この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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3 ゴブリン娘

 どうやら、俺の右手が、コイシちゃんを擬人化したようだ。この異能は思ったより、ヤバくね?生活に支障が出るのでは?

 

 ただ、そんな重要な問題よりも、時折、小石ちゃんが魅せてくる笑顔が、俺の心を捉えて離さなかった。

 恋したかもしれん。

 それに、女子とこんなに長く話したのは、初めてだ。

 

 耄碌神に、授けられた異能は、祝福というより、呪いに近い残念なものだった。

 欲しかった異能は、モテモテになる異能であり、石を擬人化するようなクソ異能では無い。

 

「これじゃねーよ。ボケ神め。」

 

 思わず叫んで、しまったが、まぁ、コイシちゃんに出会えた事だけは、感謝をしている。

 コイシちゃんは、俺が命を授けたようなものだから、上手くいくだろうという漠然とした自信がある。こんなに会話が続いてるんだから、俺に気があるでFAでしょ。責任を持って、俺の嫁にしてあげようか、こういうのは、男から誘わないとね。

 

「よ、良かったら、小石ちゃん。俺と街まで歩いてくれないか?」

 

「え…無理だけど。」

 

 え!!断われた!異世界ならワンちゃんあるかもと調子に乗った、これが豚野郎の末路かよ。辛い…。やはり俺は、異能を手に入れても飛べない豚なのか。

 ダストは、そう勝手に悲観的に、独りで結論づけた。傷つくのが、怖くて踏み込めないので、向かい合わず、自ら逃げ出した。

 この時は、まだ弱い男だった。

 

「ごめ、キモかったかな。」

 

「違う、ダストは嫌いじゃないよ。ただ、歩くのが無理なだけで。」

 

「どのくらい無理なの?」

 

「歩けって命令されたら、グーで殴るよ?」

 

 そう言って拳を握りしめる小石ちゃんは、可愛かったし、これ以上、嫌われたくないので、初恋の小石ちゃんと、一旦、別れを告げた。

 

 だって、グーで、殴られたら、心が死ぬ。それに物理的にも死ぬかもしれない。

 

 小石ちゃんは、種族的に移動出来ないだけなのだが、拒絶されたと勘違いしたダストは、寂しそうな表情を浮かべる小石ちゃんと別れ、別々の道を歩きだした。

 

「小石ちゃん。しばしお別れだ。強くなって、またここに、戻ってくる。」

 

「…約束だよ、ダスト。ここで待ってる。」

 

 メインヒロインと、しばしの別れを告げるダスト。

 

 

 初陣。

 

 とぼとぼと、歩いていると、鼻をつく不快な臭気が漂ってきた。つまり、敵が現れたのだ。メジャーなザコ魔物。緑の小鬼、ゴブリンと遭遇を意味する。

 

「ぐぎょ?」

 

 邪悪を煮詰めたような顔をしている緑の肌をした鬼の小人だ。弱いが、かなり残虐な性質のモンスター。

 

「ひぃぃぃい。」

 

 いきなり、錆びたナイフで躊躇なく襲ってくる小柄な魔物。武器を持っていないダストは、木を遮蔽物にしながら、豚のように悲鳴を上げながら、必死に回避する。

 先程立てた計画の走って逃げる事、木によじ登る事は、自分の運動神経では不可能な事が分かってしまったからだ。

 

 ゴブリンの攻撃を回避、回避、回避。さながら、平和な森の魔境の最弱決定戦が、ここに火蓋を切って落とされた。

 

 ダストは、無様に逃げながらも逆転のチャンスを、じっと待つ。プロニートであった彼は、待機業務は、他の追随を許さない。

 

 ゴブリンの拙い剣技。逃げ惑う素人。第三者から見れば、ほのぼのしいぐらいのお粗末な戦いだが、当人達は、真剣そのもの。と、その時、ゴブリンの雑な大振りの一撃が木に当たり、錆びたナイフが浅く幹に食い込んだ。

 

 そう。この瞬間を待っていた。ゴブリンの攻撃に一瞬の硬直が訪れるこの瞬間を。

 

 彼は、あの夜。

 

 30才で童貞を迎えた、邪神の気まぐれの一夜。運命が変わった。いや、自ら運命を変える事を選んだ。

 

 そう、チャンスを掴む男になったのだ。

 

「うぉぉぉっ!ゴブリンめ、俺の女になりやがれっ!」

 

 ダストは、雄ゴブリンの硬直した腕を掴む。

 

 

 

 異能発動ーーーー

 

 『絶対美少女化(ハーレム)!!』

 

 

進化前:ゴブリン

少し失敗

名前:??

種族:ゴブリン族(美少女)

特徴:緑色の瞳髪。小柄な少女。

性格:残忍

異能:臭い息[N]

装備:蛮族の服[R]、錆びたナイフ[N]

能力:弱い→弱小

関係:敵対

 

「っしゃ!おらっっ!」

 

 ほんのり光る右手とともに、小柄なゴブリン娘が誕生した。

 

 美少女が異世界に1人増えた。艷やかな緑の髪。緑の瞳。やや緑がかったハリのある肌。キツイ表情。蛮族ルックというのか、首元にチープな牙のアクセサリー。毛皮のような巻布の服。

 

「うむ。間違いなく可愛いが。どこか、完璧じゃないような?」

 

 ダストの疑問は、すぐに解消された。彼女によって。

 

「人間のオス。犯すぐぎょ。」

 

 ゴブリン娘の吐いた息は、臭かった。吐き気のでる不快な酸っぱい息を放つ美少女。

 

「む、無理だ。俺には好きな娘がいるんだぁぁぁ。」

 

 自分から女にしておきながら、美少女ゴブリンの告白を断り、豚のように遁走するダスト。

 

「オスの子種袋、待つぐぎょ。」

 

「ひぃぃぃ。」

 

 はたして…ダストの童貞は、少し難ありの美少女に、無理矢理、奪われてしまうのだろうか?逃げろ、ダスト。

 

 


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