時間までに間に合うといいなぁ。」
「御主人様は、鬼畜っす。」
ぷるぷると懸命に歩くハクレン。その足取りは、遅い。最速の乙女は、亀のようにノロノロと歩く。
暗い夜道を、店の看板の灯りを目指して進む。頑張れ、痺れに負けるな。
しかし、現実は、非情。到着間際で、ふっ、と消える灯り。
「うわぁぁん。灯りが消えたっす。」
「泣き言は許さぬ。これはお仕置きだ。最後まで歩くぞ、歩けるか?」
「はい、頑張るっす。」
絶望的な顔をするハクレンは、涙を堪えるように、ぐっと唇を噛む。これは、お仕置きだから、やり遂げなければいけない。だから、フラフラとゴールまで歩いた。
ダストは、そっとハクレンにハンカチを渡したが、ハクレンは使おうとしない。まっ、すぐに必要になるだろう。
しょんぼりしたハクレンの前で豚野郎ダストは、ひゅんひゅんと火蜥蜴の鞭を魔法の杖のように振る。
おや?夜に使った事が無かったから気付かなかったが、先端のハートの部分が赤く光るのだな。魔法使いらしさがプラスされた。
「泣かないでいいぞ、ハクレン。今夜の俺は、魔法が使える。」
「魔法?」
その疑問には行動で答えようか。ひゅんひゅんと闇夜の中を、蝶のように舞う赤いハートが、店の呼び鈴を、捉えて鳴らした。赤い燐光が散る。
「どちら様ですか?」
「ダストだ。悪い、待たせたな、初めてくれ。ハクレン歓迎の人参パーティを!」
その言葉とともに、店の灯りが一斉に点き、扉が開いて、従業員達が、まるで待機していたかのように現れた。
「お待ちしておりました。ダスト様、ハクレン様。今夜は、心ゆくまでご堪能ください。」
ハクレンの大きな瞳が、さらに開かれる。店の灯りに、照らされて、驚きに染まる顔は、とても綺麗だ。
「ご、御主人様ぁぁあ。」
ほらな、ハンカチ必要だっただろ?
俺はダスト。
裏切り者には、制裁を。
頑張る者には、報酬を。
我が《乙女達の楽園》は、甘い組織では無い。激甘な組織だ。
おっと、コイシちゃんをポケットからお呼びしよう。食事は食べないが、いて欲しい。
サプライズは大成功。実を言うと、ここまで上手くいったのは、リリィの御用達の店だからだ。計画を話したら、悪ノリしてくれて、アイデアまで出してくれて、この悪戯好きな店員達には感謝しかない。
全ては、極上の笑顔の為に。
「ソース、ソースが人参に合うなんて。これは人参革命っす!」
「そうか、良かったな、ハクレン。こっちのも美味いぞ。」
夢中で創作料理にパクつく、幸せ絶頂のハクレンを、コイシちゃんと、ほっこり見つめる。
顔にソースがついてるぞ、ナプキンで拭ってやると、恥ずかしそうな顔をした。でも食べるのをやめないハクレン。そして、また、たっぷりソースをつけて一口食べて、それは、もう嬉しそうに笑った。
見ているこちらまで、嬉しくなる。可愛いすぎかよ。
心が、満たされた。
俺は、今、幸せを噛み締めている。
主人公は誰がいい?
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豚野郎 ダスト
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美少女 ダストちゃん
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男の娘 ダスト君
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美男 Dust
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でぶ女 D