この世の全てを美少女に!   作:縛炎

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65 始まりの村リターン

 

 鮮烈な朝日が登り、見慣れた風景が見えてきた。

 

 旅の途中で、一泊する予定だったが、まるで不思議な事に、狂気に取り憑かれたかように、一昼夜、魔狼の馬車を走らせてしまい、始まりの村へと到着していた。

 

 そして今、「キャーキャー」と、ダストの改良した馬車を見た村人達からは、歓声が上がっている。

 

 まぁ、当然だ。

 こればかりは、仕方がない。

 

 なにせ文明レベルが違うからな。ダストだって、UFOみたら、たぶん騒ぐから、おそらくそういう事だろう。

 

 ダストの発明は、時代の最先端の先を行っていたようだ。

 

 車輪に釘で磔にしたグロい魔蛇のブヨブヨした死骸が、潰れ、血が車体に飛び散り、悪魔馬車に相応しい異様を誇っていた。

 馬車を引っ張る疲れ知らずの魔狼の醜悪な顔も、加点要素だ。

 

 呪い:狂気+3が、付与されたダストの力作は、娯楽の無い村人達の視線を独り占めにする。

 

「あー、やっちゃったか。目立ちたくは、無かったのだが。これが、主人公補正か。」

 

「御主人様、不味くないっすか?」

 

「ふむ。様子を見るか?」

 

 

 背の高い美少女が操る、悪魔馬車から、顔を出したのは、スカーフェイスの豚野郎だった。

 

 馬車の窓から、ひょいっと顔を出したダストは、野次馬の中に、いつぞやの令嬢ドールと、フランツ似の青年がいるのを見つける。

 ダストの元熱狂的ファン、復讐の斧ガール令嬢ドールと目が合ったので、アイドルの努めを果たすべく、手を振った。

 

 ニコリと微笑むダストとは対照的に、令嬢ドールの顔が、どんどんと青ざめる。

 

「駄目よ、駄目っ。早く逃げるの。貴方まで、女にされてしまう!」

 

「え?ドール?いったい何を言ってるの?ねぇ、ちょっと、ついて行くからそんなに強く引っ張らないで。」

 

 カタカタと、震えの止まらない手で、無理やり、状況を把握出来ない青年を引っ張っての2人の逃避行が、始まった。

 

 おっと、これでは、まるで悪者みたいではないか、失礼するなあ。いや、悪者だったかも、フランの件は、ごめんよ。

 かつてのストーカーは、別の愛に目覚めて、逃げる関係性が逆転してしまったようだ。

 

「愛とは、人を変えるものなのだな。」

 

「オーナーが、何を言ってるのか、まるで分からないですにゃ。」

 

 ミステリアスに、ダストは微笑む。

 

「まぁ、今、動くのは得策では無い。いずれ迎えがくる。」

 

 そういえば、この村の正式な名前は、分からない。貰った地図にも、家紋が描いてあるだけなのだ。よくRPGで村の入口にいる「ここは、〇〇の村だよ。」という住人は、必要なのかもしれない。

 

 

 くだらない事を考えながら、しばらく待っていると、やっとロリババアが現れた。

 見た目は、子供。中身は、ババア。ファーストキスを奪った瑞々しい美少女。

 

 彼女の名は、リリィ・アーハイム。

 

 

「随分騒がしいのう。何事じゃ!」

 

 緊張した顔で現れたロリババアが、ダストを確認して、げんなりした顔に変わる。

 ホント、迷惑かけて、すまない。

 

「この件は、妾が預かるのじゃ。この者達を、引っ立てぃ!」

 

 ダスト達は、槍を突き出した歴戦のお爺さん達に囲まれ、連行される。親衛隊なのか、震える穂先で誤って刺されそうで怖いのは、相変わらずだ。

 

 まるで、始まりの日の再現。

 

 ダストが手を上げて降りてくる。ハクレンが、コイシを背負い、それに続く。

 

「あの日と同じだね。」

 

「そうだな、コイシちゃん。」

 

 一人だけ全く状況を理解出来ない猫娘ピンクは、借りてきた猫のように大人しく、いつもの余裕が、まるでない。

 

 ロリババアに連行されながらダストは、村の騒動の原因を起こしたにも関わらず、苦言を呈した。

 

「リリイよ、この村の出迎えは、毎回、熱烈すぎると思うのだが。」

 

「煩いのじゃ、この問題児め。妾とて、このような方面のドキドキは望んでおらぬ。全く、火消しが面倒だの。して、ダストよ、童貞は、誰で捨てたのか?」

 

「・・・。」

 

 沈黙。

 恵まれた環境にありながら、この質問の答えをいまだ持たぬ男。

 

「え?嘘じゃろ。そうか、そうか。妾も罪な女じゃ。その一途な愛に免じて、筆おろししてやってもええぞ。妾もセカンドバージンじゃし。」

 

「そんなっ、お館さまぁ!わしも、一途です。」

 

 ご機嫌になるリリイと、泣きそうになるイケオジ執事に、案内されて館へと戻ってきた。

 ちなみに、リリイは身体こそ清いが、心は、大人であり熟女であり、ドロドロと熟成されている。

 

 負けるな、ヒロイン、コイシちゃん。

 

 

主人公は誰がいい?

  • 豚野郎 ダスト
  • 美少女 ダストちゃん
  • 男の娘 ダスト君
  • 美男  Dust
  • でぶ女 D

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