この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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43 幸せプランナー

 初心者平原饅頭、またたびクッキー、大火山ヘルファイア饅頭と、何だか代わり映えしないお土産を大量に買い込む。

 

「酒場《乙女達の楽園》の、猫娘ピンクさん宛で、お願いします。」

 

「はい、ダスト様、承りました。」

 

 アイテムバッグで、持ち帰る事も出来るが、運送ギルドに依頼した。

 なぜかというと、昨晩のコイシちゃんの発言により、令嬢ドールを追い詰める作戦を思いついたからだ。

 ダストのファンなのは、分かるが、手斧を持って熱烈に迫るのは止めてもらいたい。

 

 まずは、仕込みの一手。詰め将棋のように、斧を持った令嬢を罠にかけ、幸せロードを完成させてやる。

 

 

 幸せプランナーの使命感に燃える俺は、次の手を打つために、ハクレン号で、早いと評判の運送ギルドの配達員を、先回りして帰還した。

 

「ただいまー。」

 

 すると、勝手に冒険に出掛けた俺達を批判するかのように、リビングで、井戸端会議をしていた不機嫌な猫娘達のお出迎えを受けた。

 

「次は、連れて行って欲しいにゃ。」ですにゃ。」にゃーにゃー。」

 

「前向きに、検討しよう。」

 

 群がって抗議してくる美人の猫娘を適当に煙に巻く。しかし悪いが、今は構ってる余裕は無い、俺には、幸せプランナーの仕事があるんだ。

 

「クリアは、いるか?」

 

「はい、ここに。」

 

 突如、現れた猫娘クリアに驚く。存在感の薄さは、忍者か何かなのか。

 

「うおっ、いや。つけリストを見せて貰おうか。あぁ、ありがとう。」

 

 スッと、出されたメモ帳を受け取り、頭を撫でて褒める。ゴロゴロ喉を鳴らしながら、喜んでくれた。

 幸せプランナーの第2手で選んだのは、酒場で滞納している冒険者に、救いの手を差し伸べる事だった。

 

 

 バックヤードに、滞納者の一人を呼び出す。ロクに仕事もせず、早くから、店に来るとは、いい度胸だな。気にいった、その度胸を買ってやろう。

 

「おい、貴様。随分と、ツケが溜まっているようだな。」

 

「うぐっ。」

 

 バサリと、俺が投げつけたツケのコピーを見て、顔を青くする滞納者。大した額では無いが、彼にとっては、大金なのだろう。

 

「やはり、金がないようだな。いや、責めているのでは無い、優秀な貴様に相応しい仕事がないのだろう。そこで、債務を減らせる仕事を用意した。何、直ぐに終わるし、皆、幸せになれる良い仕事だ。」

 

 下準備は、これで完了だ。

 

 

 今夜も、ダストの事が、忘れられない斧令嬢が、やって来るのを待つ。

 何も知らず、来店した令嬢を、猫娘ピンクに、いつもの席に案内させて、料理が届いたタイミングで、仕込みがやってきた。

 

「こんばんは~、運送ギルドです。猫娘ピンクさんは、いらっしゃいますか?」

 

「はーい。ここですにゃ。何の用ですにゃ?」

 

「南町のダスト様より、御荷物です。」

 

 ギギギッと令嬢ドールが反応する。よしっ、釣れた。後はリールを巻くだけだ。

 

「失礼、ダスト?詳しく教えて貰えるかしら。今すぐ、南町に行かないと。」

 

「す、すいませんが、お嬢様。お客様の情報は、ちょっと。」

 

「お土産をくれたダストさんは、黒髪の恰幅のいいお客様ですにゃ。」

 

 令嬢ドールに、問い詰められて、たじろぐ配達員。さり気なくピンクからの確定情報を加えて、ここで、第2手だ。「行けっ」と二階のVIPルームから指示を出して、そこに債務者を突撃させる。

 

「おっ、南町に用事があるのか?なら、俺の仕事を手伝えよ。これから、南町まで護衛の依頼を受けて居るんだ。」

 

「でも・・・。」

 

 逡巡する令嬢。頼んだ食事は、ほとんど手をつけてないし、初対面の人だし、迷うのは当然だろう。

 

「さっさと、行くぞ。時間が無い。ほら、彼氏か?お前も来い。約束の時間に遅れてしまう。」

 

「わわわ、ボク達は、まだ付き合って。」

 

「・・分かりましたわ。」

 

 強引に、2人を連れ出した債務者。食事してる時間なんて与えまいと、なぜか必死な債務者。

 良い演技だ。なぜか、焦りが伝わる迫真の演技。あまり期待していなかったが、やるものだと、関心する。

 普通、こんな怪しい誘いには、乗らないが、今から出る南町の馬車なんて普通は無いからな。用意でもしない限り。

 

 連れ出された先には、かなりイライラした馬車の依頼主が待っていた。もちろん、彼は、仕込みの3番手、幸せプロジェクト要員だ。

 

「遅えぞ、オルグ。早く出発するぞ。」

 

「あぁ、悪い悪い。助っ人も連れて来たし、勘弁してくれよ。」

 

「仕方無ぇな。ほら、2人は、早く乗ってくれ。時間が無い。狭いけど、詰めて。」

 

「え、あの。」

 

「こっちは、南町まで、急いでんだよ!だから、早く。」

 

 流れるように、狭い馬車に積み込まれた2人は、訳も分からぬまま出発する。

 しばらく、進んで最初の休憩で、御者から告げられる。

 

「先程は、すまない。急いでいたから。オルグさん?帰ったよ。護衛料は2倍払うから、なっ、頼むよ。」

 

 そんな感じで、道中、一人部屋に、2人を押し込めたりと、言い訳を満載した馬車旅を、ご用意している。

 

 幸せになってくれ。

 

 

 そうそう、今回の協力者である債務者オルグが、迫真の演技をしてくれた原因が分かってしまった。

 

 彼は、令嬢の注文した手つかずの料理を、幸せそうに食っているのだ。度胸の半端なさに呆れるが、まぁ、いいや。

 

 

 いいね、完全勝利だ。

 これで令嬢ドールのダストに向けられていた熱い気持ちは、同行者に向かう事だろう。

 

「くはは、俺は、幸せプランナーだ!」

 

「にゃふーっ。」

 

 VIPルームで、コイシちゃんの肩を抱きしめながら、猫娘を侍らせて祝杯を上げた。

 

 




44は欠番です。

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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