この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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41 冒険

 

 そう。僕は、親切なお姉さんの勧めで、初心者平原に来ている。

 それでは、今回のターゲットを紹介しよう。

 

 ザコラビット。通称、貧民の肉。ボソボソとした食感で、味もイマイチ。しかし、子供でも倒せる程に、圧倒的に弱い貧民の救世主だ。

 

「はっーはっ!僕の双剣を食らうがいい。ダブルスラッシュ!」

 

 たたたっ、と駆け出した、黒髪の男の娘は、華麗に宙を舞い、くるくると回転しながら、双剣を奮う。

 キラキラと、煌めく高級料理ナイフにより、次々と、ぴょんぴょんと跳ねて逃げ惑うザコラビットを料理していった。

 

「楽しー。待て待てー。」

 

 その者、正に一騎当千。初心者平原に現れた殺戮の蹂躙者。次々と、死の国ヴァルハラに、ザコラビットを送りこむ。

 

「御主人様、あっちに逃げたっす。」

 

「ナイスだ、ハクレン。僕からは、何人たりとも逃げられない。たぁぁ。」

 

 だから、夢中になるあまり、ザコラビットを追いかけて、ダスト君達は、いつの間にか、迷いの森へと、誘われてしまった。

 これは、初心者が犯しがちな初歩的なミスであり、代償は、その粗末な命を支払うだけでいい。失敗から学べる事は、なにも無く、愚か者が淘汰される自然の摂理。そこは、命を失う死の森。

 

 

 |迷いの森(ゲットロスト)

 

 迷いの森は、迷い木という歩く樹木系のモンスターがいる。

 迷い木は、普通の木に成りすまし、人の見ていない隙に、移動して道を塞いだり、出口の無い迷路を作り、幻惑と生命吸収で、ひっそりと厄介な攻撃をしてくる。

 知らず知らずの内に、森を牢獄に変えてしまう恐ろしいモンスターだ。

 迷い木の吐き続ける霧のような精神を汚染する幻惑の息により、脱出は極めて困難であり、毎年、一定数の死者が出る。知ってる者は、誰も近付ない死の森。

 

「あれ?ハクレン。視界が悪くなってきたぞ。警戒して。」

 

「御主人様、分かったっす。あっ、ザコラビットを10時の方向に発見。」

 

「良いぞ。逃さぬぅぅ。」

 

 警戒とは、何処へやら。どんどんと、森の奥深くに入っていくダスト君一行。

 

 方向が分からない程の白い霧の立ち込めた森の深くへと、迷い木の作り出す迷路に導かれ、ずんずんと入っていく。

 普通は、こんな状況に陥ると、恐怖心で動けなくなるが、彼女達には獲物しか見えておらず、サーチ、アンド、デストロイを繰り返した。

 

 ストレス解消の為だけに、奮われる両手の凶刃が、死体の山を築き上げろとばかりに、逃げ惑うザコラビットの軽い命を刈り取っていく。

 

 そして、あろう事か、ザコラビットの『貧民の肉』というドロップアイテムすらも捨て置く、猟師のマナーすら守らぬ鬼畜っぷり。

 

 アイテムは、要らない。ストレスを解消させてくれとばかりに、無意味に簒奪される無垢な命達。

 

 それは、もう五里霧中の中で、夢中になって刈りまくった。僕のストレスは、溜ってるんだぁぁぁぁ。

 

 モヤモヤとした何かを、反撃してこないザコラビットに向ける。切ってよし、刺してよし、叩いてよし。実に、スカッとする。

 

「はーっ、楽しかった。良い汗かいたね。」

 

 満足げに、ヘタり込む男の娘ダスト君。追い付いてきたコイシちゃんを抱えてきたハクレンが、何かに気付いたのか、不安そうに言う。

 

「あのー?御主人様、どこっすか?ここ?もしかして、帰れないかもっす。」

 

「・・・え?」

 

 ザコラビットの無意味に散らされた怨念が、ダスト君に襲いかかる。

 焦るダスト君に、コイシちゃんは、優しくフォローする。いつだって、彼女は優しい。

 

「大丈夫だよ、ダスト君。私は、ここでも暮らせるよ?」

 

 少し感性のズレたコイシちゃんのフォローになってないフォローにより、爽快な汗が冷や汗に変わった。

 さらに、先程までは気付かなかったが、死の森の中からは、低い魔獣の唸り声が聞こえる。

 

 僕、もしかして、ピンチ?

 

 因果応報、なんて言葉通りに、このまま迷子になりデッドエンドするかとも思われたが、これまでの目を塞ぎたくなるような蛮行が、なんとファインプレーだった。

 

 普通の冒険者がしない正気を疑う褒められない蛮行。しかし、ここは、ご都合主義の異世界であるから、主人公ならば、奇蹟の一手に変わる。

 

 あまり知られていないが、迷い木は、一定量の生命を吸収するのと、休眠する性質を持っている。

 

 つまり、大量のザコラビットの粗末な生命と、ドロップアイテムの『貧民の肉』を、一気に森に捧げた事により、迷い木が一時的な休眠状態に入り、森の霧が、晴れた。

 

 それは、まさに奇蹟のような体験。

 

 太陽光を遮るほどに酷く視界の悪い霧は、方向感覚を失って閉じ込められたような閉塞感といった不安を助長していたが、その精神を汚染する霧が、鮮やかに晴れ渡った。

 先程まで聞こえていた霧の中でしか棲息出来ない危険なモンスターの唸り声も鳴りを潜める。

 

 

 差し込む陽の光。

 

 神秘の森は、そのベールを脱いだ。

 鮮烈な爽やかさを身に浴びる。

 

 森厳の奥にある貴重な森の恵みを隠匿していた白い精神を幻惑する霧が晴れると、目の前には、宝の山が現れた。

 

 宝石キノコ。伽羅の香木。叡智の実。知識の無い者が、見ても分かる別格の存在感を放つ数々のレアアイテム。

 

「あれ?霧が晴れた。」

 

「なんすか?これ、凄いアイテムに囲まれてるっす。」

 

「このアイテムの輝きは、まさしく高レアリティだよ。」

 

 

 迷いの森の奥。秘境の恵みを獲得した。

 

宝石キノコ×456

伽羅の香木×167

叡智の実×355

選別の枝×7

謎の貝殻×18

太古の化石×150

 

「いやー、たくさん採った。もうアイテムバッグがパンパンだ。情報をくれた女神の使徒にも、お礼を言わないとな。」

 

「楽しかったす!」

 

「また来たいね。」

 

 ほくほく顔で、明るい陽射しの射し込む爽やかな見通しの良い森を、すたすたとピクニックするかのように歩き、帰途につく。

 

 冒険者の凱旋だ。

 今夜は、飲み明かすぞ。

 

 

 3人が、帰った頃、迷い木達は、僅かなる休眠より目覚めて、精神を汚染する白い霧を吐き出しザワザワと蠢きだす。再び、迷いの森は、濃い白い霧で覆われた。

 そう、ここは、死の森。本来なら立ち入れば命を失う、迷いの森。

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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