この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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56 食い倒れ

 

 帰ってきたぜ、戦場に。

 

 あぁ、ここが俺の居場所だ。

 

 

 豚野郎(ピッグマン)とか傷男(スカーフェイス)とか、俺の事を呼ぶ奴もいるが、俺はダストだ。ただのダストだ。

 

 1週間ぶりか。

 いや、もっと長いな。

 ハラが減った。何か喰わせろ、このままだと痩せてしまうだろと、俺の貪欲な細胞が渇望している。

 

 喰らってやる。

 全部、喰らってやる。

 

「俺の血肉になりやがれっ!!」

 

 

 爪楊枝をすっと刺し、桃の欠片を口にいれる。くにゅっとした身の詰まった果肉の弾力、じゅわっと迸る果汁、甘さと幸せが、口と心を満たす。鼻から抜ける芳香。

 しかし、やや酸味が強く、奥行きに欠けるのは、食うプロとして見過ごせない。

 

「85点。どんどん行くぜ。」

 

 しかしながら、

 猫娘達の目がどんどん死んできた。

 

「もう駄目にゃ。」

「にゃふっ。」

 

 脱落者は、調理班と交代してゆく。

 

 余れば捨てる事になるので、清掃を任せてるスラム街の孤児達にも食べさせて見た。今日だけ食い放題と聞いて、目をギラギラさせている。

 

「ホントに?ホントに?食べ放題なの?いくらでも食べるよ。」

 

「きちんと、採点するんだぞ。」

 

「分かった!任せて。うわっ甘い!」

 

 ガツガツと喜んで食べていたが、猫娘達と同じ運命を辿る。

 

「駄目っ。こんなチャンスは2度と無いのに、食べられない。」

 

 涙ながらに、ギブアップしていたが、結構頑張ってたと思うよ。予想外の健闘に拍手を贈る。

 そして、豚野郎ダストも味覚が崩壊してきたので、頼れる女神、美少女ダストちゃんへと最後のバトンを絆ぐ。

 

 ピカッ!

 

「皆の想いを、俺が果たす。女子は、甘いものは、別腹なのです☆」

 

 残機0。

 猫娘達もすでにリタイアしており、負けられない孤独な戦いが始まった。

 

 美少女ダストちゃんは、立ち止まらないよう、食って、食って、食いまくる。

 綺麗な口の中に、次々と、リズミカルに果肉が入っていく。そして、

 

「100点、完璧な理想系だ。」

 

 ついに、見つけたと思ったが、次の一口を食べて感想は変わる。

 

「むぅ、105点。この立体的な感動は、今までの常識を塗り替えた。やはり、全部食い切るまでは、終われないの!?」

 

 桃、林檎、梨、柿等と、味変をしながら、水でリセットをして、次々と食い進める。

 美味い、美味くないの先を見つめて、俺達は、この異世界で、スイーツ業界の覇権を握るんだ。

 

 あれだけ長々と連なっていた試食リストも最後の1ページとなり、震える手で、果肉片を口の中にねじ込む。

 姿、形は、美少女になったが、その心は、耐え続ける男、ダストだ。よく晴れた日も、雨の日も、風の日も、毎日、毎日、自宅の中に引きこもっていた豚野郎の心を思い出せ。

 

 限界へと挑んでいく。最後の一欠片は、75点で酸味が強めだったが、それが、むしろ心地良いフィニッシュ。

 

 食った、食い切ったぞ。なんとか、体調に異変を感じながらも、ついに、膨大にあった試食を全て完食したのだった。

 

「げふぅぅ。ご馳走さまでした!」

 

 ついに、やりきった。そして、その勇姿を見守っていた猫娘達の拍手に包まれるダストちゃん。

 

「凄いニャン。」

「ダストちゃん、頑張ったよ。偉いね。」

「御主人様、凄いっす。」

 

 ゴールまで走りきったランナーを称えるような称賛の視線が心地良い。

 

 ゴール?いや、これは始まりだと言わんばかりに、ダストちゃんは、首を振り、力強く、手を上げて宣言する。

 

「皆の健闘を称えよう。しかし、この戦いは、いまだ序章に過ぎない。これより、作戦は、第3段階へと移行する。判明した厳選種のみを栽培して最強の果実ジュースを作るぞぉ!」

 

「「「にゃー!!」」」

 

 新たなる時代の幕開けは近い。熱狂の渦に巻き込まれ、やりきった幸せな顔で、

 

 

 パタリと、倒れた。

 

 満腹感が、睡眠欲を強烈に刺激し、起きたのは、日も暮れ初めた夕方。

 

 体が重い。

 やはり、暴飲暴食だったか。

 

 食べてすぐ寝ると、牛になるなんていうが、Eカップはあるだろう、巨乳になっていた。

 しかし、お腹周りもぽっこりしているようだ。さすり、さすりと、触ってみる。

 ふふっ、可愛い赤ちゃん。

 

 豚じゃねーか。

 

 豚少女(ビックガール)。微少女ダストちゃんに、残念な進化を遂げた。

 こんな姿に需要があるかどうかは、分からないが、堕女神ダストちゃんは、デブ専という薄い需要すら狙っていく。

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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