酒場《乙女達の楽園》、猫娘達がVIPルームに引き上げ、今日の営業は終わりかと、客がパラパラと帰り出したそんな時だった。
引き上げたはずの猫娘達がいっせいに、VIPルームから、バラバラと降りて、なにやら、慌ただしく、酒場と猫屋敷の間の路上で、準備を始めだした。
これは、祭りの予感がする。
居残っていた客が、道に出てきて、帰りかけた客が戻ってくる。
ミケが、空になった酒樽の上に立ち、見物客達を煽る。
「突然だけど、今夜は、オーナーの我儘で、猫娘カーニバル延長にゃ。乙女達の楽園から、忘れられない一夜をご約束。夜空に咲かすのは、大輪の華。打ち上げは、コイシが努めますにゃ。」
そんなミケの煽りで、中心に視線が集まる。いるのは、猫耳が無く、灰色の髪をした、凛とした女性。
ぺこりと礼をする。そんなコイシに、魔法使いブルーが、声を掛ける。
「タイミングを合わせて魔力暴走させて渡すから、コイシさん、すぐに投げてにゃ。」
「分かった。ダストに、届けるよ。」
ブルーが魔力を込めて、ギラギラと不安定に光り出した宝石キノコを受け取り、コイシは、空に投げ放つ。
固定砲台のコイシから、打ち上げられる宝石キノコは、光の帯を引きながら、夜空に高く高く飛ぶ。
暴走した宝石キノコは、上空で、臨界点を迎え、ズドンッと中空で爆裂し、七色の光りを放ち、夜空を染め上げた。
さながら、花火のような光景。
キラキラと宝石のごとく、光りを空にたたえた後、残光が、街から少しの間、夜を払う。
夜の街に、くっきりと、都市が現れた。その街並みの全貌を顕にする。
「たっまやー。」
「御主人様、なんすか、それ?しっかし、綺麗っすね。」
リンゴは声も出ず、その忘れられない光景を目に焼き付けていた。これが、世界。おにーさんは、魔法が使えるんだと。
弔砲の数は、兵士1発。大将でも17発。
しかし、1日限りの少女のためだけに、放たれた宝石キノコは100を超える。このまま、全弾、打ち尽くすのかと思われたが、王都の警備隊が、駆け付けて、お終いとなった。
「お前らー、届け出をしてからせんかっ!全員拘束っ。」
荒れる警備隊。
しかし、そんな当たり前の指摘に、酒を飲みながら絶景を見ていた客や、花火を見に集まった野次馬に、火がつく。
「ざけんじゃねーぞっ。引っ込んでやがれ。」
「そうだ、そうだ。」
地上では、少し醜い祭りが続きそうだ。ヤレヤレだと、ダストは他人事のように、ため息をついた。
満面の笑顔で、約束を叶えた男に、幼女は抱きつく。傷顔の豚野郎が、どうしようもなく格好良く見えていた。
「ありがとう、おにーさんっ。私だけの勇者様。」
嗚呼、綺麗だった。
しかしながら、
祭りの終わりは、少し寂しい。
コーヒーカップに、火照るような覚めやらぬ興奮を並々と注ぎ、一匙の寂しさを加えたような、そんな後味。
普通の祭りと違ったのは、今夜は、寂しさの入った壷が、倒れて、テーブルを汚してしまった。
つまり、お別れの時が、来てしまった。リンゴの小さな仮初の体の命は、燃え尽きようとしていた。
「おにーさん、お別れの時間かな。」
「まだ、まだ。遊び足りないだろ。もっともっと、景色を見ようぜ。だから、だから。」
衝動的に、ダストはリンゴを抱きしめたが、フワワと手の中の存在が、希薄になるのを感じる。
手から質量が消えてゆく。
「おにーさん、あのね。リンゴは、」
ついには、手の中から消え去る命。
光りとなりて、砕けるように散る!
抱きしめていたダストの手は、虚空をすり抜ける。ぶわっと、夜空に散らばるリンゴだった光りの塊。
その手は、なにも掴めないし、なにも守れない。
「おにーさん、あのね。楽し、、かった。」
「リンゴおぉぉぉ、おーん。」
男の雄叫びは、慟哭となり、涙は溢れる。
狼の遠吠えのように、ここに居た事を誰かに伝える。
思い出を胸に抱き、泣け。
大丈夫だ。
死んでいない。
俺の心の中に生き続けろ。
主人公は誰がいい?
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豚野郎 ダスト
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美少女 ダストちゃん
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男の娘 ダスト君
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美男 Dust
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でぶ女 D