この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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36 駆け引き

 

 部屋の中には、フランを女に変えた豚野郎ダストの命を狙う、手斧を持ち復讐に取り憑かれたご令嬢がいる。

 誤魔化して、このピンチを切り抜けなければならない。

 

 俺は、いや僕は、ダスト君。《乙女達の楽園》のオーナー。豚野郎ダストも、令嬢ドールも、初対面だ。

 そう自分に暗示をかけて、手斧を持つ復讐者のいる部屋の扉を開けた。

 

 

「待たせたな、僕はダスト君。初めまして、手斧のお嬢様。さて、話を聞こうか、衛兵を呼ばなくていい納得出来る内容を期待している。」

 

「ダスト君?ダストちゃんでは無くて?」

 

 こぽこぽと、紅茶を注ぎながら、令嬢の質問に、自虐に満ちた表情でハスキーボイスで答える。

 

「ダスト君だ。僕は、こう見えて男だ。ちゃんなら、良かったのだがな・・」

 

「!!。ごめんなさい。」

 

 その表情には、女にも男にもなれない葛藤が、翳りとなって、妖艶な魅力として混在していた。

 最も、こんな状況に、彼、彼女?が、追いやられたのは、目の前のドールが原因なのだが。

 

「それよりも、来訪の理由を聞こうか?」

 

「私は、元夫フランツを、女に変えた宿敵を探しています。宿敵の名は、ダスト。小麦色の肌、黒髪、豚のような男の呪術師。その、ここに、いると噂を聞きつけて。」

 

 他人の家を襲撃してしまったと、すっかりと、勢いの無くなった令嬢が弁解する。紅茶を優雅に飲みながら、ダスト君は、思案げに結論を出す。

 

「それで、誤報だった訳だ。名前と髪の色は、同じようだしね。」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

 上手くいっている。ここで、お帰り願えば決着していたが、しかし、暗示が強くかかり過ぎており、触れてはいけない方向へ話を進めてしまう。

 

「飲みなよ、せっかく淹れたのに、冷めてしまう。それで、その呪術師が、女に変えたとは?ホモに目覚めたって事?」

 

「いえ、女体化。文字通り女性の肉体へ変質したの。」

 

 令嬢の台詞は、衝撃的だった。

 それが、本当なら、僕が完全に女になれる可能性があるからだ。もちろん、この曖昧だからこその魅力も理解している。だけど、成れる事なら。

 気付けば、ダスト君は、令嬢の手を握りしめ、強く問いただしていた。

 

「は?本当なのか!女体化だと。その話、詳しく教えてくれ。」

 

「豚野郎ダストは、不可逆の奇蹟を行使した。いえ、混沌神の呪いと言えば良いのかしら、フランツは完全に女性になったの。」

 

 閉ざされていた未来への可能性が提示された。男の娘である自分も愛しているが、女体化し、好きな人の子供を産む。そんな夢のような普通の未来。

 

「宿敵探しに、協力しよう。ただし、復讐は、僕がその奇蹟を受けてからだ。」

 

「利害の一致ね。」

 

 猫屋敷を襲撃してきた敵と和解し、黒竜の手袋をはめた手で、固い握手をして、令嬢と協力して豚野郎ダストを追い詰める交渉は、ここに成立した。

 

 と、この辺りで、自分にかけた暗示が解ける。ダストちゃんになれば、解決出来るよと。

 

 んん?危ねぇ。この流れはマズイ。よしっ、話を打ち切り、お帰り願おう。

 

 そう思うと手から、チカラが抜ける。スルリと、握手を離した。交渉決裂だ。

 

「夢を、悪い夢を見ているのさ、僕達は。ご令嬢、新しい恋人を見付ければ、考えも変わるだろう。おっと、そういえば、似たような風貌の男を酒場で見かけた事がある。」

 

「そう…ダスト君は、諦めるのね。」

 

 

「ご令嬢も諦める事をお勧めする。色んな出会いもあるだろうし、良かったら、僕の酒場に遊びに来てくれ。」

 

「ええ。今日のお詫びに行かせて貰うわ。高いお酒を用意して待っててくださいな。」

 

 

 ふぅーっ。初戦は、僕の勝ちだ。

 

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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