この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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37 策略

 

 勝った。

 しかし、僕は完封勝利を目指す。

 

 元の肉体に戻り平穏に暮らすためには、復讐令嬢による豚野郎ダストの屠殺を防がなくてはならない。

 復讐は、何も生まないのだ。

 

 解決手段として、バツイチ令嬢の彼氏を作るのが、手っ取り早いだろう。

 

 

「今日も頑張るにゃあ。」

「指名一番は、私が頂きだにゃ。」

「猫娘ぇー、カーニバルっ。」

 

 開店準備に忙しい酒場に出勤する。店内は、ピカピカと磨かれるように輝いており、とても気持ちが良い。

 

「ご苦労さん。綺麗になってて気持ちいいぞ。掃除の腕を上げたな。駄賃を受け取って引き上げてくれ。」

 

 栄養状態が改善されて、心なし肌艶の良くなったスラム街の孤児は、頼もしく頷く。

 そして、なぜか僕を見つめて凄く照れている。あっ、そうか。美少女の僕に惚れちゃったのかな?でも、僕は、男の娘なんだ、ごめんね?

 

 さてと、いつも通り、VIPルームへと入ろうとしたのだが、階段が扉で封印されていた。あれ?

 

「何だこれ?僕の部屋に、入れなくなったんだが?」

 

「あっ、御主人様、竜涎酒っす。それは、セルゲイさんが、バリアフリーって言いながら魔導エレベーターをつけたんで、閉じたらしいすよ。入口は、こっちっす。」

 

 お使いを終えたハクレンから竜涎酒を受け取り、魔導エレベーターに案内される。

 

 そういえば、酔ってそんな約束をしたらしいなと、新しく出来ていた小部屋に入ると、そこは、筒のように、吹き抜けていた。

 しかし、上を眺めて見るが、吹き抜けた先の空間は、ドンづまりで何もない。そんな奇妙な部屋。

 

「何だ?この部屋。何も無いが。」

 

「資格ある者が、扉を閉めると、魔道具が起動するっす。」

 

 そう言いハクレンが、扉を閉めると、ふわりと、身体が宙に浮いた。ひゅーうんと、華奢な身体が上に引っ張られるように上昇する。

 例えるならば、チンチンがキュッとなるような感覚。

 

 上昇が終わると、足元に、透明なタイルのような物が現れ、すとんと、着地した。

 現れた扉が、自動で開くと、見えるのは、少し豪華に改装されたVIPルーム。いつの間にか足元は、VIPルームに敷き詰められた、ふわふわとした黒い絨毯と同化していた。

 

「え、何だ、これ?」

 

「凄い豪華っすよね。打ち上げは、この部屋でするっす。」

 

 セキュリティと、特別感がアップされた、まさに秘密基地。

 とてとてと、歩き、高級そうな絨毯の感触を足裏で感じながら、辺りを見渡す。ぐるりと、屋上の外周を、廊下のような感じで、机と椅子で囲っている。

 魔導エレベーターの到着したこの一辺のみが、広いラウンジとなっていてお酒の注文が出来るカウンターまである。

 外周から見下ろす酒場の景色は、まるで、箱庭のように輝いていた。

 

「それは、良い考えだな。ハクレン。」

 

 褒めると、嬉しそうに、開店準備を手伝いに、彼女は退出した。早速、備え付けられたカウンターバーに、竜涎酒を預けて、冷やしてくれるようにお願いする。

 

 竜涎酒(アンバーグラス)。海竜より、稀に取れるその琥珀の液体は、堪能的であり、それでいて甘い土のような豊潤な香りを放つ。香りを飲み込むようなその酒は、なかなかに、心躍る味だ。

 

 

 VIPルームから、下界の喧騒を眺める。今夜も酒場《乙女達の楽園》は、繁盛している。美人な猫娘のキャストを揃えた店など他には無いから。オンリーワンという言葉で誤魔化さない、全員がナンバーワンの可愛さだ。

 

 しばらくすると、待っていた客が来た。

 

 男ばかりの客層の中では、やや目立つ。猫娘ほどは、美人とは言えないが、まぁ美人の分類に入るだろう、令嬢ドールだ。

 豚野郎ダストに御執心な令嬢は、酒も注文せず、荒くれの男共に、聞き込みをしていた。これは、早速出会いの予感か?

 男共には、ダストの平穏のため、頑張って貰いたい。

 

 ちなみに、荒くれ男共には、猫娘を使って、「太った黒髪の男は、北に行くとか言っていた。」とかいう嘘情報を掴ませてあるので、安心だ。

 

「オーナー、いい感じのターゲットを見つけましたにゃ。」

 

「ふむ、作戦を決行してくれ。」

 

 眼下を見下ろすと、どことなくフランツの面影がある青年を発見した。

 よしっ、お詫びに、いい感じにしてやるから、モテモテ野郎ダストの事は、諦めてくれ。

 

「お嬢様、いい加減、席について酒を頼んで欲しいにゃ。」

 

「あっ、それは、ごめんなさいね。」

 

 すると、荒くれ男共が、飢えた獣の目で、令嬢を見つめる。

 ギラつく獣を前に、狼狽える令嬢には、猫の魔の手が伸びる。

 

「お嬢様、安心して飲める席を知ってるにゃ。1名様、ご案内にゃー。相席だけど良いですかにゃ?」

 

「ボ、ボクは、構いません。」

 

「ごめんなさいね。お邪魔しますわ。」

 

 すんなり、ターゲットの場所に誘導っ。照れたようにフランツ似の青年が頷き、令嬢が、他所行きの笑顔で微笑む。

 よしっ、青年よ、そのまま、危険な斧娘と上手くやるんだ。

 

「今夜も、酒が美味いねっ。」

 

 人を幸せにするのは、良いものだ。あと開放感も最高ぉ。

 

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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