部屋の中には、フランを女に変えた豚野郎ダストの命を狙う、手斧を持ち復讐に取り憑かれたご令嬢がいる。
誤魔化して、このピンチを切り抜けなければならない。
俺は、いや僕は、ダスト君。《乙女達の楽園》のオーナー。豚野郎ダストも、令嬢ドールも、初対面だ。
そう自分に暗示をかけて、手斧を持つ復讐者のいる部屋の扉を開けた。
「待たせたな、僕はダスト君。初めまして、手斧のお嬢様。さて、話を聞こうか、衛兵を呼ばなくていい納得出来る内容を期待している。」
「ダスト君?ダストちゃんでは無くて?」
こぽこぽと、紅茶を注ぎながら、令嬢の質問に、自虐に満ちた表情でハスキーボイスで答える。
「ダスト君だ。僕は、こう見えて男だ。ちゃんなら、良かったのだがな・・」
「!!。ごめんなさい。」
その表情には、女にも男にもなれない葛藤が、翳りとなって、妖艶な魅力として混在していた。
最も、こんな状況に、彼、彼女?が、追いやられたのは、目の前のドールが原因なのだが。
「それよりも、来訪の理由を聞こうか?」
「私は、元夫フランツを、女に変えた宿敵を探しています。宿敵の名は、ダスト。小麦色の肌、黒髪、豚のような男の呪術師。その、ここに、いると噂を聞きつけて。」
他人の家を襲撃してしまったと、すっかりと、勢いの無くなった令嬢が弁解する。紅茶を優雅に飲みながら、ダスト君は、思案げに結論を出す。
「それで、誤報だった訳だ。名前と髪の色は、同じようだしね。」
「ご、ごめんなさい。」
上手くいっている。ここで、お帰り願えば決着していたが、しかし、暗示が強くかかり過ぎており、触れてはいけない方向へ話を進めてしまう。
「飲みなよ、せっかく淹れたのに、冷めてしまう。それで、その呪術師が、女に変えたとは?ホモに目覚めたって事?」
「いえ、女体化。文字通り女性の肉体へ変質したの。」
令嬢の台詞は、衝撃的だった。
それが、本当なら、僕が完全に女になれる可能性があるからだ。もちろん、この曖昧だからこその魅力も理解している。だけど、成れる事なら。
気付けば、ダスト君は、令嬢の手を握りしめ、強く問いただしていた。
「は?本当なのか!女体化だと。その話、詳しく教えてくれ。」
「豚野郎ダストは、不可逆の奇蹟を行使した。いえ、混沌神の呪いと言えば良いのかしら、フランツは完全に女性になったの。」
閉ざされていた未来への可能性が提示された。男の娘である自分も愛しているが、女体化し、好きな人の子供を産む。そんな夢のような普通の未来。
「宿敵探しに、協力しよう。ただし、復讐は、僕がその奇蹟を受けてからだ。」
「利害の一致ね。」
猫屋敷を襲撃してきた敵と和解し、黒竜の手袋をはめた手で、固い握手をして、令嬢と協力して豚野郎ダストを追い詰める交渉は、ここに成立した。
と、この辺りで、自分にかけた暗示が解ける。ダストちゃんになれば、解決出来るよと。
んん?危ねぇ。この流れはマズイ。よしっ、話を打ち切り、お帰り願おう。
そう思うと手から、チカラが抜ける。スルリと、握手を離した。交渉決裂だ。
「夢を、悪い夢を見ているのさ、僕達は。ご令嬢、新しい恋人を見付ければ、考えも変わるだろう。おっと、そういえば、似たような風貌の男を酒場で見かけた事がある。」
「そう…ダスト君は、諦めるのね。」
「ご令嬢も諦める事をお勧めする。色んな出会いもあるだろうし、良かったら、僕の酒場に遊びに来てくれ。」
「ええ。今日のお詫びに行かせて貰うわ。高いお酒を用意して待っててくださいな。」
ふぅーっ。初戦は、僕の勝ちだ。
主人公は誰がいい?
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豚野郎 ダスト
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美少女 ダストちゃん
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男の娘 ダスト君
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美男 Dust
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でぶ女 D