パチリ、パチリと、
その日は、優雅に爪切りしていたのが、命を救った。異能の暴走を防ぐため、日中は、ほとんど、黒竜の手袋をして生活しているのだが、爪切りのために、その時は、脱いでいた。
「ダストォォ!」
だから、聞き覚えのある来訪者の声に、驚いて思わず咄嗟の判断で、奇蹟を起こせ、ダストちゃんになる事により、一命を取り留める事ができたのだった。
ピッカァ!
美少女戦士ダストちゃん降臨☆
え?ダストって誰の事だろう?俺は、ダストちゃんだよ。だからっ、人違い、人違い。
「こ、困ります。勝手に入られては!」
「五月蝿い、殺されたいのかしら?退きなさい。豚野郎のダストは、この部屋にいるの?」
ダン!と、脆弱なる防衛網を打ち破り、部屋に、敵が入ってきた。始まりの村の、夫を女にされた、バツイチの令嬢ドールだ。
可憐な猫娘達の手薄な防御体制を軽々と突破し、不法侵入してきた女の手には、手斧が握られている。
怖、怖ぇぇ。
ダストに会いたくて、はるばる訪れるなんてモテモテだね、ダストは。
「ダストは、どこ?」
「落ち着け、乱暴なお嬢さん。話を聞くから、そこに座って。今、お茶を用意するから待ってて。」
今は、ダストではなく、ダストちゃんだが、この女はカンが良いので、そそくさと、敵前逃亡を図る。お茶を取りにいってそのまま逃げよう。実に自然な感じでドアに滑り込む。
しかし、足を引っ張るバカがいた。
「ダストちゃん、お茶ならウチが淹れてくるっす。」
愚かなる駄馬ハクレンに、背中を撃たれ、ピンチに。
「ダストちゃん?」
そのキーワードに反応し、ギギギっと、振り返る令嬢。
「ハクレン、隣町で竜涎酒を1本を買って来て、今すぐ。えーと、お嬢さん、そういう訳だから、そこで待ってて。」
とりあえずバカを遠ざける。敬礼したハクレンは、ダッシュで消えていった。
「良いわよ、ダストちゃん。貴女には、聞きたい事が出来たから。すぐに来なければ、迎えにいきますから。」
「いやいや、そんなには待たせないよ。」
能面の笑顔で笑うお客様を待たせて、ニッコリ笑い退出するダストちゃん。
扉を閉めて、心臓を抑える。
ドクン!ドクン!
ヤバいぞ。ヤツは、お嬢様探偵ドールだ。何かに気付き始めている。
夫の女体化を当てた、とんでもない女だ。バレる可能性がある。どうする。どうすればいい。
紅茶を淹れる手が震える。
なにか手はないのか?
そうだ!逃げてしまえ。
はっ、アポ無しで相手をして貰えるとか思ったのか?こちらには、最速の乙女ハクレンがいるんだ。アポが有っても逃げるがな、舐めんじゃねぇよ。
いや、ハクレンは、今いない。
隣町に、行っている。誰だよ、そんな指示だすバカは。
・・俺だし。
斧エンドは不可避なのか。
考えろ、どうやって切り抜ければいい。この暴走令嬢は俺を殺しに来てる。やり返すのは簡単だが、血を流すのは、スタイルに反する。
誤魔化すには、そうだ第3の選択を選べ。
ダスト君になる。
天啓が閃く。これしか、生き残る道は残されていないと、そっと、顔を触る。
ピカリッ☆
曖昧な肉体になった。
少女のような外観、しかして下半身に男神を宿す者。
基本的には、女に成れない劣等感が最高のスパイスとなるため、女体化出来る俺には出番が無いと思っていた存在。
しかし、現状、ドールに命を狙われる身としては、スパイスありまくりだ。暴君ハバネロより、暴君なお嬢様は、なんと20万スコヴィル。
夫を女にした犯人と、被害者であるお嬢様探偵ドールの駆け引きが始まった。
知能犯ダスト君は、凶悪な斧を持ったバツイチ女を、出し抜けるのか?
主人公は誰がいい?
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豚野郎 ダスト
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美少女 ダストちゃん
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男の娘 ダスト君
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美男 Dust
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でぶ女 D