勝った。
そう思ったのだが、詰めが甘かった。
なかなか、奥手な彼と、凶暴な斧ガールの仲は、進展しない。酒場には毎日同席するんだけど。
さっさと、2人仲良く、始まりの村に帰って欲しいが、いまだ友達止まり。そんな訳で、僕は、男の娘ダストちゃんのままだったりする。
☆
この肉体。凄く良い。筋力は無いものの、疲れないし、滾る衝動もある。
しかしだ。しかしだよ、あの斧娘から逃げるために、この姿を強制されている訳ですよ。それは、心の自由では無い。
そうだ!
このむしゃくしゃする気持ちを、モンスターに、ぶつけよう。
異世界は、割と自由だ。
つまり、サンドバッグのようなストレスを、発散する為だけに生まれたようなモンスターも、どこかに、いるはずだ。
「コイシちゃん、ハクレン。冒険に出掛けるよ!この異世界(で退屈している僕)を救うんだ。」
決意を瞳に燃やして、男の娘ダスト君は、立ち上がる。小さき拳を突き上げろ!
「いいよ。いっぱいモンスター倒す。」
しゅしゅっと、シャドーボクシングをした後、燐光を放ち、空中へ滞留した石の欠片になったコイシちゃんを、ぱしっと掴む。
「了解っす。ピンチな時は、御主人様も連れて逃げるっす。」
あの日の約束を覚えていた騎士のようにしゃがむハクレンを、ぎゅっと、その平らな胸で抱きしめる男の娘ダスト。
百合百合した絵柄だが、男だ!
ハクレンに、背負われて、南のダンジョンを目指す。てってってっ、と廊下を歩きだして玄関へ着くと、ピンク髪の猫娘とすれ違った。
「オーナー、お出掛けですにゃ?」
「冒険が呼んでいる。」
悪戯仔猫ちゃんピンクのアホ毛レーダーが、面白そうな予感に反応し、揺れる。
「にゃんと!ピンクも行くですにゃ。」
「フフ、可愛い仔猫ちゃん。僕達に、付いて来られなければ、置いていくが、それでもいいか?」
そうそう。猫屋敷は、僕の所有物になった瞬間から、内履きと下履きを分けるルールとなった。だから、そんな会話をしながら履き替えてる。
よいしょっと、ハクレンの背に掴まり直す。
「望む所ですにゃ。」
ピンクの瞳に決意が宿る。
「では、行くっすよ。真っ直ぐ走るので、後を付いて来てください。」
そう言い残したハクレンは、
『どひゅん』っと加速して、
ピンクの前から、走り去った。
「非道いですにゃーー。にゃー。にゃー。」
そんな抗議の声すら、あっという間に置き去りにする彼女は、最速の乙女ハクレン。
許せ、ピンクよ。
お土産は、買ってくるから。
主人公は誰がいい?
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豚野郎 ダスト
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美少女 ダストちゃん
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男の娘 ダスト君
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美男 Dust
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でぶ女 D